週間情報通信ニュースインデックスno.1273 2021/04/24


1.「16%が興味なし」 2つの調査があぶり出す製造業DXの崖(4.23 日経XTECH)
日経BP総合研究所 クリーンテック ラボと日経クロステックは2020年12月、製造業DX(デジタルトランスフォーメーション)に関する2つの調査を実施した。1つは321社から回答を得た調査(以下「企業調査」と記す)、もう1つは製造業の現場で働く3000人から回答を得た調査(以下「現場調査」と記す)である。本記事では、この2つの調査から「DXに対する経営と現場のギャップ」に注目する。

DXだけど「変革よりも効率化」、製造業DX300社調査で見えた本音
調査結果のポイント
経営層の想定より「ボトムアップ」を自負する現場は少ない
「順調ではないDX」では経営層の「プロジェクト主導」がわずか4.8%
「DXは重要」と解答した現場は半分以下
36.8%が「DXは何かよく分からない」
現場はボトムアップと認識していない

2.パナが71憶ドルで米企業買収 目指すはオートノマスサプライチェーン(4.23 日経XTECH)
パナソニックは2021年4月23日、サプライチェーンソフトウエアを手掛ける米ブルーヨンダー(Blue Yonder)の全株式を取得すると発表した。買収総額は71憶米ドル(約7700億円)になる。すでにパナソニックは20年7月にブルーヨンダーの株式20%を取得済みで、株式80%の追加取得で全株式を握ることになる。21年度第3四半期までに買収完了を目指す。「単に成長する企業だからではなく、パナソニックが革新的なソリューションを生み出すのに必要なため買収を決めた」(パナソニックCEOの楠見雄規氏)という。

 ブルーヨンダーは製造や流通、小売りを手掛ける企業に対してサプライチェーンソフトウエアを提供し、機械学習やAI(人工知能)技術によって在庫管理や供給計画といった顧客業務を支援する。20年の売上高は約10億米ドルで、サプライチェーンソフトウエア専門企業として「世界最大」(パナソニック)だという。設立は1985年で、従業員は約5500人である。

 ブルーヨンダーの技術力を示すのが特許だ。業界で最も多い400以上の特許を保有しており、「同業他社は合わせても100に満たない」(パナソニックコネクティッドソリューションズ社上席副社長の原田秀昭氏)。天気などのさまざまなデータを加味したサプライチェーン分析が可能で、この分析能力の高さも競合他社に対する優位点になるとみる。

 買収の狙いは、パナソニックの保有資産とのシナジーによる成長だ。原田氏は「新型コロナの感染拡大を通じ、さまざまな企業が製造現場、倉庫、物流といった部分ごとの最適化だけでは不十分だと危機感を覚えている」と述べ、サプライチェーンの改善・改革が求められていることを強調。その中でパナソニックがものづくりの現場で培ってきた、センシング装置やネットワーキング機器、エッジ機器を利用した作業分析やデータ収集能力と、ブルーヨンダーのサプライチェーンソフトウエアを組み合わせていくことで、サプライチェーン全体が自律的に最適化されていく「オートノマスサプライチェーン」のソリューション提供を目指していきたいという。

3.欧州最大規模の5G SAネットをエリクソンが運用開始、産業向け続々(4.21 日経XTECH)
スウェーデンEricsson(エリクソン)は2021年4月12日、フランクフルトを含むドイツの主要都市にて、欧州最大級の商用5G SA(Standalone)ネットワークの運用を開始したと発表した。英Vodafone、米Qualcomm、中国OPPOとの業務提携で実現した。同日、全ての3.5GHz帯移動通信基地局の5Gへの切り替えと、独立した5G基幹ネットワークへの接続が行われた。フランクフルトにあるデータセンターの通信網も、今後増大するニーズに備えて5Gに切り替えられたという。

 5G SAネットワークは4G環境に依存しない分、5G NSA(non-standalone)ネットワークより低遅延で動作する。今回のVodafoneの5G SAネットワークでは、5GとLTEを同時使用する必要がなくなったことで、端末のエネルギー消費量を約20%削減する効果もあるという。また、ネットワークスライシング機能もサポートしており、1つのネットワークでさまざまなユースケースへの割り当ても可能になる。

 EricssonとVodafoneは、この利点を生かして、今後この環境を、一般消費者や企業のみならず、行政機関やIndustry 4.0を追求する産業界など、低遅延、高速大容量の大規模通信が必要な分野に提供していきたいとしている。

 Ericssonはまた、同日のニュースリリースにて、専用5Gネットワークによる自動車業界への支援活動についても紹介している。

 スペインに本社を持つ認証サービス会社Applus+ IDIADAは、世界各地の自動車メーカーと連携して自動車業界向け技術の開発、検証を行っている。今回は、Ericssonとスペインの通信事業者Orange Spainが連携して、自動運転やコネクテッドカーなどの概念実証実験や開発技術認証を支援する専用5GネットワークをApplus+ IDIADAに提供。無人運転、自動運転サービス、車両性能、テレマティクス、インフォテインメントなどの技術開発に役立てられる。

 Ericssonはこのネットワーク構築に向けて、「Ericsson Router 6000」「Enterprise Core」などを含むIP接続ソリューションなどを提供するほか、これらネットワークのサポートとメンテナンスも行う。2021年6月より本格稼働開始する予定だという。

 Ericssonの同日のニュースリリースでは、産業分野における専用ネットワーク構築を支援する「Ericsson Industry Connect」を使った産業デジタル化推進活動についても報告している。

 同社は、2025年までに、約50億台の機器類が移動通信ネットワークでつながると予測。しかし、Wi-Fiや公共のネットワークでは、十分な信頼性やセキュリティー確保が難しいとして、産業界のデジタル化に向けては、移動通信ネットワークを介したプライベートネットワークが不可欠になるとしている。

 Ericsson Industry Connectを使った活動としては、アイルランドで、同国の製造業関連調査会社Irish Manufacturing Research(IMR)とVodafone Irelandが、2021年3月18日に、同国初とする5G SAプライベートネットワークを稼働開始。VodafoneがIMRに、Ericsson Industry Connectを使った5G SAエッジコアと無線プライベートネットワークを提供し、アイルランドのハイテク産業における5G活用とスマートマニュファクチャリングに向けた調査を支援している。

 北欧では、通信事業者のTelenor Swedenが2020年9月、スウェーデンに本拠地を置く産業機械企業Atlas Copcoと商用5G契約を締結。ストックホルムのAtlas Copco拠点にて、3.7GHz帯の専用プライベートネットワークを稼働開始している。

 台湾の通信事業者Far EasTone(FET)も、Ericsson Industry Connectを使った産業向け商用5Gサービスを2021年に開始すると表明している。

4.キャッチネットワークとCTCが来春からローカル5G、西三河の製造業中心に展開(4.19 日経XTECH)
愛知県刈谷市に本社を置くケーブルテレビ事業者であるキャッチネットワークは2021年4月16日、伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)と共同で、2022年春にローカル5Gネットワークのサービスを開始すると発表した。愛知県西三河地区の製造業の企業を中心に展開する。

 今回のサービスは、キャッチのデータセンターにローカル5Gのコア装置を設置し、周辺地域の利用者へ基地局から5G端末までのネットワーク接続サービスを提供する。キャッチが保有する光ファイバー網を活用して基地局からコア装置までを最短で接続することで、通信における遅延の回避も図る。

 製造業など利用者は、高速で大量のデータをリアルタイムで処理することが可能になり、AI(人工知能)やAR(拡張現実)といった技術を活用した遠隔作業や、AGV(無人搬送車:Automatic Guided Vehicle)システムで工場施設内の省力化や自動化を実現できる。高速大容量、低遅延、同時接続など利用者個々のニーズに柔軟に対応して通信システムをチューニングするために、コア装置を独自に導入したという。

 サービス開始に向け、キャッチネットワークとCTCは、ノキアソリューションズ&ネットワークと連携して、ローカル5Gの通信環境における通信速度の測定やパケット損失・遅延の評価などを目的とした技術検証を2021年10月に開始する予定。

5.DXで「One Sony」の実現目指す、内製化にかじを切ったソニーCIOの狙い(4.19 日経XTECH)
ソニーは社名を変更し、各事業のシナジーを引き出す「One Sony」に挑む。デジタル変革の実現に向けてCIO(最高情報責任者)の役割は重要性を増す。システム内製にかじを切り、クラウド技術などの知見の蓄積を図る。

 2021年4月、社名をソニーグループに変更し、祖業のエレクトロニクス事業を手掛ける中間持ち株会社が「ソニー」の名前を引き継いだ。同じタイミングで新たな中期経営計画も始まった。「One Sony」という方針の下、売り切りからリカーリング(継続課金)型ビジネスへの転換を加速し、事業をまたいだシナジーを引き出していく。

 その基盤となる取り組みが、グループ横断のデータ利活用プラットフォームである「Sony Data Ocean(SDO)」の構築だ。第1弾は2021年度早々に完成する。その後も継続的に進化させていく。各事業が持つデータを一元的に収集・分析できるようにして、新しい顧客体験やサービスを開発する狙いがある。ソニーグループのDX(デジタルトランスフォーメーション)のど真ん中の取り組みといえる。

 既に米国や日本でSDOを実験的に使い始めている。米国ではエンターテインメント事業を中心に、音楽事業が持つミュージシャンのファン層と、ゲーム機のプレイステーション(PS)の顧客層を組み合わせて分析し、共同プロモーションを展開するといった取り組みを進めている。

 SDOを使いこなすデータサイエンティストの育成にも取り組む。ソニーコンピュータサイエンス研究所と共同で「データサイエンスラボ」を設置し、データ分析の基礎から応用まで社内研修プログラムを提供している。R&D(研究開発)部門と連携し、AI(人工知能)活用も推進する。GPU(画像処理半導体)サーバーを設置したデータセンターを2020年度に稼働させた。今後、順次拡張していく計画だ。

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