週間情報通信ニュースインデックスno.1271 2021/04/10


1.ラストワンマイルを置き換える、固定通信事業者がローカル5Gに力を入れるわけ(4.9 日経XTECH)
企業が自社専用の5G(第5世代移動通信システム)ネットワークを構築できる「ローカル5G」に注目が集まっている。様々な事業者が免許を申請するとともに、関連サービスの提供や実証実験を進めている。

 その1つが、FTTH(Fiber To The Home)やケーブルテレビインターネットといった固定通信サービスを提供する事業者だ。ローカル5Gを用いたFWA(Fixed Wireless Access:固定無線アクセス)のサービス実現を模索し、実証実験などの取り組みを進めている。

 固定通信事業の狙いは、集合住宅ユーザー向けインターネット接続サービスの強化。VDSL(Very high bit rate DSL。超高速デジタル加入者線)などをローカル5GのFWAに置き換えることで、ラストワンマイルの高速化を狙っている。

 FWAは、ユーザー宅近くのラストワンマイルだけ無線を用いるシステムである。ラストワンマイルよりバックボーン側は、光ファイバーなどでつなぐという構成を採る。一部の固定通信事業者は、そのラストワンマイルとしてローカル5Gを使いたいと考えている。

 なぜ集合住宅のユーザーがターゲットなのか。そこには集合住宅ならではの問題がある。

 例えば集合住宅向けFTTHサービスは、古くからあるサービス品目だと集合住宅内が電話線を使うVDSLになっており、これ以上の高速化が望めない場合がある。これらを光配線にすれば高速化を図れるが、集合住宅内の配線は通信事業者が手を出しにくい領域となっている。「配線工事には集合住宅の管理組合が合意しなくてはならないが、それが得られない」という理由で古い配線のまま使い続けているユーザーもいる。また、物理的に光配線にすることが難しいケースもあるようだ。

 FWAでサービスを提供すればユーザーがCPE(Customer Premises Equipment)を置くだけで済み、配線替えは不要となる。通信事業者、ユーザーともに集合住宅内の配線状況に影響されず高速な接続サービスを提供し、加入できるというメリットがある。

2.米スタートアップが「15分で使える」ゼロトラスト製品、日本でもユーザー増加中(4.8 日経XTECH)
新型コロナウイルスの感染拡大で、従業員が自宅などのリモート環境から社内ネットワークにアクセスする必要性が急増している。こうしたなか注目されているのが、既存のVPN(仮想私設網)を置き換える、新たな手段だ。

 その一例が「ゼロトラストネットワーク」。ゼロトラストとはサイバー攻撃から守る対象をネットワーク境界からアプリや端末に変えるセキュリティーの取り組みだ。

 守る対象がアプリや端末になるので、社内外を分け隔てなくアクセスできるようにもなる。Google(グーグル)やAkamai Technologies(アカマイテクノロジーズ)などの米IT大手が製品提供に精力的だが、同分野にスタートアップも参入し始めている。

 米シリコンバレーのスタートアップ、Twingate(ツインゲート)は2020年5月に社名と同じゼロトラスト製品「Twingate」の提供を開始し、コロナ禍を受けて採用する企業が増えているという。同社のトニー・ヒューCEO(最高経営責任者)は「Twingateを利用すると、社内ネットワークの構成を変更することなく、自宅からでも社内にいるのと同じワークフローで作業できる」と説明する。

 Twingateの特徴は大きく3つある。1つ目は従来のVPN製品のように、インターネットに接続するVPN用のゲートウエイサーバーを置く必要がない点だ。

 Twingateのアーキテクチャーではゲートウエイサーバーの役割はクラウド上にあるTwingateの中継サーバーが担う。利用企業は社内ネットワークから中継サーバーにアクセスするためのコンポーネントである「ネットワークコネクター」を社内のサーバーにセットアップする必要がある。

 「ほとんどの顧客が15分かそれ以下でセットアップできている」(ヒューCEO)という。社内外にいる従業員のパソコンから社内ネットワークへの接続要求があると、ネットワークコネクターがクラウド上の中継サーバーにアクセスし、接続の可否を判断する。

 「クラウド上の中継サーバーには企業のファイアウオールの内側にあるネットワークコネクターからアウトバウンドでアクセスする。ネットワークコネクターに外からインバウンドでアクセスすることはないため、IPアドレスやポートがインターネットに公開されることはない」。ヒューCEOは安全性をこう解説する。

 特徴の2つ目が、社内ネットワークの負荷を減らせる点だ。従業員のパソコンにインストールした専用のクライアントソフトが、パソコンの通信先が社内ネットワークかインターネットかを自動的に見分けている。

 例えば「Zoom」のようなオンライン会議サービスのトラフィックは社内ネットワークを経由させず、クラウド上の中継サーバーからインターネット上の接続先に送る。「クライアントソフト型なので、社内のサービスがWebベースでなくてもアクセスできる」(ヒューCEO)

3.トレンドマイクロが5G/ローカル5G向けのセキュリティー製品、SIMカード内で動作(4.8 日経XTECH)
トレンドマイクロは2021年4月8日、5G(第5世代移動通信システム)環境をサイバー攻撃から保護するセキュリティー製品「Trend Micro Mobile Network Security(TMMNS)」を4月15日から提供すると発表した。一般企業が自社専用として構築するプライベートな5Gネットワークである「ローカル5G」も対象とする。

 TMMNSは、5G/ローカル5GにつながるIoT(インターネット・オブ・シングズ)機器に挿したSIMカード内で動作する「TMMNS Endpoint Protection」と、5Gの通信経路上で脅威を検出・ブロックする「TMMNS Network Protection」から成る。前者のEndpoint ProtectionはSIMカードにJavaアプレットとして格納したセキュリティーソフトがデバイスの真正性をチェックする。

 後者のNetwork Protectionは、コアネットワークやRAN(無線アクセスネットワーク)上で通信状況を可視化し、IoT機器の脆弱性を悪用する攻撃を防ぐだけでなく、IoT機器からの不正なWebサイトへのアクセスや異常通信をブロックする。Endpoint ProtectionとNetwork Protectionは連携してIoT機器のセキュリティー状態をチェックし、不正の影響度に応じた対応を取れるという。

 トレンドマイクロは通信事業者やシステムインテグレーター、サービスプロバイダーにTMMNSを提供し、各社は自社サービスの一部としてTMMNSの機能をユーザーに提供する。トレンドマイクロからの提供価格は個別見積もり。

 同日富士通とトレンドマイクロは、富士通の「FUJITSU コラボレーションラボ」で、スマートファクトリーを想定したローカル5GシステムにTMMNSを実装し有効性を実証したと発表した。両社はラボで得た知見を基に、富士通小山工場をはじめとする実環境で2021年9月までを目標に検証を進め、ローカル5G向けセキュリティーソリューションとしての商品化を検討していく。グローバル展開も視野に入れたソリューションの共同検討を進めていくという。

4.意外に健闘の「なんちゃって5G」、通信速度を4Gと比べて分かったこと(4.6 日経XTECH)
 ホントに速さは4G並み?噂の「なんちゃって5G」の通信速度はこうやって測る。  調査に当たってはauのサービスエリアマップで「5Gエリア<ミリ波・sub6>以外の周波数」を調べ、その面積が比較的大きい東京都港区の東京タワー周辺および千代田区の靖国神社周辺の2カ所を選んだ。現地では「Galaxy A32 5G」(韓国サムスン電子製)が備える電波測定ツール「ServiceMode」を利用し、KDDIが4G向けから5Gに転用している周波数「3.5GHz帯」の電波を捉えていることも確認した。

 速度チェックは、インターネットの接続性能評価サービス「Speedtest」のスマートフォンアプリを使って実施した。具体的にはGalaxy A32 5Gのピクト表示が「5G」となりアンテナが4本フルに立っている状態で、アプリ上で同一の接続先サーバーを指定し、5Gモードと4Gモードの通信速度を5回ずつ交互に計測。最大・最小の値を除いて各3回分の平均値を算出し、比べてみた。

 いよいよ調査の結果をみていこう。まずは東京タワー周辺だ。基地局から端末への下り方向で、5Gの平均速度は毎秒277.7メガビットだった。これに対して4Gも同259.3メガビットと肉薄した。一方、上り方向では5Gの同33.9メガビットに対して4Gでは同23.8メガビット。5Gのスピードは4Gの4割増しとなった。

 続いて靖国神社周辺で計測したところ、下り方向は5Gが毎秒174.0メガビットで、4Gでは同106.8メガビットだった。上り方向では、5Gが同38.9メガビットで4Gは同37.2メガビット。5Gの下りの速度は4Gに比べて6割アップで上りの速度はほぼ同等との結果が出た。

5.総務省がeSIMを2021年夏までに義務化――eSIMは乗り換えを促進するための特効薬ではない(4.10 ITmedia)
3月30日に総務省で行われた「スイッチング円滑化タスクフォース(第6回)」において公開された報告書(案)において、2021年夏を目処にeSIMの導入を進めていくと明らかにされた。

 確かにeSIMはこれから普及していくことだろう。しかし、eSIMを「キャリアの乗り換えを促す特効薬」と持ち上げるのは、いかがなものか。

 確かにeSIM対応のスマホとeSIMを提供してくれるキャリアがあるととても便利だ。店頭にいくことなく、オンラインで契約でき、すぐにSIM情報をデバイスに書き込める。これまでに何度も利便性を実感している。

 ただ、手続き自体は煩雑で、お世辞にも万人向けとは言えない。乗り換えやeSIMの仕組みなど、全体像を知った上で手続きをすれば問題ないが、一般ユーザーにそこまで求めるのは酷かも知れない。

 筆者もeSIMの扱いに慣れている方だと思うが、先日、povoでeSIM発行し、iPhone 12 Pro Maxに設定してみたまでは良かったが、「つながらない」と焦ってしまい、eSIMを消去。「再度、ダウンロードすればいいや」と気軽に構えていたら、povoはオンラインでの再発行ができず、お客様センターに電話。それでうまく再発行してもらえず、結局、プラスティックのSIMカードを送ってもらうことになった。実はこのトラブルは、そもそもiPhone 12 Pro Maxに残っていたLINEMOのAPN構成プロファイルが残っていたためにうまく通信ができなかったというのが後からわかった。

 eSIMやプラスティックのSIMカードの再発行に数日間、費やしており、その間、回線は不通であった。サブ回線だったため、全く問題なかったが、これがメイン回線だったら、話にならない。

 一般のユーザーが、はじめてeSIMでキャリアを乗り換えるというのは正直、大変だろうし、そのサポートをしなくてはならない、キャリアにとってみても、オンラインで徹底したサポートをするのは、あまり気乗りがするものではないだろう。

 総務省がeSIMを本気で普及させたいのであれば、スイッチング、いわゆる乗り換えを狙ったものではなく「2枚目」需要を喚起すればいいのではないか。

最近のスマホはSIMカードとeSIMが両方入るのだから、SIMカードスロットには今まで契約しているキャリアの、できるだけ安いプランのSIMカードを挿しつつ、eSIMにはIIJmioのようにデータ通信料金の安いプランで契約する。このような2枚SIMを活用するというやり方であれば、eSIMのMNPで失敗するリスクもないし、ユーザーは簡単に通信料金を安くできる。

 キャリアの回線は維持され、決済やコンテンツサービスで稼ぐことができるし、MVNOも新規契約を獲得でき、通信料金も稼げる。

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