週間情報通信ニュースインデックスno.1270 2021/04/03


1.60年目の自己否定の真意、東京海上がアジャイル手法で全社DX(4.24 日経XTECH)
東京海上グループのDX(デジタルトランスフォーメーション)は一過性ではない。経営とIT部門がタッグを組み、システムと業務プロセスを一体で見直してきた。本格的な電算化から60年目にして、改めて自己を否定しシステム改革に挑む。

 「DXはずっと続ける営みだ。変革を続けてきた我々にとって、さほど特別なことではない」。東京海上日動火災保険の堅田英次IT企画部次長兼企画グループ課長はこう言い切る。この言葉には、東京海上グループのDXが世の中にあふれる一過性のDXとは一線を画すという自負がにじむ。

 これまでも東京海上グループはDXを続けてきたが、ここにきて「自己否定を始めた」(堅田次長)という。顧客ニーズやテクノロジーの変化に迅速に対応するうえで、既存システムが足かせになりかねないからだ。「テクノロジーの先行きを見据えて、インフラを変えていく」(同)。

 東京海上グループは水面下で次世代システムの検討に乗り出している。改革の3本柱として「インフラ」「データ」「組織・プロセス」を打ち出している。

 同社が描く次世代システムの全体像はこうだ。まず顧客接点を担う「SoE(システム・オブ・エンゲージメント)」、契約管理の「SoR(システム・オブ・レコード)」、データ統合・活用の「SoI(システム・オブ・インサイト)」の3領域を定義し、それぞれの役割や方向性を明確にする。そのうえで各システムをAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)で接続し、各種データをリアルタイムでやり取りできるようにする。

 現状はSoEとSoRが複雑に絡み合い、それぞれがビジネス側からの要求を満たそうと改修を繰り返し、さらにシステム同士が密結合する悪循環に陥っている。データもあちこちに分散し、十分に活用できていないという。

 次世代システムではSoEとSoRを切り離し、APIで連携する仕組みを採用する。さらに、SoRから統計分析やバッチ処理を分離し、SoIに統合する。SoRの中にがっちりと組み込まれたバッチ処理を分離・再構築し、システムの保守性や耐障害性を高める狙いがある。他企業との協業促進を見据えて、顧客データの利用に関するルール整備も進める。

2.留守電の音声が自動で文字に、使いこなしたいTeamsの通話機能(4.2 日経XTECH)
米Microsoft(マイクロソフト)のMicrosoft Teamsでよく使う主要機能といえば、テキストチャットとビデオ会議だろう。だが、Teamsはユーザー間の通話機能も備えている。有料サービスを使えば外線電話も可能だ。通話機能を使いこなせば社内外とのコミュニケーションが便利になるだけでなく、通話打ち合わせの議事録作成などの負荷軽減にもつなげられる可能性がある。

 Windows版アプリを例に取ると、左側のアイコン一覧に「通話」アイコンがある。これをクリックすると、連絡先のリストが出る。受話器のアイコンをクリックすれば相手を呼び出す。チャット画面の右上にも受話器のアイコンがあり、同様に通話ができる。

 同じ社内のTeamsユーザー同士で通話する場合は料金がかからず、内線電話の感覚で使える。ぜひ覚えておきたいのが「ボイスメール」機能だ。通話で呼び出した相手が出ない場合はボイスメールを残せる。通話を受けた側は「履歴」からたどって、ボイスメールを再生できる。

 ここまでは一般的な電話と同じだが、さらにTeamsの機能として便利なのがトランスクリプト(文字起こし)だ。ボイスメールの音声は自動的に文字起こしされ、履歴画面で文字で表示される。「あのイベントの件でお伝えしたいことがあって連絡いたしました」といった具合だ。音声で聞く前に手っ取り早く内容を把握できる。

 Teamsを外線電話として使うこともできる。日本国内の場合、例えば協業先のソフトバンクのサービス「UniTalk」に加入すれば「03-」や「050-」から始まる電話番号を取得できる。

 この番号に社外から電話がかかってくればTeamsに着信。Teamsユーザー間の通話と同様に履歴が残り、上述のボイスメールなどの機能も使える。逆に、Teamsから番号通知付きで外線電話を発信することもできる。

 外線電話として使う場合はオプション料金がかかる。UniTalkを使う場合、国内通話かけ放題のプランなら1番号(ユーザー)当たり月額880円(税込み)。加えて、Microsoft 365(旧称Office 365)のライセンスの種類によっては「電話システム」のオプション料金も1ユーザー当たり月額957円(税込み)かかる。既存のPBX(構内交換機)の維持費や固定・携帯電話の料金と比べた場合に、Teams通話に一本化したほうがコスト削減できるケースもありそうだ。

3.クラウドストレージのBoxに障害、ダウンロードの遅延など(4.1 日経XTECH)
米Box(ボックス)が提供するクラウドストレージ「Box」で、2021年4月1日午後6時30分頃からシステム障害が発生している。Boxへのログインや、保存したコンテンツへのアクセスに時間が掛かるなどの影響が出ている。

 Boxは同日午後6時33分以降、サービスの稼働状況の告知ページにおいて、アクセスに関する重大な問題が発生していると公表。午後8時7分時点では「問題を識別し修正している」とし、午後8時52分時点では「回復の兆候がみられる」としている。クラウドストレージのBox.com、ファイルをデスクトップから操作できるBox Drive、オンラインメモを作成できるBox Notesなど複数のサービスが影響を受けているとする。 Box Japanは解消に向けた対応について「状況が変わり次第、顧客に対し適切にアナウンスしていく」(同社広報)としている。障害の詳細な原因については、午後8時52分時点で明らかにしていない。

4.クラウドサービスの運用コストを30%削減、Nokiaの5Gエッジ技術(3.31 日経XTECH)
フィンランドNokia(ノキア)は2021年3月23日、5Gを活用するエッジコンピューティングのプロセスを自動化し、運用管理を効率化するツール「Nokia Edge Automation」を発表した。

 Nokia Edge Automationは、エッジサイト立ち上げからデータ、サイト管理、必要に応じたソフトウエアアップグレードなど、エッジコンピューティングのプロセスを自動化し、管理の負荷を軽減するツールである。データセンターの運用、リソース使用率の管理や最適化、自動化を支援する「Nokia AirFrame Data Center Manager」との併用で、エッジサイトインフラのライフサイクル管理も可能にする。Nokia Edge Automationでは、さまざまなハードウエアおよびクラウドスタックに対応し、既存の運用ツールとの統合も可能にするオープンAPIも提供している。

 同社では、今回のNokia Edge Automationにより、プロバイダーへの完成度の高いクラウドコンピューティングのエッジインフラ提供、vRANやOpen RANにも対応するマルチアクセスのエッジコンピューティング環境の提供が可能になるとしている。プロバイダーが抱える大量のクラウドソリューションサービスの管理を簡素化し、運用コストを約30%削減できるとする。今後は、世界規模の大手プロバイダーと連携してNokia Edge Automationの概念実証とトライアルを進めていきたいとしている。

 Nokiaは同日、メキシコのテレビ局TV Aztecaと連携しての、5G SA(Standalone)とエッジコンピューティングを使った動画転送実験についても報告している。遅延時間の低減に加えて、その機能性や柔軟性、コスト効率についても確認するものとなっている。

 実験は、TV Aztecaの施設内で、Nokiaの基幹ネットワークと無線アクセスネットワーク、3.5GHz帯の帯域100MHzを使って進められた。撮影された4Kハイビジョン画像がTV Aztecaのエンコーディングサーバーに送信され、そのまま新たなインフラを経由することなく配信される様子を確認した。

 今回の実験は、エッジコンピューティングプラットフォームを使って、競技場などでARサービスを提供したり、イベントに関する各種解析を実施したりするなど、テレビ配信の新たな可能性を確認する目的があった。

 その結果、5Gコネクティビティーにより、ライブイベント中のより迅速なカメラワークや、よりダイナミックな映像の提供が可能になることを確認。小売業、製造業、鉱業、エネルギー産業などにも転用可能な動画ストリーミングの柔軟性、操作性、セキュリティー面のほかに、車列監視や自動制御などの実現可能性についても確認したとしている。

5.NTTコムがローカル5Gの支援サービスを提供 ドコモとも連携して“キャリア品質”目指す(3.30 ITmedia)
NTTコミュニケーションズが、2021年3月31日から「ローカル5Gサービス」を提供する。同サービスでは企業がローカルを5G導入する際のコンサルティング、免許取得、機器構築、運用などの支援をトータルで行う。

 ローカル5Gに必要な機器を月額料金で提供することで、初期費用を抑えられる。またユーザー側が希望すれば、機器を購入することもできる。費用は事業者によって異なるが、初期費用は数千万円を、月額費用は150万円程度からを想定している。

 ネットワークはSub-6帯(4.7GHz帯)のSA(スタンドアロン)方式に対応している。Sub-6はミリ波よりも電波が届きやすく、SA方式はLTEを介するNSA(ノンスタンドアロン)方式よりも高速大容量・耐遅延、多接続といった5Gの特徴をより生かせるようになる。5Gコアをクラウド上で提供することで、後から他のエリアにも広げるなど、柔軟なエリア拡張も可能としている。

 ローカル5Gのネットワークを構築するには免許申請が必要になるが、総務局への説明から免許申請書類の提出までをNTTコムが代行するため、企業側が有資格者を用意する必要はない。24時間365日のサービスデスクやネットワークの稼働監視を含む保守運用もNTTコム側で行う。

 NTTグループの持つアセットとして、NTTドコモが持つ、エリア調査や回線設計などに関する知見を取り入れることで、高品質なエリア構築が可能になるとしている。例えば、敷地外からの電波干渉を測定し、影響を与える可能性のある電波については事業者と調整していく。この他、電波干渉や利用シーンを考慮した電波のチューニングや、見積もりと設計が乖離(かいり)しないための現地調査にも、ドコモの知見を生かしていく。

 NTTコムは「キャリアグレードの技術や知見」とアピールするが、これらはドコモの「ローカル5G構築支援サービス」を活用したもので、他の事業者にも提供されている。NTTコムは2021年にドコモの子会社化となる予定で、さらなる連携が期待されるが、現時点で決まっていることはないという。

 NTTコムはこれまで、いくつかの企業とローカル5Gの実証実験を行ってきた。  例えばDMG森精機とは、生産現場の自動化につながるよう、AVG(自律走行型ロボット)をローカル5Gに接続して電波特性を検証した。「AGVが収集する障害物が周りにあるか、人がいるかといった周辺環境のデータを集め、リアルタイムかつ安定的にサーバに取り込むことができた」(ソリューションサービス部デジタルソリューション部門第一グループ主査の柿元宏晃)。こうした検証は、工場内での自動化設備の高度化につながるとしている。

 例えば工場内でローカル5Gを利用する場合、ロボットをリアルタイムで制御しながら周辺環境のデータを収集し、搬送業務の自動化を行うといったものだ。Wi-Fiとは異なり、SIMによる認証情報を取得することで、セキュリティも担保できる。NTTコムは「製造業」をローカル5Gの大きな利用シーンに位置付けており、スマートファクトリーを推進していく。

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