週間情報通信ニュースインデックスno.1269 2021/03/27


1.デジタル案件への投資を加速するNTTデータ、決済インフラ「CAFIS」のDXにも挑む(3.26 日経XTECH)
SI事業の変革待ったなし――。システム開発を生業(なりわい)とするシステムインテグレーター(SIer)が主力としてきた受託開発ビジネスの先行きが不透明になっている。「従来型のご用聞きによるシステム開発では立ちいかなくなる」というのが業界全体の共通認識だ。そうした中、大手SIer各社はご用聞きから脱して、ユーザー企業と共に新たな製品やサービスの創出する取り組みを始めている。受託思考を取り払い、真の意味でユーザー企業のITパートナーへと脱皮できるか。SIの「ニューノーマル」を目指す専業各社の今を追う。今回はNTTデータの取り組みに迫る。

 国内最大手のシステム開発専業であるNTTデータ。近年は米Dell(デル、現デル・テクノロジーズ)のITサービス部門を2017年に買収するなど海外展開への動きが目立つが、その一方でデジタル事業の強化にも本腰を入れている。その1つが2017年7月に設立した組織「DSO(デジタル・ストラテジー・オフィス)」だ。

 DSOは顧客企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)につながる案件の「目利き」と「育成支援」を担う組織だ。ヘッドクオーター(本社や本部)がグループ内のデジタル案件に直接投資をしてオファリング(強みとなる技術や製品サービス)を育てる取り組みを推進している。

 具体的には、グループ会社や事業部などが提案した新規事業に投資をする「ビジネスアクセラレーション(BA)」と、人工知能(AI)やサイバーセキュリティーなどの技術起点で投資をする「イノベーションアクセラレーション(IA)」という2つの施策に基づき、各事業や技術の立ち上げを財政的に支援する。同社でDSOを担当する佐々木裕常務執行役員製造ITイノベーション事業本部長兼ビジネスソリューション事業本部長は「BAは年間15件、IAは同50件程度の案件に投資をしている」と説明する。

 デジタルの分野は市場環境や技術の変化が激しい。このためDSOは各案件における投資やリターンなどの進展だけでなく、ユーザー企業のビジネス環境や技術動向なども四半期ごとにモニタリングして年度単位で投資を判断する。佐々木氏は「3年ほどでビジネス成果に結びつけることを基本にしている」と話す。

 DSOの設立から約3年半がたち、今後の成長の柱となりそうな成果も出てきてた。佐々木氏は「(成果を上げる)シナリオのパターンが見えてきた」と語る。(1)ヘッドクオーターがグローバルアセット(資産)に投資をして海外グループ会社で投資を回収するモデル、(2)顧客企業との共同研究開発で世界トップランナーになるモデル、(3)先進技術への投資によるオファリングの開発、(4)市場の転換点を見極めた投資による事業参画、という4つのモデルだ。

 例えば(1)のモデルとして、海外で展開している保険業界向けのBPaaS(クラウド型アウトソーシングサービス)事業「GIDP」がある。海外のグループ各社が個別に開発していた保険業務システムをクラウド共通基盤に統合し、各機能をマイクロサービス化することでBPaaSのサービス基盤を構築した。この取り組みにより、サービスを迅速かつ低コストで提供できるようになった。これまで北米中心に展開していた事業を、南米やEMEA(欧州、中東、アフリカ)にも拡大しているという。

 DSOはこうした成功モデルを通じて得た知見を基に、デジタル案件への投資を加速させている。その中でも、将来の成長の柱と見込まれている案件の1つが「Platea Banking」と呼ぶ銀行システムのクラウドサービスだ。

 オンボーディング(登録)やペイメント、レンディング、デジタルウォレットといった銀行業務の機能を、銀行サービスのコンポーネント(ソフト部品)としてマルチクラウド環境で提供する。顧客企業はコンポーネントを組み合わせることで、素早く銀行サービスを始められる。佐々木氏は「銀行のセカンドブランドや他業界からの銀行サービス参入などアジリティーが求められる領域での活用を想定している」と話す。欧州と南米をターゲットに2020年度内にもサービスを開始する。 

 

2.「顔パス搭乗」成田と羽田で4月から実証、NECの顔認証採用(3.25 日経XTECH)
成田国際空港(NAA)と東京国際空港ターミナル(TIAT)は2021年3月25日、成田空港と羽田空港を出発する国際線航空便で4月13日から搭乗関連の一連の手続きに顔認証を使用する実証実験を始め、7月にも本格運用へ移行すると発表した。パスポートや搭乗券を提示する頻度を減らして搭乗客の流動をスムーズにするほか、新型コロナウイルス感染症対策にもつながるとしている。

 実証開始時点で顔認証に対応する航空会社は、成田では日本航空(JAL)と全日本空輸(ANA)の2社、羽田ではJAL、ANA、デルタ航空の3社。成田・羽田とも、他の航空会社でも順次顔認証を可能にする予定。成田では自動チェックイン機、羽田では顔画像登録用の専用端末で顔画像とパスポートを登録すると、その後の手荷物預け入れや搭乗口での改札などの際にパスポートや搭乗券の提示が不要になる。2空港の顔認証システムはいずれもNECが提供する。出国審査は法務省がパナソニック製の「顔認証ゲート」の導入を進めており、今回の顔認証システムとは連携していない。

 航空業界では、顔画像にパスポート、搭乗券の情報をひも付けた認証データである「OneID」による搭乗手続きの導入が進められており、米国アトランタやシンガポールなどの空港で運用が始まっている。国内でも国土交通省と成田・羽田など国際線の主要空港、JAL・ANAなどの主要航空会社が導入準備を進めていた。成田と羽田では今回の顔認証システムについて「Face Express」という共通のサービス名で展開する。当初は2020年夏の東京五輪・パラリンピックに伴う外国人旅行者の急増に備えるため同年春の運用を目指していたが、新型コロナウイルス感染症の流行などで延期となっていた。  

 

3.東京都立大学に国内最大規模のローカル5G、無線局免許を付与(3.25 日経XTECH)
総務省関東総合通信局は2021年3月25日、同日までに東京都立大学を運営する東京都公立大学法人へローカル5Gの無線局免許を付与したと発表した。同法人はローカル5G無線局を東京都立大学の南大沢キャンパスと日野キャンパス(合計49万平方メートル)に設置する。

 同日開催した交付式で、椿泰文局長は「本日交付する免許を含め(東京都立大学キャンパス内の)基地局は18局となり、全国的に見て最大規模のローカル5Gとなる」と説明した。無線局の内訳は南大沢キャンパスが4.7ギガヘルツ帯9局と28ギガヘルツ帯4局、日野キャンパスが4.7ギガヘルツ帯4局と28ギガヘルツ帯1局である。通信方式は4.7ギガヘルツがスタンドアローン(SA)、28ギガヘルツ帯がノンスタンドアローン(NSA)となっている。

 免許状交付式に臨んだ東京都立大学の清水敏久副学長は「5Gを介した先端研究の促進、産学公連携の推進、研究・実証実験成果の社会に対する還元を図りながら、スマート東京の実現に還元していきたい」と述べた。東京都立大学では、整備したローカル5G環境を活用した研究を大きく「挑戦型研究」「社会実装型研究」の2カテゴリーに分けて支援していく。また2021年度には、ローカル5G環境を実証実験フィールドとして民間企業へ提供する計画もあるという。 

 

4.「こんなAIは使えない」、導入後しばらくして現場からダメ出しが起きるわけ(3.25 日経XTECH)
「人工知能(AI)の予測は当てにならない」「予測が外れたら誰が責任を取るのか」「このAIは業務で使えない」。AIを業務の現場に導入したところ、ほどなくして業務担当者からこんなネガティブな意見が噴出する――。

 ソフトウエアエンジニアリングの研究者である、名古屋大学の森崎修司准教授によると、国内企業でデジタルトランスフォーメーション(DX)の一環としてAIの開発・導入が盛んになる中、こんなケースが起きているという。

 なぜそうなるのか。原因として挙げられるのは、AIを導入して業務をどう変えるのかという検討や合意形成が十分ではないことだ。

 従来の業務システムであれば、開発は業務現場のニーズが起点になる。ITの担当者が業務現場でのヒアリングや調査によって業務課題を洗い出し、重大な課題を特定。それを解決する新業務フローを業務ルールも含めて設計し、システム要件を定義する。

 このうち業務設計やシステム要件の定義では「望んだ機能が盛り込まれるか」「増える仕事を誰が引き受けるか」といった点に関して、往々にして関係者の間で利害対立が生まれる。そのすり合わせの過程で、ITの担当者と業務現場が新業務やシステム要件について検討を繰り返し、納得感を深めていく。ここでのポイントは、新システムを導入した後業務がどう変わるのかについて、関係者がイメージし納得することだ。

 一方、AI開発はDX推進という経営戦略のもと、スピードが重視される。そのため「深層学習によってこんな機能を実現できる」といったシーズが起点になりやすい。それが業務現場のニーズと合致してコストが見合えば、優先順位の高いものから開発していくケースが多い。

 この進め方では、AIを導入した後業務がどう変わるのかについての議論や納得感の醸成が甘くなりやすい。その状態で、開発したAIを業務現場に導入すれば、無用な混乱を招くのは必定だ。生産ラインを流れる製品から不良品を検出するAIを例に取ると、業務現場の典型的な反応は次のようなものになる。

 導入当初は、業務担当者の反応はおおむね良いという。「(AIなのに)これだけの精度で不良品を検出してくれるのか。大したものだ」という驚きがあるからである。しばらく使っているうちに、実際にどれだけ有用かというシビアな評価が始まり、「AIが不良品を見逃したとき誰が責任を取るのか決まっていない」といった業務ルールの不備が浮上する。さらに「この程度の精度だとAIに任せられない。結局、目視検査も必要になるからAIは要らない」といったダメ出しが起きる。

 もちろんこれを出発点として、AIの担当者と業務現場が協力して本当に業務で役立つAIに改善していけばよい。しかし業務現場が前向きになりにくい雰囲気の中で、AIの改善と業務設計を並行して進めることになる。いわゆる「手戻り」が発生し、それだけ時間をロスしてしまう。

 「AIの開発でも、現場に導入した後業務をどのように変えないといけないかという観点で精査しておく必要がある」。前出の森崎准教授はこう指摘する。

 ここは業務システムの開発経験が豊富なITエンジニアの出番である。AIの開発と並行して業務設計を行い、同時に業務現場の納得感を高めておく。

 森崎准教授によると、AIの開発時には他にも見逃しがちな点があるという。それはAIの保守だ。

 「AIの開発で使った学習データと、導入後に業務現場で発生するデータに乖離(かいり)が生じることがある。そうなるとAIの予測精度は低下し、再学習が必要になる」(森崎准教授)

 AIは一度作れば終わりではなく、保守が重要だ。予測精度のモニタリングや再学習のための人員・基盤が必要である。AIが稼働するエッジサーバーやカメラ、センサーなどのハードウエアについても保守計画を立てなければならない。

 スピードが重視されるAI開発は、こうした保守についても前述した業務設計と合わせて検討しておくべきだろう。  

 

5.無線LANは徐々に使われなくなる? 「Wi-Fi 6」の普及に水を差すものとは(3.26 ITmedia)
「Wi-Fi 6」(IEEE 802.11ax)が登場したことで、今後も無線LANの利用が広がるかと問われれば、実はそうとは言い切れない。無線LANに影を落とす要因とは。 

 無線LANベンダー各社は「IEEE 802.11ax」(業界団体Wi-Fi Allianceが定める名称は「Wi-Fi 6」)の導入によって得られるさまざまなメリットを宣伝している。より高速な通信ができる、より効率的に多数のクライアントデバイスを接続できる、クライアントデバイスのバッテリー駆動時間が長くなる、といったものだ。こうしたメリットが頭にあると、企業は既存の無線LANアクセスポイントが更新時期を迎えるとき、真っ先にIEEE 802.11ax準拠製品を導入することになるだろう。 

 IEEE 802.11axのこうした華々しいマーケティングのメッセージに、影を落とす現実があることを、企業は認識しておいた方がいい。 

 今後も「IEEE 802.11」から続く無線LANは常に必要とされるだろう。だがその必要性は以前ほどは高くなくなる可能性がある。無線LAN以外の無線技術が定着すると考えられるからだ。 

 「5G」(第5世代移動通信システム)の活用に向けて、新たな無線利用の形態が登場している。米国政府が保有する周波数帯を市民と共用する「市民ブロードバンド無線サービス」(CBRS:Citizens Broadband Radio Service)や、IoT(モノのインターネット)向けの長距離データ伝送が可能な無線などが、IEEE 802.11axと並んで注目を集めている。このような状況の中で、ネットワークエンジニアも無線LANの限界を理解しつつある。 

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が大流行し、企業のIT予算計画にも影響を与えた。単一の技術ではなく、アプリケーションに最適な技術を個別に適用することの重要性が高まっている。無線に関しても、全てのアプリケーションを無線LANで運用すると決めてかからない方がいい。産業用などオフィス以外のアプリケーションについては、無線LAN以外にも検討すべき新しい選択肢が出ている。

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