週間情報通信ニュースインデックスno.1268 2021/03/20


1.光ファイバーの限界を突破、いよいよマルチコアが実用化(3.19 日経XTECH)
 光ファイバーで使われる光源の波長として最も伝送損失が小さいのは1550nm付近である。ところが、1980年代の半ばまでは1550nmは使われなかった。それは「波長分散」という現象のためだ。

 波長分散とは、波長成分ごとに相手に届くまでの時間差が広がり信号の波形がひずんでしまう現象である。光源の波長に幅があり、波長ごとに伝搬速度が異なるために発生する。そこで開発されたのが、単一の波長の光を出せる「DFB-LD」というレーザーだ。

 さらに波長分散がゼロになる波長を従来の1310nmから1550nmにシフトした「零分散シフトファイバー(DSF)」や、波長分散でひずんだ信号波形を補償する「分散補償ファイバー(DCF)」が開発された。

 1990年代には、「高密度波長分割多重(DWDM)」の登場により、大容量化が進んだ。DWDMは波長分割多重の一種。波長分割多重では、異なる波長の光に別々の信号を載せ、それらを1本の光ファイバーに流す。

 さらに現在では「デジタルコヒーレント」と呼ばれる技術で1波当たり最大400Gビット/秒の大容量化を実現している。この技術では、位相多変調や偏波多重などを組み合わせて1波長で運べる情報を増やしつつ、デジタル信号処理によって波形のひずみを補正する。

2.中国系メーカーに急接近するKDDIとソフトバンク、慎重なドコモは対抗できるか(3.19 日経XTECH)
KDDIとソフトバンクが中国系メーカーのスマートフォン採用に積極的に動いている。低価格モデルから高性能モデルまで非常に幅広い選択肢が存在することがその背景にあると考えられる。中国系メーカー製品の採用に慎重な立場を取るNTTドコモはどう動くだろうか。

 ここ最近は新料金プランばかりが話題となっている携帯電話業界だが、スマートフォンの新機種でも動きがある。最近注目を集めたのが、米Motorola Mobility(モトローラ・モビリティ)が2021年3月4日に発表した新機種「razr 5G」である。

 これは同社が米国などで2020年に発売したスマートフォンのフラッグシップモデルであり、最大の特徴はディスプレーを折り畳めること。かつての同社製折り畳み型携帯電話「RAZR」シリーズのように縦に開くスタイルを採用しており、アスペクト比21:9の6.2インチディスプレーを搭載し、折り畳んでコンパクトに持ち運べるようになっている。

 一方、別の高性能モデルを発売するのがKDDIだ。KDDIは2021年3月11日、中国の広東欧珀移動通信(オッポ)のスマートフォン新機種「OPPO Find X3 Pro」を、2021年6月下旬以降に独占販売すると発表したのだ。

 OPPO Find X3 Proは、オッポのフラッグシップモデル「Find X」シリーズの新機種となる。10億色の彩度を持つ約6.7インチ有機ELディスプレーと、やはり10億色の彩度を誇る5000万画素のカメラを2つ搭載し、よりリアルに近い色彩表現が可能であるのが大きな特徴となる。

 他にも60倍率のマイクロレンズカメラを搭載し、顕微鏡のように使えるなどの特徴を打ち出している他、米Qualcomm(クアルコム)製のハイエンド向け最新チップセット「Snapdragon 888」を搭載しており性能も非常に高い。非常に充実した機能・性能を備えたフラッグシップモデルとなっている。

 なぜ2社が中国メーカーからの端末調達を強化しているのかといえば、やはり5Gの普及に向けてスマートフォンのバリエーションを増やし、自社の競争力を高めるためだろう。最近の世界的なスマートフォンメーカーの動向を確認すると、中国系メーカーの低価格攻勢に対抗できず多くのスマートフォンメーカーが事業縮小を余儀なくされているのが実情である。対抗できているのは独自路線を貫く米Apple(アップル)と、世界シェア1位の韓国Samsung Electronics(サムスン電子)くらいなのだ。

 一方で、中国系メーカーから距離を置いているのがNTTドコモだ。同社もかつては中国の中興通訊(ZTE)と共同でスマートフォンを開発したり、華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)から端末を調達したりしていたが、いずれのメーカーも米中摩擦の影響により、米国から制裁を受けたことで販売やサポートの面で多くの混乱が生じた。それ以降同社は中国系メーカーの採用に慎重になっているのだ。

 とりわけ懸念されるのが“バラマキ”競争の再燃だろう。ソフトバンクが番号ポータビリティーで転入し、特定プランを契約したユーザーにRedmi Note 9Tを1円/月で販売していることを考えると、今後ライバル他社が電気通信事業法の値引き規制を大きく受けない低価格端末を同様の価格で販売して他社から顧客を奪う競争が再び過熱する可能性も十分考えられる。

 そうした競争に対応できなければ、他社に顧客を奪われる可能性も否定はできない。NTTドコモにとって今後、中国系メーカーとどう付き合っていくかは大きな課題となりそうだ。

3.「本人そっくり動画」普及をNRIが指摘、ディープフェイクの危険も(3.18 日経XTECH)
「その人本人が本当に話しているような新たな動画合成技術が今後大きく普及していく」――。野村総合研究所(NRI)の長谷佳明上級研究員は2021年3月18日、同社が開催した「ITロードマップ 2021年版〜情報通信技術は5年後こう変わる!〜」というセミナーでこのように語った。

 こうした技術は「シンセティック・メディア」と呼ばれる。事前に用意したテキストと人の映像データを組み合わせ、AI(人工知能)がリアルな音声付き動画を作り出すことを指している。

 適用できる業界がエンターテインメントだけでなく、接客や教育など幅広いのが特徴と、「不動産の物件紹介動画や塾などの人気講師の授業動画、データ分析によるその顧客だけのためのニュース動画などが考えられる」(長谷氏)。読み間違いもないので動画の撮り直しが不要、テキストや画像よりも情報が受け取りやすい動画を容易に作成できるといったメリットがある。

 一方で、技術面の進歩だけでなく、実用面で「有名人を装った、ディープフェイクと呼ばれる偽動画が増加する恐れもある」という課題も示した。内容の真偽が確認できないまま動画が拡散すると、個人や組織に深刻な影響を与えてしまう可能性も考えられるという。

4.日本MSとラックがゼロトラスト分野で協業、EDR核にリモートワークの安全対策(3.17 日経XTECH)
日本マイクロソフトとラックは2021年3月17日、端末や通信内容などを信頼しないことを前提とした「ゼロトラスト」セキュリティー分野での協業を強化すると発表した。同日、ラックが日本マイクロソフトの協力を得てまとめた文書「ゼロトラスト時代のSOC(セキュリティー・オペレーション・センター)構築と運用ガイドライン」の無償提供を始めた。

 ラックの西本逸郎社長は「新型コロナ禍でテレワークが急速に普及しており、従来のオフィス勤務を前提に社内だけを守る『境界防御』の考え方が通用しづらくなった。代わりにゼロトラストの考え方でセキュリティーを確保する手法が有効になりつつある。そのための道筋を運用ガイドラインとしてまとめた」と説明した。

 ガイドラインはEDR(エンドポイントにおける検出と対応)ツールの重要性を強調している。西本社長は「ゼロトラストの前提として、エンドポイント(端末)における出来事を詳細に記録するEDRの役割はとても重要だ」と述べた。日本マイクロソフトの河野省二技術統括室チーフセキュリティオフィサーも「Windows 10にもEDR機能を内蔵しており、ライセンスを購入すれば有効化できる。なるべくWindows 10に内蔵しているツール類でゼロトラストセキュリティーを実現する方向を目指している」とした。

5.クラウド3強の売上高が12兆円を突破、営業利益を公表しないのはマイクロソフトだけ(3.16 日経XTECH)
米アマゾン・ドット・コム、米マイクロソフト、米アルファベット(グーグル親会社)、クラウドビッグ3の2020年クラウド売上実績を合算すると過去最高の12兆6183億円(1ドル=107円換算)となった。前年同期より33.0%も成長した。米IDCによると、2020年のITインフラ投資においてクラウド向けが55%を占め、非クラウド向けを初めて上回った。

 ビッグ3の数字を見よう。アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)が29.5%増の4兆8546億円。マイクロソフトのコマーシャルクラウド(Microsoft 365やAzureなど)が33.1%増の6兆3665億円。これは富士通とNECの2020年度合計総売上高見込みの6兆6400億円に匹敵する。筆者の推計ではAzure売上高は51.1%増の3兆1130億円、コマーシャルクラウドの48.9%を占める。アルファベットのグーグルクラウドは46.4%増の1兆3973億円。

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