週間情報通信ニュースインデックスno.1266 2021/03/06


1.スマートホームに落とし穴、AWSやGoogle Homeの停止で家電操作に支障(3.5 日経XTECH)
 「家の鍵を持たずに外出したが、玄関に近づけば自動でドアの鍵が開くから心配ない」「帰宅するタイミングに合わせて照明がつき、エアコンも動き出してちょうどよい室温になっている。お気に入りの音楽も流れる」「空腹になったら『いつものやつを出前で』とスピーカーに話しかけるだけ」――。

 IoT(インターネット・オブ・シングズ)やAI(人工知能)の技術を使って家の中での生活を快適にする「スマートホーム」。スマートホーム用デバイス「Nature Remoシリーズ」を開発・販売するNatureの塩出晴海社長は、「販売個数は年々2倍に増えており、デバイスが浸透してきた」と手応えを語る。

 調査会社のIDC Japanによると、スマートホーム用デバイスの出荷台数は2023年に世界で13億9000万台、2019年から5年間の年間平均成長率は14.4%を見込み、普及の一途をたどっている。この背景には「競争の激化に伴う製品価格の下落のほか、コスト節約や省エネに対する消費者の意識向上などが考えられる」(同社)。

 最近では市販のスマートホーム用デバイスの種類が増え、数千円から入手できる。冒頭に挙げた例も決して大げさではなく、実際にこれらスマートホーム用デバイスを購入して自宅で実現できるようになっている。

 新型コロナウイルス対策による在宅勤務の拡大などで家にいる時間が増える中、快適さをもたらすスマートホーム用デバイスは心強い存在だ。その一方、便利さと表裏一体で、危うさも明らかになってきた。ここ1年ほどでスマートホーム用デバイスにまつわるトラブルが続発しているからだ。

2020年以降に発生したスマートホーム用デバイスの主なトラブル

時期 製品名 事象や原因
2021年2月 「Google Home」など米グーグル製のスマートスピーカー 音声アシスタントサービス「Googleアシスタント」に不具合が発生。音声で家電などがうまく利用できなくなった。理由は不明
2020年12月 「Google Home」など 米グーグルのサービス全般で障害が発生し、同社製スマートスピーカーなどが使えなくなった。障害はストレージの容量割り当ての問題で認証サーバーが停止したため
2020年12月 スマートロック「Qrio Lock」 Qrio Lockアプリがアクセスするサーバーにエラーが発生。ドアなどのリモート施錠や解錠ができなくなった
2020年11月 スマートリモコン「Nature Remo」 家電の電気を消すなどの操作ができなくなった。原因は米アマゾン・ウェブ・サービスが起こした障害の影響
2020年11月 家電をスマート化するデバイス「SwitchBot」シリーズ 同上
2020年4月 調理家電ヘルシオやエアコンなどのシャープ製IoT家電 シャープ製マスクのインターネット販売サイトにアクセスが集中し、サイトがダウン。同じ認証基盤で認証を実施しIoT家電を操作する「COCORO AIR」などのサービスに影響した
2020年1月 スマートリモコン「LS Mini」 Live Smart(リブスマート)製のスマートリモコンが利用しづらくなった。原因はサービスを提供しているサーバーの高負荷

2.研究者2人を解雇した「グーグルAI騒動」、あぶり出されたAI倫理対立の深刻度(3.5 日経XTECH)
米Google(グーグル)のAI(人工知能)研究部門が、AI倫理研究者の解雇を巡って大きく揺れている。BERTのような巨大な「言語モデル」が内包する問題点を指摘しようとした2人の女性研究者が、2020年12月と2021年2月に解雇された問題だ。「論文の社内検閲」に端を発した騒動に見えるが、AI倫理を巡るより根深い社内対立が透けて見える。

 問題が明らかになったのは2020年12月2月(米国時間)のことだ。グーグルでAI倫理の研究チームを率いるTimnit Gebru(ティムニット・ゲブル)氏がTwitterでグーグルから解雇された、と打ち明けたのだ。ゲブル氏はその数カ月前、BERTのような巨大言語モデルに関する様々な問題点を指摘する論文を、米ワシントン大学の研究者らと共同で執筆していた。その論文がグーグル社内のレビューで「社外に公開できない」と判断され、内容の修正などを求められた。これにゲブル氏は反発していた。

 ゲブル氏らによる論文「On the Dangers of Stochastic Parrots: Can Language Models Be Too Big?」はワシントン大学のWebサイトで公開されている。そこで指摘した問題点は、「巨大言語モデルは学習に膨大な電力を消費しており、環境に大きな負荷を与えている」「学習データに存在する偏見(バイアス)によって、AIにもバイアスが生じている」「言語モデルはそれらしく見える文章を確率的に生成しているだけで、言語理解はしていない」といったもの。AI分野ではよく知られた問題点であり、妥当な内容である。

 なぜグーグルはこの論文の外部公開に難色を示したのか。グーグルにおけるAI研究部門のトップであるJeff Dean(ジェフ・ディーン)氏は12月4日(米国時間)にTwitterで声明を発表し、ゲブル氏らの論文は「機械学習に必要となる電力をより少なくする研究努力について触れていない」「言語モデルの偏見を改善するための研究努力について触れていない」ことから、社内レビューを通らなかったのだと弁明した。

 しかしゲブル氏や、論文の共著者の1人で2021年2月にグーグルを解雇されたMargaret Mitchell(マーガレット・ミッチェル)氏の主張を見ていくと、彼女らと会社は全く異なる観点で対立していたことが浮かび上がってくる。

 ゲブル氏やミッチェル氏は、AIのバイアスを解消するには「バイアスの無い組織、プロセスによってAIを開発する必要がある」という考え方を持っている。現在のAIをけん引する巨大IT企業(ビッグテック)の研究開発部門は、白人やアジア系の男性が極端に多く、女性やアジア系以外の有色人種が少ない。現在のAIに性別や人種に関するバイアスが存在するのは、それを開発する組織にそうした偏りがあるからだ、という考え方だ。

 この問題を是正するためにゲブル氏は、黒人のAI研究者を増やそうという運動「Black in AI」を主導してきた。またグーグル社内でも人種的、性別的な偏りを是正するよう訴えてきたようだ。こうした主張や活動を巡る対立が解雇を招いた、というのがゲブル氏やミッチェル氏の主張であった。

 それに対してグーグルは、ディーン氏の弁明からも分かるように、AIのバイアスは技術的に解決可能であるとのスタンスを有している。AIのバイアスは技術的な問題なのか、それとも制度的な問題なのか。この対立こそが、ゲブル氏らの解雇を巡る問題の奥底にある。

 ビッグテックの語るAI倫理は、ゴマカシにすぎない――。そうした主張は以前からあった。ビッグテックがAI倫理に熱心なスタンスを示すのは、AIのバイアスに関する問題は「社内で」「技術的に」解決可能だと主張することで、政府によってAIの研究開発が規制されるのを回避しようとしているからだ。米マサチューセッツ工科大学(MIT)傘下の研究所MITメディアラボに所属していたAI研究者のRodrigo Ochigame(ロドリゴ・オチガメ)氏は2019年12月に、米メディアThe Interceptへの寄稿でそう告発していた。

 AI倫理を巡っては、それを技術的な問題に閉じ込めようとするビッグテック側と、制度的な問題であるとする市民団体や政府による対立構造がある。ロイターなどの報道によれば、グーグルは2021年2月に開いた社員向けの全社集会で、社内における論文のレビュー体制を見直す方針を明らかにしたという。研究者が声を上げるのを認めるだけでなく、その声をどう反映させていくのか。多くのAI研究者がグーグルの行動を注視している。

3.対話不足を理由にテレワークをやめる必要なし、「おいちょっとの電子化」で解決できる(3.4 日経XTECH)
パソコン作業がメインの職場であるにもかかわらず、新型コロナウイルス対策でいったんは始めたテレワークをやめて、出社勤務に戻すケースがあると聞く。コミュニケーション不足の解消が理由だという。出社していれば周囲にいる上司や同僚、部下とすぐに取れていたコミュニケーションがテレワークになると難しくなるからだ。

 一理あるものの、記者はこうしたケースを残念に思う。「コミュニケーション不足の解決策は出社勤務に戻すことだけではない。Web会議やビジネスチャットなどができるコミュニケーションツールの機能を活用していくことも、有力な解決策になる」と考えているからだ。それを意識すれば、テレワークをやめる必要はないと考える。

 コミュニケーション不足という課題の解決策には、Web会議サービスなどを使って上司と部下の個別面談「1on1ミーティング」の実施などがあるが、この記事ではコミュニケーションツールを活用することによる解決策を紹介したい。

 その解決策には名前がある。以前、企業などに向けてテレワーク普及支援に携わっているコンサルタントに取材した際に教えてもらった「おいちょっとの電子化」である。

 出社勤務では、自身で仕事を進めている中で分からないことが出てきたとき、周囲を見回して同僚や部下などの様子を確認。「あの人は話しかけられそうだ」と分かれば、すぐその人の席まで行って声をかけることは多い。「おいちょっと」とは周囲の状況を見て声をかけることを指す。

 この「おいちょっと」はメンバーが互いに離れて働くテレワークの環境下ではやりにくくなる。しかしメールやビジネスチャットなどに備わるプレゼンス機能を使えばテレワーク環境下でもできると、コンサルタントは教えてくれた。プレゼンス機能とは、「連絡可能」「取り込み中」など、各ユーザーの状況を知らせてくれる機能である。

 あらかじめ「プレゼンス機能の表示を、実際の状況に合わせておく」といったチームや部署内でのルールを設定しておく。その上で、コミュニケーションツールが備えるプレゼンス機能と、チャットなどのコミュニケーション機能を組み合わせて「おいちょっと」を電子化するのだ。

 この「おいちょっとの電子化」と同じことを、独自に実践しているテレワーク先進企業の1社が、コニカミノルタジャパンだ。新型コロナウイルス対策として在宅勤務に本格的に取り組んだ2020年度、社員向け研修で、社内で利用しているコミュニケーションツールMicrosoft Teamsの使い方を取り上げた。特に重視していたのが、プレゼンス機能の活用だ。

 コニカミノルタジャパンではさらに、プレゼンス情報に応じて、連絡手段の使い分け方を示していた。「相手の状況に配慮してコミュニケーションを取っていくきめ細かさがテレワークには必要なのだな」と、テレワークならではのマナーの重要性に気付かされた取り組みだった。

 最近は、コミュニケーションツールが備える機能も充実していて、オンライン会議中に使える仮想的なホワイトボード機能や、複数ユーザーが同一ファイルを共同編集できる機能などが利用できるようになっている。

4.MicrosoftがRPAツール、Windows 10ユーザーへ追加費用なしで提供開始(3.3 日経XTECH)
米Microsoft(マイクロソフト)は2021年3月2日(現地時間)、ソフトウエアのロボット(ソフトロボ)で手順が決まったパソコン作業を自動化するRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)ツール「Microsoft Power Automate Desktop」を、Windows 10のユーザーに向けて追加費用なしで提供すると発表した。

 同社が開催中のオンラインイベント「Microsoft Ignite」で明らかにした。Power Automate Desktopについては2020年9月に公開プレビュー版を発表。以来、新機能の追加などを進めてきた。同社サイトからダウンロードでき、日本語のインターフェースも利用できるようになった。

 Power Automate Desktopの特徴はRPAツールとしての機能が充実していることだ。ソフトロボが操作できるのは、Excelなどのファイルやフォルダー、デスクトップアプリケーション、Webのアプリケーションのほか、メインフレームやオフコンを操作するエミュレーターなどだ。

 ソフトロボはローコードで開発できるようにしている。マウス操作で自動化したいパソコン作業は、あらかじめ開発環境に用意された数百種類の操作から選んで設定できる。ユーザーのパソコン作業を自動的に記録してソフトロボの動作手順の設定に生かせる機能も備える。

5.AWS「大阪リージョン」が本格始動、東西の冗長構成で災害対策しやすく(3.2 日経XTECH)
アマゾン ウェブ サービス ジャパン(AWSジャパン)は2021年3月2日、同日からパブリッククラウドサービスAmazon Web Services(AWS)を提供する拠点として「大阪リージョン」を本格稼働させたと発表した。既設の「東京リージョン」に続く国内2拠点目に当たる。

 長崎忠雄社長は「今日は東京リージョン開設10周年を迎える特別な日。大阪リージョンの開設によって、西日本を含む日本の顧客にさらに使い勝手の良いサービスを提供できるようになる」と述べた。

 西日本の顧客は大阪リージョンを利用すれば通信遅延を減らせる。東京リージョンを利用していた既存顧客も、東京と大阪で冗長化したシステム構成を組むことで災害対策をしやすくなる。大阪リージョンだけでも3つのアベイラビリティーゾーン(AZ、電力供給や通信回線などの物理的設備が他のAZと独立したデータセンター群)を持つ。

 AWSでは2021年2月に国内の1つのAZにおける電力トラブルによってシステム障害が発生した。複数のAZを利用する「マルチAZ」構成を組めば、こうした障害への耐性も高まる。

 AWSジャパンはこれまで西日本拠点では「大阪ローカルリージョン」として一部顧客へ限定的にサービスを提供していた。今後は東京リージョンに近い形で幅広いサービスを提供していく。当初は「Amazon WorkSpaces」や「AWS IoT」など大阪リージョンで未提供のサービスがあるが、順次拡充する方針だ。

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