週間情報通信ニュースインデックスno.1264 2021/02/20


1.ローカル5Gで働き方どう変革?三井不とNECネッツが実証する次世代オフィスの姿(2.18 日経XTECH)
 三井不動産とNECネッツエスアイは2021年3〜5月、ローカル5G(第5世代移動通信システム)を活用する実証実験を共同で実施する。大規模オフィスビルにおけるスタンドアロン方式のローカル5Gを用いた実証実験は「国内初」という。

 実証実験は両社が入居する「日本橋室町三井タワー」の5〜6階、11階、22階で実施する。具体的には、(1)VR(仮想現実)空間に設けた仮想オフィスでの共同作業(2)業務にパソコンを用いないPCレスのオフィス環境(3)ロボットやデジタルサイネージを活用したテナント向けサービスの提供やオフィスビル管理――を検証する。

 仮想オフィスは、VRゴーグルを通して利用する。VR空間に執務スペースやコミュニティースペースを用意し、従業員同士が時間や距離、場所の制約を越えて打ち合わせや共同作業といったコラボレーションができるようにする。

 仮想オフィス内で従業員がアバター(化身)を動かしたり、映像を表示したりすることが可能で、5Gの大容量性や低遅延性を生かせる。一般にテレワーク環境では従業員同士のコミュニケーションの取りづらさ、従業員の意欲低下、部下のマネジメントの難しさといった課題を抱えがちだ。仮想オフィスによりこうした課題の解決を目指すほか、共創を促すための環境づくりの効果などについて検証する。

 仮想オフィスの構築・運用には、Synamon(東京・品川)が提供する「NEUTRANS BIZ(ニュートランスビズ)」を利用する。VRゴーグルは米Facebook(フェイスブック)の「Oculus Quest 2(オキュラスクエスト2)」などを用いる。

 

2.AWSの東京リージョンで障害、気象庁のHPが一時閲覧できず(2.20 日経XTECH)
 米アマゾン・ウェブ・サービス(Amazon Web Services、AWS)が提供するクラウドサービスの東京リージョンでシステム障害が発生していることが2021年2月20日に分かった。東京リージョンのアベイラビリティーゾーン「apne1-az1」の一部区画で温度が上昇したことなどが原因とみられる。

 AWSが公開しているシステム状態の一覧ページ「AWS Service Health Dashboard」によると、apne1-az1の一部区画における温度上昇は、冷却システムへの電力供給が途絶えたことで発生したという。2月20日午前4時26分時点で冷却サブシステムの電源が回復し、室温は通常レベルで運用できているが、完全復旧には至っていない。

 気象庁ではホームページが一時閲覧できなくなった。今回のAWSの障害が原因とみられる。バックアップサイトに切り替えたが、警報などの防災情報コンテンツを正しく表示できない状況が続いている。2月24日に公開予定だったWebサイトの利用も急きょ始め、防災関連の情報を発信している。「現時点で完全復旧の見込みは立っていない」(気象庁)。

 

3.警察庁がEmotet撲滅活動へ、IPアドレス2万6000件分の感染情報から利用者に連絡(2.19 日経XTECH)
警察庁と総務省は2021年2月19日、マルウエア「Emotet(エモテット)」に感染したパソコンの利用者への注意喚起を始めると発表した。2021年2月下旬から準備が整い次第、インターネット接続事業者(ISP)を通じて感染パソコンの利用者を特定し、電子メールなどで連絡を取って駆除などを依頼する。

 海外の捜査当局から警察庁に対して、Emotetに感染した機器のIPアドレス約2万6000件分の情報提供があったという。Emotetはメールの添付ファイルを通じて感染を広げるため、感染機器の多くはパソコンとみられる。

 連絡を受けた利用者は各自、Emotetを無効化する必要がある。作業の詳細についてはWebサイトや「NOTICEサポートセンター」の電話問い合わせ窓口などで案内する。

 

4.EricssonのIndustry 4.0欧州戦略 鉱山をDX化、工場をスマート化(2.17 日経XTECH)
スウェーデンEricsson(エリクソン)は2021年2月8日、同社の5G技術を使ったIndustry 4.0推進事例の1つとして、スペイン・バルセロナにある米Fordのエンジン工場でのAGV(automated guided vehicles、無人搬送車)運用試験の様子を自身のニュースサイトで紹介している。試験では、施設内でのAGV群の自動運用管理、人間の動作認識やVRアプリケーションによるAGVの自動操作実験などを実施。Ericssonの5G SAネットワークによるコネクティビティーとエッジコンピューティング、ロボット、AI技術がこれらを支える技術となる。両社は、こうした環境を整備することで、生産ラインの効率化をはじめ、工場倉庫内の物流プロセスやサプライチェーンの最適化、効率化が可能になるとしている。

 同試験は、欧州のさまざまな産業のIndustry 4.0を推進する「5G-INDUCE」イニシアチブの一部として進められている。5G-INDUCEは、5G -PPP(5G Infrastructure Public-Private Partnership)下の研究および革新的技術開発促進計画である「Horizon 2020」の一環となるプロジェクトで、Ericsson、Fordのほか、スペインASTI Mobile Robotics、 Fivecomm、YBVR、Gestoos、ブルゴス大学、バレンシア工科大学、および、米Intelが参加している。ちなみに5G-PPPとは、欧州の5G通信産業発展に向けた、欧州委員会(European Commission)と欧州ICT業界による共同イニシアチブのことである。

 このほかEricssonは2021年2月9日に、ロシアの大手通信事業者MTSと協力してロシアの大手鉄鋼メーカーEVRAZの鉱山にLTE/5G対応のプライベートネットワークを提供、鉱業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を進めていることも発表している。EVRAZでは、2020年からロシア中南部にあるSheregeshskaya鉱山にて、EricssonとMTSによるネットワークとITインフラ整備を推進。鉱業の安全性を高め、作業を効率化し、生産性を高めるためのDX化を進めている。

 このソリューションには音声無線通信、動画ブロードキャスト、緊急通報、指令管理、位置確認、採掘装置の自動制御システムなどが用意されている。現在はLTEで動作するが、アーキテクチャーの大幅な変更を伴うことなく、迅速に5Gへアップグレードできるとしている。

 またEricssonの2021年2月11日付のニュースリリースでは、ギリシャの通信事業者COSMOTEの協力による同国の太陽熱活用製品メーカーCalpakへの構内プライベートネットワーク展開による工場完全自動化についても紹介。ここでは、2つの生産ラインに4G/LTEネットワークを提供。ギリシャGizelis Roboticsの接続型ロボットアームと米PTCの産業用IoT、AR用プラットフォームも活用して、ロボットアームからのほぼリアルタイムなデータ収集と、機械学習とデータ分析による生産監視、予知保全、故障時の専門家による遠隔指導などを実現している。

 Ericssonでは、こうした環境整備により、業務の中断を最小限に抑え、生産性向上、コスト削減、品質の継続的な最適化が可能な生産エコシステムが実現できるとしている。 

5.「VoLTE完全移行にあと3年」 Huawei調査から透ける事業者の本音(2.18 日経XTECH)
 中国Huawei Technologies(ファーウェイ)は2021年2月9日、英国の調査会社GlobalDataの協力を得て実施した調査結果を白書「Voice in 5G: The Long Transition」として発表した。音声通話に関する通信事業者への聞き取り調査を基に、音声通話用ネットワーク開発のトレンドを予測すると同時に、現在直面している課題についても考察。その解決に向けては、収れんされたネットワークの構築が必要と提言した。以下はその概要となる。

通信ネットワークの柱となる音声通話:インターネットを使った各種サービスが続々と提供される現在においても、音声通話はその高い信頼性と安定性から依然として必要不可欠なサービスだと言える。今回の白書でも、調査対象事業者の85%が、5G時代においても音声通話やSMSサービスはデータ通信と同程度かそれ以上に重要だと回答している。

5G音声通話の基礎となるVoLTEとVoNR:今回の調査では、多くの事業者がVoNRの完全な普及には少なくとも7年かかるとしている。また、それまでは、5G環境における音声通話として、高品質な音声サービスが提供可能で、5G NSAネットワークや、周波数リソースの効率的な利用を支援し、VoNRへの円滑な橋渡しも可能なVoLTEが使われるとしている。しかし、そのVoLTEについても、多くの事業者がその完全な普及にあと3年かかるとみている。

収れんされた音声ネットワークの必要性:現在、多くの事業者が、複数の音声ネットワークの運用管理を余儀なくされている。加えて2G、3Gネットワーク用の機器類が寿命を迎え、故障率も高くなってきた。こうした問題には、もはや単なるパッチあてなどの処理では対応が難しい。白書では、簡素化されたアーキテクチャー、リソースの効率的な活用といった技術を使って、異なる世代の共存を可能にする、収れんされたネットワーク環境を構築することで、最小限の投資で運用管理を簡素化できると指摘。こうした環境を基に、新規サービスをより高い信頼性と安定性で提供することで、さらなる収益拡大も可能になるとしている。

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