週間情報通信ニュースインデックスno.1263 2021/02/13


1.9つの自治体で不正アクセスの可能性が明らかに、セールスフォース「設定不備」問題(2.12 日経XTECH)
 セールスフォース・ドットコムが手掛けるクラウドサービスの「設定不備」に起因した不正アクセス被害が、全国の自治体で続々と明らかになっている。2021年2月12日までに、神戸市や千葉県船橋市など少なくとも9つの自治体が不正アクセスの被害の可能性を公表した。いずれの自治体も、岡山市に本社を構えるIT企業、両備システムズのシステムを利用していることが日経クロステックの取材で分かった。

 被害の可能性のお知らせを確認できたのは奈良県香芝市と千葉県木更津市、神戸市、愛媛県西条市、兵庫県高砂市、大阪府寝屋川市、東京都東村山市、船橋市、茨城県守谷市の9つの自治体。いずれも住民向けのサービスに両備システムズのシステムを活用している。サービスの利用者数を単純合算すると11万人に及ぶ。

 両備システムズはセールスフォース製品を使い、自治体向けに住民用の予約システムや、案内システムを提供している。同社は2月10日、自治体向けシステムにおいて外部の第三者による不正アクセスが確認されたと公表していた。同リリースによると、すでに設定変更を済ませておりそれ以降の不正アクセス被害は確認していないという。

 セールスフォースのクラウドサービスの設定不備による不正アクセスを巡っては、すでに楽天やPayPay、イオンなどの被害が明らかになっている。

2.三井住友銀の次期勘定系は「わずか500億円」、投資抑制へ打った布石とは(2.12 日経XTECH)
「これまでの取り組みの総和だ」。三井住友銀行(SMBC)の増田正治取締役専務執行役員は次期勘定系システムをこう表現する。プログラム資産を検証したうえで、ここ10年あまりに打ってきたIT面の布石を生かしているのが特徴だ。

 同システム構築の投資額は500億円。年間に1000億円規模をIT関連に投じるとされるメガバンクにあっては決して多くはない。みずほ銀行が構築した新システム「MINORI」の開発額は4000億円台半ば、三菱UFJ銀行が勘定系を統合した際の費用は3300億円だ。

 「わずか500億円」で済ませられるのはなぜか。最大の理由はプログラム資産にほぼ手を付けず、ハードウエアの更改とアーキテクチャーの見直しを主体にするからだ。三井住友銀は勘定系の刷新に当たり、プログラム資産の作り直しを含めた全面刷新も検討した。可視化ツールを使ってソースコードを調べ、第三者にも評価してもらったという。

 その結果、プログラムの肥大度や複雑さ、主要プログラムの稼働率などの評価指標はいずれも良好。プログラム資産はブラックボックスになっておらず「コントロール可能な範囲にある」(三井住友銀の西孝芳システム統括部部長)と結論づけた。仮に全面刷新を選んでいたら数千億円かかると見積もる。

 次期勘定系システムを安価に構築できるのには、もう1つ理由がある。現行システムからの移行を見越して開発してきた「検証済み技術」を活用し、開発費を抑えているのだ。「これまで打ってきた布石を生かす」。西部長はこう説明する。同社は現行の勘定系システムを「第4次オンライン」と呼ぶ。SOA(サービス指向アーキテクチャー)の全面採用やバッチ処理のオンライン化など、先進的な仕組みを盛り込んだシステムを構築したとの自負からだ。

3.ローカル5Gの拡張周波数帯で初の免許付与、NECと富士通に(2.10 日経XTECH)
総務省関東総合通信局は2021年2月9日、NECと富士通に拡張周波数帯のローカル5G無線局免許を付与した。ローカル5G用の周波数は2020年12月に拡張され、新たに4.7ギガヘルツ帯が使えるようになった。28ギガヘルツ帯も使える範囲が大幅に広がっている。

 NECは4.7ギガヘルツ帯のSA(Standalone)構成で、設置場所は東京都港区の本社と川崎市の玉川事業場。4.7ギガヘルツ帯のローカル5G免許付与と、SA構成でのローカル5G免許付与は全国初である。用途は顧客との共創を通じたローカル5Gユースケースの創出としている。

 富士通は28ギガヘルツ帯の拡張周波数を使用し、NSA(Non Standalone)構成を採用。設置場所は栃木県小山市の小山工場である。28ギガヘルツ帯の拡張周波数における全国初の免許付与となる。用途はローカル5Gを活用したコネクテッドファクトリーの実践である。

 関東総合通信局は同日までに、NTT東日本へ「地域課題解決型ローカル5G等の実現に向けた開発実証」で用いるローカル5G実験試験局の免許を付与した。実証内容は「eスポーツ等を通じた施設の有効活用による地域活性化の実現」である。北海道旭川市の「ICTパーク」と秋葉原の「eXeField Akiba」の2拠点で、ローカル5Gとeスポーツイベントを活用した実証を進めるという。

4.今さら聞けない、クラウドコスト削減の基本5カ条とは(2.9 日経XTECH)
 クラウドの利用経験が浅い企業にとっては、初歩的なコスト削減策から講じる必要がある。米Amazon Web Services(アマゾン・ウェブ・サービス)の「Amazon Web Services(AWS)」、米Microsoft(マイクロソフト)の「Microsoft Azure」のエキスパートへの取材を基に、多くの企業が陥りがちなコストの無駄とそれを防ぐ基本5カ条を示す。

 クラウドのコスト削減に詳しい、サーバーワークスの佐竹陽一サイトリライアビリティエンジニアリング部ソリューションアーキテクト(SA)は「コスト分析によって、コスト削減の対象に優先順位を付けるべき」と指摘する。これが第1条だ。

 AWSならコスト管理サービスの「Billing and Cost Management」でサービス別の課金実績を見る。「多くの企業では仮想マシンかリレーショナルデータベースがトップだ。これらを優先する」(佐竹SA)。Azureでも「Cost Management」で同様のことができる。

 第2条はコスト分析ツールを使いこなすことだ。AWSとAzureはそれぞれ純正のコスト分析ツールを提供している。AWSの「Cost Explorer」を使えば、1時間単位のコスト推移を分析して、特定の時間帯に課金が集中しているといった実態を把握しやすい。AWSの「Trusted Advisor」は利用実績を基によくあるコストの無駄を自動で指摘し、解決策を提示する。

 Azureは「Cost Analysis」というコスト分析ツールを提供している。Azureに詳しい、Colorkrew(カラクル)の秋山康平クラウドソリューションアーキテクトは「Cost Analysisはコスト削減のポイントを分かりやすく提示する」と話す。Cost Analysisを使うことで、仮想マシンの設定を変えたときのコストなどをシミュレーションしたり、推奨構成の提示を受けたりできる。

5.米中のEV開発に怒濤の動き、テスラ初の通期黒字化で成功が鮮明に(2.8 日経XTECH)
米電気自動車(EV)大手のテスラが好調だ。「アップルカー」登場の可能性が報じられる中、米中でEVに関連する動きが活発になっている。

 テスラは2021年1月27日、同社のEV販売が今後数年間、平均50%の伸びで推移するとの見通しを明らかにした。

 同日発表した20年10〜12月期の決算は売上高が前年同期比46%増の107億4400万ドル(約1兆1200億円)、純利益は同2.6倍の2億7000万ドル(約283億円)で、6四半期連続の黒字を達成した。また、20年通期の純損益は7億2100万ドル(約755億円)の黒字。上場以来通期ベースで初めて黒字となった。

 20年のEV年間販売台数は49万9647台(確報値)。年初に目標としていた「50万台超」を若干下回ったものの、前年比36%増を達成。過去最高を更新した。

 中国での生産能力の拡大や、コロナ禍でもいち早く経済を回復させた同国での需要急増が奏功したようだ。米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が引用した全国乗用車市場信息聯席会(CPCA)の統計によると、テスラは20年に中国で13万8000台超販売した。同国で20年に販売されたEVは111万台。テスラは約12.5%を占めた。

 上海工場はテスラが米国外に初めて設けた「ギガファクトリー」だ。ロイターによると、20年10月には同工場で生産したモデル3をドイツやフランス、イタリア、スイスなど欧州10カ国以上に輸出すると明らかにした。同工場の年間生産台数は20年10月末時点で25万台。ただ、同社は最終的に50万台を生産する計画だという。

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