週間情報通信ニュースインデックスno.1259 2021/01/16


1.店内を走行し在庫切れや値札ミスを検出、日本ユニシス製小売りAIロボットの実力(1.14 日経XTECH)
夜間にロボットが店内を自律走行し、商品棚の在庫切れや売価違いなどをチェック。店員は翌朝、ロボットのリポートを参考に効率的に商品棚を整理整頓――。人手不足が深刻な小売業界において、救世主となる可能性を秘めたロボットが登場した。

 東京・錦糸町駅にほど近い大型スーパー。ここでは閉店後、暗くなった店内をカメラやセンサー、AIを搭載したロボットがぐるりと巡回する。撮影した商品棚の画像を解析して、在庫切れや値札の表記ミスなどを店員に知らせるためだ。同店で活躍しているのは、日本ユニシスが2020年12月に提供を始めた小売業向け人工知能(AI)ロボット「RASFOR(ラスフォー)」である。

 「単調な作業をロボットが代替することで、小売業の労働力不足を解消する狙いがある」。日本ユニシスの大熊義久デジタルアクセラレーション戦略本部事業開発部第一グループリーダーはこう語る。

 RASFORは「カスミ」「マルエツ」や関東エリアの「マックスバリュ」などを展開する食品スーパー大手のユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス(USMH)の協力を得て開発した。村田機械の自律走行技術やニコンシステムの撮影技術を取り入れ、画像解析はオープンソースソフトウエア(OSS)を使い、日本ユニシス独自のアルゴリズムを組んだ。

 すでに一部店舗で利用を始めたUSMHでは、開店前の商品棚の確認作業を少なくとも30〜60分削減する効果を得ているという。「各機能の精度にばらつきがあるものの、高いものは90%以上で安定している」。USMHの磯哲章デジタル本部部長アナリティクス担当は手応えを口にする。

 利用料金は月額数十万円。日本ユニシスの試算によると、RASFORの導入によって労働力不足の解消などにつながり、月50万円程度の費用削減効果を生むという。

 同様のロボットは米大手小売業で導入が進んでいるが、「海外製のロボットは通路が狭い日本の店舗には合わなかったため、国産ロボットの開発に踏み切った」と大熊氏は説明する。日本ユニシスによると、小売業に特有の業務を代行するロボットが商品として販売されるのは国内で初めてという。USMHは2022年2月期に、カスミの大型店舗を中心に5〜10店舗へRASFORの導入を計画しているほか、マルエツやマックスバリュ関東の店舗への導入も検討中だ。これらを含め、日本ユニシスは2023年3月期までの累計で300台の導入を目指す。

2.まだ見ぬ個人が世界を変える、2021年のインターネットを語る難しさを痛感した(1.15 日経XTECH)
今回の記事を書くにあたって2021年の予測を考えてみた。結論を先に書くと2020年に引き続き不確実性が高すぎて、よく分からないという結論に至った。よく分からないことこそがインターネットの魅力だという意味である。

 2020年は新型コロナウイルスの問題が大きくなって予測不可能な展開に追い込まれた。現時点の国内においても、都市部で第三波による緊急事態宣言が行われている。米国ではドナルド・トランプ大統領に関して、Twitter(ツイッター)がトランプ大統領のアカウントを「BAN」したり、Google(グーグル)やApple(アップル)がトランプ支持者が利用しているSNSの「Parler(パーラー)」のアプリ配信を停止したりした。PerlerをホストしているAWSも、利用規約違反でサービス提供を停止するなど、世界情勢の変化にWebサービスが巻き込まれている。

 今のWeb系のスタートアップやベンチャー企業が成長している要因として、10年前のインターネットの状況とは違う要素が存在する点を無視できない。筆者が勤めるBASEも同様だ。20年前から群雄割拠だったEC(電子商取引)の分野で後発ながらも顧客に支持されている理由として、モバイルの台頭でインターネットの利用環境が変わり、多くの人がモバイルとSNSを起点にインターネットを使うようになったことが否めない。つまり、従来の老舗サービスが興り成長したタイミングではそれほど魅力的ではなかったモバイルというタッチポイントが急成長したからこそ、そのタイミングで市場に食い込んだ会社が成長したと考えることができる。

 YouTuberやインスタグラマー、さらにBASEを使っていただくお店もそうだが、昨今、インターネットを活用して成功するケースの多くはSNSの活用に成功している。今ほどネットユーザーの多様性が注目されなかった時期は、ソーシャルメディアを活用するインフルエンサーの多様性も影響度もさほど高くなかった。従来も代表的なインフルエンサーなどと言われてメディアのインタビューに答えている人が存在していたが、代表的な人を指名できるということは結果として対象世界の狭さを示していたのだと思う。

 今となってはインフルエンサーは格段に多様化している。自分の知らない人がマイクロインフルエンサーとして、配信アプリやインスタグラム、ブログサービスなどのそれぞれのメディアで支持を集めたり生計を立てたりして、個人がネットで活躍する可能性が広がった。BASEのサービスとしても、BASEを活用しているお店を探すことが難しいことは特徴である。多数のEC店舗が集まったモールという分かりやすい形態に依存しておらず、ランキングで序列化していないことが挙げられる。

 Twitterやインスタグラムのユーザーの面白いところとして、1つのアカウントに自分のアイデンティティーを全ては出さずに、様々なサービスへ適切に出し分けしている点が挙げられる。アイドルなどにとどまらず、飲食店の店員やお店の店長などそれぞれの立場に根ざしたアイデンティティーを使い分け、直接ファンとつながってリアルな集客に寄与している姿も増えた。かつてO2O(オンライン・ツー・オフライン)と言われた領域に近い概念が、人と人とのつながりを通じてロングテールネットワークを形成し、多様性のある形でスモールビジネスに寄与しているのは非常に興味深い。

 つまりこれからの肝は、法人ではなく個人に近いアイデンティティーのブランド化なのである。法人という看板は、個人に近いアイデンティティーをつかさどる属性として活用される。それを悪用したのがバイトテロなどをはじめとするSNS上の騒動だ。ロイヤルティーのないままアルバイト従業員を活用しているこれまでのビジネスのやり方の悪影響が出た事例だと思う。

 ただ、あるアイデンティティーが個人事業主なのか、企業人なのか、この概念は非情に曖昧である。総タレント化と言っても過言ではない。SNSを本当に活用する能力は、大企業の社員のままでは得られないだろう。個々の人材が自らの魅力を育み、情報発信能力を鍛える必要がある。地元にUターンしたり地方に移住したりして、将来的に地方創生などに寄与することを期待されるケースもあるだろう。筆者の知人も東京から沖縄に移住してファッションブランドを展開する人が出るなど、やりやすいところから変化が起き始めている。

 大企業に所属することで人生が成功するスキルから、SNSを活用して個の関係性を成立させ、生計を立てていくスキルが存在感を増す動きは少しずつ増えている。これらの動きは電通や博報堂などの大手広告代理店から生まれるのではなく、Twitterやインスタグラムというこれまでのエリートの序列からは無関係なメディアを通じて徐々に進行していく。

 もう少し言うと、アーリーユーザーは高学歴などの社会的なエリートとは限らない。SNS活用の巧拙と学歴には相関がないからだ。高学歴な人でも構わないが、単純に相関がないだけのことである。個人的にはSNS巧者の人材がより影響力を高めて、数年後に大きな影響をもつ動きが広がることを期待する。

 一方で、多くの人の意思がインターネットに投影されることで様々な弊害も生まれている。あまりに多くの人の本音がインターネット上にアウトプットされる過程で、ヘイトスピーチが生まれたりささいな行き違いで炎上したりする問題が一例だ。リアリティーショーの出演者がSNSでたたかれたことをきっかけとして自死してしまう事件もがあった。虚と実の使い分けを失敗すると自分自身の中にSNSが入りすぎてしまう問題もあるのだろう。

 いずれのケースもSNSという関心のネットワークを通じて情報の価値を増幅させ、意図的かどうかに関わらず影響力が大きくなったケースと考えられる。トランプ大統領のアカウントが停止されてしまったのも、言論の自由に対する不利益が大きくなった結果、止めざるを得なかったと言える。それを不安視するかはともかく、SNSの影響度が大きくなったことを示している。

 昔からネットユーザー間のあつれきは存在していた。例えば女子高生の写真の背景に写っている電柱の画像から、ネットユーザーが実際の場所を特定するケースだ。インターネットに人が集まった結果として生み出す力をまざまざと感じさせる。ただ、以前なら「変わった人たちの趣味」で済んでいたものが、政治の世界や国レベルにまで影響が広がると、かえって閉塞感を感じてしまう自分がいる。少なくとも「インターネットの価値が上がってよかったですね!」と手放しでは言えないというのが2021年初頭の印象である。

 仕事においては起きうるあらゆることをリスクファクターとして捉え、自分たちに影響がないようにパートナー企業と連携を取って、新しい価値をユーザーにもたらす必要がある。



3.2021年は勘定系が変わる、スマホ専業「デジタルバンク」が地銀主導で相次ぎ開業(1.14 日経XTECH)
2021年はスマートフォン経由で金融サービスを提供する「デジタルバンク」が日本にも続々登場する。デジタルバンクは欧州が先行するが、日本でもネット企業や地方銀行が開業を急いでいる。銀行を黒子として支えてきた勘定系システムのあり方も大きく変わることは間違いない。

 デジタルバンクは銀行免許を取得したうえで、スマホ経由で預金や決済といったサービスを提供する企業を指す。リアル店舗は持たず、既存の銀行と比べて商品やサービスを絞り込んでいることが特徴だ。

 自前で用意する商品・サービスは最小限に抑える一方、足りないピースは異業種連携で埋める。API(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)を介して異業種企業の商品・サービスを取り込み、自社のものと組み合わせて提供する。

 デジタルバンクは欧州が先行しており、特にスタートアップ企業ながら銀行免許を取得して金融サービスを提供する「チャレンジャーバンク」が台頭している。英レボリュート(Revolut)などが代表例だ。

 日本では地銀がセカンドブランドとしてデジタルバンクを新たに設立するケースが増えている。代表例がふくおかフィナンシャルグループ(FG)の「みんなの銀行」で、2021年5月のサービス提供開始を目指している。2020年12月に銀行免許の取得に関し、金融庁の予備審査も終えている。

 ふくおかFGは九州が地盤だが、スマホ主体のみんなの銀行は地理的な制約を乗り越えやすい。ふくおかFGの横田浩二取締役執行役員(みんなの銀行頭取)は「対象顧客がいるのは関東圏になってくると思う。我々は九州に根ざして事業をしてきたが、地理的な壁はもうない」と話す。

 同じ地銀勢では、東京きらぼしフィナンシャルグループ(FG)が関係当局の許認可などを前提に、2022年1月ごろのデジタルバンク開業を目指している。2020年10月にデジタルバンクの設立に向けて準備会社を設立した。

4.日本国土の「デジタルツイン」本格活用が進む、防災や観光にどう使う?(1.12 日経XTECH)
 IoT(インターネット・オブ・シングズ)やシミュレーションなどを用いて物理空間の環境を仮想空間上で再現する「デジタルツイン」。それを日本の国土に適用して都市開発や防災、観光などに役立てる取り組みが2021年に加速する。基盤の整備を進め、2022年度から行政や企業が本格的に活用できるようにする。日本におけるデジタルツイン活用の起爆剤になりそうだ。

 デジタルツインはリアルタイムで高い精度のシミュレーションが行えることから、製造業の製品開発や生産設備の保守メンテナンスなどでの活用が始まっている。今後は製造業以外にも活用の場が広がる。そのなかでも注目されているのが、国土交通省が整備を進めるデータ連携基盤「国土交通データプラットフォーム」だ。

 例えば、都市の人流データを解析して災害時の避難経路を決めたり、日照や風などの気象データを解析してヒートアイランド対策を検討したりするといった活用を見込んでいる。民間企業が自社のデータと組み合わせて、業務の効率化やサービス開発などに活用することも可能だ。

5.GAFAトップのSNS投稿をマイニング、浮かび上がった2つの言葉(1.12 日経XTECH)
2回目の緊急事態宣言が発出され、行動に制限がかかる。自宅勤務の人は多いだろう。筆者も主に自宅で勤務している。仕事しやすい環境を整えるため、あれこれと買い物をした。リアル店舗に加え、米アマゾン・ドット・コム(Amazon.com)の会員制プログラム「Amazon Prime」を利用した。

 音楽定額サービス「Amazon Music」も契約した。作業中、静かなピアノ曲などを聴きたかったからだ。

 こうした行動変容が起これば、アマゾンの成長が止まらないのもうなずける。アマゾンは2020年の年末商戦のEC(電子商取引)販売が過去最高になったという。世界で雇用する従業員は100万人を超えた。

 創業者にして経営者のジェフ・ベゾス最高経営責任者(CEO)は、何を思っているのだろうか。強い会社を維持していくためには、強い意思があるに違いない。不安な年明けとなった今、同氏の言葉がヒントになるのではないか。そう思い、同氏の発言を集め、ユーザーローカルが提供するテキストマイニングツール「AIテキストマイニング」にかけてみた。

 同氏が利用するSNSのインスタグラムから過去半年間(2020年7月〜直近)の投稿(10件)をマイニングし、名詞/動詞/形容詞の3種類についてよく使われた単語トップ5をまとめた。

ベゾス氏の頻出単語(インスタグラムより)
(ユーザーローカルの「AIテキストマイニング」を利用して抽出、以降同じ) 名詞 動詞 形容詞
1 fund make first
2 climate excite lunar
3 team elect future
4 gradatimferociter open best
5 resource name world
 少ない投稿数に現在の関心が強く表れた格好だ。名詞の「fund」はベゾス氏が始めた基金「Bezos Earth Fund」、「climate(気候)」はアマゾンが2019年に共同調印した「The Climate Pledge」を指す。後者は2040年までに二酸化炭素排出量を実質ゼロとする気候変動対策に関する誓約で、20億ドルを拠出するという意欲的な取り組みだ。

 ベゾス氏の使う動詞でトップ5に常に現れるものは「make」(インスタグラムを基にしたランキングも含む)。本稿に表は載せていないが2020年の手紙も調べたところ、動詞の第2位に入った(1位は「help」)。makeには幅広い意味があるが、主なところで「つくる、製造する、準備する」がすぐ思い浮かぶ。形容詞の第1位「new(新しい)」と合わせて考えれば、新しい事業をつくる、それによって何かを生み、影響を及ぼす行為が連想できる。起業家らしく、創造への傾倒を感じさせる。

 同様の方法でそれぞれのトップの投稿をまとめた。グーグルのスンダー・ピチャイCEO、フェイスブックのマーク・ザッカーバーグCEO、アップルのティム・クックCEOである。

 トップに共通する単語が浮き彫りになった。「new」と「help」である。新しい物事を技術を活用して生み出し、人々や地球環境をヘルプする。これこそがテック企業のトップが発するメッセージだろう。

 新規サービスや製品を紹介するのが彼らの仕事の一部なので、当然の結果かもしれない。だが自分事として考えると、新しい取り組みを明らかにし、周囲を手助けする気概を常に持っているか問うてみる価値はある。

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