週間情報通信ニュースインデックスno.1258 2021/01/09


1.緊急事態宣言で出社制限強まる、それでもNEC・日立・富士通ににじむ平静(1.8 日経XTECH)
新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、政府は2021年1月7日に東京、千葉、埼玉、神奈川の1都3県を対象とする緊急事態宣言を発令した。菅義偉首相が話した4つの制限のうちの1つが勤務者の出社だ。政府はテレワークの実施により、出勤者数7割減を掲げている。

 宣言を受けてIT大手はどう対応するのか。日経クロステックはIT大手各社に緊急アンケートを実施し、出社方針などを調べた。

 「出社率を15%以下に引き下げる」。日立製作所は緊急事態宣言が出ることを見越し、2021年1月6日にそれまでよりも出社率を下げる方針だ。前回(2020年4月)の緊急事態宣言ごろから同社の出社率は30%程度で推移していたという。2度目の今回は「宣言の発令地域では『できる限り在宅勤務』から『原則在宅勤務』へと条件を厳しくすることで出社人数を減らす」(日立広報)。

 出勤以外にも、宣言の発令地域を行き来する出張や地域をまたぐ出張も原則禁止とした。社内外との会食や懇親会も厳しく制限しているという。

 富士通やNECもこれまで以上に在宅勤務の徹底を図っている。富士通広報は「在宅勤務の徹底を2021年1月7日に改めて社員に通知した。出社率も最大でも25%程度にコントロールする」と回答。NECは「出社率を定めていないが、本社の出社率は2割台に抑えられている」(広報)とした。

NEC 在宅勤務の徹底を2021年1月6日に全国の社員に通知。出社率の目標は定めていないが、本社は2割台の出社率になっている 前回の緊急事態宣言の前から制度やITシステムといったテレワーク環境の整備に着手していたため、大きな変化はない

日立製作所 可能な限り在宅勤務としてきたが、宣言発令地域では原則在宅勤務に強める。日立製作所(1都3県)で30%ほどで推移している出社率を15%以下に下げることを目標にしている 前回より業務への支障は減っている。社内で物理的なハンコを利用せずに済むシステムを導入したり、シンクライアント接続設備の増強など在宅勤務環境を改善したりしたため

富士通 在宅勤務の徹底を2021年1月7日に改めて社員に通知。出社率を最大でも25%程度にコントロールする。在宅テレワーク勤務が困難な場合も、ソーシャルディスタンスの確保などで安全を保つ コミュニケーションツールの利用が浸透するなど、富士通の働き方改革である「Work Life Shift」が進んだことにより、混乱は生じていない

2.「あの事故を防げていたかも」、日本製鉄がNEC製AIを採用した訳(1.8 日経XTECH)
 日本製鉄は、AI(人工知能)による設備の状態監視や異常予兆検出に本格的に取り組む。設備の老朽化で未知の不具合が増加しており、しきい値管理などの従来型手法では事故を防ぎきれなくなってきた。未知の不具合にも強いAIの採用で、事故の未然防止に挑む。

 「熟練者も経験したことのないような不具合が増えている」。老朽化する製鉄所の課題について、日本製鉄デジタル改革推進部部長兼総務部上席主幹の星野毅夫氏はこう説明する。従来は、熟練者が設備の稼働状況や過去の経験に基づいて予兆を捉え、未然に防いでいた。不具合が発生しても、比較的短時間で原因を特定できていた。ところが、最近は予兆検出や原因特定が難しくなっているという。

 従来は主にしきい値管理で設備の状態を監視していたが、その限界も見えてきた。複雑なシステムでは、幾つかのパラメーターがしきい値を超えても全体としては正常に稼働していることもあるし、逆にしきい値を超えていなくても全体としては異常ということもある。それでも従来は熟練者の判断で安全と生産効率を両立させてきたが、設備の老朽化で苦戦を強いられるようになってきた。例えば、あるパラメーターがしきい値を超えた場合、それが単なる経時変化として無視して構わないものなのか、それとも不具合の予兆なのか、熟練者でも判断が付きにくいのだ。

 設備の老朽化によって、熟練者の知見に頼るだけでは状態監視や異常予兆検出が難しくなったことから、それを補う手段として日本製鉄はAIの活用に踏み切った。採用したのは、NECのAIソフト「インバリアント分析」である。同ソフトは、過去の正常データを学習し、正常モデル(正常の定義)を自動で作成する。正常モデルから逸脱した状態は全て異常と判定する。これによって、未知の不具合にも対応する。異常データを学習する方式のAIソフトも検討したが、この方式だと学習させた既知の不具合には強くても未知の不具合に弱い。この違いがインバリアント分析を採用する決め手となった。

 検討段階で星野氏ら日本製鉄のメンバーを驚かせたのは、インバリアント分析がかつて実際に発生した不具合の予兆を捉えたことだった。同社が過去の正常データを学習させた上で不具合発生前後のデータを入力すると、約2日前の時点で予兆を検出したという。

3.自宅ネットが危ない、セキュリティーベンダーが2021年の脅威を予測(1.6 日経XTECH)
2020年は多くの企業でテレワークの導入が進み、ビデオ会議ツールのセキュリティー問題やVPN(仮想私設網)製品の脆弱性を突く攻撃が発生した。マルウエアの「Emotet(エモテット)」が再び猛威を振るった年でもあった。

 それでは2021年はどのようなサイバー攻撃が見込まれるのだろうか。セキュリティーベンダー各社の予測を見ていこう。

 トレンドマイクロと米FireEye(ファイア・アイ)の日本法人が2021年のセキュリティー脅威に挙げるのはテレワーク環境への攻撃だ。トレンドマイクロは2020年12月に発表したリポート「2021年セキュリティ脅威予測」で、ホームネットワークが新たな踏み台になる可能性を指摘した。

 2021年はテレワークの普及に伴い、自宅で働く機会が増える。しかし自宅のインターネット接続環境は企業ネットワークほどセキュリティーが強固ではない。修正パッチが未適用の端末やネットワーク機器が存在する可能性もある。攻撃者は脆弱性がある端末や機器を乗っ取り、同じネットワーク内の別のデバイスを侵害する。これにより最終的に企業が攻撃を受ける危険性があるという。

 トレンドマイクロのリポートでは、攻撃者が脆弱性のあるルーターやデバイスをハッキングし、乗っ取った機器のアクセス権を別の攻撃者に販売するビジネスを展開してくると予想。アクセス権を購入した攻撃者が企業の役員やIT管理者のホームネットワークなどにアクセスする可能性があるとした。

 ファイア・アイが2020年11月に発表したリポート「グローバル・リセット:サイバーセキュリティ予測2021」では、ビデオ会議ツールで利用するWebカメラのセキュリティーや従業員の代替として配置される産業用ロボットの脆弱性を指摘した。テレワークで業務を進める際は、ホームネットワークのセキュリティーを強固に保つだけではなく、パソコンに接続するデバイスにもセキュリティー対策が求められそうだ。

 2020年は標的型のランサムウエアが猛威を振るった年だった。ファイア・アイのリポートによれば、2021年も「ランサムウエアは拡大を続け、攻撃者が組織の重要な資産を狙う事例が増える」という。米Fortinet(フォーティネット)も同様に2021年はランサムウエアが拡大すると予測する。

4.日本企業9割以上はDX未達も「想定内」の真意、2021年は推進元年に(1.5 日経XTECH)
自社のDX推進状況を自己診断した国内223社の9割以上はDXと呼べるレベルに達していない――。経済産業省が2020年12月28日に公開したデジタルトランスフォーメーション(DX)の加速に向けた研究会の中間報告書「DXレポート2(中間取りまとめ)」で、そんな現状が明らかになった。ただ、同研究会の座長を務める南山大学の青山幹雄教授は「結果は想定内。2021年はDX推進元年の年になる」と強調する。

 同報告書はDXについて、「変化に迅速に適応し続けること、その中ではITシステムのみならず企業文化(固定観念)を変革することがDXの本質であり、企業の目指すべき方向性」としている。

 経産省は2019年7月に「DX推進指標」を策定。DXの成熟度を「レベル0(未着手)」「レベル 1(一部での散発的実施)」「レベル2(一部での戦略的実施)」「レベル3(全社戦略に基づく部門横断的推進)」「レベル4(全社戦略に基づく持続的実施)」「レベル5(グローバル市場におけるデジタル企業)」の6段階で評価する。DXに取り組む企業は推進に当たって現状を把握したり、目標を設定したりするのに活用できる。

 青山教授は「まずはレベル3が目標」と話す。同報告書はDXを企業文化変革の取り組みと位置付けており、全社レベルかつ戦略的に取り組む必要があるとしているからだ。ただ、2020年10月時点で223社が自社のDX推進状況について自己診断した結果を情報処理推進機構(IPA)が分析したところ、全企業の平均レベルは1.5だった。92%の企業がレベル0の「未着手」や、レベル1や2の「一部での実施」にとどまっていた。

 同じく青山教授が座長を務める経産省の研究会は2018年9月に「DXレポート」を公表し、企業の基幹系システムのブラックボックス化などの課題を指摘した。「危機感があまりにもなかった」(青山教授)日本企業に対し、警鐘を鳴らした格好だ。その後、経産省はDX推進ガイドラインやDX推進指標を策定するなどして企業のDX推進を支援してきた。

5.2021年のモバイル業界を占う 「携帯料金値下げ」と「5Gの拡充」はどこまで進む?(1.9 ITmedia)
料金値下げや5Gのスタートに沸いた2020年だが、どちらも道のりは半ばだ。ドコモのahamoや、ソフトバンクのSoftBank on LINEがスタートするのは3月で、大容量プランの値下げもまだ発表されただけの段階。KDDIの対抗策も、現時点では打ち出されていない。第4のキャリアである楽天モバイルや、MNOとの料金差が縮まりつつあるMVNOがどう対抗するのかも、気になるポイントといえる。

 一方で、5Gのエリアも、まだ十分とはいえない。2020年末から、KDDIが4Gの周波数転用を開始するなど、エリア拡大の兆しは見えるものの、ユーザーが本格的に活用できるようになるには、まだ時間がかかる。2021年には“真の5G”とも呼ばれるSA(スタンドアロン)方式の5Gが開始されるなど、今後も進化は続いていく。エリアの広がりとともに、端末のバリエーションも今以上に広げる必要がある。2021年は、2020年に積み残された課題を解決する年になるかもしれない。

 3月には、ドコモとソフトバンクの2社が、オンラインに特化した新料金プラン、新ブランドをスタートさせる。ドコモのahamo、ソフトバンクのSoftBank on LINEは、いずれも料金は2980円(税別、以下同)で、データ容量は20GB。音声通話が5分間無料になる点も同じだ。どちらも原則として店舗では受け付けず、サポートもサイトやアプリを通して行う。ドコモはahamo用の専用アプリ、ソフトバンクはLINEという違いはあるが、店舗維持やサポートにかかるコストを圧縮して、低価格な中容量プランを提供するところが共通点といえる。

 もともとKDDIは、オンラインに特化したMVNOを2021年春ごろに立ち上げる予定だった。シンガポールに拠点を構えるCircles.Lifeとの協業で、KDDI Digital Lifeを設立。eSIMを武器に、デジタルネイティブ世代と相性のいい新ブランドを展開する。ただ、ahamoやSoftBank on LINEは、どちらもMNOとしてドコモやソフトバンクが直接運営する体制を取る。MNOとして展開した方が、相互接続による帯域不足などを心配する必要がなく、混雑時のスループットが安定するからだ。KDDIだけがMVNOになると、少々分が悪くなってしまうため、この方針を変更する可能性もある。いずれにせよ3月以降、MNO間のオンラインでの競争は激化しそうだ。

 MNOの相次ぐ値下げに対し、第4のキャリアとして2020年4月に本格参入を果たした楽天モバイルや、MVNO各社も何らかの対抗策を講じる必要が出てくるだろう。楽天モバイルは、容量無制限で2980円を打ち出している一方で、料金プランが1つしかないため、中容量や小容量プランが必要なユーザーのニーズを満たせていないからだ。エリアも、他の3社に見劣りするため、同じ2980円であれば、ahamoやSoftBank on LINEに移るユーザーも出てきてしまうだろう。

 一方で、MVNO側も、対抗策を打ち出していく必要がある。ahamo発表直後に、日本通信が1980円の「合理的20GBプラン」(ahamo開始までは16GB)をスタートさせたが、ここに追随するMVNOも出てくるだろう。MVNOが主力とする3GB前後の小容量プランも、値下げに踏み切る必要が出てくるかもしれない。現状では、音声通話対応の場合、MVNOの相場はおおよそ1600円前後。ahamoやSoftBank on LINEとは1000円以上の差があるものの、日本通信の合理的20GBプランとの差は少ない。価格にセンシティブなユーザーが多いだけに、料金プランの見直しが必要になりそうだ。

2020年は日本の5G元年だったが、2021年はエリアの拡大も進んでいきそうだ。KDDIは、2020年12月から、4G用に割り当てられていた3.5GHz帯の一部を5Gに転用すると発表した。3.5GHz帯は、5G用に新たに割り当てられた3.7GHz帯に近い周波数のため、これでエリアが一気に広がるわけではないが、今後は700MHz帯や1.7Ghz帯の5G化も計画している。特に700MHz帯は、いわゆる“プラチナバンド”と呼ばれる浸透率の高い周波数帯で、エリアの拡大に貢献する可能性が高い。

 周波数転用を駆使することで、KDDIやソフトバンクは、2022年3月までに、人口カバー率90%を達成する予定。ここに向け、2021年中にエリアが急速に広がっていくことになる。各社とも、その過程でどの程度の人口カバー率になるのかは明かしていないが、KDDIの代表取締役副社長 高橋誠氏は、2020年10月のインタビューで、東名阪の昼間人口カバー率で半分(50%)ぐらい」と語っていた。2022年3月を待たずとも、オフィス街や繁華街などを中心に、5Gエリアの広がりを体感できるようになりそうだ。

 対するドコモは、4Gの周波数転用には消極的だが、出力を上げたマクロ局を展開。2022年3月末には55%の人口カバー率を実現する。KDDIやソフトバンクの90%と比べるとエリアは狭いが、この55%は全て5G用に割り当てられた新周波数を使う。そのため、5G接続時のスピードについては、2社を上回ることになる。マクロ局の展開で、面的なカバーも進んでいくようだ。ドコモが公開しているエリアマップでは、2021年3月末と2021年夏の予定を確認できるが、スポット的にしかつながらない12月27日時点と比べ、面としてエリアが広がることが分かる。

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