週間情報通信ニュースインデックスno.1256 2020/12/26


1.NTTドコモ、2021年夏にNTTコムとNTTコムウェアを子会社化へ(12.25 日経XTECH)
2020年12月25日に上場廃止となるNTTドコモが、21年夏にもNTTコミュニケーションズ(NTTコム)とNTTコムウェアを子会社化する方向で検討していることが分かった。KDDIやソフトバンクは、ドコモとコムの統合によって公正競争上問題が生じると指摘している。総務省の有識者会議の議論次第で、新たなNTT再編に向けた条件が見えてきそうだ。

 「NTTドコモを親会社として、NTTコミュニケーションズ(NTTコム)とNTTコムウェアを配下に再編する形を検討」――。NTTが、NTTドコモを完全子会社化した後のグループ再編シナリオがみえてきた。...

 20年12月25日に開催された総務省の有識者会議「公正競争確保の在り方に関する検討会議」でNTTの担当者が明らかにした。

 ステップ1として、21年夏にNTTドコモがNTTコム、コムウェアを子会社化する。さらにNTT持ち株会社の研究所とNTTドコモの研究開発体制を一体的に運営する。5G(第5世代移動通信規格)の次の6Gや、同社が進めている次世代情報基盤構想「IOWN」に向けた研究開発体制を強化する。

 22年春から夏頃をめどとしたステップ2では、NTTドコモとNTTコムの機能を整理する。個人向け営業はドコモが中心となって担い、法人事業はコムが一元的に顧客対応を進める。さらにドコモとコムの設備の効率化も進め、移動固定融合型のネットワーク構築を推進したいとしている。

2.商用5G SAで音声通話、クアルコムやエリクソンなど欧中米4社(12.25 日経XTECH)
米QualcommとスウェーデンEricsson、スイスSwisscom、中国Oppoは2020年12月17日、商用5G SA(Standalone)ネットワーク上でのFDD周波数帯とTDD周波数帯のキャリアアグリゲーション(CA)試験、および音声通話試験を完了したと発表した。スイス・ベルンにあるSwisscom施設内で実施された。

 5G CA試験については、商用ネットワーク環境下で、EricssonのDSS(Dynamic Spectrum Sharing、動的周波数共有)技術を適用し、試験用端末にはQualcommの最新5G向けSoC「Snapdragon 888」を使用している。5G音声通話(Voice over NR、VoNR)では、Ericssonが提供する5G基幹ネットワーク、無線アクセスネットワークとIMS(IPマルチメディアサブシステム)インフラ構築用装置類に、Snapdragon 865とSnapdragon X55モデム-RFシステムを搭載するOppoの5Gスマートフォン「Find X2 Pro」が使われている。

 今回の5G CA試験では、広域カバレッジを実現するFDD低周波数帯と、ブロードバンド(広帯域幅)のTDD中周波数帯を使用。これらを束ねることにより、サブ6(6GHz未満の周波数帯)でのカバレッジ拡張、容量拡大が可能になる。VoNRの実現により、音声通話や動画通話品質が大幅に向上し、さらに快適な音声通話体験を提供できるようになる。

 5G SAネットワークに移行することで、接続時間の短縮や広帯域への迅速なアクセスが可能になり、ユーザーの操作性もさらに向上する。低遅延通信やネットワークスライシング機能による、幅広いユースケースのサポートも可能になる。

 今回の試験に参加した各社は、欧州でのさらなる5Gの進化に向け、今後も協力を続けていく。

3.クラウドサービスはメリットだけではない、導入時に留意すべき4つのポイント(12.24 日経XTECH)
クラウドサービスはインターネット上で稼働するため、データセンターとは異なる考慮が必要だ。またクラウドサービスへの移行に際し、従来のネットワークを前提としたシステム設計ができない部分がある。クラウドサービスの利用増大に伴う、トラフィックや負荷の集中といった問題もある。

 「クラウドサービスに閉域接続しても、クラウドサービス自体はインターネットからアクセスできる。その分セキュリティーには留意しなければならない」と指摘するのは、ソフトバンクの西沢大輔SE本部エキスパート第2統括部クラウドSE第1部部長だ。具体的にはインターネットからのアクセスに対する防御を強化しておくべきだという。

 またクラウドサービスには管理画面(ポータル)が必ず存在する。「管理画面のセキュリティーも重要だ。ここから企業ネットワークに侵入される場合もある」(ソフトバンクの山内徹クラウドエンジニアリング本部IoTサービス統括部インテグレーション部サービスデリバリー1課課長)。

 また「PaaSやSaaSに閉域接続していても、実際にアクセスするときはインターネット経由になる場合が多々ある」(西沢部長)ので、経路を考慮する必要があると指摘する。

 クラウドサービスに企業システムを移行させた場合、固定IPアドレスを前提としたネットワーク設計が使えない点も要注意だという。既存の社内システムへのアクセスをIPアドレスで制御していた場合、クラウドサービスからのアクセスを受け入れられるかどうかを確認する必要がある。

 またクラウドの仮想ネットワークではブロードキャストやマルチキャストが使えない。こうした機能を利用した死活監視などはできなくなる。DHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)サーバーを自前で用意できなくなるので、IPアドレスの管理などはクラウドサービスに任せることになる。

 また「BGP(Border Gateway Protocol)の知識が必要になる」(日本マイクロソフトの佐藤壮一Azureビジネス本部製品マーケティング&テクノロジ部プロダクトマネージャー)という指摘もある。閉域接続する際に、クラウドサービスとのルーティングには原則としてBGPを使うためだ。

4.アフターコロナのモバイル業界は製造業の5G活用に期待、GSMA調査(12.23 日経XTECH)
GSMA Intelligenceは2020年12月15日、新型コロナウイルス感染症拡大後(アフターコロナ)のモバイル業界動向を含む年次リポート「Global Mobile Trends 2021 Navigating Covid-19 and beyond」を発行した(GSMAのニュースリリース)。以下はその概要となる。このリポートは、北米、南米、欧州、ロシアとその周辺諸国、中東および北アフリカ、サハラ砂漠以南のアフリカ諸国、インドおよび中国にて実施された調査を基にしている。Global Mobile Trends 2021 Navigating Covid-19 and beyondの全文(PDF形式)はGSMAのWebサイトからアクセス可能となっている。 新型コロナウイルス感染症拡大による影響は、海外渡航禁止によるローミング需要の減少、店舗閉鎖による端末買い替え需要の減少、企業や中小企業市場での需要減少、プリペイド型のモバイル分野を中心とする一般消費者の支出減の4分野に集中している。

データ通信需要は50〜100%増と急増する。これには、ロックダウンによる家庭でのエンターテインメントやテレワークにより、家庭内での動画や音声通信需要が増えたことが後押ししている。

一般消費者の5G普及率は、2025年までに世界の移動通信接続の20%に達する。米国、中国、韓国、日本、ペルシャ湾岸諸国、オーストラリア、欧州の一部で普及が進む。

ビジネス面では、通信事業者の56%が、IoT、クラウド、プライベートネットワークとの組み合わせによる、製造業での5G活用の可能性に期待を寄せている。

 5Gと同時に、Open RANなどの新技術の商用化に向けた動きも加速している。Open RANを使うことで、ネットワーク構築にかかる費用が削減されるほか、既存のネットワーク資産を使ったエッジコンピューティングなどの新しい事業の収益化も見込める。さまざまなネットワーク機器メーカーの機器が使えるようになるため、メーカー間の競争も過熱しそうだ。実際に、通信事業者の57%が自社のネットワークサプライヤーとして、新しいメーカーの導入を検討している。

5.テクノロジーが支援する、離れていても幸せを感じるコミュニケーション(12.22 日経XTECH)
 パネルディスカッションに登壇したのは、ユカイ工学の青木俊介代表、パナソニック マニュファクチャリングイノベーション本部ロボティクス推進室総括の安藤 健氏、クラスターの加藤直人代表取締役CEO、ピアレスガーベラ所属の声優、小岩井ことりさんだ。モデレーターは、日経クロステック/日経エレクトロニクスの東将大が務めた。

 パネルディスカッションは「幸せにつながるコミュニケーション」がテーマ。最初の話題は「参加者それぞれが考える幸せとは何か」だった。

 加藤氏は、もともと声優が好きだったことがclusterを作り出すきっかけだったとした。「(当時は積極的に引きこもりをしていたので)家から出ずに何とかして声優のライブやイベントに参加したい。そこで、バーチャル空間を自分で作ってしまえと考えた」(加藤氏)。そんな加藤氏が考える幸せとは、「思っていることだったり、こういうものが欲しい、こうなりたいという自分の理想を作れることだったりする」。

 安藤氏は「最近、朝ご飯を家族に作っている」と切り出し「卵焼きがうまくできたときや、家族がおいしいと言ってくれたときがうれしい」と、自己実現と他者からの感謝の言葉で幸せを実感するとした。

 小岩井さんが幸せを感じるのは「人の役に立ったとき」。また、自己実現をしたいと思っても制約があってできないときに「安藤さんが開発しているロボットができないことを手助けすることで(自己実現できない人を)幸せにできる」(小岩井さん)とデジタルイノベーションが幸せをもたらすのでは、とコメントした。

 続いて青木氏は、自身が考える幸せな状況として「安心してコミュニケーションできるつながりがあることが重要」と述べた。自社の製品も、ちょっとしたつながりが感じられる仕掛けを日常生活のなかに導線として仕込むものとして作っているという。

 続いてモデレーターから、新型コロナで変わっていくコミュニケーションのあり方について問いかけが投げられた。「SNSでのコミュニケーションは合理性や利便性を重視する方向になっているので、楽しさや面白さといった、ある意味で『無駄』な部分が幸せを感じるコミュニケーションにつながるのではないか。コミュニケーションを面白くするにはどういうサービスや技術があるか?」という内容だ。

 安藤氏はニューノーマルにおける新しいコミュニケーションの重要な要素として「共在感覚」を挙げた。共在感覚は、離れていても一緒の空間にいるように感じる認識のこと。共在感覚を得るには、複数の人たちの間でタイミングをそろえることがポイントになるとした。例えば歌やダンスでは、同時に体験しているみんなが同じタイミングで同じリアクションを取れると、新しい感覚として認識できるようになるという。

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