1.KDDIが低遅延クラウドでAWSとタッグ、ドコモとソフトバンクに先んじた狙いとは(12.18 日経XTECH)
KDDIがクラウドサービス事業者との距離を急速に縮めている。2020年12月16日、米Amazon Web Services(アマゾン・ウェブ・サービス、AWS)と組んで第5世代移動通信システム(5G)向けの新たなクラウドサービス「AWS Wavelength(ウエーブレングス)」の提供を始めた。
Wavelengthは通常のクラウドサービスよりも利用者に近い位置にある通信事業者のネットワーク内でデータを処理するサービスだ。具体的にはKDDIの5Gネットワーク内にAWSのサーバーやストレージなどを設置し、そこからAWSの各種クラウドサービスを提供する。インターネット上にあるクラウド設備ではなく、利用者により近い場所で折り返すことで、低遅延でのアプリケーション実行を期待できる。
「従来のクラウドサービスはモバイル通信網(内のデータ通信)の遅延だけでなく、AWS(設備)までのインターネットの部分でも遅延が発生し、かつ遅延時間の変動も大きい」と、KDDIの丸田徹執行役員ソリューション事業本部サービス企画開発本部副本部長は話す。そのため自動運転のように、データ通信のわずかな遅延も許されない用途には適用しにくい面があった。
KDDIとAWSはWavelengthにおけるデータ通信の遅延時間を明らかにしていないが、おおむね「従来の4Gで通常のクラウドに接続する場合に比べて半分程度」(同)になるという。データをリアルタイムでやり取りする必要のある遠隔手術やスマート工場、オンラインゲームなどの用途を見込む。当初は東京の5Gサービスエリアで提供し、次いで大阪に拡大する予定だ。
2.AIとの掛け合わせで勝負、NECがローカル5Gで描く戦略(12.18 日経XTECH)
「端末だけ用意すれば初期費用なし・月額100万円で、5G(第5世代移動通信システム)を利用できる」。NECの網江貴彦執行役員は同社のローカル5Gサービスについてこう胸を張る。
同社が2020年11月26日に提供を始めた新サービスでは、ローカル5Gの企画から導入、運用まで段階に応じた支援サービスをメニューとしてそろえた。具体的には、要件定義や電波調査などの「コンサルティングサービス」と無線局免許の取得支援などの「インテグレーションサービス」、常時監視や保守手配など運営業務支援の「マネージドサービス」の3つを用意した。
マネージドサービスではコアネットワークや基地局などローカル5Gを構成する機器と保守サービスを併せて月額料金で提供するメニューもある。料金はクラウド型5Gコアと基地局1台(無線装置のRU、無線制御装置のDUとCUを含む)の最小構成で月額100万円(税別)。Sub6(4.6ギガ〜4.9ギガヘルツ)帯域にも対応する。
NECはローカル5G関連製品やサービスを含む同社のネットワークサービスの総称である「NEC Smart Connectivity」関連ビジネスで、2025年度までに累計2000億円の売り上げを目指している。
ローカル5Gは企業や自治体が5Gを自営用として敷地内などに構築できるネットワークを指す。キャリア5Gの3つの特徴である超高速大容量・超低遅延・多数同時接続に加え、ローカル5Gは自営網なので安全性や安定性、柔軟性などのメリットがある。NECの網江執行役員は「建設や製造、交通、公共、流通などの市場を中心に展開する」と話す。建設では大林組、製造ではリコー、交通ではANA(全日本空輸)などとローカル5Gの実証を進めている。
「強みはNECのAI(人工知能)や画像解析技術との組み合わせで提供できることだ」。NECの網江執行役員は、同社のローカル5Gサービスの特徴についてこう話す。コアや基地局といったネットワークだけでなく、AIや業種別のアプリケーションなどを組み合わせて提供することで、顧客のDX(デジタルトランスフォーメーション)を支援する狙いだ。
NECはAIを活用し、遅延を考慮した制御をする「適応遠隔制御技術」やネットワークの優先順位をつける「適応ネットワーク制御技術」などの技術を持つ。適応遠隔制御技術では、例えばロボットや建機の遠隔制御においてAIで予測した遅延を基に、その遅延を考慮して制御する。適応ネットワーク制御技術では、AIで重要な通信を識別して、その通信の遅延の変動を抑えることができる。
さらにAIを使ったネットワーク運用の自動化も可能だという。AIが無線網における混雑や競合による通信品質の低下を分析・制御することで、ネットワークの運用を容易にする。従来は専門家が数日かけて分析していた。
3.ドコモが大容量プランを最大1000円値下げ、3G移行専用の1650円プランも(12.18 日経XTECH)
NTTドコモは2020年12月18日、5G(第5世代移動通信システム)と4G向けの料金プランを見直し、2021年4月1日から新たな大容量プランと小容量プランを導入すると発表した。2021年3月に開始する月20ギガバイトの中容量料金プラン「ahamo(アハモ)」と併せて、携帯大手3社のメインブランドで先陣を切って値下げに踏み切り、菅政権からの値下げ要請に応じた格好だ。
5G向けの新たな大容量プラン「5Gギガホ プレミア」は月額6650円(税別、以下同)で、現行の大容量プラン「5Gギガホ」の7650円から月額1000円の引き下げとなる。5Gギガホ プレミアでは月間のデータ量を無制限とする。現行の5Gギガホでは月100ギガバイトの上限を設けつつ、期間を定めないキャンペーンとして「データ量無制限キャンペーン」を展開していた。
4G向けの新プラン「ギガホ プレミア」は現行の「ギガホ」の月額7150円という料金から600円引き下げて6550円とし、データ量の上限も30ギガバイトから60ギガバイトへ引き上げる。5Gギガホ、ギガホのいずれも、月間のデータ量が3ギガバイト以下にとどまった場合は月額1500円引きとする仕組みを新設する。
新設する小容量プラン「はじめてスマホプラン」はNTTドコモや他社の3G端末からの乗り換え専用。月1ギガバイトが上限で月額1650円。月額1000円の追加で国内宛ての音声通話が話し放題となる。このほか、ドコモから他社への乗り換え(MNP)手続きの手数料を2021年4月1日から廃止することも併せて発表した。
契約者数ベースで最大手のNTTドコモが中容量プランのahamoに加え、大容量プランと小容量プランも発表したことで、競合するKDDI(au)とソフトバンクもメインブランドの見直しを迫られそうだ。
4.携帯大手震撼「プラチナバンド」再編シナリオ、電波の縮減も(12.16 日経XTECH)
携帯電話のエリア展開に適していることから「プラチナバンド」と呼ばれる700M〜900MHz帯の電波。NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社に割り当てたプラチナバンドを一部減らし、楽天モバイルに割り当てられないか総務省が検討している――。今、こんな話題が業界を駆け巡っている。総務省が新たに開始した有識者会議でもプラチナバンド再編が論点として浮上している。携帯電話市場の改革にこだわる菅義偉政権が放つ新たな矢に、携帯大手は戦々恐々としている。
「事業者間の公正競争という視点からは、有限な国民の財産である電波を持つ者と持たざる者との公平性を確保すべく割り当て済み周波数の利用状況の詳細な検証を行い、周波数の縮減・共用・移行・再編・取り消しなどを機動的に行うことが望まれる。とりわけ、プラチナバンド(700M〜900MHz帯)についての検証は急務」――。総務省が2020年11月末に開始した有識者会議「デジタル変革時代の電波政策懇談会」にて、有識者として参加する野村総合研究所の北俊一パートナーはこのような意見をぶち上げた。
携帯電話事業者にとって、電波は事業展開に欠かせない生命線だ。中でもプラチナバンドと呼ばれる700M?900MHz帯は、建物の奥などに回り込みやすく、携帯電話のエリアを充実させるために不可欠の電波だ。現在このプラチナバンドは、NTTドコモとKDDI、ソフトバンクにそれぞれ合計50MHz幅が平等に割り当てられている。
だが新規参入事業者である楽天モバイルにプラチナバンドは割り当てられていない。700M〜900MHz帯の割当時に、楽天モバイルは事業に参入していなかったからだ。公平性という観点で、後発の事業者が不利になる状況を見直すべきだという意見は一理ある。また携帯大手にとって虎の子といえるプラチナバンドの縮減や取り上げをちらつかせることは、競争促進に向けてもこれ以上ない手段となる。新たに始まった有識者会議では、このプラチナバンド再編が主要論点となる見込みだ。
有識者会議の開催に合わせるように総務省は2020年12月、毎年実施している携帯電話の電波の利用状況調査を公表した。基地局の整備計画に対して進展しているかを検証する調査だ。おおむね適切な電波利用が行われているという評価が並ぶ中、KDDIに割り当てられた700MHz帯の電波について「適切な電波利用が行われているとは認めがたい」という評価を付けた。KDDIは700MHz帯について、NTTドコモやソフトバンクと比べて倍近い基地局数を整備する計画を打ち出していた。その結果、遅れが目立ってしまったという事情もある。いずれにせよこうした結果は、プラチナバンド再編の動きと合わせて携帯大手を震撼(しんかん)させるに十分な効果を発揮しているようだ。
いくつかヒントになる動きがある。700M〜900MHz帯に含まれるタクシー無線などに使われてきたデジタルMCA(845M〜860MHz、928M〜940MHz)の帯域が、新システム移行に伴って2021年4月以降に空く。貴重なプラチナバンドの電波が開放されるわけだ。
だがこのデジタルMCA跡地の帯域は、そのままでは携帯電話向けにはならない。標準化団体である「3GPP」が標準化したLTEや5G(第5世代移動通信システム)の帯域にうまく重ならないからだ。日本固有の帯域を開放したところで、世界に流通する端末はその帯域に対応しなければ使えない。世界で多く使われる帯域と合わせた形でプラチナバンドを再編しなければ意味がないことになる。
楽天モバイルはこのデジタルMCA跡地の携帯電話利用を希望している。しかし総務省はこの帯域における標準化の見通しを明らかにすることを先決とし、デジタルMCA跡地は今のところ、LPWAやRFID、IEEE 802.11ahなどの利用が有力候補になっている。
もっとも携帯大手の既存割り当て分を縮減したり、ずらしたりすることを考慮すると携帯電話利用の可能性が出てくる。さらに700MHz帯の「ITS(高度道路交通システム)」や710MHz以下のテレビ放送の一部帯域も考慮すると、プラチナバンド再編による新規割り当ての可能性はぐんと広がる。関係者によると「有識者会議では、あらゆる可能性を検討する」としている。
既存の電波利用者からの反発は必至だろう。だが、それでこそ政治主導による意思決定が有効に働く。電波は国民の共有財産だ。その電波をどのように有効利用していくのか。プラチナバンド再編の動きは、菅政権の真価が問われることになる。
5.ケーブル業界向け無線コア提供のグレープ・ワン、ローカル5Gの商用提供を開始(12.14 日経XTECH)
ケーブルテレビ業界向けに業界統一の無線コアなどを提供するグレープ・ワンは2020年12月11日、ローカル5Gサービスの商用提供を同日に開始したと発表した。
グレープ・ワンは、地域ワイヤレスジャパンを通じてケーブルテレビ事業者にサービスを提供する。12月11日に開始したのは、ミリ波帯を利用したケーブルテレビ局によるローカル5Gサービスが対象。同日時点でグレープ・ワンがローカル5Gサービスを提供する事業者は、秋田ケーブルテレビ(本社:秋田市)、愛媛CATV(本社:松山市)、ケーブルテレビ(本社:栃木県栃木市)、ジュピターテレコム(本社:東京都千代田区)、ZTV(本社:津市)、となみ衛星通信テレビ(本社:富山県南砺市)の6事業者。
グレープ・ワンは、2020年12月中にも制度化予定の4.7GHz帯(サブ6帯)を利用したローカル5Gサービスについても、2021年3月の商用提供開始を予定する。
このほかグレープ・ワンは2020年12月2日に、「特定高度情報通信技術活用システムの開発供給及び導入の促進に関する法律」に基づく開発供給計画認定の申請をノキアソリューションズ&ネットワークスと共同で行い、同日に経済産業大臣および総務大臣より認定を受けたことを発表している。ローカル5Gシステム開発供給事業者としては全国初の認定となる。
認定されたグレープ・ワンが提供するローカル5G設備を2022年3月末までに導入した事業者は、導入計画認定など一定の要件を満たすことで、当該ローカル5 G設備の取得価額の15%に当たる額の法人税額控除といった特例措置を受けることが可能となる。
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