週間情報通信ニュースインデックスno.1254 2020/12/12


1.5G To-Cや5G To-Bを導入、ZTE中長期戦略(12.11 日経XTECH)
中国ZTEは通信事業者への中長期的な5G開発ガイドライン提供を目的として、同社の5G中長期戦略をまとめた白書「5G Medium and Long Term Planning for Operators」を発表した。5G開発時に発生する課題への対処として、コスト効率の高いネットワーク構築、各種業界のデジタル化推進、より価値の高い運用改革実現を含む3フェーズのロードマップを提示する。

 これらのロードマップ実現に向けては、端末から無線アクセス、基幹ネットワーク、サービス用クラウドプラットフォームまで、エンドツーエンドの5Gネットワークや産業向け5Gプライベートネットワーク、5G To-C(5Gから一般顧客へ)、5G To-B(5Gから企業顧客へ)のサービスといったソリューションを導入する。ROI(投下資本利益率)分析も取り入れて、各ソリューションの評価や見直しを進めていくとしている。

 さらに、2Gから5Gまでを統合するCommon CoreやAAPC(Automatic Antenna Pattern Control、自動アンテナ管理)、SuperDSS(3Gから5Gまでの動的周波数共有)、 PowerPilot(サービスベースの省エネソリューション)、FAST(FDD Assisted Super TDD、FDD方式でアシストするTDD通信)、UniSite(基地局の簡素化)、高度な運用管理ソリューションなど、将来を見据えた一連の革新的なソリューションも紹介する。

 ZTEはこのほか、5Gの上りリンク通信強化に向けた取り組みをまとめた白書「5G Uplink Enhancement Technology White Paper」も発表した(ZTEのニュースリリース2、PDF形式の白書ダウンロードサイト)。同社の5G分野における研究成果に基づき、上りリンク通信強化に向けた技術概要から性能解析、適用事例などを紹介するものとなっている。

 IoT、クラウドストレージ、高精細動画ライブのストリーミングなど、ますます多様化する5Gアプリケーションでは、さらなる上りリンク時カバレッジや容量などが必要となる。白書では、現在の5G向け中周波数帯では、TDD技術の制限により、上りリンク時カバレッジと容量の点で、十分な性能が出せない可能性があるとし、それらを強化する効率的なソリューションが必要だとしている。

2.ICT活用最下位から一気に1人1台へ、「GIGAスクール構想」が描く新たな学びとは(12.11 日経XTECH)
わずか5%――。コロナ禍にあっても教員と児童・生徒がやり取りできる「同時双方向型」のオンライン指導をすぐに提供できた自治体の割合だ。

文部科学省の調査によると、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、2020年4月16日時点で公立小中高校が臨時休校を実施中または実施予定の1213自治体のうち、同時双方向型のオンライン指導を通じた家庭学習を提供すると回答した自治体は60自治体(5%)にとどまった。

 世界的に見ても、日本の教育におけるICT活用度合いは極めて低い。経済協力開発機構(OECD)が2019年12月に発表した2018年「生徒の学習到達度調査(PISA2018)」によると、「1週間のうち、教室の授業でデジタル機器を使用する時間」は国語、数学、理科において加盟国中最下位だった。学校外で「コンピュータを使って宿題をする」頻度についても「全くかほとんどない」が78.8%でこちらも最下位だ。

 「他分野と比べ、学校のICT化は著しく遅れている」と東北大学大学院の堀田龍也情報科学研究科教授は指摘する。多くの教員や保護者も含め、「学校はそういうものだと思い込んできた。自分たちが通った(ITが生活に浸透していなかった)昭和の頃と同じイメージで学校を捉えていた」(同)。こうした状況を一気に変えようと政府が進めるのが「GIGAスクール構想」だ。小中学生に1人1台の学習用端末と、高校も含めた高速大容量の通信ネットワークを整備する。

 だが「1人1台」の環境を整備するだけでは、世界に通用する人材の育成にはつながらない。ICTを使って何を学ぶか、その中身こそが重要になる。

 経済団体も1人1台の先を見据えた教育改革の検討に動き出した。2020年9月18日、経団連は「EdTech推進に向けた新内閣への緊急提言」を発表した。「人材の需要と供給が一致していない」。取りまとめた小宮山利恵子スタディサプリ教育AI研究所長はこう話す。経団連が問題視するのは、これまでの日本の教育システムでは「現代社会に必要な能力が十分に養えない」(小宮山所長)点だ。現代社会は高度に情報化が進み、人工知能(AI)の急速な普及に代表されるようにテクノロジーの進歩はかつてないほど早い。こうした先が見通しにくい現代社会では、課題を自ら発見して解決する能力、プログラミング的な思考、情報リテラシー、ITスキル、コミュニケーション能力などが新たに必要になるという。

3.NTT・NECの頼みの綱「Open RAN」の実力、寡占崩すアリの一穴(12.10 日経XTECH)
 「多くのベンダーの機器を相互接続して通信できるようになった。実際にこれを見せたことの意義は大きい」

 通信関連の研究開発拠点が集まる横須賀リサーチパーク(YRP)。さまざまなベンダーの基地局を相互接続するイベント「O-RAN Plugfest/PoC」が2020年9月末に開かれ、この様子を見たNTTドコモの谷直樹常務執行役員は大きくうなずいた。

 O-RAN Plugfestは、さまざまな基地局製品を自由に組み合わせて使えるようにする「Open RAN」の業界団体「O-RAN Alliance」が主催。世界5カ所で同時開催された。日本会場ではドコモとKDDI、ソフトバンクの大手3社がホストとなり、日本と中国の会場にはNECや富士通、韓国サムスン電子、米マベニア(Mavenir)、米JMAワイヤレスなど10社以上のベンダーや部品メーカーが参加した。

 携帯電話の基地局はアンテナと無線装置(RU:Radio Unit)、無線制御装置(DU:Distributed Unit、CU:Central Unit)で構成する。アンテナで送受信した電波から信号を取り出して処理するのがRU、ベースバンド処理と呼ばれる信号からデータを取り出して処理するのがDUやCUだ。

 携帯電話の標準化団体「3GPP」はこれらの機器をつなぐ標準仕様を策定している。しかし仕様が不十分で、基地局を構成する機器類はこれまで1社にそろえる必要があった。携帯電話事業者の設備投資の7割は基地局分野が占めるといわれる。これが中国の華為技術(ファーウェイ)やスウェーデン・エリクソン、フィンランド・ノキアの3社寡占につながる要因の1つとなった。

 大手ベンダーの囲い込みを逃れ、通信事業者主導でネットワークを構築したい――。このような思いから、ドコモや米AT&T、独ドイツテレコムなど世界の主要通信事業者が共同で2018年に設立した団体がO-RAN Allianceだ。

 O-RAN Allianceは機器同士をつなぐあらゆる仕様をオープンインターフェースとして規定する考え。中でも大手ベンダーによる囲い込み打破の切り札となるのが、基地局のRUとDUを結ぶフロントホール部分の仕様策定だ。これまでも共通仕様はあったが解釈の余地が大きく、事実上ベンダーの独自実装となっていた。

 O-RAN Allianceは異なるベンダーの機器を組み合わせても動作するように仕様化した。例えばベンダーA社のDUに対し、ベンダーB社やC社のRUがつながるようになる。Open RANが「アリの一穴」となって大手ベンダーの寡占を打破する可能性がある。

 世界で5Gの商用化が進み、多様なニーズが生まれていることもOpen RANを後押しする。NECの河村厚男執行役員常務は「1社のベンダーに頼るのではなく、特長を持ったベンダーの機器をオープンに組み合わせるニーズが世界の通信事業者の間で高まっている」と語る。

 Open RANによって、楽天が全面採用した基地局への仮想化技術の適用、いわゆる「vRAN(virtualized RAN)」も採用しやすくなる。ファーウェイやエリクソンの基地局は専用のハードウエアとソフトウエアで構成する。高い性能を持つ一方、必要に応じて機能を追加できる柔軟性に欠ける。汎用サーバー上にソフトウエアで基地局を構成するvRANを導入することで、安価なハードウエアを活用できるようになる。Open RANの注目が高まるのには、vRANの導入でコストを下げたいという背景もある。

4.もはや5Gは単に目新しいだけの技術ではない、Ericsson最新リポート(12.9 日経XTECH)
 スウェーデンEricsson(エリクソン)は2020年11月30日、最新のモビリティーリポート「Ericsson Mobility Report November 2020」を発表した(Ericssonのニュースリリース)。2020年末までには、世界の全人口の15%となる10億人以上への5Gサービス提供が可能となり、2026年には、世界人口の6割への5G提供が実現、契約者数も35億に達するとしている。

 リポートでは、5Gのこうした契約者数やサービス提供範囲拡大のペースについて、今までのどの世代の技術よりも速いとし、「5Gはもはや“単なる目新しい技術”ではなく、その利点を最大限生かすべき次のフェーズに移っている」(同社副社長兼ネットワーク事業本部長のFredrik Jejdling氏)としている。

 2020年末時点の世界の5G契約者数予測も2億2000万に引き上げた。これには中国での急速な普及が影響している。同国では、5G契約数が全移動通信契約数の11%を占めるが、同国の国家戦略やサービスプロバイダー間の激しい競争、各種メーカーから提供される手ごろな価格の5Gスマートフォンなどが、これを後押ししている。

 北米では2020年末までに移動通信契約数の4%が5Gに移行する。そのペースは急激に高まり、2026年までに、全モバイル契約者数における5Gの割合は、世界最高レベルの80%に達する。

 5Gは、そのサービス提供範囲や契約数を拡大するのみならず、新たな価値も創造している。その一つが、特定時間内のデータ配信が要求されるミッションクリティカルなIoTだ。これにより、5Gパブリックネットワークやプライベートネットワークでの、企業、公共機関、一般顧客に向けた幅広いサービスが可能になる。

 5Gネットワークとエッジコンピューティング技術を使った、スマートフォン上でのゲームストリーミングサービスも実現。これによりパソコンなどと同等品質の体験が可能となり、革新的なモビリティーを提供する没入型ゲームが提供できるようになる。

 5Gネットワーク拡大と並行して、5G端末も次々開発されており、既に150種以上が市販されており、その多くがDSS(Dynamic Spectrum Sharing、動的周波数共有技術)をサポートする。また、5Gネットワーク形式としては、SA(Standalone)の5G NRがアジアと北米で運用開始され、5G NRでのキャリアアグリゲーション(CA)を実現する端末も登場している。

 新型コロナウイルス感染症拡大によりデジタル化が加速し、高速で信頼性の高い家庭用ブロードバンドへの需要も高まった。これに伴い、固定無線アクセス(FWA)サービスも3倍以上に成長し、サービスプロバイダーのほぼ3分の2が提供するまでになった。その接続数は、2026年末までには1億8000万以上に達すると予測され、全モバイルネットワーク通信量の約4分の1を占めるようになる。

5.約3万円のミドルレンジSIMフリースマホ「OPPO A73」に感じた4つの魅力(12.8 日経XTECH)
今回は中国OPPO(オッポ)のSIMフリースマートフォン「OPPO A73」を紹介する。CPUに米Qualcomm(クアルコム)のSnapdragon 662を採用する4G対応のミドルレンジモデルで、量販店における価格は3万800円(税込み)。楽天モバイル(MVO)や多くのMVNOも取り扱っている。オウガ・ジャパン(オッポの日本法人)から借りた端末を1週間ほど使ってみた。

 Androidスマホの多くはクアルコムのSnapdragonを採用している。筆者の認識では、ハイスペックはSnapdragon 800番台を採用し、端末価格は5万円以上。ミドルハイは700番台で3万円から5万円程度。ミドルローは600番台で2万円から3万円程度。

 約3万円で買えるOPPO A73はミドルローに属するモデルと捉えて差し支えないだろう。しかしOPPO A73はミドルローのわりには特筆すべき魅力が多く、実際に使ってみた上での満足度も高かった。まず筆者が気に入ったところを挙げて、あとで詳しく解説していきたいと思う。気に入ったのは以下の4点である。

有機ELディスプレーがきれいで便利
薄型軽量で持ちやすい
超広角レンズを含む4眼カメラが楽しい
eSIMも使えるので安心
 それでは、この4点について順に詳しく見ていこう。

 OPPO A73は6.44インチの有機ELディスプレーを搭載している。ミドルローモデルではまだ液晶が主流なので、大きなセールスポイントになるだろう。有機ELは明るく高コントラストの画質が得られるほか、画面オフ時にも時計を表示させたり画面内指紋認証を使えたりするのも利点と言えるだろう。

 CPUがSnapdragon 662(2.0GHz×4+1.8GHz×4)で、RAM(メモリー)が4GBという最近のスマホとしては低めのスペックなので、処理速度に関しては過度な期待は禁物だ。実際にゲームの起動に時間がかかったり、タッチレスポンスに若干タイムラグを感じたりすることがあった。しかしWebブラウザーやSNS、カメラなど、日常的に使うアプリの操作でストレスを感じることはないだろう。

 本体サイズは約159.8×72.9×7.45mm。画面サイズが6インチ以上のスマホは、厚さが8〜9mm台の機種が多いように思う。OPPOの売れ筋モデルである「OPPO Reno3 A」の厚さも8.2mmだ。ということもあり、OPPO A73は手にした瞬間に薄いと感じられた。重さも約162gと軽めだ。

 4眼カメラは、メイン(1600万画素/F2.2)+超広角(800万画素/F2.2)+モノクロ(200万画素/F2.4)+ポートレート(200万画素/F2.4)という構成だ。フロントカメラはシングルだが1600万画素(F2.2)で、AIによる補正機能を備えている。セルフィーを楽しみたい人も満足できるはずだ。

 特筆すべきは、eSIMに対応していることだ。eSIMは端末に組み込まれたSIMで、そこに事業者の情報を読み込んで通信サービスを利用できる。日本ではIIJmio、楽天モバイル(MNO)がeSIMを提供しており、どちらもOPPO A73で利用可能だ。eSIMはnanoSIMと併用でき、DSDV(デュアルSIMデュアルVoLTE)にも対応している。

 OPPO A73はミドルレンジの中でも安い価格帯のモデルだが、安さを感じさせないデザインや工夫が盛り込まれている。少し予算を上げるとミドルハイのモデルを買えるが、おサイフケータイや防水が不要であればこのOPPO A73で十分満足できるはずだ。

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