週間情報通信ニュースインデックスno.1253 2020/12/05


1.AI画像検索の「Google レンズ」、仕事に役立つ用途とは(12.4 日経XTECH)
「Google レンズ」は、AI(人工知能)による画像検索機能である。スマートフォンのカメラなどを通じて「目の前にあるもの」を検索できる。写真に写っているものの名前が分からないときに重宝する。例えば、動植物や服、雑貨、風景写真などから名称や関連情報を調べることができる。

 文字の抽出も可能で、写真に写っている文章をデータ化したり翻訳したりできる。また、データ化した文章をパソコンのクリップボードに転送することもできる。認識の精度が高いため、紙の資料をデータ化するときに便利だ。このほか、名刺の文字を読み取って「連絡先」アプリに登録する機能があり、ビジネスにも役立つ。

 Google レンズは、スマホやタブレットのみで利用できる。Android機か、iOSを搭載したiPhoneやiPadかで利用方法が一部異なる。Android向けの「フォト」アプリ、iOS向けの「Google フォト」アプリを利用している場合、撮影済みの写真を参照している状態からGoogle レンズの機能を呼び出せる。各フォトアプリの画面下部にあるGoogle レンズのアイコンをタップすると、被写体について調べることができる。Android向けには「Google レンズ」という単体アプリもあり、撮影から検索までをワンストップで行える。一方、iOSでは「Google」アプリから同機能を利用できる。

 Google レンズの使い方は至って簡単だ。Android向けアプリのGoogle レンズなら調べたい対象物を写すだけ。それ以外の上記アプリの場合は、写真を調べるだけでよい。対象物の名称ほか、その名称をキーワードとしてWeb検索をした結果、文字情報などを表示する。

 Google レンズで調べられるものは多い。例えば、風景の写真をGoogle レンズで調べると、写真を撮影した場所や写っている建物などを認識する。撮影場所によっては、風景に写っている店舗の情報まで得られる場合もある。

 雑貨や服、小物などを撮影した写真をGoogle レンズで調べると、その製品の名前や、購入できるWebサイトを表示する。製品名の記憶が曖昧でどこで購入したか覚えていない、プレゼントでもらった物を再度購入したい、といった商品を調べたいときにも役立つ。

 Google レンズは、動物や植物の写真から、その名前を調べることもできる。例えば家族で動物園に行き、子どもに動物の名前を聞かれた際、動物の写真を撮ってGoogle レンズで調べることが可能だ。絵画の題名や、企業の社長など著名人の名前や関連情報も把握できる。

 文章が写っている画像をGoogle レンズで調べると、文章の部分をデータとして認識し、翻訳したりパソコンに送信したりできる。 Google レンズを印刷物に向け、アプリのメニューから「翻訳」を選択すると、文章を指定した外国語に翻訳し、元の画像に合成して表示する。Android向けの「Google レンズ」アプリには、カメラに写っている文字をリアルタイムで翻訳して表示するAR(拡張現実)のような機能もある。つまり、スマホを動かして撮影範囲を変えても、その部分を動的に翻訳して元の画像に合成するということだ。

 Google レンズには、読み取った文字をパソコンのクリップボードに送信する機能もある。紙の会議資料から文字を起こすときに役立つ。この機能を使うには、パソコンに「Google Chrome」をインストールして、スマホと同じGoogleアカウントでログインする必要がある。

 次に、会議資料をGoogle レンズで調べ、パソコンに送信したい箇所を選択しタップすると、下部にメニューが表示されるので「パソコンにコピー」をタップし、送信先のパソコンを指定する。すると、指定した端末のクリップボードに当該の文章が転送される。最後に、テキストエディターなどのアプリを起動して、文章を貼り付ければよい。

 名刺を撮影した写真をGoogle レンズで調べると、名前や電話番号、メールアドレス、住所などの情報を「連絡先」アプリに追加できる。また、メールアプリを起動することもできる。商談や会議で名刺を受け取って、その場でプレゼンテーション資料などを相手に送る場合などに便利だ。

2.ドコモが月20ギガバイトで2980円の新料金「ahamo」、5分以内の国内通話も無料(12.3 日経XTECH)
 NTTドコモは2020年12月3日、毎月のデータ通信量が20ギガバイトの新料金プラン「ahamo(アハモ)」の提供を2021年3月に始めると発表した。5分以内の国内通話が無料で、月額料金は2980円(税別、以下同じ)。新規契約事務手数料や機種変更手数料、MNP(モバイル番号ポータビリティー)転出手数料は無料にし、細かい割引条件なども極力なくしたシンプルな料金プランとした。

 ネットワークは4Gと5Gの両方に対応し、20ギガバイトのデータ通信量は海外82の国・地域において追加料金なしで使える。20ギガバイトを超過した場合は通信速度が最大毎秒1メガビットに制限されるが、1ギガバイト当たり500円で容量の追加も可能。月1000円で国内通話が完全かけ放題となるオプションも用意した。

 競合のKDDI(au)とソフトバンクは、それぞれ「UQ mobile」と「Y!mobile」のサブブランドで月20ギガバイトの料金プランを発表済み。だがドコモの新料金よりも高く、対抗値下げをどう打ち出してくるかが注目となる。

3.セールスフォースがスラックを買収、新常態に合わせCRMの新UIに位置付け(12.2 日経XTECH)
米Salesforce.com(セールスフォース・ドットコム)は2020年12月1日(現地時間)、米Slack Technologies(スラック・テクノロジーズ)を買収することで合意したと発表した。取引総額は277億ドル(約2兆9000億円に相当)になる。セールスフォースはCRM(顧客関係管理)サービスの新たなユーザーインターフェース(UI)として、スラックのメッセージサービス「Slack」を連携させていく考えだ。

 セールスフォースはSlackをCRMスイートである「Salesforce Customer 360」の新しいUIにするとしている。Slackを全社のビジネス部門で利用する流れができるほか、社外との連携もしやすくなる。Slackは組織の内外のユーザーとメッセージで情報を共有できるため、新型コロナウイルスの感染拡大で広まったリモートワークの時代に適していると言える。

 スラックは米Microsoft(マイクロソフト、MS)のコミュニケーションツール「Microsoft Teams」との競争が激化している。スラックはMSが2016年にTeamsを発表した際に「Dear Microsoft」との全面広告を出して、“挑戦者”を歓迎し、Slackの優位性を訴えた。しかし、企業向けのサービスやクラウドで規模に勝るTeamsに押され、Slackはエンジニアやテクノロジー企業が主体として利用するものから抜け出すことができなかった。

 Slackは全世界で約14万社が利用している。スラックはユーザー数を公表していないが、1000万以上のユーザー規模を持つとみられる。一方、Teamsは20年10月末時点で1日当たり1億1500万ユーザーが利用しており、その差は大きい。そのため20年夏にはスラックが欧州委員会に、MSがオフィススイートなどでの市場独占力を乱用していると訴えるなどしていた。

 セールスフォースのほか、20年11月30日、メッセンジャーで高いシェアを持つ米フェイスブックがCRMサービススタートアップの米Kustomerの買収を発表している。米テクノロジー各社は新常態時代のBtoB戦略を実行に移し始めている。

4.Open RANをいいとこ取り、巨人エリクソンの横綱相撲再来か(12.2 日経XTECH)
オープン仕様に基づいてさまざまなベンダーの基地局を自由に組み合わせられるようにする「Open RAN」の勢いが増している。先行する日本市場に加え、2020年11月には英国の大手通信事業者、Vodafone(ボーダフォン)が大規模導入計画を発表。米調査会社のABIリサーチも2020年10月、Open RANに対応した無線機(RU:Radio Unit)の市場シェアが2030年に75%に達するという強気のリポートを発表するなど、業界の主役に躍り出てきた。攻め込まれる大手ベンダーはどう動くのか。ここに来て既存ビジネスを守りながら、Open RANのメリットを取り入れるというしたたかな戦略が明らかになってきた。

 通信機器大手3社の一角を占めるスウェーデンの巨人、Ericsson(エリクソン)がOpen RAN対応に重い腰を上げた。同社は2020年10月末、汎用サーバーを使って基地局の無線制御部分(DU:Distributed Unit、CU:Central Unit)を構成できる製品「Ericsson Cloud RAN」を発表した。仮想化技術を無線基地局に活用するいわゆるvRAN製品だ。Cloud RANは2021年の第4四半期から段階的に提供開始する。

 Cloud RANの狙いは「企業のプライベートネットワークや屋内スタジアムなどの用途に向け、これまでの専用機器では実現できない柔軟性の高い選択肢を用意すること」(エリクソン・ジャパン最高技術責任者の藤岡雅宣氏)という。専用チップ(ASIC)を用いる同社の基地局製品は、電力効率もよく処理性能も高い。だが専用機器で構成するため、急なトラフィック増といったニーズに柔軟に対応することが難しかった。

 例えば屋内スタジアムのようなケースだ。試合やイベントがないときは、高い基地局の処理能力を必要としない。しかしいざ観客が集まり試合やイベントが始まると、急激にトラフィックが増えて基地局に高い処理能力が求められるようになる。

 Cloud RANは、一般的なx86サーバーを使って基地局機能を構成する。「ハイパースケーラーのクラウドサービスを活用することも可能。無線アクセスネットワーク(RAN)のほか、コアネットワークやトランスポートネットワークと同じ汎用サーバーのプラットフォームを使いたいという通信事業者のニーズもある」(藤岡氏)。必要なときだけ、ほかのリソースを基地局に融通するといったことが可能になる。

 Open RANの仕様を策定するO-RAN Allianceの仕様も一部取り込む。エリクソンがサポート予定とするのが、O-RAN Allianceが仕様策定中の「ノンリアルタイムRIC(RAN Intelligent Controller)」と呼ばれるインターフェースだ。

 ノンリアルタイムRICは、データや人工知能(AI)を活用して基地局の機能を制御できるようにするオープンインタフェースである。例えば、天気予報のデータを分析し雨が降りそうだったら、雨の影響を受けやすいミリ波帯から影響を受けにくい低い周波数帯にしてトラフィック処理するといった制御ができるようになる。

 一方でエリクソンの既存設備との相互接続はフルサポートする。Open RANの導入は、既存設備との相互接続をいかに実現するかが課題の一つだ。エリクソンはシェアの高さから、既に世界の通信事業者のネットワークに導入されているケースが多い自社のRUを生かし、vRANの持つ柔軟な能力を実現できるようにする点を訴求する。エリクソンのCloud RANの内容からは、自らのシェアを守りつつ、新興勢のお株を奪うようなOpen RANのメリットを提供していく戦略が読み取れる。まさに王者エリクソンらしい一手だ。

5.DXを成功させるのは「人」、組織に求められる5つの機能とは(12.2 日経XTECH)
本特集では、DX(Digital Transformation)を目指す企業の情報システムに必要なITアーキテクチャー(デジタルアーキテクチャー)とその構成要素を解説してきた。  だが実際にDXを実行するには、論理的なデジタルアーキテクチャーだけでなく情報システムを動かす人々も重要である。そこで今回は、デジタルアーキテクチャーを実現する組織・人材にどういった要件が求められるかを見ていこう。

 従来、情報システムに関わる組織は、あらかじめ明確に決まっているユーザーニーズに対応するために適切な品質・コストのIT化(デジタル化)を進めてきた。

 しかし、ビジネスを取り巻く情勢や顧客ニーズが刻々と変わる昨今では、こうした組織機能(組織として備える機能)だけでは事業に対応しきれなくなってきた。

 不確実性の高い状況に迅速に対処するための組織機能として、新たに確立が求められているのは以下の5項目である。

●デジタルビジョン構想
 全社的なデジタル化の旗振り役として、デジタルビジョンを策定し、デジタル化の目標を定め、企業全体のデジタル戦略の方向性を策定する機能。組織内にこの機能がないと、多数のデジタル化プロジェクトが「立ち上がってはうまくいかずに消える」ことを繰り返してしまいがちだ。これを避けるためには、あらかじめ全社のデジタル戦略を策定して社内に周知し、それに沿って個々の企画を動かしていくことが重要である。

●デジタル事業創発
 デジタル事業を新たに生み出す機能。長期的な視点で自社が社会や生活者に提供できる価値を考え、その価値を反映したデジタルサービスを企画する。そして、サービスを実現するためのプロダクトを開発する。ユーザーの体験価値を最大化するため、楽しさ、快適さ、安心、満足などを感じさせるユーザビリティーの実現を目指す。こうした開発を迅速かつ柔軟に進めていくには、データ活用が重要な役割を果たす。

●既存事業のデジタル化
 業務のデジタル化によって、既存事業の効率や品質を大幅に向上させる機能。一般に、このような社内向けのデジタル化は情報システム部門が担当している。経営・事業上の課題を解決するためのシステム改善の方針を作成し、適正な品質とコストで、可用性が確保されたサービスを提供する。

●デジタルアーキテクチャー・デザイン
 デジタルサービスが稼働するための企業システム全体のデジタルアーキテクチャーを描く機能。企業ごとに異なるニーズや課題を洗い出し、古いシステムとの共存・連携も考慮しつつ、自社に合ったデジタルアーキテクチャーを設計・構築・運用する。

●共通機能
 デジタルサービスを提供するうえで必要となる、基盤のような必須機能。すでに上で説明した4項目の機能全てに共通して必要となる。以下に、いくつか想定される共通機能を挙げた。

・他社とのパートナーシップの推進(パートナリング推進)
・セキュリティーやAI(Artificial Intelligence、人工知能)倫理の検討などデジタル化に伴うリスクの管理(デジタルリスク管理)
・投資・コスト、人材などデジタル化に必要なリソースの管理(デジタル投資・コスト管理、デジタル人材管理)

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