1.5G最速の5Gbps超 QualcommとVerizon、Ericssonが達成(5.23 日経XTECH)
米Qualcomm(クアルコム)は2020年10月20日、5Gビーク時速度として世界初となる5.06Gビット/秒(bps)を実現したと発表した。実験には米VerizonとスウェーデンEricssonが参加。ミリ波帯を使ったキャリアアグリゲーション(CA)にて実現している。
今回は、Ericssonの無線装置とQualcommのSnapdragon X60 5G モデム-RFシステム、第3世代のミリ波アンテナモジュールQTM535を搭載した5G対応スマートフォン型の試作端末を使い、実験室環境にて行われた。
5.06Gビット/秒は、28GHz帯の帯域幅800MHzと通信制御を行う4G LTEの同40MHzを束ねることで実現している。この組み合わせについては、Ericssonの商用無線装置とSnapdragon X55 5G モデム-RFシステムを採用する市販の5G端末類でもサポートされているという。
5Gに対しては、最大10Gビット/秒の通信速度や5ミリ秒以下の遅延時間に加え、90分でのサービス立ち上げ、最大時速500 kmで移動する端末との接続、1km平方当たり100万台の機器との接続、1km平方当たり10Tビット/秒のデータ通信なども期待されている。Qualcommでは、こうした性能の実現に向けても、Verizonほかパートナー各社と連携していくとする。
2.iPhoneという「国民端末」が5Gに対応する意味(10.23 日経XTECH)
「iPhone 12」シリーズ4製品が2020年10月13日(米国時間)に米Apple(アップル)から発表された。事前のリーク情報と思しき下馬評の数々で、新製品発表にもかかわらず新鮮味の少なくなった最近のiPhone発表イベントだが、2021年以降に続く重要な新トピックが含まれている点で今回の新製品は注目に値する。
個人的な話だが、筆者は現在ソフトバンク回線でiPhone 8(日本版)、米AT&Tの回線でiPhone 7 Plus(米国版)を維持している。この2台のiPhoneのうち、iPhone 7 Plusを実に4年ぶりにiPhone 12 Pro Maxで置き換えようかと考えている。iPhone 7 Plusを導入した最大の理由が「シャッター音のしない高性能カメラ携帯が欲しい」というものだったので、今回のiPhone 12 Pro Maxはちょうど筆者の目的に合致している。
iPhone 12で最大のトピックは「4機種すべてが5G(第5世代移動通信システム)対応」という点だが、正直ユーザー的な視点でみればそれほど重要な話ではない。現状で5Gの整備が進んでいる国のほうが少なく、当面はそれほど恩恵を受けられないからだ。特に日本の場合、主要3キャリアと楽天モバイルすべてをみても空港や特定施設でのみ5Gが利用できるという非常に限定的な状況で、これを改めるには最低でも2?3年かかるとみられる。
現状、iPhoneの買い替えサイクルは年々延びつつあるといわれるが、その意味では「5Gという視点」で今回のモデルを見逃して、2021年または2022年に買い替えるという選択肢もある。インフラが整ってから対応機種を購入しても問題ないというわけだ。
今回のiPhone 12が、日本で発売されるモデルについて「Sub-6対応のみ」という問題もある。5G時代のスマートフォンは広域をカバーするLTEに加え、都市圏をカバーするSub-6、都市部の密集エリアを中心にさらに細かい範囲での基地局当たりの端末収容数を増やすミリ波の3つを合わせて運用する。
ミリ波は周波数帯域が広く取れるため5Gの高速通信部分を担う。これがiPhone 12では利用できない点はマイナスにも思える。だが日本だけをみれば、ミリ波のサービスは始まったばかりで当面はエリアも非常に限定的のため、Sub-6だけでも問題ないという考えもある。実際、現在5G対応をうたって日本でリリースされているスマートフォンのうち、ミリ波まで対応している機種のほうが少なく、iPhone 12のSub-6対応でしばらくは問題ないという話に説得力を持たせている。
iPhone 12について、現在ミリ波に対応しているのは米国で発売されるモデルのみであり、しかも実質的に米ベライゾン・ワイヤレス(Verizon Wireless)用を想定したものになっている。10月13日のiPhone発表イベントでは米ベライゾン・コミュニケーションズ(Verizon Communications)会長兼CEOのハンス・ベストベリ氏が登壇し、その場で「5G Nationwide」という新しいサービスの提供を発表している。
同社が2019年から提供していた「5G Ultra Wideband」ブランドの5Gサービスは主に都市部を中心としたミリ波のサービスであり、今回新たに提供される「5G Nationwide」は従来の4G(LTE)の周波数帯域を5G(NR)と共有する形で動作する「DSS(Dynamic Spectrum Sharing)」の仕組みを利用したもの。つまり、これまでのベライゾンの5Gインフラはミリ波を中心としたものであり、米国版iPhone 12のミリ波対応がベライゾンを想定しているといわれるのはこの点にある。
ただ実際のところ、端末でのミリ波対応は非常に困難なのが現状だ。理由は直進性が極めて強いミリ波の特性にあり、端末内のアンテナの周囲に手がかかっただけで電波が一気に減衰してしまう。そのため、ミリ波対応端末のアンテナは端末の四隅に配置することで「手でブロックされない領域を作り出す」点に腐心する必要があり、設計そのものに大きな影響を及ぼす。iPhone 12の米国発売モデルのみ、右側面に謎の部品が存在するのも、このミリ波対応においてアンテナの露出部分を増やすためと考えられている。
筆者の複数の情報源によれば、昨年の2019年時点まではiPhone 12における5G対応はSub-6止まりの計画で、ミリ波対応はそのうちの1つの情報源が可能性について触れていただけだった。だが蓋を開けてみれば、米国モデル限定という条件付きだが、「全モデルミリ波対応」ということになった。これは推測だが、ミリ波中心にインフラ展開を行っているベライゾンの意向が強く働いた結果だと筆者は考えており、「何とかミリ波対応を間に合わせた」のではないだろうか。
こうして苦労したと思われるiPhone 12の5G対応だが、冒頭で「ユーザー視点ではそれほど意味はない」と書いた。実際、エリア面でいえば当面は4G利用が中心になるし、5Gならではのアプリケーションも当面は利用できないだろう。だが事業者目線でいえば、日本での普及率が半数近いiPhoneに5Gが入ることで、一気に5G対応端末が増加し、5Gインフラ整備の意義が出てくる。
事業者目線での5Gの大きな効用として、「基地局当たりの端末収容数が増える」というメリットが挙げられる。電波は有限であり、同じエリアに端末の数が増えてくればつながりにくくなったり、通信速度が大幅に低下したりする。5Gはこうした問題を打開するもので、最終的にはユーザーのメリットとなって返ってくる。iPhoneという「国民端末」が5G対応する意味はこの点にある。
5G対応はさておき、今回筆者がiPhoneを購入するモチベーションはカメラだ。現在カメラ携帯の1つになっているiPhone 7 Plusを購入したのは、iPhoneとしては初のデュアルレンズを採用したモデルであり(だからPlus)、そこで採用されたズーム関連のUIの使いやすさが決め手となった。
カメラに話題を戻すと、今回のiPhone 12 Proシリーズではカメラセンサーが一新されており、47%ほどサイズが大きくなっている。メリットの1つは明るい映像を撮影可能な点で、画像のディテールが潰れにくく細部まで表現できる。これまでのiPhoneの画像は全体に絵としては奇麗なものの、暗所撮影ではディテールが潰れたり、ノイズが載りやすかったりする傾向があったため、この点が解消することに期待できる。
3.AWSで1時間強にわたり障害、PayPayや一部アプリが一時利用できず(10.22 日経XTECH)
米アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)が提供するクラウドサービス「AWS(Amazon Web Services)」の東京リージョンで、2020年10月22日の正午前から1時間強にわたりシステム障害が発生した。スマホ決済サービス「PayPay」や一部のゲームアプリなどが影響を受けサービスが利用しにくい状態になった。
AWSが公開しているシステム状態の一覧表示ページ「AWS Service Health Dashboard」によると、東京リージョンでの障害は午前11時42分から発生した。同時刻から午前11時53分まで、東京リージョン内にある「APNE1-AZ2」と呼ぶデータセンター(アベイラビリティゾーン)にある一部のインスタンスでネットワークに関わる障害が発生。また午前11時42分から午後1時9分まで、同じデータセンターでストレージサービス「Amazon EBS(Elastic Block Store)」の一部で性能が低下する問題が発生した。これ以降は障害が解消し、現在は正常に稼働しているという。
障害の影響で、決済サービスPayPayのアプリが午前11時40分頃から一部利用できなくなった。運営元のPayPayによると、決済機能は午後0時5分時点で正常に利用できるようになり、全面回復を進めているという。マッチングアプリ「タップル誕生」もAWS障害の影響で利用がしにくくなり、運営会社がサービスを一時停止して午前11時56分から午後2時15分まで緊急メンテナンスを実施した。スマートフォン用ゲームアプリ「メイプルストーリーM」やVR(仮想現実)関連サービス「THE SEED ONLINE」なども一時的にサービスを停止している。現時点で未公表のものを含めれば、多数のサービスに影響したとみられる。
4.ゼロトラストの「門番」、セキュアWebゲートウエイ(SWG)とは(10.22 日経XTECH)
ゼロトラストネットワークを構築するのに必要となる技術を解説する本特集「ゼロトラストを支える技術」。第1回は、いつでもどこでもユーザーを守る“門番”として機能する「セキュアWebゲートウエイ(SWG)」を取り上げる。ゼロトラストにおけるユーザー防御の要となる仕組みだ。
セキュアWebゲートウエイ(SWG)とは、エンドユーザーによるインターネット通信をチェックするゲートウエイ(門番)である。インターネット上に存在するプロキシーとして機能し、ユーザーが社内ネットワーク(オンプレミス)にいる場合も、自宅など社外ネットワークでリモートワークしている場合であっても、インターネット上の脅威からユーザーを保護する役割を担う。
例えばユーザーが不審なIPアドレスやURLへアクセスしようとした場合は、SWGがそれをブロックする。不審なIPアドレスやURLはSWGのベンダーが自社でリスト化していたり、外部のリストを利用したりしている。SWGがDNSサーバーとなってアクセス先のIPアドレスをチェックする製品もあれば、SWGが提供するプロキシーがユーザーのSSL通信を復号して、URLのすべての文字列をチェックする製品もある。
正常なWebサイトを利用している場合であっても、通信データはすべてのパケットを“深く”検査する「ディープ・パケット・インスペクション」によってチェックする。データの中にマルウエアが含まれていないかシグネチャーによって検査したり、データの中に含まれるファイルを「サンドボックス」で実行して不審な振る舞いをしないかチェックしたりする方式が採用されている。
さらにはエンドユーザーによるSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)などの利用状況を分析したり利用を制御したりする 「クラウド・アクセス・セキュリティー・ブローカー(CASB)」としての機能や、エンドユーザーが社外のWebサイトに重要情報やファイルをアップロードしようとした際にそれをブロックする「情報漏洩防止(DLP)」としての機能を備えるSWG製品もある。
従来のセキュリティー対策である「境界型セキュリティー」においては、社内ネットワークとインターネットとの境界に設けた「プロキシー」や「ファイアウオール(FW)」、「侵入防止システム(IPS)」などのセキュリティー機器がエンドユーザーを守っていた。しかしユーザーが社外ネットワークにいる場合は、通信はオンプレミスにあるセキュリティー機器を通過しないので野放しになってしまう。
ユーザーに対して常にVPN(仮想私設網)を利用させるという手段もあるが、昨今のリモートワーク拡大の中での運用は、深刻なVPN渋滞を招きかねない。ユーザーが社外でインターネットを利用する際にも、社内にいるときのように通信を守りたい。そういうニーズに応えるためにSWGは登場した。社外ネットワークにいるときにも、ユーザーがSWGを経由してインターネットを利用するよう強制するために、ユーザーのパソコン(端末)にエージェントを導入させるタイプのSWGが一般的である。
ゼロトラストにおけるSWGの役割はどのようなものだろうか。従来の境界型セキュリティーとは対照的に、社内ネットワークであっても「信頼しない」方針とするゼロトラストにおいては、ユーザーの通信や行動はいつでもどこでもその都度チェックし、アプリケーションやデータに対するアクセスを検証するのが望ましい。ゼロトラストにおいてSWGは、ユーザーによるインターネット利用のチェックに使えるほか、境界型セキュリティーの代表的な施策であるファイアウオールに代わるユーザー防御の仕組みとして機能する。
5.札幌での縁が生んだ小売店向けAIカメラ、コロナ危機を乗り切り世界に挑む(10.20 日経XTECH)
AWL(アウル)は小売店向けに「AIカメラ」を提供するスタートアップ企業だ。社長を務める北出宗治は、札幌で結んだ縁から起業に関わることになった。サービス開始直後に襲った想定外の危機を乗り切り、世界を目指す。
ドラッグストアやスーパー、コンビニエンスストアなど向けに防犯カメラの映像をAI(人工知能)で分析するサービスを手掛けるAWL。北出宗治が2016年6月、北海道大学大学院教授の川村秀憲と立ち上げたスタートアップ企業だ。提供するサービスは「AIカメラ」と呼ばれ、防犯カメラが撮影した顧客の行動をAIが分析し、販売促進や品ぞろえなどに役立てる。
北出がAIカメラの事業化を目指したきっかけは、コンサルタント時代にさかのぼる。顧客企業からAIの活用法について何度も相談を受けたのを機に、北出自身もAIの可能性に強い関心を抱くようになった。同じく顧客の1社で北海道を中心にドラッグストアチェーンを展開するサッポロドラッグストア(現サツドラホールディングス)社長の富山浩樹にその話をしたところ、川村を紹介された。
川村はAIの社会実装を推進するための会社設立を考えていた。2015年に川村と会うと「すっかり意気投合した」(北出)。それが縁でAWLの前身であるエーアイ・トウキョウ・ラボを北出と川村を含む5人で創業した。
サツドラとの縁も続いた。AIカメラを中心とする小売業向けのAIソリューションを提供するため、AWLはサツドラの子会社となり、北出自身がサツドラの店舗で店員として2週間働いてみた。サツドラの経営陣やスタッフと店舗運営の課題などについて議論を重ね、AIカメラの潜在市場は大きいと判断。2017年10月、北大構内に札幌オフィスを開設し、実証実験を重ねた。
2018年には、既設の防犯カメラを活用して現場でAI分析ができるエッジ型ソリューションの着想に至ったという。さらに2019年9月、AIカメラを広く販売する目的でAWLはサツドラHDの連結対象から外れた。
2020年2月、AWLは総額8億1000万円の資金の調達に成功する。満を持して、小売店向けサービスの核となる機器として開発した「AWL BOX」と「AWL Lite」を発表した。同時に、これらの機器を使ったサブスクリプション型のサービスの提供を始めた。
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