週間情報通信ニュースインデックスno.1244 2020/10/3


1.東証システム障害で宮原社長会見「富士通と原因究明進める、損害賠償は考えず」(10.1 日経XTECH)
 東京証券取引所は2020年10月1日夕方に記者会見を開き、システム障害の影響で同日の取引が終日停止した問題について謝罪するとともに、経緯と今後について説明した。原因となったハードウエアを交換したうえでシステムを再起動し、あす10月2日午前9時から売買を再開したい意向だ。

 システム障害が起きた原因は、東証の売買システム「arrowhead(アローヘッド)」を構成する運用系ネットワークに含まれる共有ディスク装置1号機のメモリーの故障。発生時刻は午前7時4分だった。共有ディスク装置は、アローヘッドの複数のサブシステムが共通で持つデータを格納している。バックアップとして同2号機があるが、障害時に2号機へ自動的に切り替わる機能が働かなかった。このため、共有ディスク装置内のデータを使う複数のサブシステムが正常に稼働しなくなった。具体的には、「情報配信ゲートウエイ」による相場情報の配信処理と、「売買監視サーバー」による監視処理に異常が発生した。

 障害の影響が証券会社や相場ユーザーなど東証外のシステムへ波及しないよう、アローヘッドと外部システムをつなぐネットワークを午前9時の取引開始前に遮断し、売買を全面停止した。東京証券取引所の宮原幸一郎社長は「市場関係者と協議した結果、(仮に取引時間中に復旧できても)システムを再起動すると(証券会社などから送信済みの注文の扱いなどを巡り)投資家などに混乱が生じることが想定され、終日売買停止することにした」と説明した。

 アローヘッドは2019年11月に刷新しており、故障した共有ディスク装置1号機のメモリーもその際に採用された。故障したメモリーの交換とシステムの再起動を経て、あす10月2日は通常通り午前9時から売買を再開する予定だ。ただ、共有ディスク装置1号機の不具合発生時に、同2号機へ自動で切り替わらなかった原因は「判明していない」(日本取引所グループの横山隆介CIO)といい、開発ベンダーの富士通で解析中とした。

 サイバー攻撃の可能性について同社は、故障した共有ディスク装置が外部とネットワーク接続していないことを理由に挙げ否定している。

2.総務省はもはや「弾切れ」、菅首相が主導する携帯料金の早期引き下げは無理筋か(9.30 日経XTECH)
菅義偉首相が携帯電話料金の引き下げに意欲を示している。就任早々に言明するほどの力の入れようだが、監督官庁の総務省はこれまでも競争促進に向けた施策を次々と打ち出してきた。2019年には通信料金と端末代金の完全分離をはじめ、期間拘束や違約金にまでメスを入れ、現在はMNP(モバイル番号ポータビリティー)手数料の引き下げや無料化も進める。考え得る施策は既に打ち尽くした感があり、「弾切れ」が実情ではないか。

 NTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクの大手3社が携帯電話の契約数シェアで86.2%(2020年6月末時点)を占める寡占状態を切り崩すには「第4の勢力」に頑張ってもらうしかない。だが新規参入の楽天モバイルや格安スマホを手掛けるMVNO(仮想移動体通信事業者)は低廉な料金で健闘しているものの、なかなか乗り換えが進まない現状がある。

 楽天は提供エリア、MVNOは混雑時における通信速度などで課題を残し、こうした弱点がない「Y!mobile」と「UQ mobile」という携帯大手のサブブランドにうまく抑え込まれてしまっている。今さらサブブランドを禁止するわけにもいかず、かといって楽天モバイルとMVNOだけを露骨に優遇すれば公正競争の観点で問題となり、携帯大手が黙っていないだろう。

 やや乱暴かもしれないが、サブブランドは携帯大手の「一物二価」に近い。携帯大手とほぼ同等の品質のサービスを割安に使えるという点で相当にお得だ。にもかかわらずサブブランドの契約数は両社合計で800万件程度にとどまるとみられ、なぜ移行がもっと進まないのか不思議なくらいである。

 サブブランドに限らず楽天モバイルやMVNOを含め、移行が進まない理由の1つに消費者の腰の重さがある。総務省のWebアンケート調査(2020年3月実施)によれば、通信料金が「高いと思う」と答えた人は37.1%(「安いとも高いとも思わない」は41.5%、「安いと思う」は18.5%)。携帯電話事業者の乗り換え意向を聞くと「検討中」は9.9%、「今後可能性がある」は22.8%にとどまる。事業者の乗り換えを考えていない理由(複数回答)は「手続きが面倒くさいため」(40.4%)が最も多い。

 こうした結果を見ると「消費者は携帯料金を高いと感じているが、安くするための実際の行動に移っていない」という姿が浮かび上がる。冒頭で説明した通り総務省はここ数年の取り組みにより、期間拘束や違約金、SIMロックなど乗り換えの障壁となりそうな要素をことごとく見直し、スイッチングコストを下げてきた。これまでの取り組みが消費者に十分伝わっていない可能性もあり、総務省は次の施策を検討する前にキャンペーンなどで見直しを広く呼び掛けたらどうだろうか。

 競争を一気に加速させる特効薬などない。残念ながら、菅首相が望むような携帯料金の早急な引き下げには無理がある。総務省は2019年10月施行の改正電気通信事業法で大なたを振るったばかりであり、まだ一部で混乱も残っている。さらなる混乱をきたす展開にならないことを祈りたい。

 このように考えていたところ、NTTは2020年9月29日、ドコモを完全子会社化する方針を発表した。競争力の強化やコストの効率化を進め、顧客による値下げのニーズにも応えていくという。上記で「特効薬などない」としたものの、唯一、競争が加速するとすれば、大手3社のどこかが大幅な値下げで攻勢をかける展開だ。収益が痛むのは目に見えており、あり得ないと思っていたが、ドコモは踏み込むのだろうか。総務省にとっては願ってもない展開に違いない。

3.建設現場に次々ロボットを投入する鹿島、自社で専門工事部隊を作った理由(9.30 日経XTECH)
経済産業省と東京証券取引所が2020年8月に発表した「デジタルトランスフォーメーション(DX)銘柄 2020」。「日本の先進DX」といえる受賞企業の事例を厳選して取り上げ、DX推進の勘所を探る。鹿島建設は多様な建設ロボットを開発し、現場への展開を進めている。

 鹿島建設はDXの一環で、さまざまな建設作業を自動化するロボットを、機械メーカーなどの協力を得て積極的に開発している。作業員の高齢化と人手不足が進むなか、きつい繰り返し作業をロボットが担うことで生産性向上と働き方改革を目指す。

 その1つが、コンクリート打ちの仕上げ作業を自動化する「NEWコテキング」だ。作業者がタブレットでパラメーターを設定すると、Wi-Fiでデータが送信され自動で動作する。既に現場への展開を進めている段階で、AIによる制御機能を新たに開発中だ。完成すれば、仕上げ作業の生産性をさらに高められるという。

 鹿島建設が機械メーカーなどと共同で開発するロボットはこれだけではない。建物の立体モデル「BIMデータ」のデータを活用する「耐火被覆吹付ロボット」を開発し、鉄骨表面に耐火被覆材を吹き付ける作業を自動化した。従来、被覆材が飛散する吹き付け作業は防護服が必要で、熱中症の危険もあった。耐火被覆吹付ロボットはBIMデータに基づいて高さ5.5メートルまでの吹き付け作業を自動で行う。2020年5月から、このロボットを建設作業に適用している。

 さらに並行して新たなロボットも開発中だという。

4.5G標準の次々期仕様凍結は20年12月に時期決定、3GPPが明らかに(9.29 日経XTECH)
移動通信の標準化団体である3GPP(Third Generation Partnership Project)は2020年9月21日、現行仕様リリース15の次々期に当たるリリース17の仕様凍結時期について、同年12月に確定すると発表した(3GPPのニュースリリース)。今回の発表当日に開催された第89回オンライン会議にて、TSG CT(Core network and terminals:端末と基幹ネットワーク間仕様検討グループ)、TSG RAN(Radio Access Network:無線アクセスネットワーク仕様検討グループ)、TSG SA(Service & Systems Aspects:サービスおよびアーキテクチャー仕様検討グループ)の各議長間で、最善の決定を下すためにさらなる調査を継続することで合意、次回第90回総会(同年12月7〜11日開催)にて、仕様凍結時期を決定することを確認した。

 3GPPでは既に、2021年前半の会議をオンライン会議とすることで議長間の合意がなされているが、今後の会議開催計画については、今後3カ月で明確にしたいとしている。

5.7万人を救う無料のテレワークシステム、「天才プログラマー」が語る開発秘話(9.28 日経XTECH)
新型コロナウイルスにより緊急事態宣言が発令され、企業はテレワークへの移行を求められた。だが、VPN(仮想閉域網)といったテレワークシステムを用意していなかった企業は多かった。そのような企業を救ったのが、NTT東日本と情報処理推進機構(IPA)が構築して運用している「シン・テレワークシステム」である。

 シン・テレワークシステムは無料で利用できるテレワークのシステム。2020年4月から提供している。契約やユーザー登録は一切不要。インターネット経由で自宅のパソコンから会社のパソコンを遠隔操作できる。2020年9月21日の時点でおよそ7万6000人が利用しているという。シン・テレワークシステムは開発からわずか2週間で運用を開始。そして毎日のように機能を増強し、可用性やセキュリティーを高めている。

 シン・テレワークシステムはその透明性も大きな特徴だ。インターネットの黎明(れいめい)期を思わせるようなシンプルなデザインのWebサイト(https://telework.cyber.ipa.go.jp/news/)に多くの情報が掲載され、日々アップデートされている。システムを構成する大量のRaspberry Piの写真などが載っていて興味深いことこの上ない。

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