週間情報通信ニュースインデックスno.1243 2020/9/26


1.NECが次期地球シミュレータを受注、性能は現行機の約15倍に(9.25 日経XTECH)
NECは2020年9月25日、国立研究開発法人海洋研究開発機構から「次期地球シミュレータ(仮称)」を受注したと発表した。受注額は非公表。次期地球シミュレータは地球シミュレータとして4代目になる。

 次期地球シミュレータはマルチアーキテクチャー型構成のシステムで、NECのベクトル型スーパーコンピューター「SX-Aurora TSUBASA B401-8」を684台使うほか、米AMDのプロセッサー「EPYC」や米NVIDIAのGPU「A100」などを組み合わせる。最大理論性能は現行の地球シミュレータの約15倍に相当し、倍精度で19.5ペタフロップス(フロップスは1秒間に処理できる浮動小数点演算回数)を見込む。消費電力は現行とほぼ同等という。

 海洋研究開発機構は2021年3月から運用開始を目指す。2021年初めから外部への供用を目的とした公募は実施する。

2.ゼロトラストを実践するauカブコム証券、導入に不可欠な9つの観点を伝授(9.25 日経XTECH)
従来、企業のセキュリティー対策は主に「境界防御」に基づいていた。境界防御とは、企業のネットワーク境界をファイアウオールなどのセキュリティー機器で守り、侵入を防ぐという考え方である。だが新型コロナウイルスにより、境界防御の弱点があらわになった。リモートワークを導入した企業の多くは、境界防御に基づくVPN(仮想閉域網)の限界を知っただろう。VPNは可用性やセキュリティーの単一障害点になる。

 そこで注目されているのが「ゼロトラストネットワーク」である。ゼロトラストネットワーク(以下、ゼロトラスト)とは、文字通り「何も信用しない」という考え方である。アクセス元のネットワークだけでは判断せず、端末やユーザーなどをチェック。あらかじめ定められているポリシーに基づき、リソースへのアクセス権限を付与する。今回のコロナ禍で、ゼロトラストの導入を検討し始めた企業は少なくないだろう。

 だがゼロトラストはあくまでも考え方であり、実現方法はさまざまだ。また、単一の製品やサービスを導入するだけでは実現できない。そこで参考になるのが先行企業の導入事例だ。

 その1社がauカブコム証券である。同社は2017年にデジタルトランスフォーメーション(DX)を掲げ、働き方改革を進めている。ゼロトラストはその一環だ。同社は9つの観点で既存ネットワークを見直して、ゼロトラストを実践している。このことだけでも、ゼロトラストは単一の製品・サービスを導入するだけでは済まないことがうかがえる。

3.次世代の電気・水道・通信などを連携整備、小布施町が地元ケーブル局などと協定(9.24 日経XTECH)
長野県の小布施町、地元のケーブルテレビ局であるGoolight、自然エネルギー発電事業を展開する自然電力の3者は2020年9月23日、次世代型インフラの実現に向けた包括連携協定を同日に締結したと発表した。シグマクシスもこの包括連携協定に参加する。小布施町は、電気・水道・通信などの各領域に知見と技術を持つこれら民間企業3社と協業することにより、2020年1月に打ち出した総合計画の目標を実現可能な行動計画に落とし込む。

 包括連携協定の参加者は、電気・水道・通信の各分野において、環境に配慮した自律分散型次世代インフラの在り方を検討する。例えば「町有施設における太陽光電気自動車の充電実証実験」や「デジタル施策を可能とする基礎となる地域BWAの整備、ローカル5Gを活用した実証実験」、「災害時にも機能不全になりにくい水道インフラの構築」に向けた検討を行う。

 包括連携協定の目的は、電気・水道・通信などの各領域を個別に検討するのではなく、領域横断での包括連携協定により、整備費用の適正配分と、施策間の相乗効果の最大化を図ることである。

 小布施町では、2020年1月発表の「第六次総合計画」の中で「災害に強いまちづくり」「環境先進都市への転換」「新しい時代の都市インフラ構造の研究と実践」を目指していくと宣言した。小布施町の市村良三町長は、「水、電気、通信などの分野ですでに連携し小布施のまちづくりに関わってきた3社と、未来志向で『環境防災インフラ先進都市」の実現に向けた取り組みをスタートできることを大変うれしく思う。新しいまちづくりのヒントが生まれ、実践につながることを強く期待する」とコメントした。

4.コロナ禍の学校で荒れ狂うランサムウエア、リモート授業を狙う攻撃者の卑しい魂胆(9.23 日経XTECH)
新型コロナウイルスによって混乱している世界中の教育現場。学校は授業の立て直しに必死だ。感染防止策やリモート授業の導入といった工夫で授業を再開する国や地域が増えている。

 だが、そのような努力を踏みにじろうとしているヤツらがいる。ランサムウエア攻撃者だ。米国では8月から9月にかけて始まる新年度を狙ったランサムウエア攻撃が頻発。新年度の初日を延期しなくてはならなくなった学校もあった。

 企業などに比べて学校は守りが手薄といわれている。予算や人員の確保が難しいためだ。このため以前からサイバー攻撃の標的になっている。

 例えばコンサルティング会社の米EdTech Strategies(エドテックストラテジーズ)が運営するWebサイト「The K-12 Cybersecurity Resource Center」によると、2016年1月以降、K-12(幼稚園から高等学校)で発生したセキュリティーインシデント(セキュリティーの事件・事故)は2020年9月14日時点で980件に上るという。

 8月から9月にかけて、新年度を狙ったランサムウエア攻撃が相次いだ。なぜこのタイミングを狙ったのか。コロナ禍で休校を余儀なくされていた学校としてはできるだけ早く授業を再開したいはずだ。そのため「身代金」の支払いに応じやすいと考えた攻撃者の卑しい魂胆が透けて見える。

 ノースカロライナ州のヘイウッド郡学区では8月24日、リモート授業を提供するためのシステムがランサムウエアに感染。リモート授業の開始を延期することになった。システムに保存していた個人情報が流出した可能性もあるという。

 地元メディアによると、数千台ものChromebookを生徒に配布し、新学期から開始するリモート授業に備えていたという。大変な手間だ。それがランサムウエアによって延期されたため、関係者は大いに落胆したと伝えている。

 コロナ禍で奪われた子どもたちの教育機会をさらに奪う、学校へのランサムウエア攻撃も非道な攻撃の1つといえるだろう。

 日本の学校も対岸の火事ではない。リモート授業が続く大学などは格好の標的になりそうだ。改めて警戒する必要がある。

5.オフィス・アズ・ア・サービス、会社でも自宅でもない「第3の場所」を考察した(9.24 日経XTECH)
コロナ禍で大手企業を中心として一気に定着した観のあるテレワーク――。ただし在宅勤務の生産性は、同居する家族構成や作業環境の充実度によっても変わる。ジンズ子会社で個人向けワークスペース事業を手掛けるThink Lab(シンクラボ)の調べによると、「3〜8歳くらいの子どもがいる世帯で作業環境が不十分である場合、集中度合いが最も低かった」という。気分転換を兼ねて近所のカフェに行っても、混んでいて席が取れないのはままあることだ。

 こうした場合、頼りになるのが在宅勤務や職場の代替スペースとなる「シェアオフィス」だ。不動産開発会社などが提供し、個人用作業スペースのほか、会議室や電話用ブースなどを備える。

 シェアオフィスは「サードプレイス(第3の場所)」とも呼ばれる。サードプレイスは、米国の社会学者レイ・オルデンバーグ(Ray Oldenburg)が「交流が生まれる場所」として唱えた概念だが、現在は職場と自宅以外で仕事をする場所の総称として使われることが多い。今回は、コロナ禍が引き起こした企業のオフィス再編の要素として注目されるサードプレイスの動向を考察する。

 企業によるサードプレイスの導入を巡っては「都心部のタッチダウン型や郊外型のシェアオフィスに顕著な需要がある」(ザイマックス不動産総合研究所の中山善夫社長)。タッチダウン型とは外出が多い従業員が立ち寄れる都心部の拠点、郊外型とは住宅地に近い郊外の拠点を指す。企業はシェアオフィス事業者と契約し、これらの拠点を使えるようにすることで、従業員の生産性や満足度が高まることを期待する。

 オフィスの再編にもサードプレイスは活用されている。2020年9月末から「東京ポートシティ竹芝」のオフィスタワーに本社を移転するソフトバンクは出社率50%を想定。在宅勤務に加えて、シェアオフィス「WeWork」の国内拠点の共用エリアを使えるようにする。またPayPayは9月下旬、東京オフィスをWeWork内に移転する。出社率を25%とし、10月下旬からサテライトオフィスを東京都心などに8カ所設け、同時にWeWorkの国内拠点(共用エリア)を利用する。

 2019年10月にオフィスを分散型に再編して本社オフィスを6割削減し、横浜や浦和、船橋など1都3県の7カ所にサテライトオフィスを構えたNECネッツエスアイ。同社は営業担当者向けに、三井不動産の「ワークスタイリング」やザイマックスの「ジザイ」など4社のシェアオフィスを契約している。「拠点の立地や、個室の有無など設備の違いによって使い分けている」(同社)

 シェアオフィスの利点は、従来の不動産賃貸借契約と比べて柔軟に利用できることにある。最低利用期間が短く、共用エリアを使う場合は利用月の登録会員数や、実際に利用した時間数などで課金する料金体系が主流だ。そのため、必要なときに必要なだけ使う「アズ・ア・サービス」として利用できる。

 筆者は、タイプが異なる3カ所のサードプレイスを取材した。その1つは、WeWorkだ。2020年8月末時点で6都市に36拠点を展開する。東京・神宮前にある「WeWork Iceberg(アイスバーグ)」はビルの1階と2階の一部は共用エリア、2階の一部と3階から7階は企業のプライベートオフィスが入居する。プライベートオフィスは1フロアを区分けして複数の企業が利用する形態のほか、フロア単位で1企業が専有する形態もある。立ち寄り利用のほか、サテライトオフィスなど、多様な用途に対応する。

 共用エリアの利用に当たっては1つの拠点を選ぶ。アイスバーグ拠点の共用エリアの月額会費は1人当たり9万2000円(税別、以下同)、東京・晴海の拠点「Daiwa 晴海」の場合は同3万8000円だ。また2020年7月から、WeWorkのプライベートオフィスを契約する企業が、ほかの国内拠点の共用エリアを利用できる新プラン「We Passport」を導入した。

 これからのサードプレイスはどうなっていくのだろうか。コミュニケーション不足や上司が部下の状況を把握しにくいなど、在宅勤務も含むテレワークのデメリット解消を目指して仮想化が進むかもしれない。

 コクヨのワークスタイル研究所の山下正太郎所長は次のように予測する。「従来のワークプレイスはリアルが中心だったが、今後はデジタルツールで行われる仕事がより増える」。新たな領域となりそうなのが、これまでリアルの場でしかできなかった「ハイ・コンテクスト・カルチャー(High-context Culture)」な雑談などをデジタルツール上で行うことだという。

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