週間情報通信ニュースインデックスno.1240 2020/9/5


1.羽田空港で顔パス決済、JALとNECが2020年10月に実証(9.4 日経XTECH)
 日本航空(JAL)とNECは2020年9月4日、旅行領域でのデジタル活用について協業したと発表した。NECが和歌山県の南紀白浜空港などで取り組んでいる実証実験にJALが参画して複数の試験サービスを展開するほか、新たに羽田空港で顔認証決済による買い物の実証実験などに取り組む。

 羽田空港での顔認証決済の実証実験は、JALの関連会社であるJALUXエアポートが運営する売店「ブルースカイ」のうち、第1ターミナル内の一部店舗で2020年10月下旬から始める。あらかじめ今回の実証サービスに登録した搭乗客が売店で買い物をする際、顔認証のみで支払いが完了する。

 南紀白浜空港では、到着エリアに設置したカメラ内蔵のデジタルサイネージに、搭乗客それぞれの預け入れ手荷物がいつ返却されるかの見通しを表示する実証実験を2020年10月下旬に始める。搭乗客の顔認証データを基にマイレージの会員情報を参照し、優先返却の対象となる会員ステータスを保有しているかや、全体の預け入れ荷物数、優先返却の対象の荷物数などを考慮して、返却時刻の見通しを計算する。このほかカメラ内蔵のデジタルサイネージで記念撮影ができるサービスも提供する。

2.「DX銘柄2020」に選ばれた鹿島、業界平均の2倍スコアはデジタル格差拡大の予兆か(9.4 日経XTECH)
 「DX銘柄2020(に選ばれた会社)は、業種平均の2倍のスコアを獲得しており、DX推進に先進的な企業の集合と言える」──。

 東京証券取引所は2020年8月25日、経済産業省と共同で「デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)2020」を選定した。DX銘柄とは、19年度まで「攻めのIT経営銘柄」と呼ばれていたものだ。20年度は選定の焦点をDXに絞り込み、名称をDX銘柄に変更した。

 DX銘柄2020に選ばれた企業は、全部で35社。建設業では鹿島とダイダンの2社が選出されている。両社とも15年度の選定開始以来、6回目にして初となる。鹿島とダイダンは「建設DX」の観点で見ると、全業種と比べても評価に値する取り組みを実践していると認められたことになる。

 鹿島のスコアは、評価対象の6項目全てにおいて、建設業平均よりも飛び抜けて高いことが一目で分かる。

 評価軸とは「ビジョン・ビジネスモデル」「戦略」「組織・制度」「デジタル技術」「成果・成果指標」「ガバナンス」の6つである。設問ごとにスコアリングし、平均を算出している。

 選定対象は、東証(一部、二部、ジャスダック、マザーズ)上場会社の約3700社のうち、エントリーした535社。上記の6つの評価軸の他、直近3年間の平均ROE(株主資本利益率)も選定基準に含まれている。

3.人間より上手に記事やプログラムを書ける、話題騒然のAI「GPT-3」に巨大な弱点あり(9.4 日経XTECH)
  この夏、世界中で話題になったAI(人工知能)がある。米国のOpenAI(オープンAI)財団が発表した「GPT-3」だ。あたかも人間が書いたような自然な文章を作っただけでなく、短い文章からプログラムのソースコードやWebページのレイアウトを生成し、AI研究者の度肝を抜いた。しかしGPT-3には「巨大な」弱点も存在する。

 OpenAI財団が2020年6月に発表したGPT-3は、文章の「言語らしさ」を予測する「言語モデル」というAI技術だ。言語モデルはAIが単語や文章を理解したり自然な文章を生成したりするうえで不可欠な要素であり、機械読解や質問応答、機械翻訳など様々なアプリケーションに応用できる。AIは言語らしさを基準に、単語と単語、文章と文章の関係をベクトルによって表現したり、ある単語の次にどの単語が続くべきかを予測したりするためだ。

 言語モデルは2018年に米Google(グーグル)がBERTを発表して以降、BERTを参考にした新しい手法が次々登場し、性能が目覚ましく向上している。その結果、AIが文章読解のベンチマークで人間の精度を上回るようになったほか、日本でもAIがセンター試験の英語問題で200点満点中185点の成績を達成するようになった。

 GPT-3もBERTと同じくTransformerというニューラルネットワークを多段に重ねて実装した言語モデルである。従来との大きな違いは、そのニューラルネットワークが超巨大であるということだ。モデルのパラメーター数は1750億個で、前バージョンのGPT-2のパラメーター数である15億個と比べて100倍以上の規模となった。そしてモデルが巨大化することで、目覚ましい成果を見せるようになったのだ。

 例えば米国では、大学生がGPT-3を使って生成した偽ブログ記事が、ソーシャル・ニュース・サイトのHacker Newsで注目度1位になるという事態が発生した。GPT-3が生成したのは文章だけではない。起業家のMatt Shumer氏はGPT-3を使って、AIの仕様に関する簡単な文章を記述すると、そのようなAIを作り出すプログラムのコードを生成するアプリケーションを開発した。

 Sharif Shameem氏がGPT-3を使って作ったWebページのレイアウトを生成するアプリケーションも話題になった。「スイカのような見た目のボタン」と入力すると、そのような見た目のレイアウトを実現するコードが生成される。ほかにも簡単な文章から楽譜を生成するアプリケーションや、簡単な文章からSQLクエリーを生成するアプリケーションなどがGPT-3を用いて作られている。

 その性能を世に知らしめたGPT-3だが、現時点では一般企業が活用できるようにはなっていない。公開されているのは論文とAPIだけで、GPT-3本体のソースコードや訓練済みの言語モデルは公開されていないからだ。OpenAIは前バージョンのGPT-2を開発した際にも、フェイクニュースの生成に使われる恐れがあるとして、ソースコードの公開などを遅らせていた。GPT-3についても悪用を懸念しているもようだ。

 ソースコードなどが公開されたとしても、GPT-3には「巨大」な弱点があるため、一般の企業には使いこなせないかもしれない。筆者にそう指摘してくれたのは、日本の自然言語処理スタートアップであるストックマークの近江崇宏氏だ。近江氏は2020年4月に東京大学の特任准教授から同社に転じたAIの専門家である。

 近江氏が指摘するGPT-3の弱点とは、GPT-3のモデルがあまりに巨大であるということだ。近江氏はGPT-3のモデルを使って推論をするために、数百GB(ギガバイト)のメモリーが必要になると指摘する。2018年に公開されたBERTのモデルのメモリー消費量は500MB(メガバイト)だった。わずか2年で言語モデルのサイズが数百倍に達したことになる。

 「数百GBとなると1台のサーバーには収まりきらない。スーパーコンピューター級の大規模クラスターが必要だろう」(近江氏)。推論のためだけにスパコンが必要なのだとしたら、一般企業にはGPT-3は到底活用できない。

 近いうちに、GPT-3のような巨大言語モデルに必要となるメモリー消費量が少なくなり、一般企業にもそれを使いこなせる日が来るだろう。そうしたらAIの応用範囲は格段に広がるはずだ。この分野の最新動向には、ますます目が離せない。

4.川崎重工とオプテージ、スマートファクトリー目指しローカル5Gの実証実験(9.3 日経XTECH)
 川崎重工業、川崎重工グループのベニックソリューション、オプテージの3社は2020年9月3日、ローカル5Gの実証実験を川崎重工播磨工場で実施するための予備免許を取得したと発表した。実験試験局の免許取得の準備を進め、2020年10月にスマートファクトリーの実現に向けた実証実験の開始を予定する。

 3社は、同工場で運用中であり、遠隔操縦で熟練作業者の動きを再現する研削・バリ取り・表面仕上げ用ロボットシステム「Successor-G」において、高精細画像の無線伝送による操作性の検証などを行う。

 将来的には、ローカル5Gの設備を設置した工場間や、工場と建設現場間を高速の光通信で接続し、遠隔地のSuccessor-Gを操作することが期待されるという。

 実証実験において、川崎重工はプロジェクト統括、播磨工場内試験設備の構築、実証実験、検証を担当する。ベニックソリューションは、播磨工場内ネットワークおよび情報システムを構築する役割を担う。オプテージは、ローカル5Gのコア・無線設備の構築、運用、電波伝搬などの試験を行う。

5.シャオミが新製品、4万円台の5Gスマホやフィットネスバンドの最新モデル(8.31 日経XTECH)
 中国の小米(シャオミ)は2020年8月31日、オンラインで製品発表会を開き、KDDIが発売するミッドレンジの5G(第5世代移動通信システム)スマートフォン「Mi 10 Lite 5G」の詳細や、完全ワイヤレスイヤホン、フィットネスバンドなどの新製品を発表した。

 スマートフォンの新製品としては、KDDIが2020年9月4日に発売する「Mi 10 Lite 5G(XIG01)」を紹介した。日本の通信事業者が初めて採用したシャオミ製品で、国内ではKDDIが独占販売する。

 本体背面のカメラは4眼構成。約4800万画素のメインカメラを中心に、約800万画素の超広角、約200万画素のマクロ、約200万画素の深度センサーを配する。AI(人工知能)による画像処理アルゴリズムを搭載するなど、4万円台のミッドレンジ機種でありながらフラッグシップ機種の一部機能を受け継いだとする。

 前面には1600万画素のカメラを搭載。120fpsのスロー撮影やテンプレートを活用した「Vlogモード」に対応する。

 画面は約6.6型で、2400×1080ドット(FHD+)解像度の有機ELを採用する。プロセッサーは米Qualcomm(クアルコム)製のSnapdragon 765G 5G Mobile Platformであり、5G通信(Sub6)に対応する。メモリーは6ギガバイト、ストレージは128ギガバイトを搭載。microSDには非対応。

 KDDIによる端末価格は4万2740円(税込み、以下同)で、端末の回収などを条件にした「かえトクプログラム」の適用による実質負担金は2万9900円である。

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