週間情報通信ニュースインデックスno.1239 2020/8/29


1.富士通が営業へのデザイン思考導入に本腰、3年間で1000人育成(8.27 日経XTECH)
 富士通が「デザイン思考」の専門知識を持つ人材の育成に本腰を入れる。2020年7月に吸収合併したデザイン子会社のデザイナーなどを活用し、顧客と接する営業部隊において今後3年間で約1000人の専門人材を育成する。

 富士通は7月1日付でデザイン子会社の「富士通デザイン」を吸収合併した。同社に所属していたユーザーエクスペリエンス(UX)やプロダクトなどのデザイナー約180人が持つ、デザイン思考に関するノウハウを営業部隊の担当者に伝授する。

 デザイン思考に基づく新サービスや新製品の開発プロジェクトを年に50件程度立ち上げる。営業担当者をこれらのプロジェクトに参加させ、デザイナーを交えた実践的なプロジェクトを経験してもらうことでデザイン思考の知見を学ばせる方針だ。

 今回の施策は営業部隊を対象とするが、今後はシステムエンジニア(SE)などの開発部隊向けの育成施策も計画しているという。

 

2.ソニーモバイルがMVNO向けSIMフリー「Xperia 8 Lite」発表、3万円前後(8.26 日経XTECH)
 ソニーモバイルコミュニケーションズは2020年8月26日、Androidスマートフォンの新製品「Xperia 8 Lite」を発表した。SIMロックフリーモデルとして、日本国内のMVNO(仮想移動体通信事業者)事業者が取り扱いを予定している。

 Xperia 8 Liteのベースとなる「Xperia 8」は、2019年10月にau、UQ mobile、Y!mobileの各ブランドが発売した。これに対してXperia 8 Liteは、国内のMVNO事業者向けモデルとの位置付けになる。

 基本的な仕様はXperia 8を踏襲する。画面は6.0型、縦横比21:9のワイドディスプレイを搭載。背面には1200万画素と800万画素のデュアルカメラを搭載する。本体には3.5mmのイヤホンジャックも搭載する。

 主な訴求点には、情報量の多いワイドディスプレイ体験、デュアルカメラによるSNS映えする写真や動画撮影、有線ヘッドフォンを使えるイヤホンジャック、バッテリー駆動時間の長さや寿命を伸ばす充電機能を挙げている。

 Xperia 8との違いとして、Xperia 8 Liteでは音楽CDや圧縮音源の音質をハイレゾ相当に高める「DSEE HX」に非対応となっている。Xperia 8では最大4色を展開する本体カラーは、Xperia 8 Liteではブラックとホワイトの2色のみとなる。

 販路は国内の各MVNO事業者を予定しており、ソニーストアでの直販はしない。想定販売価格は3万円前後(税込み)になる。

 

3.パッチ未適用のパルスセキュア社VPN、日本企業46社のIPアドレスがさらされる(8.26 日経XTECH)
米パルスセキュア(Pulse Secure)の日本法人は2020年8月25日、脆弱性を修正するパッチが未適用の同社のインターネットVPN(仮想私設網)製品について、ハッカーらが集まるWebサイト上で製品のIPアドレスのリストが公開されていることを本誌取材に明らかにした。リストには世界全体で900台超の機器に振られたIPアドレスが掲載され、日本企業46社が運用する57台分が含まれることを確認したという。不正侵入に使われる恐れがあり、パルスセキュア日本法人は個別に連絡を取りながら早急なパッチ適用を呼びかけている。

 公開されたIPアドレスのリストは、何者かがインターネット空間をスキャンするツールを使い、パルスセキュアのパッチ未適用の製品を探索して作成したと見られる。パルスセキュアが2020年8月までに存在を確認し、IPアドレスから所有する企業を特定して自社製品のユーザーであると確認した。

 2020年8月上旬から各国の現地法人が、企業に直接もしくは販売パートナー経由で連絡を取り、早急なパッチ適用を働きかけているという。日本法人は全ユーザー企業に2020年8月7日に注意喚起メールを送ったほか、2020年8月11日からリストに乗っていた46社へ個別に連絡した。

 問題の脆弱性を巡っては2020年8月25日、IPアドレスだけでなくVPNを使う際のIDやパスワードなども漏洩した可能性があると一部で報道された。これに対しパルスセキュアは、同社が把握したリストに含まれた情報はIPアドレスだけで、機器を使うログインユーザーのIDやパスワード情報などの漏洩は確認できていないとした。

 今回の脆弱性が使われると、機器内の任意のファイルへ外部からアクセスできるようになる。最悪の場合、機器の管理者用のログイン情報や、ログインユーザーのID情報などを一時的に蓄えたキャッシュファイルが外部からアクセス可能になる。機器から流出させたと見られるIPアドレス以外の情報が確認されたとの報道もあり、より詳しい調査が必要になりそうだ。

 

4.国内事例に学ぶゼロトラスト導入、第一歩となるアクセス制御の工夫とは(8.25 日経XTECH)
国内企業でもゼロトラストネットワークの導入がすでに始まっている。その多くが第一歩として導入したのが、多要素認証とIDに基づくアクセス制御だ。

 auカブコム証券は米Microsoft(マイクロソフト)の「Microsoft 365 E5」を中心に、ゼロトラストネットワークに取り組んだ。多くの社内システムをスマホで操作できるように改善しているという。

 まずスマホにはMDM/MAM(Mobile Device Management/Mobile Application Management)ツールである「Microsoft Intune」を導入した。クラウドで提供するIDaaS(ID as a Service)である「Azure Active Directory」を介して、Intuneがアプリケーションの利用を制御する。「例えば業務アプリでテキストをコピーした場合、そのテキストを業務アプリにはペーストできるが非業務アプリにはできないようにするといった制御ができる」(auカブコム証券の石川陽一システム統括役員補佐兼システム開発部副部長兼IT戦略グループ長)。

 パソコンの基本的なアクセス制御にもIntuneを使う。ただし「パソコンは自由度が高いためスマホほど細かな制御ができない」(石川IT戦略グループ長)。そこで「Windows Defenderアプリケーションガード」を追加して対応する計画だ。Windows Defenderアプリケーションガードを使うと、外部サイトなど信頼できないサイトを開こうとすると、自動的に新たな仮想マシンが起動し、そこで動作するEdgeブラウザーにアクセスさせる。この機能を使うことにより、細かなアクセス制御が可能になるという。

 一部の社内アプリについては、米Akamai TechnologiesのID認識プロキシーである「Enterprise Application Access(EAA)」を「VPNの代わりとして導入した」(石川IT戦略グループ長)。

 同社は現状端末からのアクセスをゼロトラスト化しているが、サービス間のゼロトラスト化は実現していない。将来は対応するために、現在ログを収集している段階だという。

 

5.KDDIと伊那市が「スマートドローン」を使う配送サービス、その仕組みと課題(8.24 日経XTECH)
KDDIと長野県伊那市は2020年8月5日、ドローンで商品を配達する買い物サービス「ゆうあいマーケット」の開始を発表した。KDDIのモバイル通信を活用した「スマートドローン」のシステムを活用し、自治体が運営主体となる初のドローン配送事業とのことだが課題も多い。どうやってドローンを使った商品配送を実現しているのだろうか。 

 モバイル通信を活用してドローンの目視外飛行を実現する「スマートドローン」のプラットフォーム開発に力を入れているKDDI。韓国の通信事業者であるLG Uplus(LGユープラス)と同事業で提携関係を結ぶなど、スマートドローンの事業化に向け積極的な取り組みを進めている。 

 そのKDDIがスマートドローンの事業化に向けた新たな取り組みの1つを発表した。2020年8月5日から長野県伊那市と伊那ケーブルテレビジョン、そしてKDDIがドローンによる商品配達をする買い物サービス「ゆうあいマーケット」の提供を始めた。 

 これは伊那市の買い物困難者を支援するため、注文された商品についてスマートドローンを活用して配達するというもの。伊那市には中山間部に住む人が多く日々の移動が大変なことに加え、少子高齢化も進んでおり買い物困難者も増えている。こうした人たちを支援するために取り組む事業になる。 

 具体的には、伊那ケーブルテレビジョンのケーブルテレビを使って300以上の商品の中から注文してもらうと、その商品をドローンで近くの公民館まで配送する仕組みだ。午前11時までに注文すればその日の夕方には商品が届くという。注文者は公民館まで受け取りに行くか、受け取りに行けない場合はボランティアが公民館から自宅まで配送する。 

 このサービスを利用するには商品の購入代金の他に月額1000円のサービス利用料が必要になる。料金は毎月のケーブルテレビの料金と一緒に請求される。ケーブルテレビを普段から利用している人であれば、難しい操作を覚える必要はなく、簡単に買い物ができる。 

 KDDIはこれまで、伊那市とスマートドローンのプラットフォームを活用した配送サービスの構築に向けた実証を進めてきた。今回、ゆうあいマーケットという形で正式サービスの実現に至った。スマートドローンを運用するためのシステムはKDDIが伊那市に提供しているが、運用主体は伊那市になる。自治体運営のドローンによる配送事業は国内初になるという。 

 今回のサービス実現に当たって重要なポイントが2点ある。1つは目視外飛行、つまり人の目が届かない場所でドローンを飛行させることだ。ドローンが飛行するルートは河川の上空など、人の通らない場所を中心に設計しているというが、目視外飛行でも安全性を確保するには、ドローンの飛行状況を確認する必要がある。 

 そこでKDDIではLTEの通信網を活用し、ドローンに搭載したカメラからの映像を伝送して確認したり、事前のフライトプランを設定したりできるようにしている。さらにドローンのメンテナンスや操作などの訓練を地元の運営事業者に教育するための仕組みの構築やサポートなどもしているという。 

 もう1つはドローンの機体だ。今回のサービスに用いられるのはプロドローンの「PD6B-Type III」という流通に特化して開発された大型ドローンである。25キログラム以上の重量の荷物を搭載しての目視外飛行ができる許可を国土交通省から得ている点が特徴になるという。 

 もっとも実際の運航では安全性なども考慮し、積載物は最大約5キログラムまで、運航距離も7キロメートルまでとしている。ただ性能上はもう少し長い距離を飛ばせる他、25キログラム以上の荷物を搭載しても運航できるという。 

 ただ積載量が5キログラムでは運べる荷物に限界がある。そのため利用者が多い場合や、重い荷物を運ぶ場合などはドローンが利用できない。また、これはドローンの特性上の問題だが、天候が悪い場合は飛行させられない。 

 実際のところ、ゆうあいマーケットでは全ての荷物をドローンで運ぶのではなく、軽自動車も併用している。結局、全てを車で運んだ方が効率は良いようにも思えるが、KDDI経営戦略本部ビジネス開発部ドローン事業推進Gの博野雅文グループリーダーは「小口配送や即時性がドローン配送のメリットだと思っている」と回答。双方の組み合わせがトータルでの運送コスト削減につながるとしている。 

 ビジネスという視点で考えた場合、月額1000円の料金を取るとはいえ、対象となる世帯が多いわけではないことから採算性も気になるところだ。博野グループリーダーは「今は採算が合わない」と述べる。当面は伊那市からの補助を受けながら展開するというが、コスト削減や効率化などの取り組みに加え、拠点を拡大して飛行回数を増やすことで、加入者を増やして3〜5年といった期間で採算性を確保したいとしている。 

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