週間情報通信ニュースインデックスno.1236 2020/8/8


1.NTTデータの2021年3月期決算は減収の見込み、設立から続く32期連続増収に黄色信号(8.7 日経XTECH)
NTTデータは2020年8月7日、2021年3月期の連結業績見通し(国際会計基準)を発表した。売上高は前期比4.3%減の2兆1700億円を見込む。見込み通りとなれば、設立以来の増収が32期目にして途切れることになる。同社は2020年5月14日に2020年3月期の業績を発表した際、2021年3月期の連結業績予想を公表しなかった。

 今期に減収を見込む理由として、同社は新型コロナウイルス感染症拡大による景況感の悪化を挙げた。特に国内外の一般法人向けビジネスでIT投資が抑制傾向にあるという。配当は前期と同額を見込む。「リーマン・ショックのときとはITの役割が異なり、ITで新しいビジネスを生み出す時代となった。企業もITやデジタルを生かして事業を回復させていくと考えており、当社のノウハウを生かして社会に貢献したい」。本間洋社長は現状認識の厳しさを踏まえ、意気込みをこう話した。

 同社が同日発表した2020年4〜6月期連結業績(国際会計基準)は、売上高が前年同期比0.7%増の5309億円で、営業利益は前年同期比10.6%減の267億円の増収減益だった。

2.「全米規模の5G SAサービス展開は世界初」、T-Mobileが開始(8.7 日経XTECH)
米T-Mobileは、2020年8月4日、米国全土でのSA(standalone)5Gネットワークサービスを開始すると発表した(T-Mobileのニュースリリース)。商用SA 5Gを全国規模で展開するのは世界初の試みとしている。

 同社では、既存の4G基幹ネットワークを利用したNSA(Non-standalone)での5Gサービス提供推進が一段落したとし、今後は新しい5G基幹ネットワークを使って、より多くの地域に高速、低遅延、大量機器接続サービスを提供していきたいとしている。既に実験では、遅延性において40%の改善がみられたとし、将来的には、ネットワークスライシング技術と組み合わせることで、自動運転車やリアルタイム翻訳など、さまざまなアプリケーションを実現していきたいとしている。

 これまでT-Mobileでは、600MHz帯と既存の4G基幹ネットワークを組み合わせてNSA 5Gを実現していたが、近い将来、これらをすべてSA 5Gに移行するという。今回発表したSA 5Gにより、1つの電波塔で何百平方マイルの地域をカバーし、建物内への通信状況も改善する。5G対応面積も30%増となり、新たに全米2000の都市や町への5G提供が可能になる。現時点で、全米7500 の都市や町で、130万平方マイルのカバレッジを実現し、米AT&Tと比べて2倍超、米Verizonに対しては1万倍規模の5Gネットワークを提供可能になるとしている。

 今回の5G基幹ネットワーク構築にあたっては米Cisco SystemsとフィンランドNokia、5G無線インフラ構築ではスウェーデンEricssonとNokiaが協力している。端末についても、中国OnePlus、米Qualcomm、韓国Samsung Electronics(サムスン電子)の協力を得て、ソフトウエアアップデートだけでSA 5Gへのアクセスが可能になるとしている。

3.大阪ガスがテレワーク混雑を1カ月で解消、高負荷部分を見極め外部に切り出す(8.3 日経XTECH)
「テレワークする社員数が増え、画面が固まってしまったり、入力が遅れたりしていた」――。大阪ガスのイノベーション本部情報通信部ITインフラ・セキュリティチームに所属する小倉政毅氏は2020年4月における同社のテレワーク環境について、こう振り返る。

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い開始したテレワークだったが、大阪ガスも他の企業と同様に、社員が自宅から社内システムにアクセスする際の処理速度が出ないことに悩んでいた。 それが「ゴールデンウイーク明けに気がついたら処理性能が速くなっていた」(大阪ガス社員)という。どう解決したのだろうか。

 大阪ガスはゴールデンウイーク中に既存の仮想環境をうまく拡張することで、処理性能の課題を解決した。性能低下を1カ月で解消したことになる。

 同社でも2020年3月から4月にかけて、テレワークをする社員が増えていった。社員が使うパソコンの約7割を仮想デスクトップ環境(VDI)で構築していたこともあり、テレワークへの移行はスムーズに進んだ。しかし、非常事態宣言が発令された2020年4月7日あたりからサーバーのCPU使用率は95%を超えるほどに高まり、徐々に遅延が目立つようになってきた。VDIに2つの負荷が増えたからだった。

 1つは同時接続数の増加だ。社員が使うパソコンの残り3割に当たる「ファット端末」もVDIで接続するよう変更したことが招いた。

 もう1つは「専有型」VDIのニーズが増えたことだ。大阪ガスは2種類のVDIを運用している。サーバーに配置したOSやアプリケーションを複数のユーザーが「共有」する方式と、仮想サーバーに複数の仮想OSを配置し、その上に各人が「専有」するデスクトップ環境を構築する方式である。

 前者は決まったアプリケーションしか使えないため自由度は低いものの、少ないリソースで多くのユーザーが使える利点がある。対して後者は、部署で必要なアプリケーションを選べるなど自由度が高い半面、サーバーへの負荷も高くなる。

4.中国バイトダンスの動画SNS「TikTok」、自治体や行政で進む活用とそのリスク(8.3 日経XTECH)
中国の北京字節跳動科技(バイトダンス)が展開する動画投稿サービス「TikTok」。ここ最近行政や自治体と積極的に提携している。2020年7月21日には大阪府と事業連携協定を発表した。若者を中心に多くのユーザーを抱えるプラットフォームとなったTikTokだが、それを活用する行政や自治体、そしてサービスを提供する側のバイトダンスにはどのような狙いがあるのだろうか。

 TikTokが日本でブレイクしたのは2年前の2018年のこと。以降、若い世代を中心に利用が広がっている。音楽に合わせたリップシンクやダンスなどの動画が多いイメージのTikTokだが、利用者の拡大とともに投稿される動画の幅も広がっている。最近では自身の日常などを動画で伝えるVlogを投稿するのに活用する人も多い印象だ。

 TikTokの動向を追っていると、ここ最近目立つのが行政や自治体と連携した取り組みが急増していることだ。バイトダンスは2019年8月に横浜市と連携協定を締結し、TikTokを活用した乳がん検診などの医療広報に取り組んでいる。横浜市との提携を皮切りに、以降自治体との連携を急拡大している。

 横浜市、そして神奈川県の他、2020年に入ってからは神戸市、埼玉県、直近では2020年7月21日に大阪府と事業連携協定を結んだ。TikTokのクリエーターなどを活用しながら、広報活動を中心にTikTokを利用するとしている。

大阪府の吉村洋文知事(左)とバイトダンス日本法人の山口琢也執行役員公共政策本部長。バイトダンスはTikTokの活用に関して自治体との連携協定を強化している。2020年7月21日に大阪府と政府情報や大阪の魅力発信支援のため事業連携協定を締結した(出所:バイトダンス)

 事業連携協定に限らず、自治体がTikTokを積極的に活用する事例は他にもある。例えば2020年2月には東京都が公式アカウントを開設。最近は毎日、新型コロナウイルスに関する最新情報をライブ配信している。

 なぜ行政や自治体がTikTokの活用を進めるのか。1つはTikTokが若年層を中心に多くの利用者を獲得しているためだ。プロモーションの場として活用しやすい点が挙げられる。行政や自治体が発信する情報は若年層に届きにくい傾向があるだけに、そうした人たちへリーチするにはTikTokが向くと判断しているのだろう。

 行政や自治体はTikTok以外にもさまざまなソーシャルメディアとの連携を進めている。だが単にアカウントを開設して動画などを公開しただけでは、興味を持っている人にしか見てもらえず、多くの人にリーチするという点では課題がある。

 TikTokの場合、全ての投稿が一定数のユーザーのフィードに必ず表示されるという独自のレコメンドの仕組みを採用している。そのため他のソーシャルメディアよりも、利用者に動画が届きやすい側面がある。行政などのプロモーション用途として活用しやすいことも、利用が広がっている要因となっているようだ。

 一方でバイトダンスが行政などとの連携を積極化する背景には、メディアとしての信頼性を高めるためではないかと考えられる。TikTokは短期間で巨大なプラットフォームに成長したが、一方で若い利用者が中心であることから、特に未成年の利用に関する安全性、健全性に対して懸念を持たれやすい。

 もちろんバイトダンス側も安全性を確保し、健全性を高めるために、ペアレンタルコントロール機能の提供や、不適切動画の削除、そして親子向けの啓発イベントの実施などさまざまな取り組みを展開している。これらに加えて行政などと連携を強めることは、TikTok自体が健全に活用されているプラットフォームであることのアピールにつながる。

 双方にとってメリットがあるだけに、行政や自治体がTikTokを活用する動きは今後も広がりそうだ。ただ一方で、ここ最近TikTokを巡っては世界的に政治的対立の影響が広がっている。今後を考えた場合そのことが活用のリスクとなる可能性がある。

 TikTokは日本だけでなく世界的に人気を得ているサービスだが、中国企業が提供していることもあり、政治的対立に巻き込まれるケースが顕在化している。例えば最近中国との関係が悪化しているインドでは、安全保障の観点から2020年6月29日に59の中国製アプリの利用を禁止すると発表。その中にはTikTokも含まれている。

 また各種報道によると中国との対立を強めている米国でも、TikTokの使用禁止に向けた検討を進めているようだ。中国の通信機器大手である華為技術(ファーウェイ)に対する米国の制裁が日本にも波及し、携帯電話各社の機器調達に影響を与えていることを考えると、仮にTikTokが米国で禁止されたとなればその影響が日本に及ぶ可能性は十分あり得るだろう。

 実際2020年7月28日には、自民党のルール形成戦略議員連盟がTikTokなど中国企業の提供するアプリの使用制限を政府に提言する方針を固めたと報道された。米国などの動きと連動し、国内でも規制を進めようとする動きが表面化しつつあるようだ。

 行政機関は真っ先にその影響を受けることとなるだけに、今後TikTokに対して各国がどのような対応を取るのかは、TikTokの活用を考える上でも注視する必要がある。最近は政治がITの世界に不透明感を与える出来事が増えているだけに、非常に気になるところだ。

5.知っておきたい無線LANの重要キーワード、「Wi-Fi 6」とは何か(8.3 日経XTECH)
Wi-Fiはスマホやタブレットにとっては日常的に使うネット接続手段で、最近は小型・薄型のノートパソコンも有線LANポートがなくWi-Fiだけでネットに接続可能なものが増えている。Wi-Fiの特徴を理解して適切に設定することが、ネットの快適な利用につながる。今回はぜひ知っておきたいキーワードとして、「Wi-Fi 6」について説明する。

 Wi-Fi 6は、無線LANの最新規格であるIEEE 802.11ax(以下、11ax)の業界団体における呼称である。11axは現在普及しているIEEE 802.11ac(以下、11ac)に代わり、ここ数年で主流の規格になるとみられる。

 現在11axの規格は策定を前提とした技術仕様案(ドラフト)だが、そのまま策定される見込みで対応製品が多数発売されている。パソコン本体に関しては、米Intel(インテル)の「第10世代インテル Core プロセッサー」がWi-Fi 6をサポートしている。このCPUを搭載したノートパソコンを中心に、2019年末ごろからWi-Fi 6対応パソコンが数多く発売されている。

 「iPhone 11」シリーズや現行の「iPad Pro」シリーズ、Androidスマホの一部などのモバイルデバイスもWi-Fi 6に対応しており、スマホやタブレットにも浸透しつつある。Wi-Fi 6対応の無線LANルーターも各社から発売されており、安いものだと1万円を切る価格で購入できる。

世代 Wi-Fi Allianceによる呼称 規格 最大通信速度 規格策定年
第6世代 Wi-Fi 6 IEEE 802.11ax 9.6Gビット/秒 2020(予定)
第5世代 Wi-Fi 5 IEEE 802.11ac 6.93Gビット/秒 2014
第4世代 Wi-Fi 4 IEEE 802.11n 600Mビット/秒 2009
第3世代 − IEEE 802.11g 54Mビット/秒 2003
第2世代 − IEEE 802.11b 11Mビット/秒 1999
− IEEE 802.11a 54Mビット/秒 1999
第1世代 − IEEE 802.11 2Mビット/秒 1997

 Wi-Fi 6のデータ変調方式はWi-Fi 5の「256QAM」から「1024QAM」になり、いちどにより多くのデータを送れるようになった。また通信の間隔を示す「サブキャリア間隔」が4分の1に短縮され、これも高速化に寄与している。

 またOFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)技術のサポートと、MU-MIMO(マルチユーザーMIMO)技術のサポート範囲の拡大によって、通信の割り当て方法がより最適化され複数台接続したときに効率の良い通信ができるようになった。

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