週間情報通信ニュースインデックスno.1234 2020/7/25


1.三菱UFJ銀行が書類スキャンのAIロボットを導入、ホチキス外しも人手いらず(7.22 日経XTECH)
三菱UFJ銀行は2020年7月22日、米Ripcord(リップコード)の書類スキャンロボットの導入を発表した。従来紙で管理していた書類を、人工知能(AI)技術を使ったロボットによってスキャンし、場所にとらわれない業務環境の確立を目指す。同行の国内拠点にロボットを配置し、2021年上期よりスキャンを開始する予定だ。

 同行は印鑑票という顧客の印影や個人情報を記載した書類を取引に利用する。3億ページ以上の印鑑票を複数の倉庫に保管し、必要に応じて専用端末から参照している。しかしホチキス留めされた関連書類などの電子化は進んでおらず、事務処理の効率が悪かった。Ripcordのロボットによって、ホチキス留めされた書類の取り外しを含め、印鑑票を人手の介入なしに電子化する。

 RipcordはロボットやAI技術を活用した紙文書の電子化などを事業とするスタートアップ企業だ。AIを利用しホチキスを自動で外す機能やOCR(光学的文字認識)で読み取った情報のインデックス化技術を特徴とする。

2.5G基地局3倍へ4G転用、ドコモが懸念する「なんちゃって5G」(7.22 日経XTECH)
総務省は2020年6月、23年度末までに携帯各社が整備する5G(第5世代移動通信システム)の基地局数を、当初計画の3倍となる21万局超に引き上げる目標を公表した。20年9月までに既存4Gで利用する周波数帯を5Gに転用できるように制度改正し、携帯各社の5G基地局整備を促す考えだ。ソフトバンクとKDDIが5G基地局整備の大幅前倒しを表明する一方、慎重な姿勢を崩さないのがNTTドコモだ。4G電波の転用では速度が出ない「なんちゃって5G」にとどまるという懸念を示す。

 筆者が先日NTTドコモ社長の吉沢和弘氏にインタビューした際、同氏が最も語気を強めたのは4G周波数帯を5Gに転用する話題の時だった。吉沢氏は「既存周波数帯を5Gに転用する方針に同意するものの、4G帯域を5Gに転用しただけでは速度が出ない。ピクト表示は5Gだが4Gと性能が変わらない“なんちゃって5G”だ。利用者が有利誤認しないように注意を図るべきだ」と強い口調で指摘した。

 4G周波数帯を5Gに転用する総務省の新たな方針は、ソフトバンクらの強い要望によって実現した。5G向けに携帯各社に割り当てられた3.7GHz帯、4.5GHz帯、28GHz帯という周波数帯は電波が遠くまで飛びにくい。電波が飛びやすい4G周波数帯を5Gに転用できれば、5Gエリアを一気に広げられる。

 一方のデメリットは、吉沢氏が指摘するように、4G周波数帯の帯域幅をそのまま5G に転用するだけでは速度は4Gと変わらない点だ。それが「なんちゃって5G」たるゆえんだ。

 ソフトバンクとKDDIは21年度末までにそれぞれ、5G基地局を5万局に増やす方針を示す。当初の計画を大幅前倒しできた理由の一つが4G周波数帯の5Gへの転用だ。ソフトバンク関係者は「制度整備前であるため具体的にはこれからだが、4G向けの700MHz帯や1.7GHz帯から5Gへの転用を進めたいと考えている。4G周波数帯を5Gに転用したエリアでは、当初は1Gビット/秒の速度を実現していきたい」と打ち明ける。

 これに対しドコモの吉沢氏は「当社も既存周波数帯の活用を進めるが、21年度末までに5G基地局を2万局とするドコモの方針は、あくまで5G向けの新たな周波数帯で実現する。高速・大容量を提供できる5G向け新周波数帯を積極的に展開する。利用者保護の観点から誤解を受けないようにすべきだ」と力を込める。

 ただし4G周波数帯を5Gに転用した場合に速度が出ないという問題は残ったままだ。総務省は「ユーザーがどの程度の最大通信速度が出るのか把握することができるように、エリア別のマップやリストを公表するなど、適切な周知手段をもってユーザー保護に努めていくことが望ましい」と指摘する。

3.都が「スマート東京」のモデル街を3件選定、大丸有と竹芝、豊洲で「都市OS」実装(7.21 日経XTECH)
東京都は2020年7月17日、デジタル技術で東京のポテンシャルを引き出す「スマート東京(東京版 Society5.0)」の実現に向けた都市実装を推進するため、都内3つのプロジェクトを選定し、支援すると発表した。選ばれたのは、「大手町・丸の内・有楽町地区(大丸有地区)スマートシティプロジェクト」「Smart City Takeshiba(スマートシティ竹芝)」「豊洲スマートシティ」だ。

 地域に密着したリアルタイムデータの収集・分析や、AI(人工知能)を活用したサービス展開をサポートし、東京のスマートシティー構想を加速させる。プロジェクトの実施にかかる費用を都が補助。20年度の補助上限額は4000万円、補助率は2分の1以内とし、最大3年の期間を予定している。

 デロイト トーマツ コンサルティング(東京・千代田)が都からの受託事業として、「スマート東京(東京版 Society5.0)の実現に向けた先行実施エリアプロジェクト」に携わる。各プロジェクトに助言し、スマート東京の社会実装モデルの確立と都のスマートシティー構築をバックアップする。

 今回選ばれた3つのプロジェクトを比較すると、共通する実装モデルが2つある。1つは「都市OS」、もう1つが「エリアDX(デジタルトランスフォーメーション)」だ。

 都市OSとは一般に、リアルタイムのデータ流通プラットフォームを街に実装することを指す。このプラットフォームを、街を構成するインフラの1つに見立てた「基本ソフト(OS)」に位置付ける。

 一方、エリアDXは、街のデジタルツイン(電子的な双子)上での各種シミュレーションを参考にしながら、都市デザインを再構築していくものだ。収集したリアルタイムデータをデジタルツインに適用し、交通や防災、商業(地域活性化)、エネルギー管理などをコンピューター上のモデルで検証する。その結果を現実の街に反映して、都市デザインを変えていく。まさに街のデジタル変革といえる。

4.早くも出現、「格安5G」を試して分かった困ること(7.21 日経XTECH)
携帯大手3社が2020年3月下旬に満を持して始めた5G(第5世代移動通信システム)の商用サービスより安く5Gを使える手段が、早くも出てきている。MVNO(仮想移動体通信事業者)による5Gのサービスが始まり、安価な5Gスマホが発売されたのだ。最近この組み合わせを使う機会があったので、感じた点を述べたい。

 5Gを使えるMVNOはLogicLinksの「LinksMate」だ。6月8日に、NTTドコモの5G回線を使う「5G回線オプション」の提供を開始した。SIM1枚あたり月額500円(税別)を加算すると5Gを使えるようになる。同社はLinksMateに多くいるゲームユーザーが5Gの特徴である高速、低遅延、多数接続のメリットを享受できると考えて、5Gをいち早く使える環境を整えたという。

 筆者はデータ通信のみ(通話なし)、月間5Gバイトのプランに加入した。2020年9月末までキャンペーンが実施されており、5G回線オプションの料金は無料になっている。よって現在の月額料金は税別1380円(1380円+オプション料500円−キャンペーン割引500円)となる。

 5Gスマホは中国・華為技術(ファーウェイ、Huawei)の「HUAWEI P40 lite 5G」を購入した。SIMロックフリーの製品で、7月中旬時点のAmazon.co.jpにおける販売価格は3万9800円(税込み)だ。この組み合わせだと、4GのMVNO+SIMロックフリースマホと料金・価格はほとんど変わらない。商用サービス開始から3カ月弱と考えると、かなり早い段階でこなれた価格になったと感じる。

 SIMロックフリースマホは、購入前にスペックをチェックする際、加入している携帯電話事業者が使用している周波数帯をサポートしているかどうか確認するのが一般的である。海外メーカー製の一部スマホなどで、日本の携帯電話事業者が使用する全ての周波数帯をサポートしていないものがあるためだ。

 4Gは「Band+数字」、5Gは「n+数字」で対応する周波数帯を表す。事業者別に見ると以下の箇条書きのようになる。n77、n78、n79は「Sub6」と呼ばれる6GHz以下の周波数帯で、既に基地局が運用されている。

 n257は「ミリ波」と呼ばれる28GHz帯の周波数帯だ。電波はSub6に比べて飛ばない一方で、使用する周波数の幅が広いためより高速な通信を期待できる。NTTドコモの場合、28GHz帯の基地局の運用は2020年夏以降に始めるとしている(7月20日現在、まだ運用は始まっていない)。

NTTドコモ:n78、n79、n257
KDDI(au):n77、n78、n257
ソフトバンク:n77、n257
楽天モバイル:n77、n257(サービス開始前なので未確定)

 P40 lite 5Gはn77、n78、n79に対応。n257は非対応となっている。28GHz帯を使えるスポットの数や場所は今後明らかになっていくので、n257に非対応であることがどのくらい使用感に影響するのかは未知数だ。

 そして現在の5G商用サービスは、4Gで制御信号を送っている。よって制御信号を送る4Gのバンド(アンカーバンドなどという)にも対応していなくてはならない。NTTドコモの場合、アンカーバンドの詳細は公表されていないが、一例として4Gで広く普及しているBand1(2GHz帯)やBand19(800MHz帯)などをアンカーバンドとして運用しているという。

 こうして整理してみると、5Gスマホのスペック確認作業は4Gより複雑になる。

 現時点で5Gエリアはまだ狭いが、携帯電話事業者がリストを公開しているので場所はすぐ分かる。今回は五反田駅周辺とドコモショップ丸の内店の2カ所に出向いてつないでみた。

 アンテナピクト表示が「5G」に切り替わったポイントで速度を測定したところ、2つのエリアのいずれでも下り方向が18Mビット/秒〜23Mビット/秒程度という結果になった。LogicLinksによると、これまで5G通信検証時に確認した最大値は数十Mビット/秒だという。それを踏まえると筆者が測定した通信速度はLinksMateのネットワークが混雑していた場合はあり得るが、値を見て最初に持った感想は「5Gなのでもっと速度が出ていいのではないか?」だった。

 と言うのは、ドコモショップ内の「ドコモ5G」体験コーナーにあった5Gスマホで速度を測定してもらったところ、下り方向は約1.1Gビット/秒で驚くべき差があった。LinksMateは独自の設備も使っているので異なる部分もあるが、使っている回線は同じである。LinksMateの速度がNTTドコモのサービスと同じはずだとは思わないが、何らかの要因で本来の速度が出ていないか、正しく測定できていない可能性はありそうだ。

5.新型コロナ対策も充実、東京都が無料で使えるサテライトオフィスを多摩3市に開設(7.20 日経XTECH)
東京都は2020年7月20日、多摩地域の3カ所に、自宅以外の場所でもテレワークができるサテライトオフィス「TOKYOテレワーク・モデルオフィス」を開設した。都内に在住または在勤で、企業などで働く人が無料で利用できる。フリーランスで働く都内在住の人も使える。サテライトオフィスやテレワーク環境の最新設備をそろえるなどモデルルームとしての役割も果たす。

 開設したのは府中、東久留米、国立の3市で、いずれも民間のサテライトオフィスが少ない多摩地域である。いずれも席数は最大で60席前後で、駅から徒歩数分にある。執務用のフリーアドレス席やブース席ほか、会議室やWeb会議用ブースなどを設けた。

 新型コロナウイルス対策も講じた。細菌やウイルスの増殖を抑える抗菌剤をあらかじめ噴霧したり、天井部分が空いて換気ができる会議スペースではあえてノイズ音を出すことで会議の内容が外部へ分からなくするサウンドマスキングと呼ぶ仕組みを導入したりしている。

 利用するには、企業や利用者としての事前登録や予約が必要となる。営業時間は祝日や年末年始を除く月曜日から金曜日の午前9時から午後7時まで。東京都はTOKYOテレワーク・モデルオフィスを2021年3月末まで設置する予定という。

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