週間情報通信ニュースインデックスno.1227 2020/6/6


1.AI活用が成否を握る、ゼロトラストネットワーク最大の難所(6.5 日経XTECH)
 ゼロトラストネットワーク導入における最大の難所はセキュリティー対策の実装だ。可能な限り多くのシステムのログを常時監視・分析するのが望ましいが、そこが難しい。AI(人工知能)を活用して脅威分析を自動化できるかどうかが、ゼロトラストの成否を握る。

 ID基盤整備とデバイス保護が済んだら、いよいよ本格的なゼロトラスト構築が始まる。目指すのは利便性向上と、セキュリティーの強化だ。

 ユーザー企業にとって最も分かりやすい利便性が「脱VPN」だ。新型コロナ禍がいつ終息するか分からない中、テレワークの拡大と生産性向上が最優先課題となっているからだ。

 LIXILは社内の業務アプリがVPNを使わずに社外から利用可能になるアイデンティティー認識型プロキシー(IAP)を導入することで、テレワーク環境の脱VPNを果たした。

 同社は次なるステップとして、支社や営業所、ショールームなど国内外に800カ所ある拠点やグループ会社と本社データセンターを結ぶ社内網についても、脱VPNや脱専用線をもくろむ。

 同社はこれまで、専用線やIP-VPNなどを使って社内網を構築し、拠点やグループ会社には本社データセンター経由でSaaSを利用させてきた。現在は一部の拠点で、本社データセンターを経由せずにインターネットへ直接接続させる「インターネットブレイクアウト」を試験導入している。WAN回線や本社データセンターを経由しなくなるので、拠点において従来よりも快適にSaaSが使えるようになった。

 さらに拠点から社内の業務アプリにアクセスする際に、IAPを使おうと考えている。こうなるとSaaSに加えて社内業務アプリの利用にも社内網が不要になる。社内網を運用するコストも削減できる可能性があるのだ。

 IAPの利用コストは、1ユーザー当たり月額1000円程度だ。決して安価ではない。IAP導入に際しては社内アプリの改修作業なども必要だ。

 LIXILが導入したIAP「Akamai Enterprise Application Access(EAA)」の場合、Webアプリケーションは社内に「コネクター」を導入するだけで、社外からVPN無しで利用可能になる。手間がかかるのはクライアント/サーバー(C/S)型のアプリの扱いだ。社外から利用可能にするためには「EAAクライアント」というソフトをパソコンにインストールする必要がある。クライアントソフトにサーバーのIPアドレスが埋め込まれている作りの場合は、EAAクライアントにおける各アプリごとの設定に、IPアドレスなどの情報を追加する必要がある。

 それでもIAPの導入によって専用線やIP-VPNなど高価なWANサービスの利用を廃止できれば、大きなコスト削減効果が得られるだろう。

 

2.コロナ禍でひっ迫する宅内Wi-Fi、「メッシュ」機能ならどの部屋でも安定通信(6.5 日経XTECH)
 コロナ禍により、自宅でテレワークを続けている人は多いだろう。Web会議が普及したこともあり、日々ギガバイト単位のデータを送受信するケースが珍しくなくなった。さらに子どものいる家庭では、学校や塾のオンライン授業を受ける。そのため自宅のWi-Fiネットワークの重要性が急に高まった。

 家の中のどこにいてもWi-Fiの電波が届き、家族全員の端末が安定してつながる。そんなネットワーク環境が求められている。

 ところが自宅内で古い型の無線LANルーターを使っていると、通信速度に不満が出る場合がある。一戸建ての家や部屋数の多いマンションのあちこちで端末を利用すると、無線LANルーターから離れた場所で電波が届きにくくなり、通信が途切れることもある。

 自宅内の通信品質にストレスを感じているのなら、無線LANルーターの買い替えを検討しよう。その際には、最大伝送速度が6.9ギガビット/秒の「IEEE 802.11ac」規格(Wi-Fi 5)に対応する製品を選びたい。IEEE 802.11acは2020年6月時点で量販店にて購入できる主力製品であり、比較的多くの端末が対応している。

 iPhone 11シリーズなど新しい端末を使っているなら、最大伝送速度が9.6ギガビット/秒の「IEEE 802.11ax」規格(Wi-Fi 6)に対応した無線LANルーターも選択肢に入る。

 部屋によって通信が安定しない場合に注目したいのは、無線LANルーターの「メッシュWi-Fi」機能だ。メッシュWi-Fiとは、無線LANルーターとサテライト機を複数の箇所に設置して相互に接続。電波を網の目のように張り巡らして効率よく伝えるネットワークである。

 1つの親機に負荷がかかりやすい「Wi-Fi中継機」とは異なり、メッシュWi-Fiでは、網の目状のネットワークの中で最適なルートを自動選択する。そのため多数の端末による同時接続に強く、通信が途切れにくい。1台の無線LANルーターだけでは届きにくい場所にある部屋や、別の階にサテライト機を設置して電波を行きわたらせることで、自宅内に安定した通信環境を構築できる。

 メッシュWi-Fi機能を使うときに注意したいのは、異なるメーカーの機器同士では接続できないことだ。無線LANルーターとサテライト機を同一メーカーの製品でそろえる必要がある。同一メーカーの製品でも、製品群が異なると接続できない場合もある。メッシュWi-Fiに対応した製品はサテライト機を含めて2台や3台のセットで販売されていることが多いので、最初はそれを購入するのが得策だろう。

 

3.楽天モバイルとNEC、5Gのコアネットワークを共同開発(6.3 日経XTECH)
楽天モバイルとNECは2020年6月3日、楽天モバイルの5G(第5世代移動通信システム)に向けたスタンドアロン(SA)方式のコアネットワークを共同開発することで合意したと発表した。

 楽天モバイルは2020年9月に5Gの商用サービスを開始する予定。当初は4Gのコアネットワークに5Gの基地局制御装置を接続するノンスタンドアロン(NSA)方式でサービスを提供し、2021年中にコアネットワークも5Gに準拠するSA方式の提供を始める。これに向けたSA方式の5Gコアネットワークの制御ソフトなどを2社共同で開発する。

 楽天モバイルは携帯電話サービスの提供に際し、ベンダーロックインの回避や拡張性の担保などを図るためネットワーク機能の仮想化(NFV)を推進している。今回のコアネットワークも専用の制御装置ではなくコンテナ形式のソフトウエアにより制御する仕組みを採る。また楽天モバイルは自社回線の構築・運用ノウハウを海外の通信事業者へ外販する「Rakuten Communications Platform」構想を掲げており、今回開発するコアネットワークも将来的に外販していく意向を示している。  

 

4.クアルコムの最新Wi-Fi 6Eチップ、ピーク時10.8Gbps Bluetooth 5.2対応品も(6.2 日経XTECH)
米Qualcomm(クアルコム)は2020年5月28日、Wi-Fi 6Eをサポートする「Qualcomm Networking Pro Series Platform」向け新チップを発表した(Qualcommのプレスノート1)。Wi-Fi 6Eでは、Wi-Fi 6の2.4GHz帯、5GHz帯に加えて、新たに6GHz帯の利用を追加。マルチギガビットのスピードや広帯域幅による大容量通信などを可能にする。今回の製品群も、この3種類の周波数帯に対応し、家庭向けのメッシュWi-Fiシステムから、企業や大規模施設、構内ネットワーク向けアクセスポイントまで、さまざまな用途のネットワーク製品開発を支援する。

 今回のプラットフォームでは、下記の機能を用意することで、密集した環境でも一貫して高いパフォーマンスを提供する。

ネットワークの安定性とスループットの持続性を保ちながら、2000台までのクライアントの同時接続を実現(Max User Architecture)
高度なスケジューリングとバッファリングにより、1チャネル当たり37ユーザーまでのOFDMA(直交周波数分割多重接続)や、8ユーザーまでのMU-MIMOなどのマルチユーザー対応を実現(Multi-User Traffic Management)
Wi-Fi 6Eの標準よりスループットを20%向上し、1接続当たり最大2.4Gビット/秒を実現(4K QAM technology)
 QualcommのメッシュWi-Fi 技術である「Wi-Fi SON」に6GHz帯との相互接続機能を追加(Tri-Band Wi-Fi 6 for Mesh Network)
最新の暗号アクセラレーターを使った包括的なWPA3(Wi-Fi向けセキュリティープロトコル)の実装により、セキュアなデータ通信を実現(Wi-Fi Security Suite)

 Qualcommは同日、Wi-Fi 6Eに加えBluetooth 5.2もサポートするモバイル端末向け新チップセット「Qualcomm FastConnect 6900」「Qualcomm FastConnect 6700」も発表した(Qualcommのプレスノート2)。Wi-Fiとして業界最速とする最大3.6Gビット/秒の通信速度と、VRに最適な低遅延通信を実現している。Bluetoothでも次世代音声規格LE Audioに対応する。

 

5.ソフトバンクは21年度導入、真の5G「SA」で日本は巻き返せるか(6.1 日経XTECH)
超低遅延や高信頼性、用途ごとにカスタマイズしたネットワークを提供する「ネットワークスライシング」など、真の5G(第5世代移動通信システム)能力を発揮できる「SA(Stand Alone)」導入ロードマップが見えてきた。ソフトバンクは2021年度中に「SA」を開始する計画を発表。22年度から法人向けに、ネットワークスライシングを活用した5Gサービスを提供していく方針も示した。SAはいずれどの通信事業者も目指す方向だ。日本が世界で再び巻き返す最後のチャンスになる。 

 「20年度末までに5G基地局を1万局に増やし、21年度中にSAを追加していく。産業用途に低遅延や高信頼性、多数同時接続といった機能を提供していきたい」。ソフトバンクのモバイルネットワーク本部の関和智弘本部長は、同社の5G戦略をこのように明かす。 

 20年5月20日に開催した同社の法人向け5G発表会では、22年度からSAやネットワークスライシングを活用し、企業の用途ごとにカスタマイズした「プライベート5G」と呼ぶ5Gサービスを提供していく方針も示した。 

 NTTドコモやKDDI、ソフトバンクの携帯大手3社が20年3月末に一斉に開始した5Gサービスは、まだ高速・大容量など5Gの一部の機能を実現したにすぎない。現在、世界で商用化されている5Gサービスは、NSA(Non-Stand Alone)と呼ばれる仕様に基づいており、5G単独では動作せず、4Gネットワークとの連携が必須になる。コアネットワークは4GのEPC(Evolved Packet Core)を流用し制御信号は4Gネットワークでやりとりする。 

 NSAは5Gの特徴の一つである高速・大容量通信を実現できる。しかし、産業向けに期待されているネットワークスライシングなどは提供できない。まだ進化の途中段階ということだ。 

 SAを導入して初めて、真の5Gの能力を提供できるようになる。SAでは新たに5G専用の5Gコアネットワーク(5GC)を導入し、5G単独で動作するようになる。ネットワークスライシングなど高度な機能を提供できるのもこの段階からだ。 

 ソフトバンクのケースはどちらに当てはまるのか。ソフトバンクの関和本部長は「まずは21年度最初の段階でSAを使った高速・大容量サービスから始める。その後、22年から23年にかけてURLLC(Ultra-Reliable and Low Latency Communications)など超低遅延の機能を追加する。この段階で産業向けにネットワークスライシングの機能も提供していきたい」と打ち明ける。 

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