週間情報通信ニュースインデックスno.1225 2020/5/23


1.ノキアが4G+5Gで世界最速4.7Gbps、エリクソンやサムスン追い越す(5.22 日経XTECH)
 フィンランドNokia(ノキア)は2020年5月19日、世界最速となる4.7Gビット/秒(bps)の5G通信を実現したと発表した(Nokiaのプレスリリース)。米国テキサス州ダラスの商用5Gミリ波の帯域幅800MHzと4Gのデュアルコネクティビティー(同時接続)で実現した。これまでは、スウェーデンEricsson(エリクソン)や韓国Samsung Electronics(サムスン電子)などが、4.3Gビット/秒の通信を世界最高速として発表していた。

 今回は、5Gの28GHz帯および39GHz帯の帯域幅800MHz(8×100MHz)と、4G(LTE)の同40MHzを使ったデュアルコネクティビティーを実現。同社の無線アクセスソリューション「AirScale」のEN-DC機能により、端末を5GとLTE両方のネットワークに同時に接続してデータ送受信した。今回は、クラウドベースの5G vRAN(Virtual Radio Access Network、仮想無線通信アクセスネットワーク)上と、従来のベースバンド環境で測定した結果、いずれも4.7Gビット/秒を達成できたという。

 AirScaleはエンドツーエンドの商用5G環境を提供するソリューションであり、事業者が所有する5G周波数帯を有効活用した大容量、低遅延、高速通信が実現できるとする。ユーザーへの高速通信サービス提供のほかにも、ミッションクリティカルな通信を必要とするアプリケーション向けネットワークスライシング環境の提供など、低遅延通信を必要とするさまざまな業種に向けたサービスも展開可能としている。

 

2.ソフトバンクが企業の新型コロナ対策を支援、「AI検温」や「プライベート5G」も(5.21 日経XTECH)
 ソフトバンクは2020年5月20日、法人向け事業について説明会を開き、新型コロナウイルス対策を中心としたテレワーク需要、デジタルトランスフォーメーション(DX)推進、5Gなどについて取り組みの最新状況を発表した。

 Zoomを利用してオンラインで開いた説明会には、ソフトバンク 代表取締役副社長執行役員兼COOの今井康之氏が登壇。「新型コロナウイルスの感染者が増え続けている中、通信インフラを担う企業として取り組んでいる」と語った。

 ソフトバンクでは法人顧客のテレワーク需要が急増しており、リモートアクセスは2020年3〜4月の2カ月間でその前の2カ月間から18倍に、Web会議は同41倍に増加したという。

 テレワーク以外の取り組みとしては、ソフトバンク子会社の日本コンピュータビジョンが開発した「AI検温ソリューション」を紹介した。体温検知と顔認証により従業員の健康を管理する仕組みで、マスクの着用を確認する機能も備える。

 地図情報サービスに関しては米マップボックス(Mapbox)との取り組みを発表した。マップボックスは地図上にさまざまなデータを加えてカスタマイズできるサービスを提供しており、日本経済新聞による「新型コロナウイルス感染 世界マップ」などで利用されている。

 DX推進については小売業やサプライチェーンの事例を紹介し、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を用いた自動化やデジタル化、トレジャーデータによるデータ統合、ヤフーの需要予測などを組み合わせ、売上向上につなげている。

 5Gについては製造業において工場内ネットワークに5Gを導入する事例を挙げた。これまでの課題として、有線LANはレイアウト変更が困難、無線LANはノイズや切断などの問題があったが、5Gでは安定した無線化を実現できるという。

 法人向け5Gの本格展開は、ソフトバンクがスタンドアローン(SA)方式の提供開始を予定する2021年度後半からになるという。

 提供形態としては通信キャリアによるパブリック5G、企業や自治体が免許を取って展開するローカル5Gに加え、新たに「プライベート5G」を2022年度から提供予定とした。

 プライベート5Gは、ローカル5Gのように顧客企業の敷地内においてソフトバンクのパブリック5Gから必要な帯域や容量を提供するもので、両者の中間に位置するマネージドサービスになる。具体的な料金体系などは未定としたものの、面倒な免許取得や保守運用が不要となることをメリットに挙げた。

 

3.緊急事態宣言解除後のセキュリティーに不備はないか、JNSAがチェックリスト(5.20 日経XTECH)
日本ネットワークセキュリティ協会(JNSA)は2020年5月19日、「緊急事態宣言解除後のセキュリティ・チェックリスト」を、同協会のWebサイトで公開した。

 新型コロナウイルス対策として政府が緊急事態宣言を発令したことで、在宅勤務に取り組む企業は多い。宣言解除後、こうした企業が従業員を在宅勤務から通常勤務に戻したり、テレワークを活用し続けたりしていくうえで、情報セキュリティー面のリスクがないかどうかを同チェックリストで確かめられるようにする。

 チェックリストは「停止したシステムの再稼働における注意事項」「テレワークで社外に持ち出した機器を社内NWに接続する際の注意事項」「緊急措置としてテレワークを許可した業務やルールを変更した業務の扱い」「Withコロナフェーズに向けた、業務見直しとセキュリティ対策」という4つの観点からなり、24のチェック項目がある。

 チェック項目には、在宅勤務で使った端末や外部記憶装置を通常勤務で使う前に、紛失していないかどうかや、マルウエアに感染していないかどうかを確認するものがある。さらに在宅勤務を含めてテレワークを継続していくために、テレワークで行う業務のリスクを情報セキュリティーの観点で再評価したり、緊急事態宣言の再発令に備えてテレワーク環境などを見直したりする項目も設けている。  

 

4.国内外で大量発生の偽サイトに驚愕、あのドメインに注意(5.19 日経XTECH)
 国内の組織や企業のWebサイトを模倣した偽サイトが大量に見つかった。首相官邸や横浜市、神戸市、名古屋市など偽サイトをつくられた組織、日本サイバー犯罪対策センター(JC3)などは2020年5月14日、偽サイトにアクセスしないよう注意喚起を出した。

 新型コロナウイルス対策として配布される定額給付金のオンライン申請が始まった時期と重なり、個人情報の取得を目的としたフィッシングサイト(詐欺サイト)ではないかと指摘する声もある。ただ、申請受け付けを開始していない自治体の偽サイトも多く、偽サイトの設置目的は分かっていない。

 5月14日までに一部の偽サイトを確認したところ、正規サイトと同じ内容が表示され、正規サイトが更新されると偽サイトも更新されるといった具合だった。報道機関の偽サイトも見つかり、この大量偽サイトを報じる記事が報道機関の偽サイトでも表示されることが確認できた。

 一連の偽サイトは、特定のコンテンツデリバリーサービスにホストされており、同一の攻撃者もしくはグループによるものではないかと指摘する声がある。また対象となったのは国内だけでなく、海外の組織や企業の偽サイトも見つかっている。

 今回見つかった偽サイトのURLを見ると、特定の国別コードトップレベルドメイン(ccTLD)が多く利用されていることが分かった。「.tk」や「.cf」などである。この点は、首相官邸からの注意喚起でも触れている。

 国別コードトップレベルドメインとは、国際標準化機構(ISO) によって決められた、国コードごとに割り当てられたドメインである。日本なら「.jp」である。多くのccTLDは、そのドメインを管理する機関(レジストリ)が一定の条件を設けて利用できる組織や企業を制限している。

 今回使われた.tkはニュージーランド領のトケラウ、.cfは中央アフリカのccTLDだ。どちらも取得の条件が緩かったり、管理されていなかったりするため、誰でもこのccTLDを使ったドメインを取得しやすい。このため、.tkや.cfの両ccTLDはフィッシングサイトなどの犯罪によく利用される。

 では、これらの偽サイトにアクセスしないようにするにはどうしたらよいか。偽サイトはグーグルやBingなどの検索サービスの結果に、正規サイトに混じって表示されることが多い。今回見つかった首相官邸や自治体、企業の偽サイトも検索結果に表示された。

 ユーザーにおすすめしたいのが、ドメインの確認だ。検索結果からリンクをクリックする前にリンク先のドメインを確認する。検索結果ではドメインを確認しにくいときもあるので、リンクをクリックしたらすぐにWebブラウザーのアドレス窓(アドレスバー)でも確認する。

 .tkや.cfといった見覚えのないccTLDであれば、国内の組織や企業でこのドメインを使う可能性はほとんどない。これらを使っていればまず偽サイトだと思ってよい。

 今回の偽サイトに限らず、.jpなどを使った偽サイトも多数存在する。このため、ドメインの確認だけで偽サイトへのアクセスを完全に止められるわけではない。ただ「検索結果からクリックしたらドメインを確認する」という癖を付ければ、少しでも偽ドメインへのアクセス被害を減らせるだろう。

 

5.もしMWCが開催されていたら今年は「Open RAN」が主役だった(5.18 日経XTECH)
 新型コロナウイルスの影響で中止となった世界最大級のモバイル展示会「MWC20バルセロナ」。もし予定通り2020年2月末に開催されていたら、「Open RAN」が大きな注目を集めていたのではないだろうか。

 Open RANとは、携帯電話ネットワークの基地局など無線アクセスネットワーク(Radio Access Network、RAN)を構築する際に、複数ベンダーの機器を組み合わせて運用できるようにするオープン仕様のネットワークのことだ。ここ数年、世界の通信事業者の間で注目を集めている。

 4Gや5Gといった通信方式は、携帯電話の標準化団体「3GPP」で標準仕様が決められている。しかし細部に至るまで仕様が決まっているわけではない。例えば基地局を構成するBBU(Baseband Unit)とRRH(Remote Radio Head)はこれまで複数ベンダーで相互運用することが難しく、同一ベンダーの機器でそろえる必要があった。

 その結果、携帯電話事業者のネットワークコストの7割近くを占めると言われる基地局市場は中国ファーウェイ(華為技術)、スウェーデン・エリクソン(Ericsson)、フィンランド・ノキア(Nokia)といった大手ベンダーが8割近いシェアを握る寡占市場となってしまった。「大手ベンダーによる囲い込みを避けて、多様な選択肢を確保したい」(国内携帯電話事業者幹部)というのが世界の通信事業者の共通した思いだ。Open RANを実現すれば、適材適所でベンダーの機器を組み合わせてコスト削減につなげられる。部分的に一般的なサーバー上でソフトウエアを使った基地局を活用することも可能になる。こうした背景がOpen RANが注目を集めている理由になっている。

 そんなOpen RAN関連の注目すべき動きが20年2月末以降に加速し始めている。まずはOpen RAN関連の2大勢力の連携だ。

 米AT&Tや中国移動、NTTドコモなど世界の大手通信事業者が中心となって18年に立ち上げた業界団体「O-RAN Alliance」と、米フェイスブック(Facebook)が中心となり16年に発足した、オープンソースや仮想化技術などを活用することで通信機器のコスト抑制などを狙う「Telecom Infra Project(TIP)」は20年2月末、Open RANの推進に向けて連携していくと発表した。

 O-RAN Allianceは発足から2年が経過し、参画企業は100を超える一大勢力となっている。一方のTIPも500以上の企業や団体を集めており、無線アクセスネットワークから伝送路、コアネットワークまで、専用機器で構成してきた装置を汎用サーバーなどでも構築できるようオープンな仕様などを定めている。

 O-RAN Allianceは20年4月末、今年のMWCで披露する予定だったOpen RAN関連のデモをWebサイト上で一挙に公開した。ここではAT&TやNTTドコモ、中国移動などが、O-RAN Allianceの仕様に基づいて複数のベンダー機器を用いて基地局を動作させたり、ホワイトボックスを使った基地局などを実現したりしている様子を紹介している。O-RAN Allianceの仕様に準拠の機器も登場してきており、Open RANがだいぶ形になってきたことを印象付ける。

 TIPも今年のMWCで会場中心部に大きなブースを構える予定だった。TIPはMWCに合わせて20年2月末、O-RAN Allianceの仕様に基づいて複数ベンダー機器を相互運用できるRRHのレファレンスデザインを作るプロジェクト「Evenstar RRH Program」を立ち上げると発表した。このプロジェクトには英ボーダフォン(Vodafone)や独ドイツテレコム(Deutsche Telekom)といった世界の主要通信事業者、米マベニア(Mavenir)、米パラレルワイヤレス(Parallel Wireless)などの新興ベンダーが参画する。

 仮にMWCが今年開催されていたら、Open RANに大きな注目が集まり、Open RANを推進する機運も一層高まっていたに違いないと感じる。

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