週間情報通信ニュースインデックスno.1224 2020/5/16


1.相次ぐ「位置情報ビッグデータ」の無償提供、自治体の新型コロナ対策を下支え(5.15 日経XTECH)
 新型コロナウイルスの感染拡大で、政府や自治体がビッグデータを活用し、対策に役立てる動きが広がっている。動きを支えるのは携帯各社やIT企業が提供する統計データだ。

 2020年5月1日、政府が目標に掲げる「8割の接触削減」について、政府の専門家会議は「接触頻度」を計算した。東京・渋谷駅や大阪・難波駅のような人が集まる地域では、30代以上の生産年齢人口の接触頻度は減少率が8割に達しておらず、都道府県をまたぐ移動も3〜5割の減少に留まるところが多かった。このため専門家会議は「都心部への通勤を続ける限り、生産年齢人口の接触頻度の減少度合いは少ない」と結論づけ、さらなる対応を求めた。

 この「接触頻度」の計算にはNTTドコモの「モバイル空間統計」を用いている。基地局のエリアごとに所在する携帯電話の台数から1時間ごとの各エリアの人口を推計する仕組みだ。

 携帯各社やIT企業のビッグデータは既に商用化されており、民間企業が商圏分析やユーザー調査などに用いるほか、政府・自治体も観光振興やまちづくりなどに活用してきた。新型コロナの感染拡大を機に、政府や自治体のビッグデータの活用がさらに加速している。

 4月9日、Zホールディングス傘下のヤフーは全国の都道府県と政令指定都市を対象に、同社のビッグデータをWebブラウザー上で調査・分析できるツール「DS.INSIGHT」を2021年3月31日まで無償提供すると発表した。67の対象自治体のうち5月14日時点で8割ほどが利用しているという。

 DS.INSIGHTはヤフーユーザーの位置情報および検索情報のビッグデータを分析できるサービスだ。ポータルサイト「Yahoo!」をはじめとする同社サービスの利用者は月間5200万人に達する。そのうちヤフーのアプリを使用しており、許可を得られたユーザーに限り、スマートフォンの全地球測位システム(GPS)から位置情報を推計し、個人を特定できないように統計処理を施している。

 自治体はDS.INSIGHTを使うと、都道府県や市区町村の滞在人口や来訪者人口の推計値を日次で確認できるようになる。125メートル四方での人口密度を色で示す「人口ヒートマップ」の機能もある。

 例えば兵庫県であれば神戸市中央区のような商業集積地と、尼崎市のような工業集積地とでは人々が地域を訪れる目的が異なる。地域ごとに外出自粛の効果を把握し、特性に応じた対策を立案し実行できる。

 「コロナ」や「マスク」など特定の検索キーワードに対して、頻繁に同時検索される言葉を一覧表や図で表示する機能もある。実際に「マスク」であれば「在庫」「作り方」「洗い方」などが同時検索されていた。時間の経過とともに検索するキーワードは変わるため、ある期間内に人々の関心がどう変わっていくかを分析して政策に役立てることも可能だ。

 このように、位置情報と検索情報という2つのビッグデータを組み合わせて、ある特定の地域で頻繁に検索されるキーワードを性別ごとに表示できる点がDS.INSIGHTの特徴といえる。ヤフーはツールを提供し、実際の分析は各自治体が担う。

 

2.マスクを着けたままでも個人を識別、NECが生体認証端末を開発(5.14 日経XTECH)
NECは2020年5月14日、顔認証と虹彩認証技術を組み込んだマルチモーダル生体認証端末を開発したと発表した。2020年度中に実証実験を実施し、2021年度までに決済や入退室などの用途で商用化したい考えだ。サングラスやカラーコンタクトを着けている場合は顔認証、マスクや暗闇で顔がよく見えない場合は虹彩認証というように技術を使い分け、個人を高精度で識別する。

 同社が開発したマルチモーダル生体認証端末は、2018年に米国立標準技術研究所の認証技術に関するベンチマークテストで世界一になった顔認証技術を組み込んでいる。顔認証と虹彩認証がともに機能する場合、他人受入率は100億分の1以下とする。ただし本人拒否率については「公表していない」(NEC)という。端末に内蔵するカメラが自動で利用者の顔や目の位置に傾きを合わせ、約2秒で認証が可能としている。

 マスクや帽子を着用したまま顔認証できる特徴を生かし、NECは食品工場や工場内のクリーンルーム、医療機関などからの受注を目指す。同社の生体認証システムはこれまで世界約70カ国・地域で1000システム以上の導入実績があるといい、生体認証・映像分析事業の事業規模を、今回開発した端末も含めて2021年度までに世界で1000億円にすることを目指している。 

 

3.秋田ケーブルが秋田県立大学と協定、ローカル5G活用のスマート農業の新技術開発など(5.13 日経XTECH)
秋田ケーブルテレビ(CNA)は2020年5月13日、秋田県立大学と地域課題の解決などに向けて連携協力協定を締結したと発表した。

 CNAは、秋田県立大学大潟キャンパスにある生物資源科学部フィールド教育研究センターに、ローカル5Gの無線基地局を設置する。そのうえで、農業分野における次世代高速通信技術を活用した農工連携研究の推進、スマート農業に関連する新技術の開発および普及促進を行っていく。

 CNAは今後、様々な分野で秋田県立大学と共同で活動を行っていく方針。 

 

4.無線LANが有線LAN並みの速度に、じわり普及進む「Wi-Fi 6」(5.13 日経XTECH)
ノートパソコンの多くは無線LAN(Wi-Fi)でネットワークに接続し、自宅やオフィスのどこにいてもインターネットを利用できるようになっている。最近発売された小型あるいは薄型のノートパソコンでは、有線LANポートを装備せず無線LANでしか通信できないという製品も珍しくない。

 ただ、「無線LANは有線LANと比べると通信速度が低いので、大容量のファイルのやり取りにあまり使いたくない」というユーザーは多いだろう。しかし最新規格「Wi-Fi 6」に対応する機器なら、有線LAN並みの速度でファイルをやり取りできる可能性がある。

 主要な無線LAN規格には2種類の呼称がある。業界団体のWi-Fi Allianceによる呼称と、技術規格を定めたIEEE(米電気電子学会)による呼称だ。Wi-Fi 6はWi-Fi Allianceでの呼称で、その中身は「IEEE 802.11ax」である。ちなみに1世代前のIEEE 802.11acは「Wi-Fi 5」、さらにその前のIEEE 802.11nは「Wi-Fi 4」になる。

 まず通信速度の理論上の最大値は、Wi-Fi 5の約1.4倍にアップしている。
呼称 規格名 電波の周波数帯 通信速度の上限
Wi-Fi 6 IEEE 802.11ax  2.4GHz、5GHz 9.6Gビット/秒
Wi-Fi 5 IEEE 802.11ac 5GHz 6.93Gビット/秒
Wi-Fi 4 IEEE 802.11n 2.4GHz、5GHz 600Mビット/秒
 またWi-Fi 6では通信方式の改良により、実際に対応機器が通信をする際の速度低下が少なくなっている。

 無線LANにはエラーチェックや無線通信の安定性を高める仕組みが実装されており、製品に記載された速度でのデータ通信は難しい。これはWi-Fi 6でもWi-Fi 5でも同じだが、Wi-Fi 6は無線通信の減衰率がWi-Fi 5よりも低く、より高速に通信できるようになった。

 アクセスポイントに多数の機器がスムーズに接続できるようにする仕組みを備えている点にも注目したい。無線LANは、接続する機器が増えれば増えるほど、安定して通信ができなくなったり接続が途切れたりする。しかしWi-Fi 6は、こうした現象が起こりにくくなっている。

 2019年から2020年初頭にかけて、さまざまなメーカーからWi-Fi 6対応の無線LANブロードバンドルーターが発売された。老舗のネットワーク機器メーカーの高性能モデルは実勢価格が5〜8万円とかなり高いが、最近は1万円から2万円の価格帯で販売されるスタンダードなモデルも増えてきた。

 

5.東京都のテレワーク実施企業が1カ月で急増し6割に、都が調査結果を公表(5.12 日経XTECH)
 東京都は2020年5月11日、都内企業を対象にしたテレワーク導入状況に関する調査の結果を公表した。調査時期は2020年4月で、従業員30人以上の都内企業に向けて実施した。テレワークを導入していると回答した企業は62.7%と、同年3月に実施した前回の調査より38.7ポイントの大幅増だった。

 テレワークに取り組む社員の割合も増えている。今回の調査で、テレワークを実施している社員の割合を尋ねて回答を平均したところ約5割だった。2019年12月の調査ではこの割合が約2割だったので、およそ2.5倍に増えている。

 業種別でみてもテレワークの普及が見えてきた。「情報通信」「金融・保険」「サービス」といった事務・営業などが中心の業種の企業のうち「導入している」と回答した企業の割合は76.2%。3月の調査より約34ポイント増えた。

 また「建設・製造」「運輸・郵便」「医療・福祉」「小売」といった現場作業や対人サービスなどが中心の業種の企業もテレワークが進んでいると分かった。この業種の企業のうち「導入している」と回答した企業は55.0%だった。3月の調査に比べておよそ40ポイント増加する結果になった。

 こうした結果を踏まえて、東京都は都内企業のテレワーク普及を促進する策も講じる。具体的には2020年5月11日、都内企業のテレワーク導入を支援する助成金制度「事業継続緊急対策(テレワーク)助成金」について、申請受付期間の延長を発表した。

 2020年3月6日に始めた申請受付期間は当初2020年5月12日までだったが、2020年6月1日まで延長する。新型コロナウイルス対策に関する緊急事態宣言の延長を受けた措置だ。

 同制度は「常時雇用する労働者が2人以上、999人以下で、都内に本社または事業所を置く中堅・中小企業」「都が実施している五輪大会時の交通混雑緩和推進プロジェクトに参加している」といった要件を満たす企業を対象にしたものだ。助成の対象はパソコンやタブレット、VPNルーターなどの機器の購入費、機器の設置・設定費、機器の保守費、パソコンなどのリース料、クラウドサービスの利用料など。1企業当たり250万円を上限に、かかった費用の全額を補助する。

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