週間情報通信ニュースインデックスno.1221 2020/4/25


1.テレワークの強い味方、注目の大容量モバイル通信サービスを試してみた(4.24 日経XTECH)
新型コロナウイルス対策の一環として、テレワークのニーズが高まっている。テレワークを始めるには作業用の端末、データ共有用のクラウドサービス、通信回線などを用意して環境を整える必要がある。だが最近急にテレワークに切り替えた人だと、まだ環境を整えきれていないかもしれない。

 端末、サービス、通信回線はどれでもよいというわけではなく、自宅での作業に適したものを選ぶ必要がある。これらの中で筆者は最近、テレワークに適した通信回線に注目している。

 自宅にFTTH(ファイバー・ツー・ザ・ホーム)などの高速な固定回線が既にあれば、それほど効率を下げずにテレワークができるだろう。それでも家族と回線をシェアすることによる通信回線や無線LANの速度低下などのリスクを抱えながらの作業となる。

 また最近は若い世代を中心に、自宅に固定回線を導入していない人もいる。自宅でのインターネット接続をスマホのテザリングに依存している人も、いるかもしれない。

 こうしたテレワークの通信環境に不安を抱える人は、携帯電話回線を使った大容量通信が可能なモバイルサービスに注目してみてはいかがだろうか。

 大手携帯電話事業者と一部のMVNO(仮想移動体通信事業者)は、大容量プランを用意している。これを利用すると、スマートフォンによる通信だけでなく、テザリングによるPCのインターネット接続も可能になる。

 一般的に大容量プランは月額料金も高くなるが、最近は割高感のない料金プランを持つサービスも登場している。筆者は現在、こうしたサービスを2つ利用しているので紹介しよう。

 筆者が利用しているサービスの1つは、TAKUMI JAPANの格安SIMサービス「神SIM」である。

 神SIMはソフトバンク回線を利用したMVNOサービスだ。データ通信専用で、SMSや通話は利用できない。「100GBデータ通信専用プラン」と「無制限データ通信専用プラン」の2種類のプランがある。それぞれのプラン内容は以下のようになっている。

「100GBデータ通信専用プラン」
容量:100Gバイト/月
月額基本使用料:3980円(税別)
初期事務手数料:3000円(税別)
初月利用料:無料
最低利用期間:12カ月(利用開始月は含まず)

  「無制限データ通信専用プラン」
容量:無制限
月額基本使用料:4980円(税別)
初期事務手数料:3000円(税別)
初月利用料:無料
最低利用期間:12カ月(利用開始月は含まず)
 筆者が利用しているのは「100GBデータ通信専用プラン」だ。同社のTwitterをフォローすることで「会員価格」が適用されて、料金は月額2990円(税別)になった。

 ただし神SIMは2020年4月15日現在、在庫切れとなっており販売が一時停止となっている。販売再開は未定だという。

 通信速度は、ソフトバンク回線の電波をつかみにくい場所を除けば10Mビット/秒以上を確保できている。テザリングでパソコンをインターネットにつないでテレワークをする分には十分な速度だろう。

 このサービスには、利用上の注意点がある。通信量が過大だと通信速度が制限される場合があることだ。販売元のTAKUMI JAPANは制限をかける基準を明らかにしていない。

 ただし筆者が実際に使った範囲で言うと、1日に1Gバイト〜2Gバイト程度の利用で速度制限が実施されることはなかった。2020年3月にテレワークで、パソコンをテザリングでつなぎ月間50Gバイトを超える通信をしたが、このときも快適に通信できた。テレワークにおいても、よほどの大容量になるファイルのやりとりをしない限り問題はないと思う。

 

2.Zoomが新版で暗号化機能を強化、5月末までに更新を(4.23 日経XTECH)
米ズーム・ビデオ・コミュニケーションズ(Zoom Video Communications)は2020年4月22日(米国時間)、セキュリティーにフォーカスした週次のビデオミーティングを開催した。新たに導入したデータセンターの選択機能や4月末に提供予定のバージョン5.0の暗号化機能などについて説明。セキュリティー問題で、世界の政府機関や企業などから懸念の声が上がっており、対応の進ちょくを公開することで挽回を図った格好だ。

 「Ask Eric Anything(エリックになんでも聞こう)」と呼ぶZoomを使ったビデオミーティングを開いた。エリック・ユアンCEO以下、セキュリティーアドバイザー、CTO(最高技術責任者)、最高プロダクト責任者(CPO)などの幹部が出席した。

 今回、Zoomのメジャーバージョンアップとなる5.0を4月27日に提供することを説明した。もちろんセキュリティー機能の強化に主眼を置いている。

 5.0では、ビデオの内容の暗号化のAES(Advanced Encryption Standard)について、従来の128ビットから256ビットに更新。暗号の利用モードは平文と同じパターンが現れるなどから脆弱と言われている「ECB」から、より強固な「GCM」を標準とする。

 当初はバージョン5.0でECBとGCMの両方をサポートするが、5月末にGCMに統一する。このため4.xなど従来のバージョンを利用しているユーザーは更新する必要があり、5.0へのバージョンアップを呼びかけた。

 4月18日に有料ユーザーが利用するデータセンターを選べるようにし、25日からデフォルトで「中国」を外すようにした点についても先週に続いて説明した。このデータセンターは前述の暗号化の鍵を生成するために使われるもので、ユーザーが中国で生成されていることを発見し問題視されるようになった。ビデオの内容が中国政府などに解読されてしまう恐れがあるからだ。

 このほか、ビデオ内容録画やミーティングIDへのパスワード設定や、ウエイティングルームの利用、企業におけるユーザーのグループ設定など、セキュリティーを向上させる方法について、改めて説明した。

 

3.NTT東とIPAが無償ですぐに使えるテレワークシステム、約2週間で企画・開発(4.22 日経XTECH)
NTT東日本と情報処理推進機構(IPA)は2020年4月21日、テレワーク向けのシンクライアント型VPNソフト「シン・テレワークシステム」の無償提供を始めた。契約やユーザー登録は不要。インターネット回線があればどこからでも安全にテレワークできるという。実証実験の位置付けで、主にテレワークの設備導入が難しい中?企業向けに2020年10?31?までシステムを開放する。

 ユーザーは事前の設定作業として会社パソコンにサーバー用ソフトを、自宅パソコンにクライアント用ソフトをそれぞれインストール。会社パソコンはインターネット向けにHTTPS(TCPポートの443番)で通信できればよい。インターネット上の「分散型クラウドゲートウェイ中継システム」を介して自宅パソコンと接続する形態となる。

 一方、自宅パソコンは最短1分程度で設定が完了する。サーバーに接続すると会社パソコンの画面が映し出され、マウス操作をはじめ、クリップボードやファイル、プリンターを共有できる。現時点でソフトはサーバー用・クライアント用ともにWindows版のみ。macOS版は提供していない。

 セキュリティー対策として、複数のユーザー認証手段を備える。簡易的なパスワード認証のほか、既存のRADIUS認証基盤やPKI基盤をそのまま使える。会社パソコンで接続元IPアドレスやファイル持ち出しを制限でき、サーバー用ソフトのログも確認できる。

 同システムはNTT東日本の企画から、IPAにおける開発の完了まで約2週間でこぎ着けた。学術的・試験的な実証実験のため、個別サポートや問い合わせ対応、品質保証などはない。停止や不具合が発生する可能性もあり、全ての問題をユーザーの責任で解決する必要があるという。  

 

4.米エクイニクス、日本市場でハイパースケールデータセンターに参入(4.22 日経XTECH)
 データセンター大手の米エクイニクスは2020年4月21日、シンガポールの政府系投資会社であるGICと合弁契約を締結したと発表した。日本で大規模データセンター(DC)事業に参入する。米アマゾン・ウェブ・サービス(Amazon Web Services)や米マイクロソフトなどの「ハイパースケールクラウド事業者」の需要を取り込むのが狙い。

 日本で大規模DCを開設・運営する合弁会社を設立、初期投資額は10億ドル(約1076億円)超を見込む。2020年下半期にも契約の手続きを完了し、合弁会社はGICが80%、エクイニクスが20%の資本比率になる。

 東京エリアの2カ所、大阪エリアの1カ所で、ハイパースケールクラウド事業者向けの大規模DCを開設する計画だ。東京エリアの1カ所目は2020年第4四半期、大阪エリアは2021年第4四半期のサービス開始を予定しており、東京エリアの2カ所目は未定とする。フル稼働時の電力供給能力は3カ所のDCを合わせて138メガワットを予定している。

 これらのDCでは、DC内やエクイニクスのDC間で企業同士のサーバーを直接つなげるインターコネクション(相互接続)機能や、ネットワークの仮想化(NFV)サービスなどを利用できる。クラウド事業者は、エクイニクスの既存のDC上に設置している自社アクセスポイントと組み合わせることで、顧客企業に対して高速な接続性を提供できるという。

 

5.「安さ激推し」のiPhone SE、コロナ禍の国内通信業界に何をもたらす?(4.21 日経XTECH)
 米アップルが2020年4月15日に発表したスマートフォン新機種「iPhone SE」は異例の形でスタートを切った。世界的に猛威を振るう新型コロナウイルスの影響もあり、歴代モデル発表時の恒例だった大規模な発表会はなく、プレスリリースのみのひっそりとした発表となったのだ。さらに発表後、NTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクの通信大手3社は「総務省から感染拡大防止の取り組み強化の要請を受けた」として、発売日を4月27日から5月11日に延期。出ばなをくじかれる形となった。

 ただ、異例だったのはそれだけではない。記者が驚いたのは公式サイトの製品ページのつくりだ。真っ黒な背景に2台のiPhone SEを配した画面中央に、白抜きの大文字で「手にしたくなるものを、手にしやすく。44,800円(税別)から」というキーメッセージを記している。

 そうしたなかで発売されるiPhone SE。短期的にはアップルや通信大手3社にプラスとなりそうだ。以前のように「実質0円」といった極端な値付けは封じられたが、今回のiPhone SEは4万4800円からと、初代のiPhone SEの5万2800円よりも安くなっている。それでいてiPhone 8とほぼ同じ本体サイズと重さでFeliCa方式の非接触型ICチップも内蔵し、CPUはiPhone 11と同等だ。折からの新型コロナ禍で景況感の大幅な冷え込みが予想されていることもあり、定評のあるiPhoneで値ごろ感のある製品として一定の人気を集めそうだ。

 半面、iPhone SEの販売が好調だとしても、通信大手3社にとって喜ばしいことばかりではない。各社はこぞって3月下旬に5G(第5世代移動通信システム)の商用サービスを始めたばかり。このタイミングで4Gにしか対応しないiPhone SEを多くの消費者が買い求めてしまうと、消費者の5Gへの移行がその分遅れてしまう。設備投資も端末やサービスのプロモーション費用も5Gに集中させたい時期だけに、iPhone SEにも肩入れするとアクセルとブレーキを同時に踏むような状態になりかねない難しさがある。

 さらに状況をややこしくするのが、例年通りなら2020年9月頃に発売されるであろう次期iPhoneの存在だ。次期モデルは5G対応が有力視されているが、コロナ禍の影響で開発作業が滞っているとの海外報道もあり、コロナ禍が長期化すれば発売時期も数カ月単位でずれこむ恐れがある。この状況下で消費者は、定評があり価格もこなれた4GのiPhone SEを買うのか、将来性に期待して5Gスマホを選ぶのか、はたまた景気の先行きを不安視して買い控えるのか。

 このタイミングで発売されるiPhone SEは、期せずして日本の通信業界の今後を占う重要な存在になってきたと感じている。

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