週間情報通信ニュースインデックスno.1218 2020/4/4


1.新型コロナでクラウドも正念場、ビデオ会議の爆増で浮かび上がるリスク(4.3 日経XTECH)
新型コロナウイルスの世界規模での感染拡大が、クラウドサービスの需要を急増させている。特に需要が伸びているのはテレワークに欠かせないビデオ会議ツールだ。米グーグル(Google)のHangouts Meetは1日の使用量が2020年1月に比べて25倍に増えたという。

 Google Cloud部門のトーマス・クリアン(Thomas Kurian)CEO(最高経営責任者)が2020年4月1日にブログを公開し、こうした現状を明らかにした。同社は3月4日にテレワーク支援のために、Hangouts Meetの有料追加機能を既存のG Suiteユーザーが追加料金を支払わなくても利用できるようにした。最大250人が同時に参加できるビデオ会議機能や最大10万人に対して会議の模様をライブストリーミングできる機能、ビデオ会議の内容をクラウドに保存できる機能などである。

 こうした対応をとったところHangouts Meetの使用量が毎日、前日に比べて60%増加するようになった。その結果、1日当たりの使用量が2020年1月に比べて25倍もの水準に達したのだという。

  興味深いのはグーグルもマイクロソフトもビデオ会議ツールの使用量が増大したという話題を、クラウドサービスの使用量増大の文脈で紹介していることである。音声やビデオ通話のアプリケーションというと、先駆け的な存在だったSkypeはP2P(ピア・ツー・ピア)型だった。それに対して近年の主流は、通信が中央サーバーを介するクラウド型のサービスになった。

 音声やビデオ通話がクラウド型になることで、ユーザーは様々な便利な機能を利用できるようになった。音声・ビデオ通話の内容をクラウド上に録音・録画できるようになったし、一部のサービスでは音声・ビデオ通話でユーザーが話した内容をAI(人工知能)が「文字おこし」してくれるようにもなった。

 Zoomはマーケティング資料などでエンド・ツー・エンドの暗号化が利用できると説明していた。しかし米メディアのThe Interceptが2020年3月31日に、この説明が誤りであり、実際にはエンド・ツー・エンドの暗号化はできなかったと報じている。

2.買いやすくなった新iPad Pro、PCと併用ならテレワークでも活躍の予感(4.2 日経XTECH)
米アップル(Apple)が2020年3月、iPad Proの新モデルを発売した。今回出たのは「11インチiPad Pro(第2世代)」と「12.9インチiPad Pro(第4世代)」だ(以下、新しい11インチiPad Pro、新しい12.9インチiPad Proと表記する)。

 いずれのモデルも本体デザインは前モデルとあまり変わらず、カメラがシングルからデュアルに増えたのが最大の違いだ。僕は仕事でiPadを使う時間が年々長くなっているのだが、新しいiPad Proは価格も下がって「テレワークのお供」としてお薦めしやすくなったと感じている。

 新しいiPad Proはカメラに注目が集まっているが、個人的には値下がりしたのが最大のポイントだと考えている。

 本体デザインは前モデルとほぼ同じだ。正面から見ると違いはない。背面はカメラの部分だけが変わっている。シングルカメラがデュアルカメラになった結果、カメラ部分が周囲の枠を含めて四角形に出っ張っている。個人的にはどちらのデザインもいいと感じている。

 カメラは標準と超広角の組み合わせになった。個人的にはとてもいい組み合わせだと思っている。

 iPad Proと11インチiPad Pro(第2世代)用Magic Keyboardの組み合わせは、仕事にも役立つだろう。これ1台でテレワークもこなせれば言うこと無しだが、そうはいかない。まだPCがないとこなせない作業が多いのが現状だ。僕はiPad ProとPCの併用をお勧めしたい。

 例えば僕は最近テレビ会議が増えている。PCのエディターでメモを取るため、ノートPCだけでテレビ会議に参加するとキーボードを打つ音が邪魔になるし、いちいちミュートするのも面倒だ。iPad Proがあれば、ノートPCでメモを取りiPadでテレビ会議に参加するという使い方ができる。

 iPadを情報収集に使ってPCでデータを入力するという使い方もあるだろう。2台を並べて作業をすれば、生産性も大いに高まるはずだ。

3.契約数最多でも他社より劣るトラフィック、ドコモに深刻な経営課(4.1 日経XTECH)
携帯大手3社のパケット接続料が2020年3月31日に明らかとなった。パケット接続料とは格安スマホを手掛けるMVNO(仮想移動体通信事業者)がデータ通信サービスを提供する際の「仕入れ値」に相当し、収入の多くはこの支払いで消える。経営を大きく左右する存在だけに毎年注目となっている。

 既報の通り、2019年度適用のパケット接続料はソフトバンクがNTTドコモを抜き、最安となった。「ドコモ最安」の状況が崩れるのは初めて。改めて振り返ると、ソフトバンクのパケット接続料は2013年度時点でドコモの約2.8倍と高く、接続料格差が大きな問題となっていただけに感慨深いものがある。総務省が格差是正に向け、算定方法の見直しなどに取り組んできた成果が結実した。

 MVNOにとっては朗報だが、気になるのはドコモだ。総務省はMVNOの事業予見性を高めるため、「将来原価方式」と呼ぶ算定方法を2020年度から新たに導入する。大手3社が公表した2020〜2022年度のパケット接続料(予測)を見ると、ドコモは2020年度時点でKDDIにも抜かれ、最も高い事業者に転落する。あくまで予測にすぎないので変わる可能性もあるが、2022年度までこの状況が続く見通しだ。逆に心配になってくる。

 2019年12月に公表された調査結果によると、ソフトバンクは総トラフィック(3G、LTE/4G)が2018年度に大幅に伸びたことが分かる。具体的な数値は出ていないが、棒グラフから察するに前年度の1.6〜1.7倍くらいだろうか。同社は毎月の通信量が50ギガバイトの「ウルトラギガモンスター」を2017年9月に投入し、関係者が好調としていたことからもうなずけるものがある。

 ソフトバンクはトラフィックが急速に伸びているとはいえ、絶対値は依然としてドコモが上回る。それにもかかわらず、2018年度実績を基にした2019年度適用のパケット接続料はソフトバンクがドコモを下回った。接続料算定の分子に当たる設備費用がソフトバンクは極端に安い、もしくはドコモが極端に高いことになる。

 2020年度(予測)のパケット接続料でドコモが最も高く、KDDIやソフトバンクとの差が大きくなっているのは制度の見直しによる。KDDIとソフトバンクのパケット接続料の算定にBWA(広帯域移動無線アクセスシステム)が加味されるようになったからだ。「BWAの全部ではなく、(KDDIやソフトバンクの)スマートフォンで利用している部分を計上している」(関係者)という。

 改めて調査結果を見ると、BWAを含めたグループ別の総トラフィックはソフトバンクグループが最も多く、KDDIグループ、ドコモの順番になる(図の左上)。BWAのトラフィックは順調に伸びており、KDDIグループに至っては全体のおよそ6割を占める。調査結果は2018年度実績であり、2020年度は別の需要予測に基づいたものとはいえ、BWAを持たないドコモのパケット接続料が最も高くなるのは当然と言える。

 こうした状況を踏まえて感じるのがドコモへの不安だ。2018年度末(2019年3月末)の契約数はドコモが7845万件に対し、ソフトバンクが4454万件。従って前述の調査結果にもある通り、1契約当たりの総トラフィックで比べると、ドコモと他グループとの差はさらに大きくなる。

 携帯電話サービスは「使われてナンボ」。5G(第5世代移動体通信システム)サービスで通信料が従量制から定額制に移行しつつあるとはいえ、トラフィックは成長を推し量るバロメーターだ。ドコモが契約当たりの総トラフィックで大きく劣っている状況は意外と深刻な経営課題であるような気がしてならない。

4.「外出自粛」で渋谷の人出はどれだけ減ったか、データが示す新型コロナ対策の効果(3.31 日経XTECH)
2020年3月28〜29日の週末、東京都内はどこも閑散としていた。これは東京都内でコロナウイルスの感染が広がっていることを受け、東京都の小池百合子知事が2020年3月27日金曜日に翌日からの週末の外出自粛を呼びかけたためだ。

 実際はどの程度の人出だったのか。渋谷駅を中心とした渋谷区では2020年3月28〜29日の週末、コロナウイルスの話題が広がる前の同年2月初旬の週末と比べて「53.3%減」とほぼ半減したことが分かった。同年3月に入って2割ほど減っていたが、3月28〜29日の週末は特に減少が顕著だった。これはリアル行動データプラットフォーム「Beacon Bank」を運営するunerryの協力を得て実態を調査した結果だ。

 詳細を見ると、渋谷駅周辺に滞在した人の行動範囲も大きく変わっていた。2020年2月1〜2日と比較すると同年3月28〜29日は行動範囲がせまくなっていることが分かる。unerryは「渋谷パルコやSHIBUYA109といった商業施設が休館しており、立ち寄れる場所が少なかったためだろう」と見ている。JR山手線や東急田園都市線、国道246号沿いも利用者が少なかったことで、線が細くなっていた。

 周辺の県から東京都への流入はどうだったのか。2020年3月28〜29日における神奈川県、埼玉県、千葉県、山梨県の4県からの流入を見ると、1週間前の3月21日〜22日と比較して神奈川県の48.1%減を筆頭に、埼玉県44.5%減、千葉県42.5%減、山梨県34.3%減と、どの県も40%ほど減少した。東京都の外出自粛の呼びかけは一定の効果があったといえる。

5.NEC、ANAのトレーニング施設にローカル5Gを導入(3.31 日経XTECH)
 全日本空輸(ANA)とNECは、ローカル5Gを活用した共創活動を開始した(ANAのニュースリリース、NECのニュースリリース)。NECが取得した5Gの実験免許を活用し、ANAグループの実務訓練を行う施設「ANA Blue Base」に日本の航空業界としては初めてローカル5Gが導入される。インフラ整備に必要なネットワーク機器はNECが提供する。

 ANA Blue Baseは3万m2の敷地面積を持つ施設で、安全面やオペレーションをはじめ、ANAブランドの発信を行う人材らの育成を目的としている。5G(第5世代移動通信システム)の特徴である高速大容量・低遅延・多接続を活かして、訓練の質向上やパートナー企業との共創による新たなサービスの開発を目指す。例えば、姿勢や手順、視線、訓練生の感情変化などをローカル5Gに接続した各種デバイスからデータとして収集・分析し、個々に応じたフィードバックを行うことで訓練の効果を高めるという。

   ホームページへ