1.格安スマホ向けパケット接続料、ソフトバンクがドコモを抜いて最安に(3.27 日経XTECH)
NTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクの携帯大手3社は2019年度適用のパケット接続料を前年度比6〜20%減の水準で調整していることが、日経クロステックの取材で2020年3月27日までに分かった。各社は確定値を近く公表する。
パケット接続料は格安スマホに代表されるMVNO(仮想移動体通信事業者)がデータ通信サービスを提供する際の「仕入れ値」に相当する。MVNOの費用の大半を占め、業績を左右する重要な要素となっている。
2019年度適用のパケット接続料はドコモが前年度比6%減にとどまったのに対し、KDDIは同13%減、ソフトバンクは同20%減の見込み。10Mビット/秒当たりの月額料金(レイヤー2接続)はソフトバンクがドコモを6600円ほど下回った。
これまで大手3社のパケット接続料はドコモが最安の状況が長らく続き、2013年度適用のパケット接続料においては最も高いソフトバンクとの間で3倍近くの開きがあった。その後、総務省による算定方法の見直しなどで格差は年々縮まっており、ついにソフトバンクがドコモを抜いて最安となった。ドコモ最安の状況が崩れるのは初めて。
総務省はMVNOの事業予見性を高めるため、「将来原価方式」と呼ぶ算定方法を2020年度から新たに導入する。これを受け、大手3社は2020〜2022年度のパケット接続料も同時に公表する見通し。2020年度はドコモが前年度比16%減、KDDIが同38%減、ソフトバンクが同36%減の予測となっており、KDDIもドコモを下回るもようだ。
2021年度と2022年度の予測はドコモが最も高い低減率を示したものの、月額料金はドコモが最も高い状況が続く。KDDIやソフトバンクの回線を活用したほうが費用負担が軽くなるため、MVNOの戦略にも大きな影響を及ぼしそうだ。
2020年3月に商用サービスが始まった5G(第5世代移動通信システム)の接続料についても上記と同じものが適用される。5Gの設備投資が加わることで接続料の上昇を懸念する声があったが、MVNOはひとまず安心といえそうだ。
2.ドコモのパケット接続料は6%減、低減率は前年度並みにとどまる(3.27 日経XTECH)
NTTドコモが格安スマホ向けの回線貸出料金「パケット接続料」について、前年度比6%減の月額49万3115円(レイヤー2接続、10Mビット/秒当たり)とする方向で調整していることが、日経クロステックの取材で2020年3月26日までに分かった。確定値を近く公表する見通し。
冒頭の接続料は2019年度適用分。2018年度適用分は前年度比5%減だったので、今回も前年度並みの低減率にとどまった。総務省は2020年度から「将来原価方式」と呼ぶ新たな算定方法を取り入れた。これに基づくドコモの2020年度適用分の接続料は前年度比16%減の月額41万4368円となるもようだ。
3.ローカル5G利用の地上放送同時配信、災害時を想定しTBSテレビらが実証実験(3.25 日経XTECH)
TBSテレビは2020年3月25日、NECおよびインターネットイニシアティブ(IIJ)らと共同で、日本で初めてローカル5Gを活用した災害時の地上放送同時配信の実証実験に成功したと発表した。災害による停電が発生して据え置き型テレビが使えない場合でも、避難所などでスマホなどを通して緊急特番を配信して、避難者に視聴してもらうことが可能になることを実証した。ローカル5Gを活用することで、「輻輳なしに地域に特化した情報提供が可能」になるという。
実証実験では、地上デジタル放送の電波をローカル5Gの基地局近くで受信した。受信したTBSテレビの放送番組は同時配信用の形式にエンコードしたうえで、NECが実験免許を取得して用意したローカル5Gラボ内に設置したMECサーバー((Mobile/Multiaccess Edge Computing Server)から同時配信した。
さらには、MECサーバーを用いてCMの流れているコーナーにおいて、当該地域に特化した災害情報にリアルタイムで差し替えて配信することに日本で初めて成功した。
今回の実験のネットワーク構成では、災害時にインターネットが輻輳している場合でも、影響を受けずに放送番組をネット配信で届けられる。例えば自治体が設置したローカル5Gに、今回のシステムを連携することで、災害時には自営による素早い情報収集手段を避難民に提供できることになる。
MECにおいて動画配信機能の中核となる配信サーバーおよびキャッシュサーバーはIIJが提供した。NECは、5Gによる同時配信に向けたネットワーク構成を立案するとともに、地上放送の番組を符号化する同時配信用エンコーダー装置を提供した。
4.NTT・トヨタ提携、豊田社長「モビリティー企業への変革にNTTとの提携は不可欠」(3.24 日経XTECH)
NTTとトヨタ自動車は2020年3月24日、スマートシティー事業の事業化に向けて資本業務提携すると正式発表した。2社は互いに約2000億円を出資して株式を持ち合う。加えて、トヨタが静岡県裾野市に建設する計画のスマートシティー構想「ウーブン・シティ」の実現に向け、NTTは通信技術やスマートシティー開発のノウハウなどで協力する。
東京都内で同日午後に開いた記者会見で、トヨタ自動車の豊田章男社長は「NTTグループは企業グループの事業モデルをハード主体からソフト主体の総合情報通信企業へと変革してきた先駆者である」とした。さらに「トヨタがモビリティーカンパニーにフルモデルチェンジし、ソフトウエアファーストで社会システムと結び付いたクルマ開発を実現していくうえで、NTTとの提携はトヨタにとって必要不可欠だった」と提携の意義を強調した。
NTTの澤田純社長は「トヨタとの資本業務提携について非常に興奮している」と話した。続けて「世界や国の発展と、地域の住みやすさとを両立させるため、私たちはスマートシティーを広げていく必要がある。世界中で自動運転に取り組んでいるトヨタと当社が手を組むことで、住民や地域の社会基盤を提供していきたい」と今回の提携への意気込みを語った。
5.5G時代のネットワークに苦悩する携帯大手各社、エリア展開の「激戦」が復活か(3.23 日経XTECH)
2020年3月に入って楽天モバイルが本格サービスに向けたサービス内容を、ソフトバンクやNTTドコモが5Gの商用サービスの内容について発表するなど、携帯電話各社の新たな取り組みが注目を集めている。だがそれらの内容からは、エリア整備に課題を抱えたまま見切り発車で本格サービスを開始せざるを得ない、各社の苦悩も見えてくる。
2020年3月は携帯電話大手の5G商用サービス開始や、楽天モバイルの本格サービスに向けた料金プランの発表など、携帯電話業界で大きいイベントが相次いで実施された。新型コロナウイルスの影響で各社とも発表会にメディアを呼べず、インターネット配信のみという限定的な形となってしまったのは残念だが、それでもいくつかの企業は予定通りのサービスを発表している。
最初に発表会を開催したのは楽天モバイルだ。同社は2020年3月3日に発表会を実施し、現在は実質的な試験サービスにとどまっている携帯電話事業に関して、2020年4月8日に本格サービスを開始することを明らかにするとともに、その料金プラン「Rakuten UN-LIMIT」を打ち出したのだ。
Rakuten UN-LIMITは月額2980円で利用でき、楽天モバイルのネットワーク内であればデータ通信が使い放題となる。また「Rakuten Link」という専用アプリを使うことで、通話やSMSも使い放題になるという。大盤振る舞いな内容に見えるが、発表直後に大きな問題点が指摘されている。
その問題点とは、現在のところ楽天モバイルのネットワークが利用できるエリアは非常に狭く、東京都や大阪府など都市部の一部地域に限定されていることだ。それ以外のエリアでは、提携しているKDDIのネットワークにローミングして利用するのだが、その際はデータ通信が使い放題にならない上、通信量の上限が2GBと大幅に制限されてしまう。
しかも現状、楽天モバイルのネットワークがカバーしている地域であっても、地下や建物内は整備が進んでおらず、やはりKDDIのローミングで賄っている状況だ。それゆえ、例えば楽天モバイルのエリア内だからと油断して地下鉄や屋内などで動画を見ていると、実はKDDIのローミングエリアで通信しており、いつの間にか2GBの容量を消費して通信速度が128kbpsに落ちてしまう、というケースも十分起こり得るだろう。
ソフトバンクは2020年3月5日に発表会を実施し、2020年3月27日に5Gの商用サービスを開始すると発表した。
その内容を見ると、ソフトバンクは2020年2月25日に発表した新料金プラン「メリハリプラン」など、4G向け料金プランに月額1000円の「5G基本料」を上乗せすることで、5Gによる通信が利用できるプランを打ち出している。それゆえ5Gで通信できるという以外、利用できるサービスの内容は既存の4Gと大きく変わらないことになる。
これはすなわち、ソフトバンクの5Gではデータ通信の使い放題を実現できなかったことも示している。実際、同社が今後の主力プランと位置付けるメリハリプランの内容を見ると、通信料金を2GB以下に抑えると料金が安くなるという特徴があるとはいえ、データ通信量の上限は50GBで、「YouTube」「Instagram」といった主要インターネットサービスのデータ通信量のみをカウントしない仕組みなど、それまでの主力プランである「ウルトラギガモンスター+」と大きくは変わらない。
その理由を考えると、たどり着くのはやはりエリアだ。ソフトバンクの5Gエリアを見ると、サービス開始当初に5Gが利用できるのは、千葉県や石川県、愛知県、福岡県などのごく一部であり、2020年4月末時点でも東京23区内で利用できる場所は東京駅周辺など、極めて限られている。
さらに現在公開されている範囲でいえば、2020年夏以降のエリア整備を予定している場所も、全国の都市部の一部に限られるなど「点」でしか5Gを利用できないことが分かる。少なくとも2020年内は大容量通信に耐える5Gのエリア整備が大きく進む可能性が低いが故に、使い放題プランを提供できなかったといえそうだ。
一方、限定的な部分はあるものの、5Gでデータ通信の使い放題を打ち出しているのがNTTドコモだ。同社は2020年3月18日に発表会を実施し、2020年3月25日に5Gの商用サービスを開始するとし、5G向けの新料金プラン「5Gギガホ」「5Gギガライト」を公表している。
このうち主力のプランとなるのは大容量プランの「5Gギガホ」で、こちらは4G向けの「ギガホ」に500円を加えた月額7650円(各種割引を適用しない場合)で、100GBのデータ通信ができる内容となっている。さらに、サービス開始当初から提供される「データ量無制限キャンペーン」を適用することで、実質的に当面の間データ通信が使い放題になるという。
NTTドコモもサービス開始当初のエリアは150カ所と非常に少ないにもかかわらず、なぜソフトバンクが見送ったデータ通信使い放題の実現に踏み切ったのか。それは同社のエリア構築計画が大きく影響しているといえよう。
5G向けに割り当てられた周波数帯は広いエリアのカバーに不向きなことから、ソフトバンクは4Gの周波数帯を5Gと共用する「ダイナミックスペクトラムシェアリング」という技術で広範囲をカバーしようとしている。だが4Gの周波数帯は帯域幅が狭いので大容量通信に不向きだ。
しかしながらNTTドコモは大容量通信に適した5G向けの周波数帯に対応した基地局を多数設置することで、広範囲をカバーしようとしている。実際同社は当初の計画を2年弱前倒しし、2022年3月末までに5G基地局を2万局設置する計画を打ち出している。将来的に大容量通信に強いネットワークを構築できることを見越し、データ通信の使い放題の実現に踏み切ったといえよう。
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