週間情報通信ニュースインデックスno.1216 2020/3/21


1.ホスピタリティーとコラボレーションが別次元になる(3.19  日経XTECH)
2020年春、いよいよ日本国内でも5Gサービスが始まる。5Gが広がる2020年代は、いったいどのような時代になり、企業はどのように対応すべきか。企業のIT戦略やマーケティング戦略などを多数手がけ、情報通信の動向に詳しい、PwCコンサルティングの今井氏と神馬氏に2020年代の展望を聞いた(両氏の所属・肩書は2020年3月時点)。

これまでの3G、4Gに比べて、5Gの注目度は一段と高いように感じています。その理由について、どのようにお考えでしょうか。

神馬氏 デジタルトランスフォーメーション(DX)やインダストリー4.0の流れが背景にあるのは間違いありません。PwCは、「Essential 8」と呼ぶ、AR(拡張現実)やVR(仮想現実)、IoT(モノのインターネット)などからなる「世界観を変える主要な8つの技術」を発表しています。趣旨は、これらが複層的に重なって、大きな社会変革が起こっているということです。5Gは、この8技術を下支えする基盤技術と位置づけています。

 5Gを含めて、個々の技術の変化は「連続的」ですが、これらが組み合わされることにより、できることが「非連続的」に高まっているのです。

5G時代における企業の変革は、どのように進みそうでしょうか。

神馬氏 5Gによって本質的に変革する領域として、生産現場やスポーツ、エンターテインメントの領域はもちろんなのですが、実はホスピタリティーという切り口が、非常に面白いのではないかと思っています。言い換えると、ユーザー体験(UX)、顧客体験(CX)のマネジメントが、よりグレードアップするのが、5Gの持っているポテンシャルです。なぜ、ホスピタリティーが変わるかと言えば、取得可能な情報量がこれまでとは比べものにならないほど増え、しかもそれが適切なタイミングで手に入るからです。

 遊園地におけるホスピタリティーを考えてみましょう。例えば、家族で遊園地を訪れていた子供が、大事にしているスナックを落としてしまったとします。スナックを落としたという事実が映像として認識され、それを悲しんでいる祖父母の様子が分かり、家族の属性情報も入園者のデータとして存在します。これらの情報に基づき、「子供がスナックを落としたことで、家族皆が悲しんでいる」という家族のストーリーが組み立てられ、そのストーリーがスタッフに伝わり、落としたスナックが短時間で届けられます。

 こうした顧客体験を積み重ねていくことによって、顧客の満足度が上がっていく社会になっていくのではないでしょうか。これは、生産ラインの稼働状況を可視化して、工場設備に適切なメンテナンスを施すといった工場内の管理に通じるところがあります。5Gの時代になると、映像のように使い方が分からなかった非構造データを「意味を持ってつなげられるようにする」ことがポイントです。

今井氏 映像の活用によるユーザー体験の変革という話で言えば、社内におけるプレゼンのスタイルも変わってきました。以前は紙を配布して皆それを手元に置いて議論していましたが、今ではプレゼンテーション・ソフトを大型スクリーンに表示することがほとんどです。最近では、プレゼンの出だしにCGあるいは動画を使うことがスタンダードになり始めています。

 以前から、映像を使えば注目度が集まることは分かっていたものの、データ量が多い映像は加工に手間がかかり投資対効果が悪かったので、使うことが敬遠されていました。それが、簡単かつ低コストで作成できるようになった結果、動画を使ったプレゼンが当たり前になってきたというわけです。

ホスピタリティー以外に、変革が見込まれることはあるでしょうか。

今井氏 コラボレーションのレベルがぐんと上がると見ています。数百人以上のコラボレーション時代を迎えることになるでしょう。

 この時代感を理解するには、「アジャイル開発」の本質を理解する必要があります。アジャイル開発の本質というのは、プロダクトのクオリティーを80%から100%に引き上げるには、開発全体の80%の労力とコストを要するというものです。アジャイル開発において重要なのは、完成度を高める終盤の工程に入る前に、プロダクトの市場適合性を見極めることです。そうしないと、残り20%の完成度を上げるために必要な80%の労力とコストが、無駄になりかねません。

 アジャイルの時代においては、60%くらいのクオリティーに達した段階で、ユーザーを含む多くの人の改善ポイントを取り込んで、軌道修正していく必要があります。このとき、開発者以外の外部の視点を広く取り込むことがポイントになります。「いつものメンバー」からは出てこない建設的な意見、批判的な意見を取り込むことが重要です。

神馬氏 コラボレーションの範囲も情報量も限定的だった従来は、「専任の人」をいかに集められるかがプロジェクトの勝負を分けました。今後は、通信が進化することでコラボレーションにおけるボトルネックが下がります。そうなると、社内外からエキスパートを集めることによって価値が出せる時代になるでしょう。

 2020年代の新しい世界観では、 エキスパート100人がそれぞれ1%の貢献をするプロジェクトの方が、1人の専任者が進めるプロジェクトよりも大きな価値を生み出すということになります。これまでも「100人の方がいい結果をもたらすことができそうだ」とは分かってはいたものの、100人をつなぐためのコストや労力が大きすぎて、現実的ではありませんでした。

今井氏 このように考えると、これまで以上に高度な専門性を持ったフリーランスの仕事が増えてくると思われます。従来は専門性を発揮できる場面がごく限られており、フリーでは「食えない」状態でした。今後は、専門性を生かす場面が圧倒的に増え、プロジェクトを選ぶだけで生計を立てられる人が増えるでしょう。

大規模なコラボレーションを実現するのに、何が必要になるでしょうか。

今井氏 大規模なコラボレーションを実現する時代に必要になってくるのが、報奨 (リワード)を分配するための仕組みであり、個人およびその貢献度を認証する技術です。つまり、コラボレーションに誰が参加し、得られた成果について、どれくらいの貢献ができていたのかフェアに定量化できる仕組みです。この仕組みができることで、プロジェクトの規模によっては1%の貢献から大きな対価を得られる可能性があります。

神馬氏 多くのものがつながる5G時代にセキュリティーの重要性が増すことは間違いありませんが、今後クローズアップされるチャレンジの1つとして、セキュリティーの別の側面としてのトラスト(信用)があります。ここで言うトラストというのは、例えば、「AI の中身は何か?」といった問題であり、顧客に対して信頼のおける仕組みかどうかという問題です。AIによって判断が自動化されたのはいいですが、何が起こっているのか分からなくなっています。提供者にとっての正義と顧客にとっての正義、あるいは複数の顧客間の正義がイコールではないことが増えていくことが予想できます。

 もう1つのチャレンジは、「自動運転の責任者は誰か?」といった法的整備が整っていないことです。デジタルや5Gは新しい技術なので、その進歩とともに制度や法律を一緒に作らないといけません。

2.5G時代に向けた360度映像を提供へ、電通がAMATELUSと提携(3.18 日経XTECH)
電通は2020年3月18日、360度マルチアングルで様々な角度から視聴ができる自由視点映像に関する特許技術である「Swipe Video(スワイプビデオ)」を保有するAMATELUSと業務提携を行ったと発表した。

 「Swipe Video」では、クラウド配信システムを通じて、自由視点映像を提供できる。HTML5上で動作するので、視聴者はWebブラウザーだけで自由視点映像の再生が可能。再生画面を指先でスワイプするだけで映像の切り替えを行うことができる。このほかにスロー再生やズームなどの操作にも対応する。

 電通はAMATELUS社の戦略パートナーとして、第5世代移動通信システム(5G)時代に向けた新たな映像視聴体験の提供を目指す。電通の強みであるスポーツを含むエンターテインメント領域を手始めに、放送や通信、その他の幅広い領域での提供を予定する。

3.ドコモの5Gは3月25日開始、通信無制限で月額4480円から(3.18 日経XTECH)
NTTドコモは2020年3月18日、第5世代移動通信システム(5G)の商用サービスを2020年3月25日に開始すると発表した。当初は対応スマートフォン(スマホ)2機種と映像サービスなどを展開する。発表会で吉沢和弘社長は「5Gを今までにない新たな価値の創出と社会課題の解決につなげたい。5Gスマホを積極的に展開し、2023年度中に2000万契約規模を目指す」と表明した。

 料金プランは定額制「5Gギガホ」と従量制「5Gギガライト」を用意した。前者はデータ量が月100ギガバイトで月額料金は7650円。これを期間未定のキャンペーンでデータ量を無制限とした。複数回線割引、光回線とのセット割引、ドコモのクレジット会員割引などを全て適用すると月額4480円になる。後者は月額3150円(データ量1ギガバイト)〜6150円(同7ギガバイト)の4段階とした。

 端末は3月25日に韓国サムスン電子製「Galaxy S20 5G SC-51A」とシャープ製「AQUOS R5G SH-51A」の2機種を発売する。6月下旬にかけて韓国LGエレクトロニクス、ソニーモバイルコミュニケーションズ、富士通コネクテッドテクノロジーズなどのスマホ5機種を順次追加するほか、シャープ製のモバイルルーター1機種も5月下旬以降に発売する。当初はBtoCで音楽ライブやアニメ、スポーツなどの視聴やクラウドゲームを、BtoBでxRによる遠隔作業の支援や顔認証を使う入退管理など22種類のソリューションを提供する。

 開始当初のサービスエリアは全国150カ所500局で、最大速度は下り3.4ギガビット/秒、上り182メガビット/秒。2020年6月以降に28ギガヘルツ帯の基地局の利用を始め、最大速度を下り4.1ギガビット/秒、上り480メガビット/秒に引き上げる。2021年3月末までに全国500都市へ展開し、2022年3月末には2万局と「総務省へ提出した開設計画を2年弱前倒しする」(吉沢社長)ペースで展開する。

4.大容量データを無料で送受信、テレワークに便利なファイル転送サービスの使い方(3.18 日経XTECH)
テレワークに役立つITサービスとしては、ファイル転送サービスも挙げられる。ビジネスチャットやメールでもファイルのやりとりは可能だが、ビジネスチャットを利用していない社外の人とやりとりしたい場合や、メールでは送れない大容量のファイルをやりとりしたい場合、ファイル転送サービスは便利だ。

 OneDriveやDropbox、Googleドライブといったオンラインストレージを使ってファイルを共有する手もあるが、手軽さではファイル転送サービスに軍配が上がる。しかもファイル転送サービスによっては会員登録が不要だ。アカウントを作らずに利用できる。

 無料で利用できるファイル転送サービスとしては「宅ふぁいる便」が代名詞的存在だったが、不正アクセスを受けてサービスを停止し、利用できない状態が続いている。そして2020年3月31日にサービスを終了することを明らかにしている。なお有料の「オフィス宅ふぁいる便」は利用可能で、今後も継続する。

 宅ふぁいる便は終了するものの、無料で利用できるファイル転送サービスは多数存在する。無料であっても会員登録が必要なサービスや会員登録すると機能が増えるサービス、有料サービスを別途用意するサービスなど様々だ。

無料で利用できるファイル転送サービスの例
BitSend https://bitsend.jp/
おくりん坊 https://okurin.bitpark.co.jp/
ギガファイル便 https://gigafile.nu/
データ便 https://www.datadeliver.net/
ラクスルBOX https://box.raksul.com/

5.「5Gで本当に新しいものは何か」、サムスンが過去から未来まで展望(3.16 日経XTECH)
韓国Samsung Electronics(サムスン電子)は2020年3月3日、「The Road to 5G: Understanding What’s New with the Next-gen Network(5Gへの道:次世代ネットワークで本当に新しいものは何か)」と題するコラムを同社のサイトに掲載した(Samsungのニュースサイト)。2020年には主要な通信手段になると目される5Gについて、その潜在能力を理解することを目的として、サービス開始までの道のりと現在の状況、将来への期待などを解説している。以下はその要約となる。

5Gサービス提供への礎となったNSA

 2019年に開始した世界初の5G商用ネットワークサービスは、信号制御に既存の4Gインフラを使用するNSA(Non-Standalone)で提供されている。5G NSAネットワークでは、複数の異なる周波数帯域、特にサブ6(6GHz未満の周波数帯域)と呼ばれる4G LTEと重複する周波数帯と、ミリ波と呼ばれる高周波数帯の同時利用が可能となる。サブ6は建物などの壁も貫通してより遠くに伝わり、ミリ波はさらなる超高速な通信を可能にするという特長を持つ。事業者は、手持ちの周波数帯で顧客にどのようなサービスを提供するのかを考えながら、バランスの取れた供給を行う必要がある。

カバレッジ拡張の道を開くDSS

 既存の4Gインフラ活用としては、このDSS(Dynamic Spectrum Sharing:動的周波数共有)も5Gカバレッジの迅速かつ広範囲への拡張といった面で有効である。この技術を使うことで、後述する5G基幹ネットワークを含む新たな5G環境への移行時にも広域なカバレッジ確保が可能となり、5Gネットワークの基礎を盤石にすることができる。

 過去、2Gから3G、3Gから4Gへの移行に当たって、事業者がそれまで使用していた周波数帯を次世代技術に適用するためには、ユーザーの大多数がその新技術にアップグレードするのを待たねばならなかった。現状でも、中周波数帯に帯域幅40MHzの枠があった場合、半分の20MHzを4G LTEで、残りの20MHzを5Gで使うなどする必要がある。5Gユーザーもいるが、4G LTEのユーザーもまだ大勢残っているからだ。

 DSSのアルゴリズムを使えば、この問題は解決する。4G LTEと5G端末とで周波数共有が可能となり、4G LTEから5Gへ顧客の移行が進んだ後も、最適な周波数配分を実現する。

5Gの次のフェーズとなるSA

 SA(Standalone)とNSAとの違いは、既存の4G LTEインフラを必要としないところだ。その代わりに高速通信を実現する新しいアーキテクチャーの導入が必要となる。第5世代の新Node Bともいえるネットワークの心臓部となる5G基幹ネットワークだ。SA 5Gでは、ミリ波と従来の低・中周波数帯を活用することで、4Gよりさらに高効率、かつ、セル端でも高速なデータ通信を実現する。これにより、4K動画の生配信や自動運転など、新しいビジネスも可能になる。

 なお5G SAでは、データ送受信可能端末数についても改善を行っており、4G時には1km2(1平方キロメートル)当たり10万台が5G SA環境では同100万台となる。

 Samsungの最新スマートフォン「Galaxy S20」シリーズは5G SAに対応。AR(拡張現実)からクラウドゲーミングまで、最速の5Gを体感できるとする。5G向けモデムチップなどの各種5G製品を用意し、今後も5Gの最前線での活動を進める。

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