週間情報通信ニュースインデックスno.1209 2020/1/25


1.5Gの命運は2020年後半の新型iPhoneと低価格スマホが握る、そう言える理由(1.24 日経XTECH)
2020年は日本で5G(第5世代移動通信システム)の商用サービスが始まることから、サービス開始に合わせて携帯電話各社から5Gスマートフォンが多数登場するとみられる。だが5Gスマートフォンの販売が伸びて盛り上がるのは2020年の後半からだと考えられる。その鍵を握るのは低価格スマートフォンとiPhoneだ。

 かねてより関心が高まっている5Gの商用サービスが、いよいよ2020年3月ごろには日本でもスタートすると見られている。そして5Gのサービス開始と同時に注目を集めると見られているのが、5Gに対応したスマートフォンである。

 2010年にNTTドコモがLTEを用いた通信サービス「Xi(クロッシィ)」を開始した当初は、携帯電話やスマートフォンではなく、データ通信専用の端末のみを提供していた。だが5Gの場合、海外で既に商用サービスが始まっており、幾つかのメーカーが対応するスマートフォンを市場に投入していることから、5G端末の充実度合いは4Gのときに比べて段違いとなっている。

 実際、スマートフォンで世界最大手の韓国サムスン電子は、2019年に「Galaxy S10 5G」をはじめとして5G対応スマートフォンを5機種投入しており、韓国のLGエレクトロニクスや中国ファーウェイ・テクノロジーズ(Huawei Technologies、華為技術)なども既に5G対応スマートフォンを投入している。またシャープやソニーモバイルコミュニケーションズなどの日本メーカーも、日本での5Gサービス開始に合わせて5G対応スマートフォンを投入するとみられる。

 そうしたことから日本でも、サービス開始当初から5G対応スマートフォンが多数投入され、多くの人が手軽に5Gを体験できる環境が整えられることは間違いない。とはいうものの、5Gのサービス開始直後に投入されるスマートフォンを、多くの人が購入するとは考えにくいというのが筆者の見立てである。

 その理由は、現在提供されている5Gスマートフォンが高額であること。海外の事例を見ても、5G対応スマートフォンはハイエンドモデルに限定されており、7万?10万円はするのが一般的である。加えて、日本でサービス開始当初に投入される5G対応スマートフォンも、先進性をアピールするため高性能な端末を前面に打ち出す可能性が高いことから、同様に高価格帯の端末が多く投入されると考えられる。

 とはいえ、携帯電話事業者としては5Gを利用できるスマートフォンの販売台数を増やさなければ、5Gを利用する人が増えないという課題を抱えてしまうこととなる。そうしたことから何らかのタイミングで、5Gスマートフォンの販売を拡大するための何らかの施策を講じると考えられる。そのタイミングは2020年の後半、より具体的には秋・冬モデルの投入時期になるのではないかと筆者は予想する。

 理由の1つは低価格な5G対応スマートフォンの登場だ。現在の5Gスマートフォンが高額である主な理由は、5Gのモデムに対応するチップセットがハイエンドモデル向けのものしか存在しないためだ。例えば米クアルコム(Qualcomm)が現行のスマートフォン向けに提供している5Gモデム「X50」は、ハイエンド向けのチップセット「Snapdragon 855」とセットで利用する必要があり、どのような端末であれ、5Gに対応するには必然的に高額なハイエンド向けチップセットを採用せざるを得なかったのだ。

 そこで5G対応スマートフォンの低価格化を進めるため、性能を落とした低価格スマートフォン向けの5G対応チップセットの開発が現在積極的に進められている。実際クアルコムは2019年12月に、5Gのモデムを内蔵したミドルハイクラス向けのチップセット「Snapdragon 765」シリーズを発表している。台湾メディアテック(MediaTek、聯發科技)も2019年から2020年までにかけて、ミドルハイクラス向けの「Dimensity 1000」、ミドルクラス向けの「Dimensity 800」を立て続けに発表している。

 これらのチップセットを搭載した安価な5G対応スマートフォンも次々発表されている。日本に進出している企業を見ても、オッポ(OPPO、広東欧珀移動通信有限公司)やシャオミ(Xiaomi、小米技術)、TCL(TCL集団)などの中国企業が、Snapdragon 765を採用し、3万?6万円台と従来よりかなり安価な5G対応スマートフォンを提供するとしている。

 そしてもう1つの理由は、米アップル(Apple)の動向だ。同社のiPhoneは日本で最も人気が高いスマートフォンであることから、現時点ではiPhoneの5G対応が日本の5G普及を大きく左右するといっても過言ではない。

 既に大手各社が5G対応スマートフォンを投入している中、2020年のタイミングでiPhoneの5G対応を実現できなければ、アップルはスマートフォンメーカーとして極めて厳しい立場に立たされるだろう。それだけに今、アップルにとって5G対応iPhoneの投入は至上命令になっている。裏を返せば、5G対応iPhoneが2020年に登場する可能性は非常に高いと考えられるわけだ。

 低価格の5Gスマートフォンと5G対応iPhoneという、普及に欠かすことのできない2つの要素がそろえば、携帯電話事業者も5Gの普及を加速できるだろう。ゆえに5G普及の進み具合を見据える上で、例年アップルが新iPhoneを発表する9月以降の動向に注目すべきだと筆者は考えている。 

 

2.高出力LPWAとメッシュで広い山間部をカバー、NTT東らが小菅村で林業高度化の実証実験(1.22 日経XTECH)
 NTT東日本は2020年1月22日、山梨県小菅村、北都留森林組合、boonboon、さとゆめと共同で、豊かな森林資源を有する小菅村山間部をネットワーク化し、林業に関する課題解決およびスマートビレッジの実現に向けた実証実験を2月に開始すると発表した。

 この実証実験では、山間部を効率的にカバレッジできる高出力(920MHz帯、最大送信出力は250mW)の独自LPWA(Low Power Wide Area)を用いて広域をカバーするネットワークを整備する。通常、免許不要で利用する20mW(特定小電力無線)の場合だと、見通し1km〜2km程度をカバーするのに対し、今回は数kmをカバーできるという。さらに、最大3ホップまで、中継器を複数利用できて、メッシュ上にエリアを拡張できる。今回は、親機1台と中継機4台で、約52km2ある小菅村のほぼ全域をカバーした。

 整備したネットワーク上で、林業の共通課題である「林業従事者の労働災害抑止」「シカなどの獣害対策」に取り込む。具体的には、前者の関連では、従事者による緊急時の救助要請を可能にする仕組みを提供する。もし伐木作業中の倒木事故などで負傷した場合は、子機本体のボタンを押下することで、SOS信号を発信する。子機に内蔵された加速度センサーにより転落など急な衝撃があるとトラブルを検知し、SOS信号の自動発信もできる。これにより、緊急事態の早期発見・早期対応を可能とする。子機に内蔵したGPSで、作業者の位置を地図上に表示することで、救助要請者の居場所の把握を可能とする。加えて、携帯電話の電波の届かない場所でも、専用アプリを介して、テキストや位置情報をチャットで送受信することで業務連絡などの作業効率化を図れるようにした。

 シカなどの獣害対策としては、子機に内蔵されたセンサーがわなの作動を検知した際にあらかじめ指定した宛先に捕獲情報を通知することで、捕獲の早期発見・駆け付けや巡回ルートの最適化を可能にする。加えて、巡回が困難な場所には、カメラを設置し、捕獲有無や害獣種別・大きさなどを画像で確認することで、巡回稼働の効率化を図る。LPWAの通信速度は300bpsと低速だが、画像の確認を必ずしもリアルタイムで行う必要もないため、時間をかけて送信する形で実現した。

 

3.2024年にスマホの20%がeSIMに、エリクソンが完全自動化ソリューション(1.22 日経XTECH)
 スウェーデンEricsson(エリクソン)は2020年1月15日、端末に直接SIMを組み込むeSIM(embedded SIM)ソリューション提供開始を発表した。従来のSIMカードからeSIMに移行することで、ユーザー体験の改善が見込めるほか、端末メーカーにとっても、エンドユーザーに焦点を合わせた端末設計ができるようになる。 

 このeSIMソリューションでは、端末ユーザーのプロファイルや端末管理情報などを遠隔から書き換え可能なリモートプロビジョニングを提供。通信サービスプロバイダーのより柔軟な管理実現を支援する。 

 同社では、このソリューション提供に際して、ユーザーの視点に立って、ユーザーが料金を支払ってでも使いたい機能を実現するため、5カ国2億人のスマートフォンユーザーに調査を実施。下記のような項目を意識したものとなったという。 

(1)数クリックの操作で新しい端末への接続が可能
(2)購入前に3〜4日試してから購入可能など、試用期間を設定
(3)旅行先でネットワーク使用時も、地元のデータプランで使用でき、かつ、地元の通信事業者に支払可能
(4)重要な電話やメッセージを送る必要があるがネットワークがつながらない場合に、任意の移動通信ネットワークに接続可能
(5)イベントや特別な発表などを行う際に、イベント主催者や他社も使用可能な、柔軟なビジネスモデル、電子商取引モデルの提供
 調査データによると、スマートフォンへのeSIM導入後のスマートフォン契約者一人当たりの売上成長率は、様々な端末への接続が可能になることから10〜15%増加するという。

 また、情報通信技術関連の調査を行う英OVUMが2020年1月に発表したレポート「eSIM Device Sales Forecast Report: 2019-24」(OVUMの「eSIM Device Sales Forecast Report: 2019-24」紹介サイト)では、2020年中に世界のスマートフォンの5%がeSIMに移行するとし、2024年には20%にまで伸びるという。

 さらに、eSIM搭載端末は、自動化、効率化されたサポート体制に後押しされ、年間60%もの成長率で増えていくものとしている。

4.ローカル5Gは課題山積、「民主化」が遅れれば携帯大手の餌食になる(1.22 日経XTECH)
  企業や自治体が自らの建物や敷地内で5G(第5世代移動通信システム)ネットワークを独自に構築できる「ローカル5G」の免許申請が2019年12月に始まった。地域の活性化や新たな需要の拡大につながるとして、旗振り役の総務省をはじめ、通信事業者やベンダーなど関係者の期待は大きい。だが課題も多く、しばらくは利用が広がらないのではないかと筆者は危惧している。

 まず仕組みが難しい。ローカル5Gといっても当面は4Gと組み合わせた「NSA(ノンスタンドアローン)」構成での運用となり、4Gネットワークを別途用意しなければならない。「自営等BWA(広帯域移動無線アクセスシステム)」を使って自ら構築するか、携帯大手や地域BWA事業者から借りる必要がある。ここまでの説明を聞いただけで導入をためらう企業や自治体も多いのではないか。

 周波数の利用に当たっては同期や干渉調整が必要となり、例えば自営等BWAで構築する場合は地域BWAの利用を妨げてはならないといった細かな制約がある。基地局は国家資格である「陸上特殊無線技士」が取り扱い、緯度・経度による厳密な座標で設置場所を申請しなければならない。設置場所の変更にも許可が必要になるケースがある。企業や自治体が4Gと5Gの両方のネットワークを自ら構築・運用するハードルは高く、通信事業者やベンダーに頼らざるを得ない。

 肝心のコストもみえていない。当初は携帯電話事業者向けの製品をベースとした基地局や交換機の利用が中心とみられ、大規模導入の場合は数億円規模といった話も聞こえてくる。端末価格はスマートフォンで10万円前後。組み込み用モジュールであれば1台当たり数万円で済むかもしれないが、大量にばらまけるような水準ではない。

 加えて通信事業者やベンダーへの委託費用、4Gネットワークを借りた場合はその費用、電波利用料などもかかる。料金が明確になっているのは電波利用料だけで、基地局が1局当たり2600円、端末(陸上移動局)が1台当たり370円(ともにローカル5Gだけの年額)。端末台数が数百や数千の規模になると、電波利用料だけでもそれなりにコストがかかる。総務省にはぜひ見直しを期待したいところだ。

 もっとも、本命は5Gだけで運用する「SA(スタンドアローン)」構成にある。4Gを使わなくて済む分、導入のハードルが低くなる。SAを含む5Gの「リリース16」の仕様は2020年3月末までにほぼ固まる見通しで、「超高速・大容量」だけでなく「超低遅延」や「多数同時接続」なども実現できるようになる。

 さらに今後は仮想化技術の進展により、高価な基地局や交換機の機能を汎用サーバーで代替できるようになっていく。まさに新規参入の楽天モバイルがこれを目指して取り組んでおり、企業や自治体でも手軽に5Gネットワークを構築・運用できる「民主化」が進むとみられている。「小規模な構成であれば数十万円で導入できるようになる可能性が高い」(業界関係者)と期待の声が多い。

 ただ、問題は民主化の実現時期である。携帯大手は5Gのエリア展開を前倒しする方針を示している。ローカル5Gのメリットは携帯大手のトラフィック混雑や障害に影響を受けることなく独自のネットワークを設計・運用できる点にあるが、手間を含めコストがかかるのであれば携帯大手の5Gサービスで十分と考える企業や自治体も多いはずである。エリアの充実度とサービスの品質が海外に比べて格段に高い日本ではなおさらだ。

 携帯大手は2021年度からSAの導入を始め、2023〜2024年度までには品質などの要件に応じてインフラを仮想的に分割できる「ネットワークスライシング」も実現する見通し。同機能を活用すれば企業や自治体の細かいニーズに対応しやすくなる。「ローカル5Gの需要は確実にあるが、最終的には携帯大手の5Gサービスに駆逐されるシナリオも十分に考えられる」(ローカル5Gの導入支援サービスの提供を計画する事業者の幹部)と警戒する声まで出ている。

 もう1点、筆者が気掛かりなのは前述した制度絡みの煩わしさである。民主化が早期に訪れたとしても、それこそ無線LANのように手軽に構築できなければローカル5Gの爆発的な広がりは期待できない。どうにかならないものだろうか。

 ローカル5Gに不安を感じるのは地域BWAの影響も大きいかもしれない。総務省は地域の公共サービスの向上やデジタルデバイド(情報格差)の解消などを目的に2.5ギガヘルツ帯の周波数を確保。自治体や通信事業者の免許申請を2008年から受け付けているが、基地局の開設は2019年12月11日時点で80者にとどまる。80者とはいえ市町村など地域単位での利用となるため、エリアマップで見るとスカスカの状況である。貴重な周波数を無駄遣いしている。

 総務省はローカル5Gで地域BWAもうまく活用しつつ再起を狙うわけだが、今回ばかりは「あまり使われなかった」で済まされない。というのも、ローカル5G用の周波数は現状、28ギガヘルツ帯の100メガヘルツ幅だが、2020年中にも28ギガヘルツ帯の800メガヘルツ幅と4.5ギガヘルツ帯の200メガヘルツ幅を追加し、合計1100メガヘルツ幅を割り当てる予定だからだ。携帯各社に割り当てた5G用の周波数は1社当たり500メガ〜600メガヘルツ幅なので2社分に相当する。

 

5.グーグル・アマゾン・MS、プラットフォーマーがウエアラブルに注力する理由(1.20 日経XTECH)
 米グーグル(Google)が米フィットビット(Fitbit)を買収し、米アマゾン・ドット・コム(Amazon.com)や米マイクロソフト(Microsoft)がワイヤレスイヤホンを発表するなど、2019年はウエアラブルデバイスが盛り上がりを見せた年でもあった。一度は関心が落ちていたウエアラブルデバイスが、いわゆるプラットフォーマーを中心に再び盛り上がりを見せている。その背景には何があるのだろうか。

 折り畳みスマートフォンなど様々なIT技術やデバイスが盛り上がりを見せた2019年だが、改めて振り返ってみると、ひそかに盛り上がっていたと感じるのがウエアラブルデバイスである。一時は関心が大きく落ちていたウエアラブルデバイスだったが、2019年はそれが復権した年だったと言えるかもしれない。

 そのことを示しているのがプラットフォーマーの動きである。中でもこの分野に急速に力を入れるようになったのがグーグルだ。同社はスマートウオッチ向けの「Wear OS」を手掛けるなどしてウエアラブルデバイス向けの取り組み自体は継続していたものの、2019年にはハードウエアに関する企業や事業を相次いで買収し、取り組みを大幅に強化した。

 実際グーグルは2019年1月に米フォッシルグループ(Fossil Group)のスマートウオッチに関する知的財産や研究開発部門の一部を買収。さらに2019年11月には、ウエアラブルデバイス大手のフィットビットを買収すると発表したことで、大きな驚きをもたらした。

 この買収によって、グーグルはスマートウオッチのハードウエア製品を自社で直接手掛けることとなり、「Apple Watch」で人気を獲得している米アップル(Apple)と正面から対抗する姿勢を示したことにもなる。2020年にはフィットビットが開発したデバイスにWear OSが搭載されると予測されており、どのようなデバイスが登場するのか大いに注目される。

 グーグルが力を入れるウエアラブルデバイスは、スマートウオッチだけではない。同社は2019年に、ワイヤレスイヤホン「Pixel Buds」の第2世代モデルも発表しているのだ。初代Pixel Budsは2017年に海外で投入されているが、初代モデルには左右のイヤホンをつなぐケーブルが存在した。だが第2世代のモデルはそのケーブルをなくし、左右のイヤホンを分離して完全なワイヤレス化を実現している点が大きな違いとなる。

 グーグルの他のプラットフォーマーもワイヤレスイヤホンに力を入れ始めている。2019年にはそれ以外のプラットフォーマーも、相次いで左右分離型の完全ワイヤレスイヤホンに力を入れる動きを見せていた。

 2019年10月に「AirPods Pro」を投入してワイヤレスイヤホンを強化したアップルはもちろんだが、それ以外にもアマゾン・ドット・コムが2019年9月に「Echo Buds」を、2019年10月にはマイクロソフトが「Surface Earbuds」を発表している。「GAFA」と呼ばれる企業のうち3社が、そしてマイクロソフトもワイヤレスイヤホンを投入するというのは非常に大きな動きと言えるだろう。

 ワイヤレスイヤホンは単に音楽を聴くデバイスとしてだけでなく、音声アシスタントを通じ、耳を通じて情報をやりとりする「ヒアラブル」を実現するウエアラブルデバイスとしても注目されている。そうしたことからプラットフォーマー各社は、技術的に完全ワイヤレスイヤホンを作れるようになったことを機に、自社の音声アシスタント利用を促進するべく取り組みを強化していると見ることができる。

 一時は関心が落ちていたウエアラブルデバイスに、これだけ多くの企業が関心を寄せ製品投入に力を入れるようになったのはなぜだろうか。それは、技術進化によって価値が認められるようになったからこそと言える。ワイヤレスイヤホンはその象徴だが、スマートウオッチやフィットネストラッカーも、センサーの進化によって身体の様々なデータを取得できるようになり、医療に役立てられる可能性が出てきているからこそ、関心が高まっていると言えよう。

 それを示しているのがファーウェイ・テクノロジーズ(Huawei Technologies、華為技術)だ。同社は現在、スマートフォンを軸に、様々なスマートデバイスを連携させることで新しい価値を生み出す「1+8+N」戦略を展開しており、スマートフォンと連携するデバイスの1つとして、ウエアラブルデバイスにも力を注ぐようになってきている。

 最近のウエアラブルデバイスへの注力を見ると、他社も今後、ファーウェイ・テクノロジーズと同様の取り組みを進めるようになると考えられる。そうなれば、ウエアラブルデバイス単体ではなく、複数のウエアラブルデバイスを装着することで生み出される価値に注目が集まりそうだ。

 そうした時代を迎えたときに注目されるのは、ウエアラブルデバイスのスマートフォンからの独立である。現在のところ多くのウエアラブルデバイスは単体で携帯電話網にアクセスできず、Bluetoothなどでスマートフォンに接続して利用することが前提となっているため、スマートフォンに接続しなければ価値をもたらさないものとなっている。

 だが将来的に、IoT向け通信に適しているとされる5G(第5世代移動通信システム)の浸透が進み、ウエアラブルデバイスに5Gが搭載され直接通信ができるようになれば、スマートフォンから独立することへとつながっていくだろう。そうなれば個々のウエアラブルデバイスが直接クラウドと接続して他のデバイスやサービスと連携するようになり、ウエアラブルデバイスの価値は大きく高まると考えられるのだ。

 もちろん2020年にそうした動きがすぐに起こるとは考えにくい。だがプラットフォーマーが今からウエアラブルデバイスに積極的に取り組んでいるのは、個々のデバイスがネットワークへのアクセス機能に関してスマートフォンから独立することを見越した動きと捉えられるだけに、そう遠くないうちに何らかの変化が起こる可能性は高いと筆者は見る。それだけに2020年も、ウエアラブルデバイスを取り巻く動向には高い関心が寄せられることになるだろう。

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