週間情報通信ニュースインデックスno.1208 2020/1/18


1.100万契約以上のMVNOも規制対象に、法改正で格安スマホ料金は結局どうなった?(1.17 日経XTECH)
 2019年10月、「電気通信事業法の一部を改正する法律(以下、改正法)」が施行された。これは、携帯電話の通信料金と端末代金を完全に分離し、いわゆる “2年縛り” などの行き過ぎた囲い込みを是正することを目的としている。「端末代金の割引は上限2万円」「定期契約の違約金は上限1000円」といったルールが設けられた。

 この改正法の規制対象は大手キャリアだけではない。大手キャリアのグループに属する「MNO(移動体通信事業者)の特定関係法人」と、「MVNO(仮想移動体通信事業者)のうち移動電気通信役務の利用者の数の割合が0.7%を超える者」も対象になっている。

 前者に該当するのは楽天モバイル、UQモバイル(UQコミュニケーションズ)、OCNモバイルONE(NTTコミュニケーションズ)、BIGLOBEモバイル(ビッグローブ)、LINEモバイルの5社だ。

 後者は別の言い方をすると約100万以上の契約を持つMVNOである。該当するのはIIJmio(インターネットイニシアティブ)、mineo(オプテージ)の2社だ。

 つまり、主要MVNOは漏れなく改正法の規制対象と言って差し支えない。そこで今回は、改正法によって主要MVNOの利用料はどう変わったのかを考えてみたい。

 まずは改正法の対象となった7社が、2019年10月の施行を機にどのような対策を講じたかをまとめてみた。

楽天モバイル
主力プラン「スーパーホーダイ」の最低利用期間と契約解除料を廃止した。以前は、最低利用期間は12カ月、24カ月、36カ月から選択でき、契約解除料は9800円だった。

UQモバイル
通話料をオプションとする新プランを導入。契約期間と契約解除料を廃止した(以前は、主力プランの契約期間は25カ月で、契約解除料は9500円だった)。また契約から13カ月目まで毎月1000円を割り引く「イチキュッパ割」を廃止した。

OCNモバイルONE
10月1日から音声SIMの解約違約金を以前の8000円から1000円に改定した。11月20日からは、最低利用期間や解約違約金がない新コースを開始した。

BIGLOBEモバイル
音声通話サービス契約解除料を以前の8000円から1000円に変更した。またMNP転出手数料を3000円に統一した(以前は、音声通話サービスのみ一定期間6000円だった)。

LINEモバイル
音声通話SIMの解約手数料を以前の9800円から1000円に変更した。また有料オプションの初月無料を廃止した。

IIJmio
音声SIM(みおふぉん)の解約料を、以前の「12カ月から利用月数を引いた数×1000円」から1000円に改定した。また、端末代金と音声SIMの利用料をセットにした「コミコミセット」を廃止した。

mineo
以前は9500円だったMNP転出時契約解除料を無料にした。ただし3000円のMNP転出手数料は現在もかかる。

 各社に共通しているのは、音声通話SIMの解約料が1000円または無料になったことである。利用者にとっては、解約に対するハードルは低くなり、気軽に試せるようになったと言っていい。

 ただし既にサービスを契約している人は、現行プランでの最低利用期間を経過しないと、従来の解約料が請求されるので注意しよう。また解約時にMNPを用いて大手キャリアや他のMVNOに移る場合、3000円のMNP転出手数料がかかる。

大手も値下げしたが、依然として安いMVNOの通信料
 では規制対象となっているMVNOの料金プランは、大手キャリアに比べてどれくらい安いのだろうか? ここでは、7社の最新プランの料金を比較した。スマホの1カ月のモバイルデータ通信量は5Gバイト程度の人が多いと言われる。そこで音声SIMで、月に5Gバイトを使う場合に最適なプランを比較した。

 各社、一部の人に適用される割引があったり、一部の通信料が課金対象外となるサービスもあったりするので単純には比較できないが、月額2000?4000円程度で平均的にスマホを使える。

 大手キャリアの場合、NTTドコモの「ギガライト」で5Gバイトを使った場合の利用料は4980円。KDDI(au)は「auフラットプラン7プラスN」が最適プランとなり、月額5480円(2年契約適用時)。ソフトバンクは、大容量プラン「ウルトラギガモンスター+」と段階式の「ミニモンスター」の2択だが、5Gバイトまで使うなら「ウルトラギガモンスター+」を選ぶのが賢明で、月額7480円となる。

 MVNOは規制対象であっても、大手キャリアの半額以下で利用でき、通信料に関しては依然優位性が大きいと言えるだろう。

 MVNOの利用者は自由に端末を調達できる。大手キャリアで使っていたスマホにMVNOのSIMを挿して使い続けることもできるし、中古スマホにしてもよい。量販店やECサイトで購入したSIMフリースマホも利用できる。そのため、もともと分離プランだったと言っても差し支えない。しかし多くのMVNOは、契約時に同時購入できるSIMフリースマホを用意している。改正法によって、このスマホの売り方は変わるのだろうか。

 MVNOが販売するSIMフリースマホは、従来、新規顧客を獲得するために相場よりも大幅に安い価格が設定されることがあった。しかし改正法によって、割引額の上限は2万円になった。端末代金については、大手キャリアと同等になったと捉えていいだろう。

 MVNOの利用者は、経済性を重視する人が多い。通信料金だけでなく、端末代金もできるだけ安く抑えたいという人が少なくないはずだ。そのため、MVNOが取り扱うSIMフリースマホは今後、2万円を割り引いたときに3万円以下で販売できるようなエントリーモデルやミドルレンジモデルが主流になっていくのではないかと筆者は予測している。

 MVNOの安い通信料金は、大手キャリアから借りたネットワークを効率よく使うことはもとより、流通や広告などにかけるコストを抑えることによって実現している。今回の改正法による規制は、MVNOにとって新たな負担となるだろう。

 解約金が1000円または無料になったことで、ユーザーの解約に対するハードルは低くなった。顧客離れを防ぐためには、通信やサービスの質を向上させるための新たな施策が必要となる。ユーザーにとってはメリットになるが、MVNOに経済的な負担が増えることは必至だ。

 そして改正法の施行前後で変わらないのは、ユーザーが満足する品質のサービスを提供できないMVNOは淘汰(とうた)されていく可能性が高いということだ。改正法によって、MVNOは生き残りを懸けた体力勝負のフェーズに入ったように感じる。

2.「スマホの5G移行は急激に進まない」、GSMAがサービス開始後の動向調査(1.16 日経XTECH)
移動通信関連の業界団体であるGSMA(GSM Association)は2020年1月7日、5Gサービスの提供が始まったものの、スマートフォンなど各種端末の5G移行が必ずしも急激に進まないとする調査結果を発表した(GSMAのニュースリリース)。同団体の調査・コンサルタント部門であるGSMA Intelligenceが「CES 2020」(2020年1月7〜10日、米ラスベガス)に向けて公開した調査レポート「The Future of Devices」にて報告されている。

 同レポートは2019年、スマホやスマートスピーカー、ウエアラブル端末といった主要なマーケット36地域の消費者38000人を対象としたオンライン調査と対面調査の結果を基にまとめられたもの。

 これによると、中〜高所得国の成人人口の85〜95%がスマホを所有している。しかしそのうち、5Gサービス開始後すぐにスマホをアップグレードすると回答したのは、米国、欧州、オーストラリアでは30〜40%となっている。一方で中国や韓国では早期導入希望者が多く、特に中国では半数近くのスマホユーザーが、5G対応版が発売されたら直ちに購入したいとしている。

 スマートホーム向け端末については、各メーカー製品間の互換性がないことが普及の妨げになっているが、米Amazon.com(アマゾン)のAmazon Echoに代表されるスマートスピーカーの需要は高まっている。スマートスピーカーは、2019年最も急速に伸びた分野で、現在、21%の家庭が所有しており、対前年比10%の伸びとなっている。スマートスピーカーは、AI搭載製品の中で主要な位置を占めており、その開発ではAmazonや米Google(グーグル)が先駆者となっているが、現在の基本機能を超えた、より価値の高い機能を提供するという課題に直面している。

 2019年はフィットネストラッカーやスマートウォッチなどの売れ行きも好調で、その普及率は、フィットネストラッカーが成人の21%、スマートウォッチが成人の10%、そのうち最も保有率が高いのがデジタル技術に精通したミレニアル世代となっている。一方で、高齢者のコネクテッドヘルスデバイス利用は依然として少ない。高齢者の遠隔からの見守りを実現し、対面診療の手間を減らし、国家の医療システムへの費用負担を減らすことができるこうしたデバイスが活用されないことは、ハイテク産業にとってはビジネスチャンスを減らすこととなり、国家にとっても大きな課題であるとレポートは指摘している。

3.サービス名は「NHKプラス」、1日18時間の同時配信/見逃し配信を4月開始(1.15 日経XTECH)
NHKは2020年1月15日、放送を補完するサービスとして、1日約18時間と時間限定の形での常時同時配信サービスおよび見逃し配信サービスを2020年4月に開始すると発表した。サービス名称は「NHKプラス」。認証の仕組みを導入し、受信契約者と生計を同一にする家族は追加負担なしで利用できるようにする。

 同時配信を実施する時間は午前6時から午前0時まで。対象は、地上波の2波(総合テレビとEテレ(教育テレビ))の番組。当面は、南関東エリアで放送されている番組を全国に配信する。見逃し配信は、放送終了時刻から起算して7日間、実施する。見逃し配信は、1日24時間いつでも利用できる。

 利用申し込みがあると、受信契約と照合したうえでサービスを提供する。受信契約を確認できない場合は、画面上に受信契約を確認するための情報提供を求めるメッセージを表示する。

 受信料制度との整合性を確保するために認証を確実に実施することが必要なことから、試行的なサービスを2020年3月1日から1カ月間実施する。この間、同時配信は午前7時から17時間程度実施する。

 NHKプラスを利用するためには、(1)案内ページにアクセスするかアプリをダウンロードする、(2)申し込み画面から必要な情報を入力する。NHK側から受信契約の確認がとれると、契約住所にはがきが届くので、(3)はがきの案内に従って確認コードを入力することで、利用登録が完了する。一つの放送受信契約に対し発行できるIDの数は一つ。一つのIDで同時に5画面(ストリーム)まで視聴できる。

 なおNHKプラスにおける見逃し配信の開始にともない、NHKオンデマンド(NOD)は、現行の「見逃し見放題パック」「特選見放題パック」を合わせて、「まるごと見放題パック」に一本化する。

4.小型軽量でWeb会議もしやすく、NECが働き方改革向けノートPC(1.15 日経XTECH)
NECは2020年1月15日、ビジネスや教育向けのPC「Mate/VersaProシリーズ」の新版を発表した。対象となる新版は17タイプ57モデルに及ぶ。このなかで「フリーアドレス制のオフィスで持ち運びがしやすい」「雑音にとらわれずWeb会議に集中できる」といった企業の働き方改革を支援するノートPCも投入する。

 具体的な製品が14型のノートPC「VersaPro タイプVM」だ。一般に社内で使うノートPCは15.6型を使うことが多く、社外に持ち運ぶ必要があるケースでは12.5型が多く採用されている。

 VersaPro タイプVMは社内で使う場面でも持ち運びをする場面でも扱いやすいようにサイズなどを工夫した。15.6型の従来製品よりも容積を4割程度減らし、A4ファイルと同じくらいのサイズにしてかばんにも入れやすくしている。一方で、キーボードのサイズは15.6型ノートPCと同等にして操作性を維持した。重量は3割減の約1.48キログラム。

 加えてWeb会議システムを使って遠隔地で会議する相手とのやり取りをスムーズにするため、スピーカーから出る会議相手の発言を聞き取りやすくする「Webミーティング機能」を搭載した。VersaPro タイプVMの前に複数人が集まってWeb会議をする場合、音声が届く範囲を広げて、聞き取りやすくする機能も盛り込む。ヤマハの技術で実現した。VersaPro タイプVMの希望小売価格は税別で20万6500円から。出荷は2020年1月21日から始める予定だ。

5.クアルコムとZTE、5G NRを用いた音声通話実験に成功(1.14 日経XTECH)
米Qualcomm(クアルコム)と中国ZTEは2020年1月7日、5G NRを使った音声通話実験に成功したと発表した。5Gネットワークを使った音声通話サービスは「Voice over New Radio(VoNR)」と呼ばれる。今回の実験は、3GPPのRelease 15準拠のZTE提供5G NR基地局と、QualcommのSnapdragon 5GモデムやRFシステムを搭載したスマートフォンタイプの試験機を用いた。利用した周波数帯は2.5GHz帯。実験自体は2019年12月に実施されている。

 両社は、2017年11月に中国で行われた5G NRによるデータ通信相互運用性試験や、2019年にこれも中国国内で行われたサブ6(6GHz未満の周波数帯)での商用システムによる5Gネットワークサービス試験、ミリ波を使った相互運用性試験など、5G技術開発に向け様々な連携を行ってきた。

 今回の試験についても、LTEで通信制御を行い音声通話としてVoLTE(voice over LTE)を採用するNSA(Non-Standalone)5G NRから、5G NR単独で制御を行うSA(Standalone)への移行に向け、より高品質の音声通話サービス提供に不可欠のステップとなるとしている。両社は今後もこのVoNRの実用化に向けさらなる協力を進める。

   ホームページへ