1.Wi-Fi 6に6GHz帯が追加されWi-Fi 6Eへ(1.10 日経XTECH)
米Wi-Fi アライアンス(Wi-Fi Alliance)は、「Wi-Fi 6」(IEEE 802.11ax)に6GHz帯(5.935G-7.125GHz)を追加した(ニュースリリース)。2.4GHz帯と5.0GHz帯を使うIEEE 802.11axをWi-Fi 6と呼んでいたのに対して、6GHz帯を追加したIEEE 802.11axは「Wi-Fi 6E」と呼ばれる。
6GHz帯は80MHz幅では14チャネル、160MHz幅では7チャネルとして使える。帯域追加で使えるチャネルが増えるため、IoTの普及に弾みが付くと、Wi-Fiアライアンスは説明する。例えば、AR/VRの利用や、遠隔診断/保守の実施が容易になるとしている。同アライアンスによれば、各国/地域の電波利用規制当局の承認が下り次第、Wi-Fi 6E対応機器が市場に登場するという。
2.グーグルとアマゾンが「空の無線基地局」で事業拡大競う、アップルも参入か(1.10 日経XTECH)
2019年12月、米グーグルのグループ会社で空の無線通信基地局事業を手がける米ルーン(Loon)がウガンダ政府から領空飛行の認可を受けたと、ロイター通信などが伝えた。ルーンは同年7月、隣国ケニアの山村地域に提供する4G(第4世代移動通信システム)サービスの計画を発表し、そのための試験的な商用サービスを始めると明らかにしていた。
気球を高度2万メートルの成層圏に漂わせて地上に電波を発信し、インターネット接続を提供する。今回のウガンダでの飛行認可はこの計画に不可欠だったと、ルーンのグローバル通信部門を統括するスコット・コリエル氏は述べている。ウガンダ上空の複数の気球によってケニアの広域をカバーする通信サービスを提供できるようになるからだ。
同社では飛行プランの最終的な詳細をまとめており、早急にケニアでサービスを始めたいとコリエル氏は話している。ケニアのインターネットニュースサイト、テックウィーズによると、ルーンはタンザニアなどの他の国でも領空飛行の認可取得を目指して政府関係者と協議中。アフリカ大陸の様々な国で同様のネット接続サービスを提供したい考えだという。
ルーンの気球は薄いプラスチック素材で作られており、重さは75キログラム。この気球に同じく計75キログラムの通信機器や太陽光発電パネルなどを搭載する。成層圏で最大限に膨らんだ時の大きさは縦24メートル、横11メートルで、テニスコートとほぼ同じ。複数の気球が仮想的につながり、地上の数千台に上る電子機器に電波を送ることができるという。
こうした取り組みは他のテクノロジー企業も積極的に進めている。19年4月には、米アマゾン・ドット・コムが「プロジェクト・カイパー(Project Kuiper)」というインターネット衛星ネットワークの計画を進めていることが明らかになった。
こちらは計3236基の人工衛星を打ち上げ、それらで構成する通信衛星ネットワークを通じて世界中に高速ブロードバンド接続を提供するというもの。アマゾンは同12月18日、プロジェクトの研究開発拠点を20年にワシントン州レドモンドに開設することを明らかにした。2つのビルから成る約2万平方メートルの施設で、オフィスや設計施設、研究所、プロトタイプ製造施設などを備えるという。
米フェイスブックもネット接続環境の構築に向けた取り組みを進めている企業だ。同社はインターネットの普及を促進する取り組み「Internet.org」の一環として、「アクィラ(Aquila)」と呼ぶ無人飛行機を研究開発している。これは翼幅が「ボーイング737」と同じだが、重量は数百分の1。1度の飛行時間は最大90日で、約1万8000メートル上空から辺境に住む人々にネット接続環境を提供できるという。
米ブルームバーグは19年12月20日、米アップルが社内で通信衛星技術を開発する専門チームを組織していると報じた。航空宇宙や人工衛星、衛星アンテナなどの技術者を十数人集めて、ネットサービス向けの電波を、通信事業者のネットワークを介さずに直接機器に送信する技術の開発を進めているという。5年以内に成果を出すとの目標を掲げているが、今のところプロジェクトの明確な方向性や衛星の具体的な運営法は決まっていない。ただ、アップルのティム・クック最高経営責任者(CEO)は優先度の高いプロジェクトに位置付けていると、ブルームバーグは伝えている。
このほか、イーロン・マスク氏が率いる宇宙開発企業の米スペースXは「スターリンク」と呼ぶ通信衛星ネットワークの計画を進めている。すでに60基以上の衛星を軌道に乗せており、20年代の半ばまでに1万2000基を打ち上げたい考え。また、ソフトバンクグループが出資する通信衛星企業、英ワンウェブ(OneWeb)は今後10年で6000基を打ち上げる計画だと伝えられている。
米CNBCが引用した米モルガン・スタンレーの推計によると、宇宙産業の規模はすでに3500億ドルに達している。これが2040年に2兆7000億ドル規模にまで拡大すると同社はみている。中でもインターネット分野は急成長が見込まれており、各社の開発競争が激化しているという。
3.京セラは5Gで勝負、産業向けスマホやタブレット端末を開発(1.9 日経XTECH)
京セラは、「CES 2020」(2020年1月7〜10日、米国ラスベガス)において、5G(第5世代移動通信システム)対応のルーターやスマートフォンなどを出展した。汎用スマホの他、緊急医療や農業など特定の業界向けに設計したスマホやタブレット端末も提案している。
2020年は世界各地で5Gの商用サービスが本格的に始まる。その5Gについては、一般消費者以上に産業界の関心が高いという。「同じような提案でも、LTE(Long Term Evolution)ではなかなか反応してもらえなかったが、今は5Gというだけで話を聞いてもらいやすい」(京セラ通信技術部商品企画部商品企画課責任者の三輪智章氏)。
今回出展したルーターやスマホ、タブレット端末は、いずれもサブ6GHz帯とミリ波の両方に対応させた。そのうちミリ波は、工場などで狭い範囲で多数の機器と接続する用途に使える可能性があるという。公衆ネットワークだけではなく、プライベートネットワーク(日本ではローカル5G)への活用も想定する。京セラは2019年10月の「CEATEC 2019」でプライベートネットワーク向け基地局も参考出展しており、幅広いラインアップを展開していく方針だ。
今回展示したルーターやスマホ、タブレット端末の製品化時期は未定だが、今後実証実験で用途や仕様を見極めていく。
現在は様々な環境下で使えるように、「多少オーバースペック気味に設計している」(三輪氏)。用途や仕様の見極めが進めば、コスト削減の余地が出てくるという。
4.苦悩するグーグル、自社サービスに「説明可能AI」を組み込んだ事情(1.8 日経XTECH)
「我々は『人工知能(AI)の基本理念』に従ったAIの構築に努めている。(その理念に沿って)人間がAIの挙動を理解するのに役立つ『説明可能なAI(Explainable AI)』を導入できることをうれしく思う」。米グーグルのトレイシー・フレイ(Tracy Frey) クラウドAI戦略ディレクターは同社ブログでこう表明した。
グーグルは2019年11月に、クラウド型AIサービスの一部に説明可能AIの機能を加えたと明らかにした。機械学習モデルの出力について、入力データの各要素がどれくらい寄与したのかを算出して表示できる。このサマリー情報を通じ、ユーザーはAIがなぜその判断を下したのか、理由を理解できる。
注目したいのは、グーグルがこのサービスを、同社が2018年6月に策定した「AIの基本理念」の一端を担う取り組みと位置づけている点だ。この理念は、グーグルが開発するAIについて「不公平なバイアスを防ぐ」「人々への説明責任を果たす」などの原則を掲げている。
同社はサービスの発表と合わせ、説明可能AIについて27ページにおよぶホワイトペーパーを公開した。この文書は同社が採用する説明可能AIの詳細を明らかにするとともに、説明可能AIの限界や、人間とAIとの付き合い方について、グーグルの考えを示すものとなっている。
AIを円滑に社会実装するカギとも言える説明可能AIについて、グーグルは何を考えているのか。ホワイトペーパーの記述からグーグルの思考を読み解こう。
説明可能AI(Explainable AI)とは、AIの本体である機械学習モデルの挙動について「人間に理解可能な用語で説明または提示する機能」を指す。
こうした機能が求められる背景には、コンピューターの計算資源と学習用のデータセットが急速に増大するにつれ、機械学習モデルがますます複雑化していることがある。
モデルが複雑になった結果、モデルの精度や表現力、汎用性が高まるといった恩恵がある一方で、「本来は関係のない『偽の相関』を学習してしまう」「判断の透明性が失われる」「不具合があってもデバッグできない」「(差別など)望ましくないバイアスを増幅する」といった欠点も顕在化するようになった。こうした欠点が、特に金融や医療といった規制産業でAIの採用が進まない一因になってる。
複雑化したAIの欠点を克服するには、AIの構築・運用過程や意思決定プロセスに人間を積極的に介在させるという意味での「human in the loop(人間の参加)」を実現する必要がある、というのがグーグルの基本的な考え方だ。そのために重要なのが、AIと人間の間で理解の橋渡しをする「説明可能AI」だという。
説明可能AIを採用する目的を、グーグルは以下のように要約している。
人間による意思決定を支援する
人とAIの相互理解を深め、AIの透明性を高める
AIシステムのデバッグを可能にする
規制に基づくAIシステムの監査を可能にする
AIの汎化性能(未知のデータに対する識別能力)を検証する
こうした説明可能AIの機能を通じ、ユーザーはAIの判断をより深く理解し、より良い判断ができる。AIを構築するエンジニアは、モデルの挙動を把握し、モデル自体をより良い方向に改良できるとしている。
AIを使ったシステムを実世界に導入・運用するうえで、重要な主体は機械学習エンジニアやデータサイエンティストだけではない、とグーグルは主張する。例えば、ビジネスの重要な判断を下す以下のような主体が関わる。
エグゼクティブ:AIシステムを本番導入するか否かを判断する
プロダクトマネジャー:「差別をしない」など会社のポリシーに合致するよう機械学習モデルの挙動を制御する
ドメインエキスパート:自身の専門的な知識を機械学習モデルに組み込み、モデルを改善させる
エンドユーザー:機械学習モデルによる予測を理解し、意思決定のプロセスに組み込む
機械学習モデルを構築する技術者は、これらの主体と一定の信頼関係をつくり、「破滅的な失敗」を防ぐようモデルの挙動や切り戻しの方針を定める必要がある。
5.5Gでも値上げできない格安スマホ、「噂の端末」の登場まで参入はお預け?(1.8 日経XTECH)
5G(第5世代移動通信システム)の商用サービスが2020年春に始まる。携帯大手3社が着々と準備を進める中、格安スマホに代表されるMVNO(仮想移動体通信事業者)は大幅な出遅れが濃厚な気配となっている。
携帯大手3社は5Gの商用サービス開始と同時期に設備をMVNOに貸し出すと表明しているが、肝心の提供条件がまだ固まっていない。総務省は2019年12月18日、MVNOが5Gサービスの提供に当たって必要な情報を速やかに提供するよう携帯大手3社に要請したが、サービス開始には半年程度の準備期間が必要なことを踏まえると、もはや手遅れの印象だ。
5Gの商用化に先立ち、総務省の有識者会議で大きな議題となったのは、MVNOが5Gの設備を借りる際に携帯大手に支払う接続料。設備投資が先行する5Gだけを切り出して接続料を設定すれば、MVNOがとても借りられないような高い水準となってしまう恐れがある。5Gが不要なMVNOにとっては迷惑かもしれないが、有識者会議の結論通り、当面は4Gと5Gを一体化した接続料の設定が妥当と筆者も考えている。
むしろ気になっているのは、議論の過程で携帯大手から出てきた「4Gと5Gのトラフィックを識別できない」という説明である。5Gは当初、現行4Gの中核設備「コア(EPC)」に4Gと5Gの両方の基地局がぶら下がる「NSA(Non-Standalone)」構成となり、「4Gユーザーの4Gトラフィック」「5Gユーザーの5Gトラフィック」「5G制御用の4Gトラフィック」に分けて接続料を算定するのが難しいというのだ。
特定事業者の特定設備に限った話なのかもしれないが、仮に4Gと5Gのトラフィックが何の識別子もない「ごちゃ混ぜ」の状態でMVNO側のネットワークに届くことになれば、MVNOは5Gユーザーを識別して追加料金を徴収できない可能性がある。「SIMカードを分ければ識別できるようになるのかを含め、現状では具体的な提供条件が示されていないので全く分からない」(ある大手MVNO)という。携帯大手3社は技術仕様を早々に開示すべきである。
MVNOは5G端末の調達でも苦労しそうだ。携帯大手3社には既に5G用の周波数が割り当てられたが、各社が4G用の周波数をどう組み合わせて利用するのかが見えていない。「5Gの制御に使う4Gのアンカーバンドを含め、端末がうまく動作するかを検証する必要がある」(業界関係者)。この作業は実質、5Gの商用サービスが始まってからとなりそうで、最低でも半年程度の遅れが必至とされる。
MVNOが期待を寄せるのは、2020年9月に登場すると噂される5G対応の「iPhone」。米アップル(Apple)は日本の携帯大手3社の5Gにすべて対応したモデルを投入する可能性が高く、需要が読めない5Gの高価な端末を独自に調達するより、5G対応iPhoneの登場に合わせてサービスを展開したほうが得策とみる向きがある。2020年後半には5万円前後の5G端末も充実してくるとみられ、MVNOの5Gサービスが活性化するのもこの時期だろう。
もっとも、MVNOにとっての最大の懸念は大容量サービスで携帯大手3社に太刀打ちできなくなることだ。携帯大手3社は5Gで毎月の通信量上限が100ギガバイト級または上限なしで「使い放題」となるサービスを投入してくる可能性が高い。MVNOが現行の接続料で追随するのは至難の業である。
接続料の抜本的な見直しがあるとすれば、コアまで5G化した「SA(Standalone)」構成の導入が始まる2021年度以降。それまでMVNOはIoT(インターネット・オブ・シングズ)を含め、小容量サービスで勝負するしかない。音声定額の追い風もありそうだが、当面は「我慢の時期」となりそうだ。
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