週間情報通信ニュースインデックスno.1205 2019/12/21


1.完全枯渇が目前のIPv4アドレス、一体いくらで売買されているのか(12.20 日経XTECH)
 インターネットで新たに事業を始めたりサービスを拡大したりする際、大量のIPアドレスが必要になる。ところが、現在主流のIPv4アドレスの在庫はほぼ枯渇している状況だ。

 日本国内では2019年から、1組織に割り当てられるサイズが512個に絞られている。これでは大規模な新規事業を展開するには不十分である。もっと多くのIPv4アドレスを調達するには、分配済みのIPv4アドレスを購入する必要がある。

 一般にIPv4アドレスの取引内容は公開されることはないが、公開される場合もある。最初に公開された大規模売買は、2011年に米マイクロソフト(Microsoft)がカナダのノーテルネットワークス(Nortel Networks)からIPv4アドレスを購入した事例だ。

 このときは66万6624個のIPv4アドレスを750万ドルで購入した。IPv4アドレス1個当たりに換算すると11.25ドルになる。この額はその後のIPv4アドレスの価格の基準になったといわれている。

 では現在のIPv4アドレスの相場はどのくらいだろうか。日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC) IP事業部の佐藤晋部長は「米国のオークションサイトを見ると現在は1個当たり20?25ドルで取引されており、日本でも同じ程度だと考えていいだろう」と説明する。

 実際、IPv4アドレスのオークションサイト「IPv4.Global」を見ると、おおよそ1アドレス当たり20?25ドルで取引されている。2011年の約11ドルに比べ、2019年にはIPv4アドレスが2倍以上に値上がりしていることが分かる。

 

2.動かないコンピュータ」緊急版、自治体クラウド大規模障害の深層(12.18 日経XTECH)
 2019年12月4日に日本電子計算の自治体向けクラウドが停止した。47自治体などのシステムが一斉にダウンし、業務や住民サービスに影響が出た。ストレージ機器のファームウエア不具合が直接の原因だが、バックアップ機能にも問題があり15%のデータがクラウド上で消失。自治体システムは全面復旧の見通しが付いていない。

 「あれ、戸籍証明を出すシステムにつながらない」。東京都中野区役所の職員が異変に気づいたのは2019年12月4日午前11時ごろ。区で使う20のシステムが停止し、戸籍関連の証明書発行業務や区のWebサイトの更新・公開、電子メールを使った外部とのやり取りなどができなくなった。

 システム障害が発生した自治体は中野区だけではなかった。大阪府和泉市でもほぼ同時刻に「システムが停止し、住民票を発行できなくなった」という報告が市役所の職員から上がった。

 さらに東京都練馬区や千葉県浦安市、愛知県岩倉市など合計全国47の自治体および6つの自治体関連組織(広域事務組合や図書館)でシステムが停止した。原因はこれら自治体が利用している自治体専用IaaS(インフラストラクチャー・アズ・ア・サービス)の「Jip-Base」にシステム障害が発生したためだった。NTTデータ子会社の日本電子計算が提供するサービスである。

 「クラウドサービスはダウンしてもすぐに復旧するだろうと考えていた」。和泉市の担当者は障害発生直後の心境をこう語る。しかしこの見通しは甘かった。2019年12月17日現在、各自治体のシステムや業務は部分的な復旧にとどまっており、混乱が続いている。しかもJip-Baseのストレージ障害で15%のデータが消失したことも判明し、復旧に向けてさらなる混乱が予想される。

 12月4日の障害発生を受けて日本電子計算が調査したところ、ストレージ装置のファームウエアにバグがありディスクを読み書きできなくなったことが分かった。同社は翌5日に「ディスク故障が原因」と公表した。その際、「復旧に時間を要する可能性がある」「本日中の復旧は困難」とした。

 自治体はJip-Baseの復旧をただ見守っているわけにはいかず、住民サービスの再開に向けて動き出していた。戸籍証明がもらえない、後期高齢者医療制度の還付申請ができないなど住民生活に支障が出ていたからだ。

 例えば和泉市はバックアップシステムとバックアップデータを使って、12月5日から応急的に一部のシステムを稼働させた。「バックアップシステムは処理性能の問題で同時接続数に制限があるため、職員による確認や登録に通常より時間がかかる」(和泉市担当者)という状況が続いた。

 

3.「IoT強化やboundless XR実現」、5Gの次々仕様Release 17でクアルコムはここに注目(12.20 日経XTECH)
 米Qualcomm(クアルコム)は2019年12月13日、移動通信の標準化団体3GPPのRAN第86回会合(2019年2月9〜12日、スペインSitgesで開催)で合意されたRelease 17の24のプロジェクトに関する概要解説を自身のブログに掲載した。以下はその要約となる。

 Release 17では、ネットワーク容量やカバレッジ、遅延時間や端末の電力性能、モビリティーの改善に加え、5G NRのさらなる性能、効率改善を目的としたmassive MIMO技術改善も進めていく。ミリ波帯や、端末と複数のセルとの送受信を可能にするmulti-transmission-point operation、より高度なモビリティーなどの実現に向けたビーム管理が主な改善点となる。

 6GHz帯以下の周波数帯(FR1)と24.25G〜52.6GHzまでのミリ波帯(FR2)のカバレッジ改善に向けて、メッシュ型ネットワークトポロジーへの第一歩となるIAB(Integrated Access and Backhaul、統合アクセス、バックホール環境)も検討していく。5G NR+LTE、5G NR+5G NRといったデュアルコネクティビティーや、周波数共有、マルチSIM、公共安全などに向けたマルチキャスト通信(特定の複数のネットワーク端末への同時データ送信)などの検討も進める。

 加えて、52.6GHzを超える周波数帯への対応や、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing、直交周波数分割多重方式)の高周波数帯サポートについても、Release 17で検証し、標準化を進めていく。

 Release 17では、IoTに向けた強化策として、eMTC(enhanced Machine Type Communication)やNB-IoT(NarrowBand IoT)より高機能で、5G NR eMBB(enhanced Mobile BroadbBand、高速大容量通信)、URLLC(Ultra-Reliable and Low Latency Communications、超高信頼低遅延通信)より狭い周波数帯域での通信が可能なNR-Lightを導入する。NR-Lightは、帯域幅10M〜20MHzを使って、下りリンク時100 Mビット/秒、上りリンク時50 Mビット/秒のスループットを実現し、高機能なウエアラブル端末や産業向けカメラ、センサーなどに適した機能を提供する。3GPPでは、この活動と並行してeMTC(LTE-M)やNB-IoTの機能改善や、衛星通信への適用なども進めていく。

 既存のGNSS(Global Navigation Satellite System、全地球的航法衛星システム)を補完する手段として、屋外、屋内問わず使える移動通信端末の高精度ポジショニングにも対応する。既にRelease 16にて、RTT(RoundTrip Time、往復遅延時間)やAoA/AoD(Angle of Arrival/Departure、到達角度、発信角度)、TDOA(Time Difference of Arrival、電波到来時間差)といった技術が追加されているが、Release 17では、cmレベルの高精度化や免許不要周波数帯の活用、遅延時間短縮、処理能力強化を進めることで、産業向けIoTなどの支援を行う。なおQualcommでは、既に独SiemensやBosch Rexrothなどとの実証実験を開始している。

 VR、ARなどのXR端末を高速低遅延の5G NRに接続することで、様々な分野への活用が期待できる。エッジクラウドサービスで端末上の処理能力を強化し、低遅延で写真のような画像や映像が効率的に送信できるようになれば、熱や電力などの制約を受けない新しいXR(boundless XR)が実現可能となる。Release 17では、このboundless XRの活用法や必要な5Gネットワーク性能に関する調査を進めていく。

 Release 16では、自動車の高性能化に向けたC-V2X(Cellular Vehicle-to-Everything)が重点項目の1つとなった。このC-V2Xを車両のみならず、歩行者や自転車、超小型モビリティー機器(Micro-Mobility Vehicles)など適用するため、Release 17では、sidelink(機器同士の直接通信機能)の電力性能や周波数帯を最適化し、スマートフォンなどバッテリーで駆動する端末からの利用なども可能にする。同時に、公共安全などへの活用に向けた取り組みも進める。

 Release 17では上記で紹介したプロジェクト以外にも、衛星通信やネットワークスライシング、ネットワーク機能の分割管理などに関連したIntelligent Network(自己組織力を持つネットワーク)構想の検討なども進めていく。

 

4.2020年のDX現場で必要なのは「造形力」、PoCは全く通用しなくなる(12.19 日経XTECH)
 DXの現場では「たとえ基幹系システム関連の開発であっても、ユーザーのニーズが曖昧だ」。アビームコンサルティングの一岡敦也 P&T DigitalビジネスユニットITMSセクターダイレクターはこう話す。

 「新たな販売方法を確立したい」という場合、刷新対象は既存の販売管理システムだ。これまでの業務効率化を目的としたシステム構築案件と異なるのは、販売管理システムの改修と同時に新しい販売方法というビジネス手法を考えることである。ウォーターフォール型の開発で言えば、要件定義と開発を一体化しながらユーザーの曖昧なニーズを形にする必要がある。

 では「要求」とも言えない曖昧なニーズからシステム要件を、それも短期間で導くにはどんなチカラを備えるべきか。そのポイントの1つが、サービスの「価値」を重視するアプローチだ。

 「IoT(インターネット・オブ・シングズ)を使って工場で異常を検知したい」。こうしたニーズがユーザーから寄せられたとき、「取得可能なデータを使ってまずPoC(Proof of Concept、概念実証)を実施しよう」と考えるかもしれない。

 しかしこれからのDXプロジェクトでは「PoCを実施するのはダメだ」とグルーヴノーツの最首英裕社長は断言する。本番向けのサービスを開発する際にPoCで開発したサービスをそのまま利用できるとは限らない。時間のムダになるからだ。

 そこで「異常を検知したい」というニーズが寄せられたら、「検知結果から得られる価値、が検証すべき事項になる」と最首社長は強調する。

 そこで必要になるのがサービスから得られる価値が本当に意味があるものかどうかを検証する「Proof of Value(PoV、価値実証)」だ。

 PoVで着目するのはサービスが実現する価値だ。「IoTを使って異常を検知した結果、どんな価値が得られるのか。その価値は本当に必要なのか」を検証する。

 例えば異常検知の目的が工場の稼働率アップであれば、IoTで異常検知する以外の方法が向くかもしれない。「本当に必要な価値をどのように実現するかを検証することが求められている」と最首社長は説明する。

 NECでは最小限の機能のみを実装する手法「MVP(Minimum Viable Product)」を採用し、短期間で最小限の価値を検証することを目指している。「DXを支援するシステムをサーバーレスで実行したい」といったニーズがあれば、エラーハンドリングといった機能は実装せず、サーバーレス環境で実行するコードのみを用意する、といった考え方だ。

 「サービスを開発する中でも最もコアとなる機能をMVPとして実装することで、価値があるかすぐに検証できる」とNECの長田祐介サービス&プラットフォームSI事業部シニアマネージャーは話す。短いものであればMVPを1週間程度で開発できるという。

 

5.なぜか米国が大注目する楽天モバイル、あの国産ベンダーの苦労は報われるか(12.18 日経XTECH)
 日本では全く話題に上らなかったが、楽天モバイルのCTO(最高技術責任者)を務めるタレック・アミン氏が米通信業界向けの専門メディア「Fierce Wireless」で、2019年の無線技術における「最も強力(パワフル)な人物」に選ばれた。

 楽天モバイルの注目度が高いのは、携帯インフラに「ネットワーク仮想化技術」の全面導入を決めたから。部分的な活用はこれまでも進んでいたが、基地局の制御装置からコアネットワークまで全面的に採用したケースは珍しい。楽天の三木谷浩史会長兼社長も「世界に先駆けた初の革命的なネットワーク。(従来の専用装置に比べ)コストが格段に安く柔軟性が圧倒的に高い」と、しきりにアピールしている。

 楽天モバイルは仮想化技術の導入に当たり、シスコや米インテル(Intel)、米アルティオスター・ネットワークス(Altiostar Networks)、米レッドハット(Red Hat)などと手を組んだ。中国ファーウェイ(華為技術)に対する包囲網が強まる中、多くの米国系ベンダーが名を連ねている点でも、ディッシュ・ネットワークは強い関心を持って楽天モバイルに注目しているもようだ。

 もっとも、楽天モバイルの目下の状況は褒められたものではない。基地局展開の遅れで総務省から3回の行政指導を受け、2019年10月に「無料サポータープログラム」の名称で実質的な試験サービスを始めると、直後にトラブルが相次いだ。2019年12月には誤請求が判明。3時間弱の通信障害も引き起こし、総務省から4回目の行政指導を受けた。

 競合他社からは「仮想化技術の採用と、実際のネットワーク構築は全く別の話。基地局の整備はそう簡単ではない」(幹部)と厳しい指摘が出ており、当面は試練の時期が続きそうだ。今や携帯回線は生活に欠かすことのできないライフラインであり、楽天モバイルが新規参入だからといってミスやトラブルは許されない。改めて気持ちを引き締め、万全の体制で本格展開にまい進してもらいたい。

 最後に少し補足しておくと、楽天モバイルの携帯インフラ構築には国内ベンダーも参画している。業界関係者の間では以前から「NEC頼みの状況」とささやかれ、2019年9月の発表会ではアミンCTOがわざわざ名指しで「NECとの提携を誇りに思っている。日本にある最高の能力を使い、日本でエンジニアリングされた」と賛辞を述べていたほどだ。

 楽天は日本での携帯電話事業の立ち上げに成功したあかつきには「日本で作った技術をベースに世界へ展開していく考え」(三木谷会長)。実現はしばらく先かもしれないが、NECは苦労が報われ、海外に攻勢をかける絶好のチャンスとなる可能性がある。足元では「5G減税」の追い風も吹き、NECの注目度ががぜん高まってきた。

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