週間情報通信ニュースインデックスno.1203 2019/12/07


1.KDDIの取り組みに見る「5Gで地方創生」の理想と現実(12.6 日経XTECH)
 日本政府は2020年商用サービス開始予定の5G(第5世代移動通信システム)を「地方創生」に活用する方針を掲げている。実際5Gは地方創生にどこまで貢献できるのだろうか。KDDIがシャープらと2019年11月に北海道で実施した、5Gを活用した軽種馬の育成支援に関する実証実験から追ってみよう。

 2020年に商用サービス開始を予定している次世代モバイル通信規格の5G。日本政府はその5Gを活用したデジタライゼーションを推し進めることで、少子高齢化などに苦しむ地方の社会課題解決につなげることに力を入れようとしている。

 そうした政府方針は、携帯電話各社に対する5Gの電波免許割り当てにも影響を与えた。実際、2019年4月に実施された5Gの免許割り当てに際しては、エリア整備の基準を従来の人口カバー率の代わりに、「基盤展開率」を新たな審査基準として打ち出した。これは、日本全国を10km四方のメッシュに区切った4500区画のうち、5年以内にその地域の基盤となる「高度特定基地局」を設置する割合を示すものだ。

 そして免許申請した4社の中でも、特にこの基盤展開率を重視して免許を申請したのがKDDIであったと言えよう。実際同社の申請内容を見ると、基盤展開率はNTTドコモに次ぐ93.2%。さらに、高度特定基地局の下に設置する特定基地局の数は合計で4万2863局と、申請した4社の中で最も多い数字を打ち出していた。

 結果的にそれが評価される形で、同社は希望通り3つの5G向け周波数帯域の免許割り当てを受けている。その充実した5Gの周波数帯と基地局を活用することで、KDDIは地方創生に力を入れる考えを示しており、既に63の地方自治体と協定を締結して5Gを活用した実証実験も実施している。

 KDDIがそうした取り組みの1つとして、2019年11月4日から12日までにかけて国際電気通信基礎技術研究所、シャープ、東京大学大学院情報学環などと共同で実施したのが、北海道新冠郡新冠町にある日高軽種馬共同育成公社での5Gを活用した実証実験である。

 競馬や乗馬などに用いられる軽種馬の育成支援に5Gを活用しようというもの。具体的な取り組みの1つとなるのは、5Gと8K映像を活用し、遠隔地からリアルタイムに軽種馬の様子をチェックするという試みである。

 これは軽種馬の厩舎の中に8Kカメラを1台、4Kカメラを4台設置し、それらのカメラで撮影した映像を5Gで伝送。離れた場所にある8Kのモニターに映し出すことで、馬主が馬の成長具合をいつでも確認できるようにするというものだ。

 そしてもう1つの取り組みは、ドローンと5Gを活用した8K映像伝送によって、トレーニングの様子を観察するというものである。トレーニングコースの上空にドローンを飛ばし、そこに搭載された8Kカメラで映像を撮影し、同じくドローンに搭載されている5Gのタブレット端末をモデム代わりとして活用して映像を伝送することにより、高精細な映像でトレーニングの様子を確認できるという。

 新冠町を含む北海道の日高地方は軽種馬の育成が盛んな地域で、日高軽種馬共同育成公社も馬主から軽種馬を預かり、競走馬に育成する育成牧場の1つだ。だが馬主は関東や関西など遠方にいることが多く、馬の様子を見るのに育成牧場を頻繁に訪れるのは難しいという課題があった。

 そうしたことから、5Gを活用することで現地に赴くことなく8Kの高精細映像で軽種馬の様子を確認したいというニーズを満たすべく、総務省が実施した「5G利活用アイデアコンテスト」に新冠町とシャープがアイデアを応募。そこで高い評価を得たことから、KDDIらと今回の実証実験を進めるに至ったのだそうだ。

 この取り組みから見えてくるのは、5Gが持つ特徴の1つである高速大容量通信だけでも、うまく活用すれば地域活性化に向けた取り組みに有効活用できることだ。5Gの産業用途での活用といえば、自動運転やIoTに関わる低遅延、多数同時接続に注目が集まりがちだ。しかし、サービス開始当初の5Gは、4Gと5Gが一体で運用されるノンスタンドアローン運用となるため、これらの要素はまだ実現できない。

 だが高速大容量通信で高精細な映像を伝送できるだけでも、今回のような軽種馬の見守りだけでなく、遠隔医療においても患部を鮮明な映像で確認し、より的確な指示を出せるなどのメリットが生まれてくる。しかも5Gでは、屋外での高速通信も可能になるなど有線のネットワークより柔軟性が高いことから、屋外での見守り用途など、幅広い用途への対応が期待できるだろう。

 地方の多くの企業や自治体は、大都市部の自治体や大企業などとは異なり、資金が潤沢だとは言えない。それゆえ生産性や売り上げの向上、新ビジネスの開拓、あるいは業務効率化によるコスト削減などにつながらなければ、高額な機材を導入するモチベーションにはつながらない可能性があるのだ。

 

2.AWSが20超の新サービス発表、オンプレにAWS基盤を置く「Outposts」も正式開始(12.4 日経XTECH)
 米アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)のアンディ・ジャシーCEO(最高経営責任者)が2019年12月3日(米国時間)、米ラスベガスで開催中の年次イベント「AWS re:Invent 2019」の基調講演で20を超える新製品や新サービスを発表した。AWSの将来の方向性を示す発表について、4つのカテゴリーに分けて紹介する。 

1.クラウドを「エッジ」でも利用可能にするサービス  AWSをはじめとするクラウドは「ネットワークの向こう側」に大規模な計算リソースを抱えているイメージがある。しかしこのイメージは実態を反映しなくなるかもしれない。AWSはネットワーク遅延(レイテンシー)を縮めるため、ユーザーに近いエッジ側へとインフラ機器を拡散配置する動きを強めつつある。 

 ジャシーCEOは基調講演で、利用企業がAWSのインフラ機器をオンプレミス(自社所有)環境で運用できるサービス「AWS Outposts」の一般提供(正式提供)を始めたことを発表した。低遅延でのデータ処理を求める顧客や、社内の機密データを社外に出したくない企業の利用を見込む。 

 米国や欧州のほか、東京、オーストラリア、韓国のリージョン(広域データセンター群)で利用できる。日本国内にインフラ機器を設置する場合、利用企業からは東京リージョンに属するアベイラビリティーゾーン(AZ、独立性の高いデータセンター群)のように見えるという。3年単位の契約になる。 

 Outpostsが企業1社を対象にした低遅延サービスとすれば、新たに発表した「AWS Local Zones」はリージョンの拡張という位置づけで、特定の都市にAWSのインフラ機器を設置することにより、その都市のユーザーが低遅延でリソースにアクセスできるようにするサービスだ。数ミリ秒の遅延でAWSのリソースを利用できるため、VR(仮想現実)/AR(拡張現実)や遠隔運転などリアルタイム性の高い用途に向くという。 

 AWSのインフラ機器を5G(第5世代移動通信システム)のネットワーク内に設置することで、無線通信においても低遅延を実現するのが「AWS Wavelength」だ。遅延を数ミリ秒に抑えられる。米国ではベライゾン(Verizon)と組み、2020年開始を目指して現在プレビュー提供をしている。日本ではKDDIと組んでサービスを始める考えだ。

3.ペッパーが「相席」し、ナオが踊るカフェ「ペッパーパーラー」 東急プラザ渋谷に(12.4 シブヤ経済新聞)
 ヒューマノイドロボット「Pepper(ペッパー)」などのロボットを導入するカフェラウンジ「Pepper PARLOR(ペッパーパーラー)」(TEL 03-5422-3988)が、12月5日に開業する「東急プラザ渋谷」(渋谷区道玄坂1)5階にオープンする。経営はソフトバンクロボティクス(港区)、運営はソルト・コンソーシアム(港区)。

 ソフトバンクロボティクスが初めて手掛けるカフェとなる同店。同社が目指す「人とロボットの共生」を体験できる空間として、ロボットが人と一緒に働き、エンターテインメントの提供を図る。東急プラザ渋谷のブランディングも手掛ける柴田陽子さんがプロデュースする。40代以上を中心とした「成熟した大人」をコアターゲットにした同館で、「お客さまが見たことのないもの」「未来の想像が広がるカフェを作りたい」と、2年ほど前に柴田さんがソフトバンクロボティクスに持ち掛けたという。

 店頭では、5台のペッパーが来店客を出迎え、注文を受け付ける(キャッシュレス決済時のみ)。手元のタブレットの操作に合わせて、ペッパーが「何名さまですか」などと話し掛けサポートする。ペッパーが来店客の年齢や性別、表情を分析して、その人に合わせたワッフルを薦める機能も用意する。店内(オープン時は4席)には「相席ペッパー」を設置し、話し掛けると応えたり、占いやミニゲームで遊べたりする。

 ヒューマノイドロボット「NAO(ナオ)」(4台)は15分ごとに時報代わりのダンスを、毎正時には世界のさまざまな国をイメージしたダンスをそれぞれ披露し、AI(人工知能)清掃ロボット「Whiz(ウィズ)」は営業終了後に床を掃除する。他の種類のロボットも今後導入していく予定。

 

4.ソフトバンク、3Gを2024年1月終了と発表(12.6 日経XTECH)
 ソフトバンクは2019年12月6日、第3世代移動通信システム(3G)サービス「SoftBank 3G」を2024年1月に終了すると発表した。既にKDDI(au)は2022年3月、NTTドコモは2026年3月にそれぞれ3Gサービスを終了すると発表しており、携帯大手3社の3Gサービスの終了時期が明確になった。

 ソフトバンクは旧J-フォン時代の2002年12月に3Gサービスを開始。2012年2月にLTE方式の4Gサービス「SoftBank 4G」を開始してからも3Gサービスを継続していた。その後、2017年3月に1.5ギガヘルツ帯、2018年1月に1.7ギガヘルツ帯の利用を終了し、現在は2.1ギガヘルツ帯と同社が「プラチナバンド」と呼ぶ900メガヘルツ帯でのみサービスを提供している。2019年12月3日には、SHA-2形式のサーバー証明書に非対応の3G端末で、URLが「https://」で始まるWebページの閲覧やGPSによる測位をはじめ、付加機能の大半が利用できなくなっていた。

 携帯大手3社は2020年春に5Gサービスを開始する予定。今後、3G契約のユーザーを4Gや5Gへ移行させるための取り組みが本格化しそうだ。

 

5.全米最大規模のスタジアムにWi-Fi新規格、データ使用量で“スーパーボウル超”(12.3 日経XTECH)
 米国では最新のWi-Fi規格である「Wi-Fi 6」を導入し、IT(情報技術)設備やサービスを充実させるスマートスタジアム化の動きが目立つようになってきた。Wi-Fi 6の正式名称は「IEEE802.11ax」で、2019年9月に正式発表された。

 Wi-Fi 4(IEEE802.11n)と同じく、2.4GHzと5GHzの2つの周波数帯を利用できる。理論上の最大通信速度は、Wi-Fi 5(IEEE802.11ac)の6.9Gbps(ビット/秒)に対しWi-Fi 6は9.6Gpsと1.4倍高速だ。条件の良い状態で通信したときの実際のデータ転送量、実効スループットの一般的上限値においてもWi-Fi 5の800Mbpsに対して1Gps以上と1.2倍以上だ。

 さらに複数のアンテナを使い、同時に複数の端末と通信できる「マルチユーザーMIMO(MU-MIMO)」での最大接続数がWi-Fi 5の4台から8台と倍増。1チャンネルの帯域幅を複数ユーザーが分け合うことで、多くのデータを効率よく通信できるようにする技術「OFDMA(直交周波数分割多元接続)」も取り入れられている。このため混み合った環境でも安定した接続が可能となる。

 こうした特長はすべて、大人数が集うスタジアムのスマート化において大きなアドバンテージになる。もちろんWi-Fi 6の機能をフル活用するには端末側もWi-Fi 6に対応していなければならず、現在対応しているスマートフォン(スマホ)はiPhone 11など一部最新機種に限られる。

 ただ、Wi-Fi 6は下位互換に対応しており、未対応機種でも接続できる。その点において早めの設置も有効なのだ。実際、スタジアムやショッピングモール、エンターテイメント施設などに向けたWi-Fiネットワーク専門企業、米AmpThink(アンプシンク)のビル・アンダーソン社長はWi-Fiを新たに設置しようとするクライアントに対し、「できる限りWi-Fi 6を設置するよう促している」とコメントしている。

 そのアンプシンクが手がけた最初のWi-Fi 6導入成功例が、オハイオ州立大学のアメリカンフットボール専用スタジアム「オハイオ・スタジアム」である。「ザ・ホースシュー」(蹄鉄)の愛称を持つ同スタジアムは1922年に建設され、10万人強を収容できる米国でも最大規模のスタジアムの一つである。

 2019年春のリノベーションに当たって、1000万ドルの予算でWi-Fiが導入されることになったのだが、Wi-Fi機器メーカーの米Aruba Networks(アルバネットワークス)からWi-Fi 6機器導入への働きかけがあったのだという。その結果、いち早くWi-Fi 6が導入された。アンダーセン社長は「オハイオ州立大はWi-Fi 6で正しい判断をした」と決断を高く評価している。

 こうしてスタンドの手すりに内蔵された600台など、計約2000台のアルバネットワークスなどのアクセスポイントが設置され、スマートスタジアム化された。

 8月31日に行われたフロリダ・アトランティック大とのホーム開幕戦は10万3228人の観客が詰めかけたが、Wi-Fiのユニークユーザー数は4万7137人を記録。データ転送量は13.3テラバイトだった。スタジアム内の様々な場所で実施された転送速度テストではダウンロードで62.7Mbps、アップロードで72.1Mbpsを記録した地点もあったということだ。

 スタジアムやアリーナで最先端のワイヤレスを使ったサービスというと5Gが注目されがちだが、5Gに近い内容でより早い普及が望めるという点で、Wi-Fi 6への注目度は今後さらに高まりそうだ。

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