週間情報通信ニュースインデックスno.1202 2019/11/30


1.120年ぶり民法改正へ、システム開発費「高騰」のリスク(11.29 日経XTECH)
 約120年ぶりに債権法を抜本的に見直した改正民法の施行が、約4カ月後の2020年4月1日に迫っている。改正によりIT業界で新たな火種となりそうなのが、ITベンダーが納品した情報システムに対して、ユーザー企業が無償改修や賠償を請求できる期間が実質的に延長される点だ。大手ITベンダーや業界団体は対応に乗り出しているが、システム開発費が「高騰」するリスクをはらんでいる。

 改正民法は2017年に国会で成立した。売買やサービスなどの「契約」に関するルールを定めた債権法を約120年ぶりに抜本的に見直す。建築業界と並んで大きな影響を受けるのがIT業界だ。ITベンダーとユーザー企業それぞれで対応が必要になる。

 ユーザー企業とITベンダーが交わすシステム開発の契約形態は大きく2つある。ITベンダーが成果物に対する完成義務を負う「請負」と、ユーザー企業が設計やプログラミングなどの作業に対して報酬を支払う「準委任」である。準委任の場合、ITベンダーは完成義務を負わない。請負と準委任は仕事の完成を目的にしているかどうかに大きな違いがある。

 このうちITベンダーが身構えているのが請負への影響だ。民法改正により請負契約の内容が見直されると、ユーザー企業がシステムにバグがあった場合にITベンダーに対して無償改修などを請求できる期間が実質的に延びる。この見直しにITベンダーは戦々恐々としている。

 現行民法は「瑕疵(かし)」に対して無償のシステム改修などを請求できる期間について、システムの引き渡しから1年間と定めている。一方、改正民法は従来の瑕疵とほぼ同じ意味の「契約不適合」を知ってから1年間へと変わる。さらにシステムを引き渡してから最長10年間、ユーザー企業は無償の改修などを請求できるケースも生じる。

 ユーザー企業は「無償対応期間が延びた」と喜んでばかりもいられない。ITベンダーが長期化する無償対応に対するリスクを織り込んで開発コストを見積もると、料金が上がりかねないからだ。

 

2.20万円で社員1人分の活躍、りそなHDが導入したアーム型「中継ぎロボ」の実力(11.13 日経XTECH)
 りそなホールディングス(HD)は2019年6月から小型ロボットとRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)などを組み合わせた新システムを導入し、現場の各種帳票にまつわる入出力作業の省人化に取り組んでいる。実証実験ではなく、既に東京都や大阪府などの施設内で50セットほどが本稼働している。

 「1セットのハード費用はロボットを含めて約20万円。1セットに1人分の仕事を任せているため、約1カ月で投資回収できた」。同社の荒木敏郎デジタル化推進部AI・RPA推進チームグループリーダーは満足げだ。

 新システムが担う作業は帳票に関する一連の業務だ。具体的には、OCR(光学文字認識)ソフトで読み取ったり直接送られてきたりした紙の伝票のテキストデータなどをRPAのソフトロボットで加工する。次にキーボード・エミュレーター・ソフトがそのデータを勘定系システムに入力する。

 勘定系システムが入力内容を現場のプリンターで帳票として出力すると、ロボットが巧みにアームを動かして取り出す。「人がすると手間がかかるデータの読み取りや入力、帳票用紙の挿入、出力帳票の取り出しなどが要らなくなった」(荒木グループリーダー)。

 新システム構築の背景として、りそなHDが2022年3月までにRPAなどを使って年100万時間分の作業量削減を目標に掲げていることがある。目標に向かってRPAやAI-OCRなどを使って業務改善を進めるなかで、一部の部署で改善を妨げるボトルネックが分かってきた。勘定系システムだ。「OSやセキュリティーなどの問題で(勘定系システムを操作するパソコン側で)RPAを使えなかった」(同)。

 実はりそなHDは2021年3月期に勘定系システムの改修を計画している。改修が済めば勘定系システムでもRPAを導入できるようになるという。とはいえ少しでも省人化や業務改善を進めたい。

 そこで、システム改修を終えるまでの「中継ぎ」として、少ない投資で高い効果を発揮する新システムを開発しようと考えた。「安く開発できる手段はないものか」。様々な方法を考える荒木グループリーダーらの目に留まったのが、今回採用したロボットだった。

 人手に代わって働くようになったのは、中国シンセン・ユージェン・テクノロジー(Shenzhen Yuejiang Technology)製の「DOBOT Magician」だ。価格は約15万円と「相場より安かった」(同)。これにRPAやキーボードエミュレーターなどをインストールしたパソコン、Webカメラなどを設置して新システムを組み上げた。

 

3.4G料金がまさかの値上げに?格安スマホの5G参入議論に注目すべき理由(11.26 日経XTECH)
 2020年春に商用サービスが始まる5G(第5世代移動通信システム)サービスで、「格安スマホ」に代表されるMVNO(仮想移動体通信事業者)の参入形態を巡る議論が本格化している。

 NTTドコモとKDDI(au)、ソフトバンクのMNO(携帯電話事業者)3社は一様にMVNOの5G参入に前向きだ。5Gの周波数割り当て審査で、総務省がMVNOへの設備提供計画が充実した事業者を高く評価したからである。

 総務省が2019年9月に開いた有識者会合でも、3社はそれぞれ「早期の5Gネットワーク機能の提供に向けて、2019年秋以降、情報をMVNOに順次提供していく」と答えた。2020年春の5G開始から間を置かずに、MVNOの5Gサービスも利用できるようになる可能性が高い。

 ただしMVNOの5Gサービスには課題も多い。中期的には2022年以降が1つの山だ。5G本来の性能を発揮する設備が整い、MVNOはMNOとの接続形態を抜本的に変えるなど、自らの事業構造を見直す必要が出てくるだろう。

短期的な最大の課題は、5Gが始まる2020年春の段階でやってくる。MVNOの料金を左右する、MVNO がMNOに支払うネットワーク設備の利用料(モバイル接続料)がどう算定されるかという課題だ。算定方法によっては、本来は5Gとは無関係な現行の4Gのモバイル接続料が値上げされる可能性が浮上している。

4Gのモバイル接続料は年度ごとの改定で一貫して値下げが続き、それによりMVNOは料金競争力を高めてきた。仮に5G開始によって4Gのモバイル接続料が下げ止まったり値上がりに転じたりすれば、MVNOへのダメージは大きい。

 

4.深層学習を使った医療機器がついに解禁、承認まで1000日の道のり(11.27 日経XTECH)
 医療現場における深層学習(ディープラーニング)の活用がついに解禁となった――。東京大学の研究室から生まれたAI(人工知能)ベンチャーのエルピクセルは2019年10月15日、深層学習を使った医用画像解析ソフトウェア「EIRL aneurysm(エイル アニュリズム)」を発売した。

 脳MRIの画像から「脳動脈瘤(りゅう)」と呼ばれる血管のこぶとなっている疑いがある部分を自動で検出して医師の診断を支援する。医療機器の承認審査を担う医薬品医療機器総合機構(PMDA)によれば、深層学習を使ったプログラム医療機器としては国内初の承認事例という。

 脳動脈瘤は破裂するとくも膜下出血を引き起こす。医師は脳のMRI画像を見て、動脈瘤の可能性がある部分を目視で探す「読影」と呼ばれる診断を行う。脳をスライスしたMRI画像は患者1人当たり200枚前後に及ぶ。医師は時に頭の中で各画像を組み合わせながら立体的な構造をイメージして、動脈瘤などの異常の発見につなげるという。

 「動脈瘤か否かの判断は専門医であっても意見が分かれたり、大きさなどによっては見逃したりすることもある」。エルピクセルの島原佑基社長はこう話す。

 「EIRL aneurysm」に脳MRIの画像を読み込ませると、事前に脳動脈瘤の疾患部位が含まれている画像を学習したAIが大きさ2ミリメートル以上の動脈瘤を自動で検出する。実際の医療現場では最終的な診断結果は医師が決めるが、「EIRL aneurysm」をサポートに使うことで大量の画像を読影する際の負荷を下げたり、バイアスによる見逃しを防いだりといった効果が見込める。

 

5.国産クラウド終わりの始まりか、NTTコム「Cloudn」終了の深層(11.25 日経XTECH)
 国産クラウドの存在感が薄れゆく現状を象徴するニュースが相次いでいる。  NTTコミュニケーションズはパブリッククラウドサービス「Cloudn(クラウド・エヌ)」の新規受け付けを2019年12月1日に停止し、提供も2020年12月31日で終了すると発表した。ユーザー数の伸び悩みが原因だ。今後は大企業向けのハイブリッドクラウドなどに集中し、パブリッククラウドからは事実上撤退する。

 対照的なのが、日本の公共市場における米アマゾン・ウェブ・サービス(Amazon Web Services)の躍進だ。政府は2020年10月の運用開始を見込む共同利用型のIT基盤「政府共通プラットフォーム」の次期基盤で、AWSが提供するパブリッククラウドサービス「AWS」の採用を決めた。

 政府共通プラットフォームは「霞が関クラウド」と呼ばれ、現在は主にNTTデータが整備・運用を担当する。次期基盤が完成すれば、現行基盤で稼働する行政システムは段階的に移行していく。NTTデータはIT基盤の運用で大きくポジションを失うことになる。

 政府は2018年6月にクラウドを行政システムの第1選択とする「クラウド・バイ・デフォルト原則」を打ち出した。これ以降、初めてとなるクラウドの大型商談を日本のITベンダー大手が獲得できなかったダメージは大きい。一方、AWS日本法人は「日本の公共機関は横並びの意識が強い。クラウドの普及が進むときは一気に進むと思っている」(パブリックセクター統括本部の宇佐見潮本部長)とシェア拡大に意欲を見せる。

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