週間情報通信ニュースインデックスno.1201 2019/11/16


1.アプリ活用で「心の資本」が33%向上、4300人が参加した日立の働きがい向上実験(11.15 日経XTECH)
 日立製作所は2019年11月15日、働き方改革を支援するスマートフォンアプリ「ハピネスプラネット」を使って延べ4300人が参加した実証実験の結果を発表した。アプリの活用によって組織の「幸福感」を高め、働きがいを示す指標の「心の資本」を高める効果があったという。

 実証実験は2018年から4回取り組み、日立やコクヨ、電通、東京ガス、ブリヂストンなど83社の延べ4300人が参加した。アプリはスマホの加速度センサーを使って人の無意識な身体運動パターンを把握し、幸福感を計測する。計測結果を基に「前向きな言葉を選んで会話をしよう」「休憩時間にストレッチをしよう」といった提案を表示し、幸福感の向上を促す。

 実験期間の前後に「心の資本」に関するアンケートを実施した。項目は「自ら進む道を見つける力」「自身を持って行動する力」「困難にも立ち向かう力」「物事の明るい面を見る力」の4つ。米国の経営学者フレッド・ルーサンス氏の研究を基に定義した。回答を集計したところ、3週間の実験期間の前後で「心の資本」の指標がおおむね33%向上したという。日立は今後、ハピネスプラネットの趣旨に賛同する企業との連携を広げ、組織の活性化を支援する取り組みを推進するとしている。

 アプリは日立の矢野和男フェローによる幸福感に関する研究を基に開発した。当初は専用の名札型ウエアラブルデバイスの形態で実装した。日本航空(JAL)などが働き方改革の実証実験に採用している。

2.店舗カメラで顧客の購買行動を分析、データセクションが世界展開に本腰(11.14 日経XTECH)
 データ解析企業のデータセクションは2019年11月14日、小売業向けの店舗分析サービスに関する戦略説明会を開いた。8月に子会社化を発表したチリのAI(人工知能)開発ベンチャー、ジャックテクノロジー(Jach Technology、以下ジャック社)が手掛ける顧客の購買行動分析サービスを世界36カ国で販売していく。

 「ジャック社を仲間に加えることで、世界中の小売業の購買体験を高めていきたい」。データセクションの林健人社長兼CEO(最高経営責任者)はこう強調する。

 ジャック社は2010年創業。小売業向けにAIとカメラを使った分析サービスを手掛け、米ウォルマート(Walmart)や米ギャップ(GAP)などを含む世界18カ国、6500店への導入実績を持つ。ジャック社のクリスティアン・カファティCEOは「当社の動画解析技術にデータセクションのデータ分析技術があれば、(小売店のAI分析サービスで)世界のトップになれると確信している」と語った。

 同社の分析サービスは、小売店舗内に設置したカメラ映像から入店客数や性別、年代、滞在時間などを分析するほか、POSレジと連動した購買率の算出など、「店の多種多様なデータを見える化できるのが強み」(カファティCEO)。

 利用料金はカメラの設置費用を含み月額2万円(税別)から。カメラはSIMカードを内蔵し、店舗でネットワークを用意する必要がない。データセクションは3年以内に同サービスを世界36カ国、1万弱の店舗に導入する目標を掲げる。

3.2020年はWi-FiとBluetoothの世代交代が一気に進む、PCの通信機能を大予測(11.11 日経XTECH)
 昨今は無線LAN(Wi-Fi)での接続がかなり一般的となってきた。そのWi-Fiは、今後2020年にかけて最新世代の普及が本格化する。また周辺機器との近距離通信で用いるBluetoothも、最新世代の普及が進む。

 今後、無線LANの最新規格「Wi-Fi 6(IEEE 802.11ax)」が一気に普及しそうだ。IEEE(米電気電子学会)での正式な標準化が2020年に予定されている。現在はドラフト仕様が出ている段階だが、2019年後半に入ってから「ドラフト準拠」をうたうルーターが急速に増加し、PCも登場し始めている。

 Wi-Fi 6は2.4GHz帯と5GHz帯に対応し、最大通信速度は9.6Gビット/秒に引き上げられている。複数あるアンテナを異なる複数の機器に割り当てるMU-MIMO(マルチユーザーMIMO)が双方向の通信に対応するなど、複数機器が同時に接続した時の実効性能が向上している。

 Wi-Fi 6搭載機が増え出しているのは米インテル(Intel)の影響が大きい。2019年4月にWi-Fi 6とBluetooth 5のコンボモジュール「インテル Wi-Fi 6 AX200」の出荷を発表。さらにインテルの第10世代Coreプロセッサー(Ice Lake、Comet Lake)では、チップセット部分にWi-Fi 6対応のベースバンドを統合しており、シンプルなRFモジュール(インテル Wi-Fi 6 AX201)の追加のみでWi-Fi 6を搭載できるようにしている。ゲーミングPCで採用例の多い無線LANモジュール「Killer Wi-Fi 6 AX1650」も、チップセットはインテル製だ。

 インテルはルーター向けのWi-Fi 6チップセット「Intel Home Wi-Fi Chipset WAV600」も出荷しており、普及を促進している。これを搭載した製品にエレコム「WRC-X3000GSA」があり、実勢価格は2万円弱となっている。

 このようにルーターも含めて普及の条件がそろってきており、今後2020年にかけて登場してくる中位クラス以上のノートPCの多くがWi-Fi 6に対応してくると予想される。

 なお「Wi-Fi 6」の表記は、業界団体のWi-Fi Allianceが2019年から導入した新表記体系に基づいている。「IEEE」からはじまる規格名はエンドユーザーにとって分かりにくいという配慮からだ。新表記体系では「Wi-Fi 6」より前の規格についても、IEEE 802.11acは「Wi-Fi 5」、IEEE 802.11nは「Wi-Fi 4」で表記している。

 マウスやヘッドホンなどの接続に使われるBluetoothは、いちばん新しい規格であるBluetooth 5への対応が進んでいる。新しいといっても仕様が一般公開されたのは2016年12月なのだが、ここに来て普及が進んでいるのは、2018年以降のインテルの無線LANモジュールがBluetooth 5に対応していることが大きい。Bluetooth機能は、無線LAN機能と同じ通信モジュールで提供されていることが大半である。

 Bluetooth規格は4.0までと4.0以降で大きく変わっている。Bluetooth 4.0で、省電力の通信モード「BLE(Bluetooth Low Energy)」が採用された。Bluetooth 5.0では、BLEの速度を2倍に、通信エリアを4倍に拡大するなど強化されている。

 有線LANでは、通信速度1Gビット/秒の1000BASE-Tが長く標準であり続けている。だがここ2年ほどの間に、10Gビット/秒で通信できる10ギガビットイーサネット(10GbE)や5Gビット/秒、2.5Gビット/秒に対応する「マルチギガビットイーサネット」の有線LAN仕様に対応したPC(iMac Proなど)や自作用マザーボードが徐々に増えている。だがこれらの規格に対応するスイッチングハブやルーターの価格が下がらず選択肢も少ないため、現状ではあまり普及が進んでいない。

 ただ、バッファローが2019年10月中旬に発売したWi-Fiルーター「WXR-5950AX12」は、最大約6Gビット/秒(5GHz帯は4803Mビット/秒、2.4GH帯は1147Mビット/秒)のWi-Fi 6対応に加え、10GbE対応のWAN/LANポートを1つずつ搭載。実勢価格は4万円台半ばだ。Wi-Fi 6対応のハイエンドルーターとしても魅力的な選択肢だけに、普及の足掛かりになりそうな製品と言えるだろう。

 モバイル向けノートPCでは、SIMフリーの無線WAN(WWAN)機能を搭載する製品が順調に増えている。特にビジネス向けは、多くの機種がBTO(Build To Order)でWWANを選択可能になってきている。下り最大450Mビット/秒(Cat.9)対応のLTE(LTE-Advanced)モデムの搭載が主流だ。

 LTEの次の世代である5Gの準備も進んでいる。2019年5月に米クアルコム(Qualcomm)と中国レノボ(Lenovo)が共同で世界初の5GPC「Project Limitless」を発表した。プロセッサー「Snapdragon 8cx」と5G対応モデム「Snapdragon X55」を搭載するという。

4.3分でわかる モダナイゼーション(11.13 日経XTECH)
 老朽化した情報システムを刷新する手法。過去に作られたシステムを放置していると、老朽化とともに、内部構造が複雑化しシステムが処理している業務フローが分からなくなったり、性能やユーザビリティー、セキュリティーなどの要求を満たせなくなったりする問題が生じる。

 システム担当者の高齢化やスキルアップ機会の喪失も問題になる。老朽化したシステムの保守・運用では、陳腐化した技術を使い続けるしかない。特定のメンバーをアサインし続けると高齢化問題が生じるし、若手や中堅をアサインするとスキルアップの機会を奪うことになる。

 これらの問題を解決する主要なモダナイゼーションの手法には「ラッピング」「リホスト」「リライト」「リビルド」の4つがある。課題や予算に応じて選択する。

 ラッピングは既存システムに手を加えず、画面やAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)だけ新たに開発する。問題がユーザビリティーや他システムとの連携に限られる場合に有効だ。

 アプリケーションのプログラムは変えずに、サーバーやOS、ミドルウエアだけを刷新するのがリホストだ。例えばCOBOLプログラムをメインフレームからオープンシステム上の動作環境に移植する。ハードウエアの保守終了が迫っている場合によく使われる。要件定義や設計が不要なため、少ない工数でプロジェクトを完了できる。ただしユーザビリティーや拡張性は改善できない。

 リライトはソフトウエアを別のプログラミング言語に書き換える。多くの場合、専用の変換ツールを利用する。技術者の確保が困難で保守コストが高どまりしているケースで有効だ。プログラミング言語の変更に伴って、設計のやり直しが必要になる場合がある。

 リビルドは現行の機能仕様書を基に設計や実装をやり直す。最新の要求に合致したシステムを作れるが、プロジェクトの工数が大きく失敗リスクが高い。SaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)やパッケージソフトを活用する場合には、必要か不要かも含めた現行機能の詳細な調査が欠かせない。現行踏襲にこだわると、開発の規模が大きくなる。

 経済産業省は2018年9月に公表した「DXレポート」で、放置された老朽化システムが要因となり、2025年以降に年間で最大12兆円の経済損失が生じる可能性があると指摘。このリスクを「2025年の崖」と表現した。崖に落ちないようにするため、老朽化したシステムを抱える企業はモダナイゼーションを避けては通れない。

5.文章読解でもAIがついに人間超え、グーグルの「BERT」発表から1年で急成長(11.13 日経XTECH)
 かつてはディープラーニング(深層学習)の適用が難しいと言われていた自然言語処理の分野でも、人工知能(AI)が人間の認識精度を上回るようになった。米グーグル(Google)の機械学習手法「BERT」の発表をきっかけに、この1年で状況が激変した。

 グーグルが2018年10月に発表したBERTは、文章の「言語らしさ」を予測する言語モデルを「Transformer」というニューラルネットワークを多段に重ねて実装したものである。言語らしさの予測は、AIが単語や文章を理解したり自然な文章を生成したりするうえで必要不可欠な要素である。言語らしさを基準に、単語と単語や文章と文章の関係をベクトルで表現したり、ある単語の次にどの単語が続くべきかを予測したりできるようになるからだ。

 言語モデルの応用先としては、機械翻訳や機械読解、質問応答、言葉の言い換え(換言)、表現が異なる2つの文章の意味が同じかどうかの判断(含意関係認識)などがある。グーグルのBERTは自然言語処理の世界に衝撃を与え、論文の発表からわずか1年で2200件以上も他の論文に引用されるほどになった。これは、BERTが応用に関するベンチマークで人間の精度を上回る成果を上げたからだ。

 具体的には機械読解のベンチマークである「SQuAD 1.1」で人間の精度を上回った。SQuAD 1.1は米スタンフォード大学が作ったベンチマークで、「Wikipedia」の中にある140単語ほどの文章を読み解かせて、その文章に関する質問に回答させる。正答は元の文章の中にフレーズとして存在する。正答の部分を正しく抜き出せるかどうかがポイントとなる。文章と質問、正答の組み合わせは10万件以上あり、クラウドソーシングによって作成した。

 スタンフォード大学が人間の被験者にSQuAD 1.1ベンチマークのタスクを解いてもらったところ、元の文章から正答を完全一致で抜き出せたスコア(正答率)は「82.304%」で、部分一致で抜き出せたスコアは「91.221%」だった。それに対してBERTは完全一致のスコアが「87.433%」、部分一致のスコアが「93.160%」で、人間のスコアを上回った。

 SQuAD 1.1はタスクとして単純すぎるという指摘もある。SQuAD 1.1よりタスクの難易度が高いベンチマークは「SQuAD 2.0」や「GLUE」など他にもあり、そうしたより難しいベンチマークではBERTは人間を上回れなかった。しかしBERTが一部でも人間をスコアで上回ったことから、この分野の研究が一気に加速し、今ではBERTを改善した手法が、より難しいベンチマークでも人間超えを果たすようになった。

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