週間情報通信ニュースインデックスno.1197 2019/10/12


1.ANAが挑む「2度目」の働き方改革、鍵を握るRPAとAIをどう社内展開したのか(10.11 日経XTECH)
 「2012年に実施した働き方改革は環境を変えて労働時間を短くするという、量に着目した取り組みだった。現在進めている2度目の働き方改革の目的は業務の質の変革である」――。全日本空輸(ANA)のIT部門であるデジタル変革室イノベーション推進部で働き方改革に取り組む永留幸雄氏は2019年10月11日、「日経 xTECH EXPO 2019」(2019年10月9〜11日、東京ビッグサイト)に登壇した。同社が挑む2度目の働き方改革の考え方と手法を披露した。

 1度目の働き方改革は「ワークスタイルイノベーション」と銘打ち、2012年に実施した。当時、「ANAはお客さまに対して、より良いサービスを提供しようと注力している。一方で社員に対してはどうかという問題意識があった」(永留氏)。メールは社内でしか読めない、外出先から帰社すると紙の電話メモが机に置いてある、会議は常に対面で紙で配られた資料を見る、社員教育も集合形式――。「時間や場所の制約が大きく、こんな状態でお客さまにさらに良いサービスを提供できるのかと疑問に思っていた」(同)ことが改革のきっかけだった。

 そこで、客室乗務員や運航乗務員、整備士、空港スタッフに米アップル(Apple)の「iPad」を配った。乗務員に携行が義務付けられていた膨大な紙のマニュアルを電子化したほか、研修にeラーニングを採り入れた。本社でも文書管理システムや米グーグル(Google)のグループウエアクラウド「Google Apps(現G Suite)」、リモートデスクトップ、社内無線LAN、業務用iPhoneなどを次々と導入した。こうした多方面に渡るデジタル導入により、残業や紙の使用量、交通費などを削らす効果があったという。それでも永留氏は「業務の質は変わっていなかった」と指摘する。

 2度目の働き方改革は2017年度に検討を始め、2018年度から取り組み始めている。ここでは「新しい働き方をリビルド(再構築)しようと考えた」(同)という。具体的には、社員個人に属人化している業務をひもといてチームで共有したり、日々のルーティンワークに忙殺される状況を解消して創造的な業務へとシフトしたりすることなどを目指した。目を付けたのが、基幹業務システムがカバーしていない複数の業務だ。

 「予約や運航、整備といった重厚長大なシステムの内部ではある程度自動化が進んでいるが、システム間の連携は人海戦術だった。社員がデータをダウンロードしてCSVデータで受け渡すといった状況で、マクロなどを使いながら何とか業務をこなしていた。強固に造られた基幹業務システムというビルの壁を破るのではなく、ビルとビルの隙間でデジタルを活用して働き方改革を進めていこうと立案した」。永留氏は当時をこう振り返った。

 最初に着手したのがロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)の導入だ。試験導入で93〜98%の作業時間削減効果があった。2018年度に本格導入を始め、2019年度末までの累計で約1万4000時間分の作業時間を削減できる見通しだ。導入部門はグループ会社も含め、ほぼ全部門にまんべんなく広がっているという。

 短期間で大きな効果を出せた秘訣は、導入先の選定にある。「社内を見渡して、例えば羽田と成田、伊丹など複数拠点で同じ業務をしている部署や、恒常的に残業が多い部署、社員満足度調査で満足度が低い部署などにこちらから働きかけた」(永留氏)。

 好調なスタートダッシュを切っただけでは満足しなかった。永留氏らはRPA導入の勢いをさらに加速させるため、「RPAを有効活用しやすいであろう、6種類の業務の類型を定義した」(同)。具体的には「データ集計・出力」「データ突合・判定」「システム間連携」「入力・登録」「情報モニタリング」「Webクローリング」である。この6類型に当てはまりそうな業務は身の回りにありませんか――。そう全社に呼びかけている。

 RPAに続いて社内展開を始めたAI(人工知能)でも同様に、AIを有効活用しやすい業務類型を全社にアピールする手法で横展開を試みている。こちらの6類型は「判別」「分類」「検知」「推定」「予測」「相関」である。「RPAと異なりAIは手ごわい。データの収集から教師データの作成、予測、業務への適用、そしてメンテナンスというプロセスを数週間で回すのは難しいからだ。ただ、そこでAIを諦めるのではなく、RPAと同様にAIの得意技を特定すれば自分たちでも取り組めると考えた。『AIは何でもできる魔法のつえではなく、示唆を得られるビジネスツールだよ』とアピールしている」(同)。

 今後はデジタル技術の組み合わせを強化していくとする。例えば、RPAとAIに加えてIoT(インターネット・オブ・シングズ)を活用する。IoTで集めたデータをRPAが集計し、それを基にAIが予測を立てて最適解を導くといった一連の流れで働き方改革を進めるという。それらと親和性の高い技術も活用していく方針だ。

 永留氏は「ビルとビルの間に落ち込んでいる業務、ビルとビルをつなぐ業務を、デジタルツールにどんどん寄せていく。それが私たちの考える2019年の働き方改革だと思っている。働いて『楽しい』『やり切った』という満足感を得られるといった質にもこだわりながら、デジタルを積極的に使ってANAの働き方改革をどんどん進めていきたい」と強調し、働き方改革の歩みをさらに進める決意を示した。

 

2.「MaaSを日本の主力産業にする」、MONET Technologiesの宮川社長(10.10 日経XTECH)
 ソフトバンクやトヨタ自動車などが出資するMONET Technologies(モネ・テクノロジーズ)の宮川潤一社長兼CEO(最高経営責任者)は2019年10月9日、東京ビッグサイトで開催中の「日経 xTECH EXPO 2019」で講演した。移動手段をサービスとして提供する「MaaS(モビリティー・アズ・ア・サービス)」のプラットフォーム作りに注力する考えを示し「MaaSを日本の主力産業にする」と語った。

 MONETはソフトバンクとトヨタが中心になって設立した会社で「和製のMaaSプラットフォーム」(宮川社長)の構築を目指している。その言葉を裏付けるように、トヨタのほか、ホンダやマツダなど日本の自動車メーカーの多くが株主に名を連ねている。

 宮川社長は「MaaSの世界は自動運転車が普及してから爆発的に広がる」と話し、日本で自動運転車の量産が本格的に始まる時期は2023年頃という認識を示した。それまでに、MaaSのプラットフォーム作りに一定のめどをつけたい考えだ。

 宮川社長はMaaSプラットフォームの仕組みについても言及した。MONETのMaaSプラットフォームは自動車メーカーごとに仕様の異なる車両などのデータを「翻訳」し、他社に受け渡す役割を担う。そのためのAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)やSDK(ソフトウエア開発キット)なども整備している。

 MONETの仕組みを中核にサービスを展開することを目指す組織体「MONETコンソーシアム」に加盟する企業の数は2019年9月末で400社に達し、3月末からの半年で5倍近くに増えた。MaaSの普及に当たっては「法律の壁がまだまだある」(宮川社長)とも話し、各省庁などを巻き込んだ議論の必要性も指摘した。

 

3.「タイヤIoTは2面作戦で攻める」、ブリヂストンの花塚氏(10.9 日経XTECH)
 ブリヂストンはデジタル変革をもたらすデジタル技術の活用を工場内と顧客向けの2面に分けて考えている」――。ブリヂストンの花塚泰史デジタルソリューション本部ソリューションAI開発部長は、東京ビッグサイトで開催中の「日経 xTECH EXPO 2019」において、このように語った。ブリヂストンは従来型の製造業から脱却し、ソリューションプロバイダーへの転換を図っている。

 工場内のデジタル技術の活用では、日々得られるデータを使って品質が高く効率的な製造方法を追求している。代表的な成果はタイヤの素材を丸める工程を機械化できたことだ。単純にも思えるが、最も難しい工程だという。「丸める工程は職人技の世界で、ほんの最近まで全てを機械化するのは難しかった」(花塚部長)

 その過程では、品質を満たしたタイヤとそうでないタイヤのデータを取得したり、職人が引っ張る・丸めるなどの工程をパラメーター化したりした。それらのデータをまとめ、製造機械で再現できるようにデータを分析した上で落とし込んだ。製造機械は丸める工程でタイヤの状況をセンシングしながら、状況に応じて加減を加えるという職人の技を再現する。

 顧客向けでは、タイヤ販売だけではなく、タイヤの使用にまつわるあらゆる工程をサービスとして請け負う取り組みを進めている。例えば運送業向けのタイヤ管理ソリューションがそれに当たる。タイヤの空気圧や減り具合の管理、タイヤの交換、設置を一貫して請け負うサービスであり、ここでも日常の管理データやセンサーから得られるタイヤの情報を基に、「前後のタイヤを入れ替えて使う、表面を張り替えて再利用する、新しいタイヤを使うなど無駄のないタイヤのマネジメントが可能だ」(花塚部長)

 こうして利用現場のデータを吸い上げることが、製品企画や製造にも今後好影響を与えるという。「タイヤの直進性よりも耐摩耗性が重視されるなど、顧客の求める製品を提供するきっかけになる」(花塚部長)。用途ごとにタイヤの痛む部分の類似性を見つけるなどデータ分析も合わせて実施しているという。

 

4.アマゾンが初の子ども向けKindleや10型Fireタブレットの新モデル(10.8 日経XTECH)
  アマゾンジャパンは2019年10月7日、初となる子ども向けのKindleや、Fireタブレットの新製品を発表した。日本以外でもグローバルで同時発表となっている。

 発表したのは新「Fire HD 10タブレット」とそのキッズモデル、子ども向けKindle「Kindleキッズモデル」の3機種。2019年10月7日午後10時より予約販売を開始し、10月30日より出荷を開始する。

 子ども向けのKindleを投入する背景として、アマゾンの調査では9割以上の保護者が「子どもに読書をしてほしい」と答えたのに対し、1日の読書時間は半数が15分以内にとどまっていたという。

 デジタル機器を利用した読書については「ゲームや動画視聴に使い過ぎるのではないかとの心配がある。本を買うのにお金がかかり、独りで読み進められない、といった課題もあった」(アマゾンジャパン Amazonデバイス事業本部Kindle・Fireタブレット・アクセサリー事業部事業部長の清水文弥氏)とした。

 Kindleキッズモデルにはサブスクリプションサービス「FreeTime Unlimited」の1年間の利用権が含まれる。Kindleキッズモデルの発売に当たって児童文庫や学習まんがなどのタイトルを拡充し、日本語の1000冊以上の本が読み放題としている。

 保護者向けには、子どもがどのくらい本を読み進めたか読書の進捗を確認できる機能を搭載。読書専用の端末としてゲームや動画視聴には使えないことも特徴としている。履歴から次のおすすめを紹介する機能や、辞書や単語帳により分からない言葉を調べる機能も利用できる。

 価格は1万980円(税込み)。セット内容は第10世代Kindle(8GB、広告なし)、1年間のFreeTime Unlimited、2年間の限定保証、ブルーまたはピンクから選べるキッズカバーとなっている。

 Fireタブレットの新製品としては新「Fire HD 10タブレット」を発表した。前世代機よりプロセッサー性能が30%向上し、フロントとリアには200万画素のカメラを搭載。ストレージは32GBと64GBの2モデルで、最大512GBのmicroSDカードにも対応する。

 USB端子はUSB 2.0 Type-Cを採用し、本体カラーは3色展開になった。価格は32GB版が1万5980円、64GB版が1万9980円(いずれも税込み)となっている。

 

5.さくらインターネット社長が語る、「電力は止まるを前提に、将来は自立したグリッドを」(10.7 日経XTECH)
 2018年9月6日の北海道胆振東部地震によって約60時間のブラックアウトを乗り越えたデータセンターがある。さくらインターネットの石狩データセンターだ。クラウド時代となった今、データセンターは生活の生命線ともいえる重要な社会インフラとなった。地震だけなく、極地的な豪雨や繰り返される台風被害など自然災害による停電が深刻化している。北海道胆振東部地震から1年がたった今だからこそ語れる、ブラックアウト後の対応をはじめ、事業継続計画(BCP)の本質やエネルギー利用のあり方について、さくらインターネット 代表取締役社長の田中邦裕氏に聞いた。

2018年9月18日に起きた北海道胆振東部地震のブラックアウトによって何が起きたのでしょうか。

 まずはデータセンターの設計思想が時代とともに変化していることを知っておいてもらいたい。石狩データセンターは、クラウド型データセンターの先駆け的な存在として2011年11月に開所した。2010年に同センターを設計したときは、まだクラウド化が始まっていない時代であり、1号棟はサーバーを100台ずつのモジュールごとにゾーンとして増やしていく思想だった。そのため、発電や空調設備もゾーンごとに設置し、設備に障害が起きてもゾーン内でとどまり、モジュール間で影響を与えない設計にしていた。

 しかし、2013〜2014年ごろから「クラウドといえども止まったら困る」という時代の流れとなり、2015年からはゾーンごとではなく、“N+1”の冗長化の設計に切り替え始めた。こうした中、北海道胆振東部地震では、停電となった際にゾーンで1対1対応させていた非常用発電機が自動起動しなかったため、一部のサーバーで障害が起きた。発電機の故障ではなく、制御に不具合があった。非常時を想定した手動での切り替え試験は保守・点検時に実施していて問題はなかった。だが、実際にサーバーが稼働している中で電源を止めて発電機が自動起動するかどうかのフル負荷での試験は実施していなかったため、制御の不具合に気づかなかった。結果的には手動にて発電機を起動することになってしまった。

約60時間におよぶ停電を経験されました。電力はどのように確保したのでしょうか。

 非常時の想定として非常用発電機で48時間以上は電力を維持できる備蓄燃料は確保していた。当初、緊急時に重油を石狩データセンターに供給してくれる外部拠点のオイルターミナルのポンプが停止して長時間の稼働を不安視したが、それも解消して結果として1週間分は非常用発電機などで稼働できたことが分かった。

 実は課題となったのが、非常用発電機の潤滑油だった。非常用発電機はメーカーの仕様で連続稼働時間は72時間となっている。潤滑油を交換する必要があり、その際に発電機を停止させないといけない。石狩データセンターでは、N+1の構成で発電機を設置していたことで、電力に余力があり、負荷に応じて発電機を輪番で稼働することができたため、潤滑油などのメンテナンスを実施できた。ただし、潤滑油の備蓄は想定しておらず、メーカーに早急に手配してもらうなど緊急の対応を迫られた。

 こうした状況を受けて、今は消防法上に則って燃料の重油だけでなく、潤滑油の備蓄を始めている。また、発電機についても最大連続稼働時間をより長くすることを目的に2020年2月までに2億円をかけて改修を実施している。

 今回の災害を通して実感しているのは、「電力は止まる」を前提にすべきということ。これまで日本の電力は「信頼性が高く、すぐに復旧する」との認識で、データセンターを構築してきた。だが、クラウド時代においてデータセンターの重要性がますます高まっており、今回の地震のように長時間にわたって停電することを想定して、データセンター側も設備投資をしないといけないと考えている。

 もちろんユーザー側にリージョンを分けるなど、もしもの際にサービスが止まらないようにする工夫をしてもらう努力も必要である。クラウドサービスである「さくらのクラウド」では石狩だけでなく、東京のリージョンの強化を進めている。両方のリージョンを使って冗長化を支援することを始めている。

 さくらインターネットでは「超個体型データセンター」と呼ぶ構想を提唱しており、巨大なデータセンターに頼るのではなく、小・中規模のデータセンターがハブとなって、自律的な分散と集中によって全体最適されていく時代が早々に始まるとみている。これは上位レイヤーの話だけでなく、設備などのインフラ面のサポートも重要となる。サービスレイヤーからインフラまですべてを手掛ける我々だからこそ強みが出るとみている。

ブラックアウトでは自社で設置した太陽光発電システムを活用できたとのこと。

 石狩データセンターでは停電中でも昼間は太陽光発電の電力を利用することができた。FIT(固定価格買い取り制度)を使わずに自営線を引いてマイクログリッド化していたためだ。実際は、FITを利用して太陽光発電システムの電力は売電し、電力を北海道電力から購入した方が会社としては利益が出る。

 だが、私はFITを導入する意義をどうしても見いだせなかった。送電網から電力を買うと再エネ賦課金(再生可能エネルギー賦課金)を背負わされることになる。データセンターは規模が大きいので、FIT制度で利益を得ている事業者に多くを還元していることになる。それよりも、我々は電力を自立できる重要性を考えないといけない。今回の地震を受けて、これまで半信半疑でマイクログリッドを構築していたが、正しい方向ではないかと思っている。

エネルギー利用についてどのような将来構想を描いていますか。

 現在の日本の電力は巨大なグリッドを止めないようにするために非常に多くのコストを費やしていると感じている。自営でグリッドを構成できれば、託送料をはじめ、送電網や需給調整など巨大グリッドを維持するために使われている費用を劇的に下げられると考えている。

 今後は巨大なグリッドと切り離してエネルギー利用を考えていきたい。直流で配電すれば、交流同士の波を合わせるための設備よりも安価でグリッドを構成できるだろう。巨大グリッドは停電するという立ち位置で、今後は取り組んでいくつもりだ。

地震という災害を受けて教訓とすべきことは何でしょうか。

 BCP(事業継続計画)は“人”だということを痛感した。BCPという言葉をよく聞き、対策が講じられているが、ビジネスの継続性において社員の存在が軽視されているのではないだろうか。

 例えば、非常食の備蓄については効率的に保管できるなどの観点からカンパンを用意しているが、それはすぐに復旧することが前提だ。今回のように何日にもわたって停電し続けた場合、社員に対して今まで同じように仕事ができるようにする環境を提供しなければ、データセンターの業務は維持できない。特に、「食べる」「寝る」といった環境をいかに継続できるようにするかが課題である。

 今回の地震では、北海道中が停電した。電気が来ない家に家族を置いておくのではなく、非常用発電機や太陽光発電で電気を使える会社に家族も一緒に連れてきてもらった。社員も仕事だからやれではなく、家族が元気で安心して過ごせる環境を用意してこそ一生懸命、ユーザーのために仕事ができる。

 今回の地震後に、これまでの備蓄に加えて、炊飯器や粉ミルク、寝袋やベッドなどを用意した。どんなにいい設備があっても、それを動かすのは人であり、社員ということだ。想定外なことが起こったときはモノだけでは対応できない。人がいないとどうにもならないということだ。そのためには、人に対するケアが一番大事であり、平時と同じように働ける環境を維持できるかがBCPの根幹だと考えている

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