週間情報通信ニュースインデックスno.1182 2019/06/15


1.米インテル、10nmプロセスで作る第10世代Coreの出荷を発表(6.14 日経XTECH)
 米インテル(Intel)は、台北で開催された「COMPUTEX TAIPEI 2019」の初日(5月28日)にあった基調講演において、「第10世代Coreプロセッサー」の出荷を始めたことを発表した。開発コード名が「Ice Lake」のマイクロプロセッサーで、10nm FinFETプロセスで製造する。

 今回、発表された第10世代Coreは3種類あり、いずれもモバイル(ノート)PC向け。Y-Seriesが1種類で、TDP(熱設計電力)が9Wの「Ice Lake Y」。U-Seriesが2種類で、どちらもTDPが15Wの「Ice Lake U Iris Plus」と「Ice Lake U UHD」である。発表によれば、Whiskey Lakeベースの第8世代CoreプロセッサーのうちTDPが9〜15Wの製品と比較して、今回発表の新製品はAI処理性能が2.5倍、グラフィックス処理性能が2倍、そしてPCH(Platform Controller Hub)経由で実行するWi-Fi 6(IEEE 802.11ax)無線LANの転送速度が3倍だとする。

 

2.3GPPが最新の5G活動報告、V2Xや無人飛行、スマート工場など(6.13 日経XTECH)
 移動通信の標準化団体である3GPP(Third Generation Partnership Project)は2019年6月7日、Release 16、Release 17に向けた活動に関する3GPP SA6ワーキンググループ議長を務めるSuresh Chitturi氏からのレポートを公開した(3GPPのニュースリリース)。SA6では、V2X(Vehicle to Everything)、UAS(Unmanned Aerial System、無人飛行システム)、スマートファクトリーなど様々な分野の仕様標準化を進めている。

 Release 15では、主に3GPPのネットワークコントロール層とアプリケーション層をつなぐNorthbound APIの共通フレームワーク化(Common API Framework:CAPIF)を行った。現在、Release 16では、このCAPIFをさらに発展させ(evolved CAPIF:eCAPIF)、複数のプロバイダーがこのCAPIFを利用して相互接続を行い、連携してサービス提供できる仕組みを開発している。

 Release 16では、様々な分野のアプリケーション開発を支援するSEAL(Service Enabler Architecture Layer for Verticals)を導入。このSEALを使った、様々な業界のアプリケーションに柔軟に対応するNorthbound API開発も進んでいる。例えば、Release 16に含まれる予定のV2XAPP(Application layer support for V2X services)アーキテクチャーは、複数のV2Xの連携を可能にするVAE(V2X Application Enabler)をベースにしており、そのVAEは、SEALアーキテクチャーに基づき開発されている。

 

3.東大やオプテージなど、AI機能統合通信網を想定したセキュリティ高度化実験(6.12 日経XTECH)
 東京大学大学院情報学環中尾研究室、オプテージ、シャープの3者は2019年6月12日、次世代移動体サービスに関する通信ネットワークのセキュリティー高度化などに向けた実証実験を2019年8月に開始すると発表した。

 東京大学大学院情報学環が開発したSDN(Software-Defined Networking)とNFV(Network Functions Virtualization)に対応したプログラマブル・ネットワーク・ノード「FLARE」をオプテージが提供する携帯電話サービス「mineo」のネットワーク上に構築する。端末には、シャープが開発した「FLARE」への接続モジュールを実装したスマホを利用する。

 この実証実験では、端末から送られる通信パケットに実験用のタグを付与し、タグ情報を元とした端末やアプリケーション毎のトラフィック、通信パターンなどをAIが学習する。これにより、トラフィックの内容識別、分類を行う。

 3者は5G(第5世代移動通信システム)を見据えて、高度なセキュリティサービスの実現やユーザー体験の向上など、付加価値の高い移動体通信サービスに必要な技術の実現性を検証する。

 mineoなどのモバイルネットワークは、AIを用いた将来のネットワークインフラにより、例えばスマホの利用において、予想しないトラフィックが発生したことを即座に検知し、事前に自動的にブロックするなど、セキュリティー対策がされていない利用者に対して、安全なネットワークやサービスを提供することが可能となるという。

 

4.5Gスマホをハブに、ドコモの「マイネットワーク構想」が越えるべきハードル(5.10 日経XTECH)
 NTTドコモが5G(第5世代移動通信システム)の商用サービス開始に向け、新たな取り組みとして打ち出した「マイネットワーク構想」。5G対応スマートフォンをハブに様々な周辺機器を活用し、新しいテクノロジーによる体験を提供するのがその狙いだが、ユーザーに受け入れられるには課題も少なからずあるように見える。

 これは5G対応のスマートフォンをハブとして、そこに様々な周辺デバイスを接続し、その上でサービスを提供することにより5Gによる新しい体験を提供するというもの。同社の発表によると、周辺機器としてはVR(仮想現実)やAR(拡張現実)など「XR」対応のヘッドマウントディスプレーや、ウエアラブル・ヒアラブルデバイス、360度カメラなど、先端テクノロジーを活用したデバイスが想定されているようだ。

 特徴的なのは、デバイスやその上で動くサービスなどをパートナー企業と共同開発する点。NTTドコモはかねてよりパートナー企業との協業を重視する方針を打ち出しており、5Gに関してもパートナー企業に技術や環境などを提供する「ドコモ5Gオープンパートナープログラム」を展開している。マイネットワーク構想においてもパートナー企業との共同開発を重視する方針を打ち出しており、外部パートナーとの連携が重要な要素となっていることが分かる。

 そうしたNTTドコモの取り組みを象徴しているのが、マイネットワーク構想に向けた取り組みの一環として公表された、米マジックリープ(Magic Leap)との資本・業務提携である。同社はMR(複合現実)のデバイスやサービスを手掛けるベンチャー企業として注目を集めている。NTTドコモはマジックリープへの出資により、同社のMRデバイスを日本で独占販売するほか、コンテンツ配信プラットフォームの日本語化やdアカウント連携、そしてコンテンツの共同開発も進めていくとしている。

 マジックリープは既にグラス型のMRデバイス「Magic Leap One」を提供しているが、NTTドコモによると日本語への対応が必要になることなどもあり、実際に国内で投入されるのは次世代のモデルになるとのこと。ただNTTドコモは、2019年のラグビーワールドカップに合わせて9月20日より5Gのプレサービスを実施する予定であることから、そのタイミングでMagic Leap Oneを活用した何らかのデモを計画しているという。

 NTTドコモがマイネットワーク構想を発表したのには、5Gらしい先端デバイスを活用したサービスをいち早く提供することで、5Gの先進性をアピールしたい狙いがある。だがそうした体験を提供するならば、スマートフォンに接続するなどの手間をかけることなく、機器そのものに5Gの通信機能を搭載したほうがユーザー体験の価値は高まるはずだ。

 当初からVRゴーグルなどに5Gの通信機能を搭載できればベストだが、5G対応のモデムの価格は当初高いと考えられ、搭載するとなればデバイスの高額化にもつながってしまう。しかも先進的なデバイスに興味を示すのは新技術に関心が高いアーリーアダプター層に限られるため多くの販売数を見込むのが難しいことから、ビジネス面でのリスクも高い。

 一般消費者が購入可能な価格帯でありながら、ビジネスが成立する範囲で、なおかつ5Gによる先進的な体験をいち早く届ける──。そのためには、確実に5Gが搭載されるであろうスマートフォンを活用するという現実路線を取る必要があったのだろう。

 2019年5月29日より実施された「ワイヤレス・テクノロジー・パーク2019」のNTTドコモブースにおいて、マイネットワーク構想のデモが披露された。360度カメラの映像を、スマートフォンを介してVRゴーグルに転送し、視聴するという内容であった。

 だが個人向けにそうしたサービスを提供するのであれば、越えなければならないハードルがある。1つは通信料金の問題だ。

 特にVRやARなどのコンテンツを利用するには、通常の動画より一層大きな容量のデータ通信が必要となる。4Gより高速な5Gであれば、通信速度の面では問題ないかもしれないが、通信量の消費も激しくなるので、4Gと同じ料金体系でサービスを提供しても快適に利用できないからだ。

 そしてもう1つのハードルは、ユーザーに支持されるコンテンツをいかにして作り上げるかという点である。マイネットワーク構想で想定されているXRやウエアラブルなどのデバイスは、既に市場に存在する。そうしたデバイスはアーリーアダプター層であれば何らかの形で体験、あるいは所有していることが多い。

 先進的なデバイスだけでなく、料金やサービスなどでユーザーが満足できる環境をNTTドコモが整えられるかは、マイネットワーク構想の成否を占う上で重要なポイントになる。まずは2019年に実施されるプレ商用サービスでその一端を見られるかどうかが試金石となりそうだ

 

5.iPhoneから独立するiPadとApple Watch、透けて見えるアップルの苦悩(6.10 日経XTECH)
 米アップル(Apple)の開発者イベント「WWDC 2019」で筆者が注目したのは、デバイスやOS、アプリの分離・分割が進んだことだ。iPadOSがiOSから独立し、iTunesが3つに分割され、Apple WatchにApp Storeが搭載されることなどが発表された。これはある意味、従来のアップルの強みが失われてきたことの表れともいえ、同社の苦悩ぶりが表れているとも言えそうだ。 

 そのことを象徴しているのが「iPadOS」の登場である。これは要するにiPad専用のiOSなのだが、iPadOSという別の名称が付けられたことで、実質的にiOSから独立し、今後はiPad独自の進化を遂げていくことになるようだ。 

 また発表内容を見るに、進化の方向性も明確なようだ。一言で表すならば「iPadのパソコン化」ということになるだろう。それは「ファイル」アプリを見れば分かりやすい。macOS風のカラム表示を採用、深い階層のフォルダーにアクセスしやすくなったほか、外部のファイルサーバーやUSBストレージ、SDカードのファイルも扱えるようになっている。 

 アップルは「iPad Pro」シリーズを投入して以降、iPadを価格競争が激しいコンシューマー向けのコンテンツビューアーから、米マイクロソフト(Microsoft)の「Surface」などに対抗できる、高付加価値のビジネスタブレットへの移行を模索してきた。そうしたことからiPad向けのiOSを、従来のiOSから独立させるという今回の措置によって、アップルがiPadのビジネスタブレット化を推し進める姿勢がより鮮明になったといえるだろう。 

 もう1つ、分離が進んだのがApple Watchである。今回発表されたApple Watch向けのOSである「watchOS 6」では、新たに「App Store」を導入。これによってApple Watch単独でアプリをダウンロードできるようになったほか、Apple Watch単独で動作するアプリの開発も可能になったという。 

 Apple Watchは既にLTE通信機能やeSIMを搭載し、単独でもデータ通信ができるモデルが登場している。そうしたことからApp Storeの導入によって、多くのシーンでiPhoneがなくても、単独で利用できるようになる。これもある意味、iPadと同様にiPhoneからの分離が進められた動きと見ることができよう。 

 従来のアップルは、デバイスはiPhone、OSはiOS、そしてサービスはiTunesを中心とした一元的なエコシステムを採用していた。それが少数の機種やサービスを世界的に多展開するという極めて効率のいいビジネスにつながり、アップルの急成長を大きく後押しする要因となったのは確かだ。 

 だが最近は、そのエコシステムの中心であったiPhoneの販売が伸び悩むなど、従来通りの取り組みでは拡大に限界が出てきた。その一方で、消費者はデバイスやサービスの多様性を求め始めている。「Mac mini」や「iPad mini」の後継機種が出たことに喜ぶ声や、コンパクトサイズの「iPhone SE」の後継を求める声が今なお多く存在することなどが、それを象徴している。 

 足元を見ると、スマートフォン大手の中国・華為技術(ファーウェイ)が米国から制裁を受け、スマートフォン事業の展開が厳しくなったことで、アップルにとって見ればやや市場環境の厳しさが落ち着いたとも言えるかもしれない。だがスマートフォンが既に多くの人に行き渡っている現状、iPhoneの販売がかつてのような勢いで伸びることはもはや考えにくく、時代に合わせていく必要があるのは確かだろう。今回のWWDCからは、そうしたアップルの苦悩を見て取ることができそうだ。

 

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