週間情報通信ニュースインデックスno.1117 2018/01/27


1.IBMのWatson、「人工知能」とは別モノ?(1.22 ITpro)
  「人工知能(AI)関連のツールやサービスを一通り検討した。その中で機能や使い勝手、導入実績、運用のしやすさといった点を考慮して採用を決めた」。楽天の茶谷公之執行役員AI推進部ジェネラルマネージャーは、米IBMのAIシステム「Watson」を選んだ理由をこう説明する。

 同社は2017年4月にWatsonの採用を発表。楽天市場や楽天24、爽快ドラッグ、楽天モバイルといったサービスの利用者をサポートするチャットボットを構築した。

 「ログインできない」などとチャットで問い合わせると、「メールアドレスとお名前はわかりますか?」などと返す。「楽天市場のFAQは約2000項目ある。チャットボットを使えば、数ステップで問題を解決できる。コールセンターに電話をしなくても問題を解決できる確率が高まり、サポート担当者は難しい問題の解決に集中できる効果が見込める」(茶谷氏)。

 FAQを基に類義語リストなどを用意したうえで、Watsonのチャットボット機能「Conversation(会話)」を利用している。構築期間は1つのチャットボット当たり2〜3カ月程度という。

 AI推進部が目指すのは、当社の全事業を対象とした顧客対応の効率化や高度化を図るAIプラットフォームの実現。Watsonを利用したシステムはその第一弾に当たり、主に定型業務の効率化を狙う。「法務や人事、経理、ITといった社内部門からの引き合いも強い」(茶谷氏)ため、社内向けにも広げていく考えだ。

 日本IBMとソフトバンクがWatsonの日本語版を正式発表したのは、欧米より2年遅れとなる2016年2月。「本格提供を始めたのは2016年夏」(日本IBMの吉崎敏文執行役員ワトソン事業部長)だ。それでも日本でAIブームが本格化した時期と重なったこともあり、発表から2年足らずでWatsonを導入した日本企業は300社を超えるという。楽天のほか、メガバンク3行、日本航空、パナソニック、イオンなど顔ぶれは多岐にわたる。

 日本IBMの三澤智光専務執行役員は「やや乱暴に分類すると、今のAIは2種類ある。1つは米アップルのSiriのような日常生活をサポートするAI。もう1つはビジネスをサポートするAIだ。Watsonはビジネス利用に特化している点が特徴」と説明する。自社データの流用を嫌う企業に配慮して顧客のデータやコンテンツを保全する仕組みを提供する一方、「機械学習や深層学習、自然言語処理といった技術をそのまま提供するのでなく、ビジネスに関わるアプリケーションを作りやすくする観点で組み合わせたAPI(アプリケーション・プログラミング・インタフェース)として提供している」(三澤氏)。

 機能面では「問い合わせの日本語を解釈して回答する」といった自然言語処理の部分を評価する声が多い。楽天の茶谷氏は「東京基礎研究所で長年研究しており、最も自然言語処理の技術的な蓄積を持つ1社」と話す。

 まず「WatsonはAIなのか」を改めて押さえておこう。Watsonに対して「大量の文章やデータから洞察を導き出す『高度なAI』」というイメージを持つ人は少なくない。しかし現状でこのイメージを具現化できているのは、医療向け特化型アプリケーションを使う医療機関など、一部の特殊なユーザーだけだ。

 「AIにものすごく大きな期待を抱く顧客がいるのは事実だ」。IBMのパートナーとしてWatson事業を展開するシステムインテグレータ、NCS&Aの高森正延執行役員常務はこう証言する。そうした顧客は、Watsonにデータを学習させれば人間と同じ高度な判断が可能になる、などと考えがちだ。

 ややこしいのはWatsonをAIと呼ぶかどうかに関して、IBMが方針転換したことだ。IBMは最近までWatsonをAIと呼ぶのをかたくなに拒み、「コグニティブコンピューティング」などと称していた。それが2016年10月に米国で開催したカンファレンスで米IBMのジニー・ロメッティCEO(最高経営責任者)がAIと言及して以来、事実上解禁となった。

 ただし、同社が言うAIの“A”は「Artificial(人工)ではなく、Augmented(拡張)の意味だ」と吉崎氏は強調する。「人間の脳をまねるといった話とは違う。我々が狙っているのは人間の能力や知見をサポートする存在。ここは譲れない」(吉崎氏)。

 Watsonの全体像が分かりにくいのは、Watsonのラインアップが意外と広いことも一因だ。現在、日本で利用できるWatsonと関連製品は大きく4つある。  中核を成すのはクラウドサービスの「Watson API」だ。チャットボットやテキスト分析、音声認識といったWatsonの主要機能を提供する。

 2つ目は関連製品。データ分析ツールの「Watson Explorer(WEX)」はその1つだ。主に非構造化データを対象としたオンプレミス型のツールで、単語同士の関連などを探っていく。「日本発のツール『TAKMI』を基にしており、日本企業に評判がいい」と日本IBMの元木剛理事ワトソン・ソリューション担当は話す。WEXだけを使って「Watsonを導入した」とするユーザーもある。

 3つ目は特定用途向けのアプリケーション製品だ。創薬向けの「Watson for Drug Discover」、サイバーセキュリティ向けの「Watson for Cyber Security」、テロ資金対策を支援する「Financial Crimes Due Diligence with Watson」などがある。

 4つ目のソリューション製品はWatsonのパートナーが提供する半製品を指す。「コールセンターのオペレーター支援」など典型的な使い方を想定し、比較的安価かつ短期間で導入できるようにした。2017年7月に45のソリューション製品をカタログ化した。

2.「AIの民主化」実現へ、グーグルが新サービスAutoMLを説明(1.26 ITpro)
  グーグルは2018年1月26日、1週間前に全世界で提供を開始した新たなクラウドサービス「Google Cloud AutoML」の日本国内向け説明会を開催した。Google Cloud AutoMLは、同社が今後の軸となる一つとして開発を進めているAI(人工知能)を、より簡単に活用するためのサービス。「AIの民主化のためにまだやれることがある」(グーグル・クラウド・ジャパンの大藪 勇輝マシンラーニングスペシャリスト)と意気込む。

 同社が目指すAIの民主化とは、活用したい企業や開発者が誰でもすぐにAIを使えるようにするというもの。これまでのグーグルのAIサービスでは、あらかじめ同社が用意した「学習済み機械学習モデルを利用するもの」と、「ユーザーが自分でカスタムモデルを開発するもの」の2種類を提供してきた。前者は専門知識なしですぐ簡単に利用できるものの、ビジネスとして活用できるレベルの結果を得るのが難しかった。一方、後者は自分のやりたいモデルにカスタマイズ可能だが、ディープラーニングを理解した人でないと利用するのが難しい、といったように大きく2極化していた。

 今回提供を開始したCloud AutoMLは「このギャップを埋めるもの」(大藪氏)という位置付けだ。ユーザー自身のデータをアップロードすれば、それを分析して自動的に機械学習モデルを生成してくれる。この機械学習モデルを使えば、ユーザーに合ったより実践的なAI活用が可能となるという。

 第一弾となる「Cloud AutoML Vision」は画像解析を対象としたサービスで、2018年1月17日からアルファ版として一部のユーザーに提供済み。利用を希望するユーザーは、インターネットから申請すると、分析対象のデータや利用目的などを審査した上でグーグルから招待されて利用可能になる。

3.IT投資は過去10年で最高の伸び、JUASが「企業IT動向調査2018」速報値発表(1.25 ITpro)
  日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)は2018年1月25日、東証一部上場企業とそれに準ずる企業を対象に実施した「企業IT動向調査2018」の、IT予算に関する速報値を発表した。2018年度のユーザー企業のIT投資は、前年に比べて大幅に伸びる見込み。IT投資の伸びは、過去10年で最高の水準という。

 2018年度のIT予算の増減予測では、2017年度に比べて「増加」とした企業は全体の40.7%。45.5%が「不変(前年度並み)」と回答した。IT予算を「増やす」割合から「減らす」割合を差し引いたDI(ディフュージョン・インデックス)は27.0ポイント。17.7ポイントだった2017年度を9.3ポイント上回ったほか、過去10年で最も高かった2016年度(25.6ポイント)よりも高かった。

 特にIT投資に積極的なのが、建築・土木業界。DI値は、全体を10ポイントほど上回る36.4ポイントだった。2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催などを受けて建築工事が活発化し、建築・土木業界では人手不足が深刻化している。これを解消するためにIT活用を進め、生産性向上を図りたいとの狙いがIT投資にも表れているとみる。

 売上高規模別にIT投資の動向を分析すると、売上高が大きい企業ほど「不変」が減り、「増加」と「減少」に二極化していることが明らかになった。売上高が1兆円以上の企業では、IT投資が「増加」と回答する企業が53.8%に上る一方で、30.8%の企業が「減少」と回答した。

 「IT投資で解決したい中期的な経営課題」では、「業務プロセスの効率化(省力化、業務コスト削減)」「迅速な業績把握、情報把握(リアルタイム経営)」を選んだ企業が多かった。この結果は過去の調査と同様の傾向だが、前年調査に比べて「業務プロセスの効率化」が9.3ポイント増加した。生産年齢人口の減少による人手不足の深刻化、働き方改革への取り組みの進展などが影響しているという。

 同調査では、4000社のIT部門長に調査票を郵送し、Webまたは郵送で回答を得た。有効回答社数は1078社。IT予算に関する有効回答数は705社、IT投資で解決したい経営課題に関する有効回答は1003社。正式なデータや分析結果は、2018年4月上旬に発表予定という。

4.アイ・オー・データ、固定電話移行後のIP網で動くアナログモデムを発売(1.24 ITpro)
  アイ・オー・データ機器は2018年1月24日、固定電話からの移行後のIP網で動作するアナログモデム2製品を発表した。NTT東日本/NTT西日本は2024年1月以降、現在提供中の固定電話の電話網(公衆電話網、PSTN)をIP網に移行予定である。2製品は移行後のIP網の環境で動作を確認済み。

 発表されたアナログモデムは、パソコンとUSBで接続する「DFM-56U」とシリアルポート(RS-232C)で接続する「DFM-56S」。どちらもアナログモデム規格のV.90に対応し、データ受信速度は最大で56kビット/秒、データ送信速度は最大で33.6kビット/秒。 出荷開始予定は2018年2月上旬。価格はDFM-56Uが7400円、DFM-56Sが1万5700円。

5.AIとRPAで非定型業務を自動化、KPMGが新サービス(1.24 ITpro)
   KPMGコンサルティングは2018年1月24日、AI(人工知能)とRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を組み合わせることで、問い合わせへの回答や、プレゼンテーションの修正支援といった非定型業務の自動化支援サービスを提供すると発表した。

 「AIとの組み合わせにより、これまでRPAツールで自動化できなかった紙の書類や音声などの非構造化データを使った業務の自動化が可能になる」とKPMGコンサルティングの田中淳一 執行役員パートナーは説明する。KPMGコンサルティングはRPAツールやAIの導入に加え、業務改革の支援サービスなどを提供する。

 AIとRPAを組み合わせた先行事例が、コールセンターの質疑応答のサポートだ。顧客からの電話の問い合わせをオペレーターが聞くのと同時に、自然言語処理で顧客の問い合わせ内容をデータ化する。そのデータをRPAツールで開発したロボットに自動入力し、ロボットが社内のFAQリストなどから回答候補を検索してオペレーターに提示する、といった使い方になる。

 このほかにもOCRとAI、ロボットを組み合わせて手書き書類の処理を自動化したり、自然言語処理や翻訳関連のAIとロボットを組み合わせてPowerPointで作成した資料の文字列の修正や翻訳を実行したり、といった非定型業務を既に自動化できているという。

 RPAの適用領域はこれまで、データ入力や情報の検索など同じ作業を繰り返す定型業務が一般的だった。RPAの活用段階として、こうした定型業務での自動化を「Class1」と呼ぶのに対し、AIを使って非定型業務までを自動化することを「Class2」と呼ぶという。

 田中執行役員は「Class2のRPAを実現する際にこれまで以上に欠かせなくなるのが、RPAやAIのガバナンスやBPR(ビジネスプロセス改革)だ」と強調。「BPRをせずにRPAを導入したり、RPAツールやロボットの管理が十分でなかったりする企業も、Class2のRPAの導入の際に見直すチャンスになる」とみる。

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