週間情報通信ニュースインデックスno.1112 2017/12/16


1.AIチップ搭載スマートフォンが続々、「スマホの次」を狙う競争の開幕か(12.15 ITpro)
 2017年11月3日、Appleの最新スマートフォンである「iPhone X」が発売された。iPhone Xは本体正面のほとんどがスクリーンとなり、従来のiPhoneシリーズの特徴だった物理ホームボタンが姿を消している。そのため、2013年発売のiPhone 5sから採用されているホームボタンによる指紋認証「Touch ID」に代わり、顔認証「Face ID」が新たに採用されている。iPhone Xの前面に顔を向けると、登録済みの顔情報と照合しデバイスのロックを安全に解除する。指紋認証のように特定の箇所を特定の指で触る必要がなく、非常に便利だ。

 このFace IDを可能にする技術として一躍注目を浴びているのが同社の最新モバイルSoC(System-on-a-chip)である「A11 Bionic」だ。同SoCは、人工知能(AI)で用いられるニューラルネットワークに最適化されたユニット「ニューラルエンジン」を持つことから「AIチップ」とも呼ばれる。

 AIチップを最新スマートフォンに搭載するのはAppleだけではない。ここ数カ月に発表されたいくつかのハイエンドスマートフォンは、AIチップを搭載するものがある。本稿では、最近のスマートフォンにおけるAIチップ搭載の動きを押さえつつ、この先どのように展開されるのか考察する。  Huawei(華為技術)は、ドイツ・ベルリンで開催された家電やITの総合見本市イベント「IFA 2017」(2017年9月1日?6日開催)の基調講演において、自社開発の最新モバイルSoC「Kirin 970」を発表した。同社は「世界初のAI対応チップセット」をうたい、機械学習ユニット「ニューラルネットワーク・プロセッシング・ユニット」(Neural-network Processing Unit:NPU)を搭載する。

 時を近くしてGoogleは、10月17日の同社ブログにおいて、2017年10月4日に発表した同社ブランドの最新スマートフォン「Pixel 2」「Pixel 2 XL」の両スマートフォンにGoogle独自開発のチップ「ピクセル・ビジュアル・コア」(Pixel Visual Core:PVC)を搭載していることを明らかにした。最新のAndroid OSであるAndroid 8.1 Oreoにおいてその機能が有効化される計画だ。

 Pixel 2とPixel 2 XLはメインのSoCとしてQualcommのハイエンド向けモバイルSoC「Snapdragon 835」を搭載しており、PVCは画像処理と機械学習に特化したコプロセッサである。この点は、AI処理用ユニットを内蔵するA11 BionicやKirin 970と異なっているが、AIチップの実装形態の一種と見ることができるだろう。

 現在のところ、AIチップの搭載で強化する対象は画像・物体の認識や画像処理に関する能力のようだ。

 Face IDでは、本体正面上部に搭載されたTrueDepthカメラシステムで使用者の顔の形状と赤外線イメージを取り込み、その情報をA11 Bionicのニューラルエンジンで解析し、あらかじめ登録した利用者情報と照合する。

 使用者の多少の外見の変化にも柔軟に対応し、髭を生やしたり、化粧を変えたり、メガネを掛けたりしても自動で認識し、適切に端末のロックを解除する。また顔いっぱいに生えていた髭を剃るなど、外見が大幅に変わった場合は、パスコードで本人認証をしてから顔のデータを更新すると解説している。ニューラルエンジンによる機械学習によってFace IDをより賢くさせる仕組みとなっているようだ。

 アニ文字では、TrueDepthカメラで捉えた使用者の顔の動きを同期させたキャラクターのスタンプを友人などに送ることができる。ここでもA11 Bionic搭載のニューラルエンジンの能力が生かされている。

 HuaweiはKirin 970の発表において、その画像認識能力の高さを訴求している。AI処理のパフォーマンスとして、1分間に読み込める画像の枚数を比較すると、CPU/GPU/NPUを活用するKirin 970は2005枚という結果に対し、CPUのみのGalaxy S8では95枚、CPU/GPUを用いるiPhone 7 Plusでも487枚にとどまったという。この能力を応用することで、カメラアプリでの撮影時に被写体を自動で認識し、被写体に合った設定に自動で変更できるとアピールする。

 確かにスマートフォンのカメラ機能の高度化はユーザーにとって嬉しい。デジカメを持ち歩くことをやめて、代わりにスマートフォンですべて撮影している人も多いと思う。筆者もその一人だ。SNSに投稿する写真は、より綺麗なほうが見栄えもいい。動きを真似るスタンプも、普通のスタンプよりもタイムラインに気持ちを込めることができそうだ。

 とはいえ、Apple、Huawei、Googleが独自でAI処理に適したチップを設計し最新スマートフォンに搭載してきたのは、よりリッチな写真体験やスタンプ体験をユーザーに提供するためだけなのだろうか。

 これらの企業はスマートフォンの次、コンシューマー向けARデバイス時代の到来に備えた「実験」を開始していると見ることもできそうだ。

 これらの企業はハードウエアを創り出す力があり、独自のチップを開発する力もある。そして何より、AppleとGoogleはスマートフォンOSにおける巨大なエコシステムも掌握している。

 以下では、スマートフォンにAIチップを載せることが将来のARデバイスにどうつながるか考察する。  ARを実現する方法には位置情報活用型、マーカー活用型などがあるが、これらは実現できるAR体験に限界があることから、「スマートフォンの次」にはほど遠いだろう。実際のところ、位置情報だけでは現実世界のあらゆる物体を特定することはできないし、また現実世界のすべての物にマーカーを付けることも不可能だ。

 となると、より高度なAR体験のためにはカメラ画像を高精度に認識することにより周辺世界を理解する能力がARデバイスに求められるだろう。これはスマートフォンにAIチップを搭載する各社の取り組みの先にあるものと言えそうだ。

 将来的なコンシューマーARデバイスのフォームファクターがどのようなものであれ、画像認識以外にもAIを活用することは必須と思われる。例えばHuaweiは、デバイスにAIチップを搭載し、クラウド側のAIと処理を分担することによって、全体の処理時間を短縮し、ユーザー体験を低下させる遅延を低減できるとする。

 このように、チップだけでなくハードウエアやエコシステムにも力が及ぶプレイヤーが、自社スマートフォンに独自AIチップを搭載したことは、今後のARデバイスに大きな影響を与える可能性があると思われる。とはいえ、これらの企業からコンシューマーARデバイスが登場するにはまだ時間がかかるだろう。Bloombergが11月8日に報道した情報の通りになるのであれば、AppleがARヘッドセットを発売するのは早くて2020年である。

 しばらくはAIチップを搭載するスマートフォンが話題の中心になると思われるが、筆者はARデバイスへの展開の可能性も期待している。AIチップに取り組むスマートフォンメーカーやチップメーカーの今後の動向に注目したい。

2.クアルコムがIoT事業戦略を披露、「IoTで大切なのはクラウドよりエッジ」(12.15 ITpro)
  クアルコムジャパンは2017年12月15日、IoT(インターネット・オブ・シングズ)に関する事業戦略説明会を開催した。米クアルコムテクノロジーズのラジ・タルーリIoTプロダクトマネジメント担当シニアバイスプレジデントが同社のIoTに対する考え方などを説明した。

 タルーリ氏は、デバイスがネットワークにつながることで「周囲の環境の認識」「認識を基にした推論」「推論の結果に基づくアクション」という3つの側面のインテリジェンスが増していると指摘。自動車や住宅関連、製造など幅広い業界で、インテリジェンスがクラウド側からエッジ側に移ってきていると説明した。

 インテリジェンスを増すことで、デバイスは高負荷の処理を同時に複数こなすことが求められ、より大容量のバッテリーやメモリー、ストレージが必要とされるとした。タルーリ氏は「当社が携帯端末で取り組んできた課題そのものだ」と話した。

 実際に、バッテリー駆動が前提のモバイル端末で採用されているSoC(System on a Chip)製品「Snapdragon」においては、ヘテロジニアスコンピューティング(CPUやGPU、DSP、モデムなど複数の演算資源が混在する環境)のアーキテクチャーを推進してきたと説明。Snapdragonは既に多くのIoT製品に採用されているとして、「IoT技術はモバイル技術がドライブ(前進)させる」と強調した。

3.トヨタのコネクテッドカー戦略、まずはパブリッククラウドでデータ収集(12.15 ITpro)
 「今後重要になるのは、クラウドなどとの通信インフラ技術や、AIに代表されるようなデータ分析技術だ」と山本昭雄コネクティッドカンパニーコネクティッド統括部長は話す。車両の位置情報や部品の状態に関するデータをクラウドに収集し、新サービスの提供につなげる。大量データの分析にはAIの技術開発も求められるという。

 トヨタは車両データの収集、蓄積基盤として、米マイクロソフトが提供する「Microsoft Azure」のようなパブリッククラウドの活用を検討している。収集するデータがそれほど多くない段階では、パブリッククラウドを使う方がコストが安く済むとの考えからだ。

 ただ車両データが増加すると、従量課金制が主流であるパブリッククラウドを利用する場合は、コストが膨らむ。「将来は自前でクラウドを構築していく」と山本統括部長は明かす。

 このほか、ディープラーニング(深層学習)などのAIに強い技術者を育成中だ。トヨタはAI技術の開発を進めているPreferred Networksへ出資しており、同社との技術連携などを通じて、トヨタでも「AI人材が育ち始めている」(山本統括部長)とする。

 トヨタは2020年には、販売する新車のうち、コネクテッドカーの割合を7割まで増やす計画だ。

4.Rubyで作った独創ビジネスはどれ?、島根県が第3回グランプリを発表(12.14 ITpro)
 島根県は2017年12月14日、国産プログラム言語「Ruby」で開発した、独創的なIT製品・サービスを表彰するイベント「Ruby biz Grand prix 2017」を東京都内で開催した。このイベントは、島根県発のRubyを活用してビジネスでイノベーションを起こした事例を表彰するもの。2015年から数えて今年で第3回目の開催になる。

 表彰に先立ち主催者として藤原孝行島根県副知事が登壇。溝口善兵衛島根県知事のメッセージを代読した。「全国から29の事業の応募があり、いずれも将来性に富む優れたビジネス事例だ。表彰は、開発しやすいというRubyの特徴を生かしつつ、技術やサービスの独創性や将来性に優れた事例を選定した」と話した。

 イベントでは、グランプリである大賞のほか、特別賞、FinTech賞、ソーシャルイノベーション賞の対象として11企業を選び、表彰式を行った。

 大賞は、人事評価クラウドサービス「コンピテンシークラウド」を手掛けるあしたのチームと、Webサイトの多言語化ツール「WOVN.io」を提供するミニマル・テクノロジーズが受賞した。

 大賞を受けたあしたのチームの高橋恭介社長は「今年一番のサプライズ」と喜びを語った。2008年創業の同社がRubyを採用したのは今から2年半ほど前のこと。CTO(最高技術責任者)として、Rubyを使った開発会社の立ち上げで実績を持つ林田幸一執行役員を迎えたことがきっかけだ。

5.楽天の携帯事業参入、2019年中にサービス開始、1500万人の利用者獲得目指す(12.14 ITpro)
 楽天は2017年12月14日、携帯電話事業への新規参入を同日開催の取締役会で決議したと発表した。2018年1月にも新会社を設立して電波の新規割り当てを総務省に申請。新規参入が無事に認められた場合は2019年中に携帯電話サービスを始める。将来的に1500万人の利用者獲得を目指す。

 楽天の国内のID数(楽天ID数)は約1億件。ECサイト「楽天市場」はモバイル端末経由の取扱高が6割を超え、さらに増加傾向にある。今後のサービス拡充や新規展開を考えると、モバイル端末が最も重要なタッチポイントとなるのは明らか。今回、携帯電話事業に本格参入することで既存のECやFinTech、コンテンツ配信などのサービスをモバイル通信と組み合わせて包括的に提供できるようになる。「より低廉で利用しやすい携帯電話料金を実現し、社会全体の便利の最大化を目指す」としている。

 基地局などの設備投資にかかる費用は全額、銀行からの借り入れなどによる有利子負債で賄う。資金調達残高は2019年のサービス開始時点で約2000億円、2025年時点で最大6000億円規模となり、以降は低減すると見込む。

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