週間情報通信ニュースインデックスno.1092 2017/7/8


1.「AIやMRによる働き方改革がビジネスを変える」、日本マイクロソフトの平野社長(7.7 ITpro)
 「人工知能(AI)やMR(複合現実)などのデジタル技術によって、時間の使い方や現場での働き方、仕事の進め方を変革できる」――。日本マイクロソフトの平野拓也社長は2017年7月7日、「IT Japan 2017」(日経BP社主催)で講演し、働き方変革におけるデジタル変革の重要性について解説した。

 企業では現在、CDO(最高デジタル責任者)を設置するなど、デジタル変革への取り組みが加速しているという。経営者が直面する課題のトップ5は「収益性の向上」「人材の強化」「売上げ・シェア拡大」「新製品・新サービス、新事業の開発」「事業基盤の強化」とした。

 ところが、デジタル変革が重要であるという事実に同意するビジネスリーダーは日本では50%、つまり2人に1人しかいないと平野社長は指摘。一方で、アジア全体の平均は80%のリーダーがデジタル変革が重要であると思っているとした。

 こうした状況を受けてか、経済協力開発機構(OECD)が報告したレポート『OECD Compendium of Productivity Indicators 2015』によると、日本の労働時間あたりのGDP(国内総生産)は、当時の加盟34カ国中で下から13番目という低い位置に甘んじている。

 「働き方を変えることによって、ビジネスを改革していかなければならない」と平野社長は強調。例えば、平野社長の執務室での会議は椅子に座らず立ったままという。「無駄が無くなり、よく発言するようになる。何より立って会議するほうが早く終わる」(平野社長)。

 平野社長はデジタル技術を使って働き方を改革するパターンを三つ挙げた。AIによる時間の使い方の改革、AIによる現場での働き方の改革、MRによる仕事の進め方の変革――である。

 AIによって時間の使い方を改革した例として自社事例を紹介した。日本マイクロソフトはMyAnalytics(マイアナリティクス)と呼ぶAIを使っている。社員一人ひとりに「どのように時間を使っているか」「誰と多くの時間を共有しているか」などを週次で報告してくれるという。

 会議については「あなたが出席した会議の27%に田中さんも出席している。本当に2人出席する必要があるのか」や、「あなたは会議中に30%の時間を内職に充てていた。本当に会議に出席する必要があるのか」といった気付きを与えてくれるとした。

 メールについても指摘する。「あなたが夜間に送信したメールは、返信までに平均5時間かかっている。朝に送信したほうがいいのではないか」や、「あなたが送信したメールは4秒で斜め読みされているが、ちゃんとメッセージ性があるのか」などといったアドバイスがあるという。

 同社でMyAnalyticsの効果を検証したところ、年間で7億円を削減できると分かったと平野社長は明かす。4部門41人で2016年12月から2017年4月までの4カ月間実験したところ、合計で3579時間を削減。従業員2000人の残業時間に換算した場合、年間で7億円を削減できるとした。実験に会議時間が27%減り、集中して作業する時間が50%増えたという。

 AIによって、現場の働き方も変わるという。平野社長は倉庫で人物やモノをAIが認識するいくつかの例をビデオで投映。センサーデータをクラウドで収集し、画像認識で人物やモノの動きを把握する事例では、ドラム缶が倒れて中の液体がこぼれたことをAIが認識し、担当者に報告していた。

 建設現場の例ではチャットボットが活躍。スマートフォンのチャット画面でボットと会話をすることで、建設現場で必要になるチェーンソーといったモノがどこに置いてあるのかを確認できていた。探しものの近くにいる人も把握でき、近くにいる人にモノを持ってきてもらうといった運用もできる例を紹介した。

 これらはクラウドサービス「Microsoft Azure」がAPI(アプリケーション・プログラミング・インタフェース)で提供すAIサービス群を組み合わせると簡単に実現できるサービスであるとした。Azureは視覚や音声、言語、知識、検索といったAIサービスをAPIで用意している。

 画像認識の誤認識率は4.9%で、人間の誤検知率である5.1%を下回り、「AIのほうが人間よりも正しく画像を認識できる」(平野社長)。言語の単語を正しく聞き取る音声認識率も、人間とほぼ同等という。

 平野社長は誰でも無償で使える翻訳アプリケーションとして「Microsoft Translator」も紹介。「ダウンロードすればすぐに使えるので試して欲しい。今日の午後に国際会議があっても対応できる」(平野社長)。

 仕事の進め方を変革するデジタル技術の例としては、現実世界と仮想現実をミックスさせて表示するヘッドマウント型ディスプレー(HMD)の「HoloLens(ホロレンズ)」を取り上げた。HoloLensを活用している例として、小柳建設(新潟県三条市)の事例をビデオで紹介。建設物の設計や施工、メンテナンスなどにMRを利用しているとした。

2.「IoTやAIを活用するのに必須だった」、住友化学がSAP製ERPのAWS移行を紹介(7.7 ITpro)
 住友化学の土佐泰夫IT推進部理事は2017年7月6日、アマゾン ウェブ サービス ジャパンが開催した企業向けセミナー「SAP on AWS最新動向セミナー」に登壇した。住友化学がグローバルで進めている欧州SAP製のERP(統合基幹業務システム)をAmazon Web Services(AWS)上に移行する事例を自ら語った。

 同社のERPはグループ会社を含めて国内で約5700ユーザーが使うという。サーバー台数は82台で、SAP独自の処理能力の目安であるSAPS値は約20万で、土佐理事は「国内企業で最大級」とした。

 国内グループ企業が使うサーバー33台で運用していたERPを2016年12月、AWS上に移行。2017年7月中には49台のサーバーで運用する周辺システムもAWS上に移行する予定という。並行して海外グループ会社が使うERPと周辺システムもAWS上への移行を進めているとした。

 土佐理事はAWS上への移行を決めた理由を「IoT(インターネット・オブ・シングズ)や人工知能(AI)など、新しく登場するITはきっとAWSに対応するから」と話した。最新のITを事業に生かすには、世界中で使われているシステム基盤を使うべきだと考えたという。「独自に構築したインフラよりAWSのほうが標準的だ」(土佐理事)。

3.「センスある経営者は、組み合わせではなく順列で戦略を考える」、一橋大学大学院の楠木氏(7.7 ITpro)
 2017年7月7日、都内で開催された「IT Japan 2017」(日経BP社主催)に一橋大学大学院の国際企業戦略研究科教授の楠木 建氏が登壇。「センスある経営者は、組み合わせではなく順列で戦略を考える」など、優れた経営者に共通する考え方を実際の経営者の例を交えて紹介した。

 楠木氏は冒頭、ビジネス(商売)全体を動かして成果を上げる「経営者」と、それ以外の「担当者」は全く別物だと説明。経営者に求められるのは「センス」であり、担当者に求められるのは「スキル」だとし、その掛け合わせで商売の成果が得られるという。

 楠木氏はまた、「センスのある経営者」は千差万別であるものの、その中でも共通項として挙げられる特徴を説明。具体的には「分析よりも総合」「何をしないかを決断できる」「思考が直列」「抽象と具体の往復運動」「インサイドアウト」の5点だ。

 一つめの「分析よりも総合」では、優れた経営者はまず戦略の「ストーリー」を作り、そこから足りない情報を補うとする。企業の経営企画部などで行う分析の手法である「SWOT分析」を例に挙げ、「担当者はすぐに分析をしたがるが、それは経営に必要とされる総合の仕事とは逆方向である」と楠木氏は述べる。加えて「競合他社に比べた自社の強みや、何が脅威かなどは、本来は最高度の判断である」と説明。優れた経営者は「本当に大切なこと」は大体分かっており、先にストーリーを組み立て、そのストーリーに必要な情報を調査する順番が重要だとした。

 二つめの「『何をしないか』を決断できる」では、「何をするか」ではなく「何をしないか」を決定することで、競合他社との違いを作るとする。競争戦略などの分野では、他社との差異化の種類は、どちらがより優れているかの「Operational Effectiveness(OE)」と、違うものであり優劣のつけられない「Strategic Positioning(SP)」があるという。「OEは人間でたとえると身長や年齢などものさしで測れるもので、SPは男女の性別や出身地など、そもそも違うもの」(楠木氏)。経営の戦略では、SPに関することで「何をしないか」を考えることが重要であるという。

 楠木氏はかつての米デルの戦略も例に挙げた。デルは「コモディティーしかやらない(先端的な技術を追わない)」「直販(小売チャネルなどを使わない)」「自社工場で組み立て(組立工程でアウトソーシングをしない)」などの戦略を採っている。これらはすべてSPに関して「何をしないか」を決定することによる他社との差異化であるという。「企業は資源制約があるので、『何をやらないか』を考えれば『何をやるか』が決まる」と楠木氏は説明する。

 三つめの「思考が直列」では、時間軸を考慮した戦略の立て方が重要であるとする。数学でたとえると、組み合わせではなく順列として考えることが必要だとした。「優れた経営者は、『どういう順番で戦略を打ち出すか』という点を意識している人が多く、そこにセンスが問われる」と楠木氏は述べる。戦略を打ち出す順番が優れていれば、「飛び道具」や「必殺技」のような特別なものがなくても他社に勝てるとする。楠木氏は野球になぞらえて、「例えば時速200kmの球を投げるピッチャーはいない。速い球を投げることが重要なのではなく、低速なカーブのあとにストレートを投げるなど『早く見える球』とすることが重要だ」と述べた。

 四つめの「抽象と具体の往復運動」では、優れた経営者はどんな具体事象でも一段階抽象化し論理を作ることを自然に繰り返すことで論理の引き出しが充実しているとする。「ユニクロ」などを手がけるファーストリテイリングの柳井 正社長を挙げた。「柳井社長はどんな問題に直面しても、『要するにこういうことだ』と問題の本質を捉える。このように、優れた経営者は習慣的に「具体と抽象の行き来」をするという。

 五つめの「インサイドアウト」では、「世の中はこうなるだろう」という予測に基づいて戦略を決定するのではなく、「会社をこうしたい」という意思に基づいて戦略を決定することが重要とする。「『生き残りのために我が社もグローバル化せざるを得ない』という経営者がたまにいるが、誰も頼んでいない」と楠木氏は指摘する。商売の原則として、企業は「自由意志」に基づく組織であるとする。この原則が揺らぐと、企業は代表取締役も含め「全員担当者状態」となり、経営をする人がいなくなる。「これは企業の墓場である」と楠木氏は述べる。

4.「デジタルとデザインを組み合わせてイノベーションを起こす」、日立製作所の渡邉氏(7.7 ITpro)
 「デジタルとデザインのかけ算がイノベーションを起こす」――。日立製作所サービス&プラットフォームビジネスユニットSenior Technology Evangelistの渡邉友範氏は2017年7月6日、「IT Japan 2017」(日経BP社主催)の基調講演でこのように語り、デジタル技術にデザイン思考を取り入れる重要性を説明した。

 デジタル技術の発展で開発手法が大きく変化していると渡邉氏は述べる。利用者からアイデアやニーズを収集するデジタル技術が未熟だった時代は、情報をフィードバックして開発に生かすスピードが遅かった。IoT(インターネット・オブ・シングズ)が登場し、ビッグデータを収集しやすくなった今では、製品の計画・開発段階で多くのアイデアをフィードバックできるため、製品開発のスピードが速くなった。

 今後の開発ではデータを把握し、早く実行するためのデジタル技術と、従来の延長にない発想を生み出すデザイン思考を組み合わせることで、効果的な開発ができるようになる。

 渡邉氏はデザイン思考を有効に活用した事例を三つ紹介した。

 1番目は、駅の混雑状況をスマートフォンで確認できるアプリ「駅視-vision(エキシビジョン)」の開発だ。駅視-visionは駅構内の改札やホームの込み具合を駅内の監視カメラで撮影し、その映像を遠隔から確認できるサービス。東京急行電鉄が利用者向けに開発した。東京急行電鉄は日立の人流分析技術を採用し、2016年10月から60駅で同サービスを開始している。

 アプリ開発で一番の課題になったのは、プライバシーの侵害リスクだ。映像をそのままアプリに表示すると、個人情報の漏えいやプライバシー侵害につながりかねない。そこで両社はデザインでこの課題を解決したという。

 実用化したアプリでは、カメラに映る駅の利用者をアイコンのような抽象化したマークで置き換える。人が動いている場合は移動方向が分かる青色のマークを風景画像に重ね合せる。人が立ち止まっている場合は黄色のマークになり、人の流れや込み具合が一目で分かるようにした。人をマークで置き換えているため、プライバシーを侵害するリスクが解決できた。

 2番目に、大型の医療施設の間取り設計を効率化した例を紹介した。デンマークのコペンハーゲンにある大学病院において、スタッフの移動距離(動線)が最も短くなる間取り設計をシミュレーションで決定するというもの。結果として病院スタッフの移動距離は12%削減できるようになったという。

 これまで紹介した取り組みはデジタル技術を補完するためにデザインを活用する事例だが、デザインにデジタルを活用する事例もある。新しい価値やサービスを生み出すために、人工知能(AI)技術やIoTといったデジタル技術を活用していく考え方だ。

 創造的な価値やサービスを生み出すには時間が必要だ。しかし多くの企業では既存の業務を抱えているため、新たに時間を確保しにくい。そこで人手で処理している業務の中で定式化できるものはAIで自動化し、余った時間や労動力を創造的な活動に利用する。

 渡邉氏は理想を見据えて開発を進める場合、将来のビジョンを皆で共有する重要性を強調する。ビジョンを示して周囲の共感を得ることで、実現に向けた協力を得られるからだ。そのためには、「社会変化の潮流をとらえる」「生活者の視点で将来の課題を洞察する」「課題が解決した姿をビジョンとして描く」といったビジョンデザインが重要になるとした。

5.「プラットフォーマーになれなくてもAIを武器にした戦い方はいくらでもある」、日本IBMの池田氏(7.6 ITpro)
 「グーグルやアマゾンのようなプラットフォーマーになれなくても、AIを武器にした戦い方はいくらでもある」――。2017年7月6日、都内で開催された「IT Japan 2017」(日経BP社主催)に日本IBMグローバル・ビジネス・サービス事業本部 戦略コンサルティング&デザイン統括の池田和明執行役員が登壇。人工知能(AI)を武器にした企業の競争力強化について講演した。

 IoT(インターネット・オブ・シングズ)時代において、企業が競争を繰り広げる領域として、池田氏は「ハードウエア(H)」「データ資源(D)」「サービスプラットフォーム(P)」「顧客体験(X)」の4つがあると説明した。

 ハードウエア(H)は、「ネットワークにつながっているハード」(池田氏)を指す。現在ネットワークにつながるハードは100億台あり、現実世界とデジタル世界の接点に必ず存在するものだという。データ資源(D)は、ハードのセンサーなどが収集した情報のこと。「デジタル時代の天然資源」(池田氏)との位置付けだ。

 サービスプラットフォーム(P)は、多数のユーザーとサービスを提供する企業が参加する場だ。「この場を取り仕切る権限を持つプラットフォーマーは非常に強い立場であり、データ資源の権益を押さえることにつながる」(池田氏)。顧客体験(X)は、データ資源を活用し顧客に提供する価値のこと。「最終的な成果であり、顧客の生産性や利益に直結するところだ」(池田氏)。

 「この4つが関連し合い、企業の競争が繰り広げられている」と池田氏は述べる。IoT時代に企業が採る定石の戦略は、「H−D−X」「X−D−P−H」「Buy(D)」の3つに分類できるという。

 1つめの「H−D−X」型は、家電や機械などのハードが収集したデータを基にハードの制御を改善することで、顧客の体験価値を高める。池田氏は、建設機械をネットワークにつなぐことで生産性を高める、コマツの「スマートコンストラクション」を例に挙げた。

 2つめの「X−D−P−H」型は、顧客にサービスを使ってもらうことで蓄積された顧客データをプラットフォームに活用し、ユーザーの利便性を高める。「Amazon Echo」や「Google Home」などの例を挙げた。

 3つめの「Buy(D)」型は、データ資源を持つ会社を買収すること。米IBMによる米ウェザーカンパニー買収が例だ。ウェザーカンパニーは気象関連情報を保有していた。「優れたデータは優れた顧客体験につながる」(池田氏)。「3つの定石すべてにおいて、AIは重要な要因になる」と池田氏は述べる。

 池田氏は、AIによって提供できる価値についても説明した。「経験値移植による生産性の飛躍的向上」や「莫大なデータから洞察を獲得」などを挙げた。

 「経験値移植による生産性の飛躍的向上」は、人間の業務に関するノウハウをAIに学習させて生産性を高めること。かんぽ生命の保険金支払い審査への「Watson」の活用を例に挙げた。

 「保険金を払うべきか」「払うならいくら払うのか」などの保険金支払い審査は、これまではベテランが経験により長い時間をかけて判断していた。保険の請求書と実際の査定結果のデータをWatsonに学習させることで、新たな支払い審査について根拠付きで査定結果を示す。「査定スピードが速くなったほか、経験が浅い人間でも査定できるようになった」(池田氏)。

 「莫大なデータから洞察を獲得」は、人間では扱えない量のデータをAIに学習させることで、新しい発見につなげる。東京大学医科学研究所の「Watson for Genomics」の活用を例に挙げた。

 診断の難しい白血病患者に、適切な治療方法をリコメンドしたという。「がんに関する論文はほとんどがデジタルデータにもなっているが、量が膨大すぎて人間がすべて読むことは不可能だ」(池田氏)。AIを活用すれば、論文のみでなく、ゲノム情報や患者のデータなど、大量のデータを処理できるようになる。

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