週間情報通信ニュースインデックスno.1088 2017/6/3


1.「3年で破壊が起こりトップ企業の4割は淘汰される」、シスコが大胆予測(6.2 ITpro)
 シスコシステムズは2017年6月2日、「デジタル変革に向けたビジネスモデル」と題した説明会を開催した。同社はスイスのビジネススクールであるIMDと共同で、デジタル変革に関する研究と経営幹部向けワークショップを進めている。説明会ではその内容の要約を紹介した。

 「既存のトップ10社の4社は淘汰される。破壊が起こるまでの時間は3年だ」。デジタルディスラプター(デジタル変革による破壊者)や既存企業の経営幹部に対する調査結果を、シスコデジタイゼーションオフィス ディレクター 兼 デジタルビジネストランスフォーメーション グローバルセンター客員研究員のローレン・バッカルー氏はこう話した。「既存企業の41%は実際の脅威と考えているが、積極的に対応できているのは25%に過ぎない」(バッカルー氏)。

 シスコやIMDはこうしたデジタル変革を「デジタルボルテックス」と表現する。「ボルテックスは渦巻きという意味の英語で、巻き込まれて中心に入るとバラバラにされてしまう」(IMD北東アジア代表の高津尚志氏)。バッカルー氏は「デジタルに収束し、バリューチェーンとして統合されていたものが分離していく。渦の中心では指数的に変化の速度が速くなり、最終的に無秩序になっていく。混沌として予測しようがなく、対応の俊敏さが重要になる」と説明する。

 例えば、米アマゾン・ドット・コムは広範な領域でデジタルディスラプターとなっているとした。具体的には、「メディア/エンターテイメント」「技術製品/サービス」「流通」「金融」「通信」「一般消費財」「製造」「運輸/物流」である。米ウーバーテクノロジーズは運輸/物流領域のタクシー業界に対する、強力なデジタルディスラプターである。

 デジタルディスラプターの特徴は三つある。安さで顧客を引きつける「価格の価値」、便利さで顧客を引きつける「経験の価値」、エコシステムの創出といった「プラットフォームの価値」を備え持つことだ。「価格や差別化による競争と比べ、プラットフォームによる競争は変化が急速なうえ、深い影響を及ぼす」。シスコデジタイゼーションオフィス マネージャー 兼 デジタルビジネストランスフォーメーション グローバルセンター客員研究員のジョエル・バルビエ氏はこう指摘する。

 バルビエ氏はデジタル変革に必要は能力は三つあると解説する。環境の変化を検知する「ハイパーアウェアネス」、与えられた状況で最適な決断をする「情報に基づく意思決定」、素早く効果的に計画を実行する「迅速に実行」――である。

 例として、フィットネスアプリを製品開発につなげた米アンダーアーマー、スマートバッジでコールセンターの離職率を改善した米バンク・オブ・アメリカ、スマートグラスで倉庫内のピッキングプロセスを改善したドイツのDHL、心臓のデジタル模型で治療法のテストを可能にしたフランスのダッソー・システムズ、生体工学を航空機の構造に応用した欧州エアバスを挙げた。

 バルビエ氏は「全ての業界に影響を与えている。変革を行わないといけない状況に追い込まれている。ディスラプターは新しいタイプの競争を仕掛け、新しい価値を生み出すことに特化している。対抗するには15のビジネスモデルを使うのが有効だ」と強調した。

 15のビジネスモデルとは価格や経験、プラットフォームという三つの価値に対応付くもの。価格の価値を生み出すビジネスモデルとしては「無料/超低価格」「バイヤーの集約」「価格の透明性」「リバースオークション」「消費ベースの価格設定」を挙げる。

 経験の価値を生み出すビジネスモデルは「顧客主義」「カスタム化」「即座の満足感」「摩擦回避」「自動化」となる。プラットフォームの価値を生み出すのは「エコシステム」「クラウドソーシング」「コミュニティ」「マーケットプレイス」「データオーケストレーター」といったビジネスモデルだ。

  2.2017年の国内IT市場規模は前年比2%増、IDC Japan(6.2 ITpro)
 IDC Japanは2017年6月2日、国内IT市場における産業分野別および企業規模別の2017〜2021年の市場規模予測を発表した。2017年の国内IT市場規模は前年比2.0%増の14兆9891億円との見通しだった。

 今後2019年までは東京オリンピック・パラリンピック開催に伴う企業投資の活性化、Windows 7サポート終了に伴うPC更新需要、消費税増税対応に伴う関連システムの刷新・改修が見込まれることから、高い成長率が期待されるという。一方、2020年以降は前年までの反動で1%未満の低い成長率に落ち込む見通しとした。

 産業分野別では、2017年は通信分野以外の各産業分野でプラス成長を見込む。特に、オムニチャネル戦略に加えて人材不足を解消する業務効率化に対する投資が拡大する小売業や、日本郵政の大型IT投資と訪日外国人増加への対応が進む運輸/運輸サービス、専門的サービス、個人向けサービスで成長率2%台を予測する。一方、大型案件が終息に向かっている銀行などの金融業や、不透明な海外経済状況の影響を受ける製造業では、IT支出はプラス成長を維持するものの、比較的低い成長率に留まる見通し。

 2020年以降の国内IT市場は低い成長率になると予測されるため、ITサプライヤーが中長期的に国内IT市場を堅調に拡大させるためには、ユーザー企業に対して新しい分野でのIT支出を促進する必要がある。IDC Japanは人材不足を解決する業務効率化を図るソリューションなど、メリットを実感しやすいソリューションを積極的に提案することが重要と指摘する。

  3.「AIファースト」に突き進む米グーグル、Google Homeは年内に日本上陸(6.2 ITpro)
 新サービスの開発に人工知能(AI)を積極活用する「AIファースト」を掲げる米グーグルがその戦略を加速している。2017年5月17?19日に米カリフォルニア州マウンテンビューの本社近郊で開いた開発者会議「Google I/O 2017」で、AIを活用した新しいアプリケーションを相次ぎ発表した。 

 グーグルはユーザーインタフェース(UI)を、タッチパネルによる操作やキーボードからの文字入力に頼る従来の方法から、音声認識や画像認識など新しい方法に置き換えようとしている。Google I/Oでは音声アシスタント「Google Assistant」をAndroid搭載のスマートフォンやタブレット、スピーカー端末「Google Home」だけでなく、スマートTV「Android TV」や、独アウディなどのAndroid車載端末、さらには米アップルのiOS端末にも搭載すると明らかにした。 

 Google Assistantは、それまでの「Google Now」を置き換える目的で2016年にリリースした音声アシスタントだ。複数のユーザーの音声を聞き分けられる。「私の次の予定は?」と問いかけると、問いかけた当人の予定を読み上げる。Google Assistantは2017年5月に日本語にも対応。2017年中に日本語対応のGoogle Homeを日本市場で発売予定だ。 

 画像認識機能を備えたスマホ用のカメラアプリ「Google Lens」も発表した。ユーザーが町の風景を撮影すると、写真に映った店舗の詳細が分かる。花を撮影すればその名前が分かる。 

 グーグルは空間認識機能を備えたAndroidスマホ「Tango」向けの室内位置情報サービス「Visual Positioning Service」も発表。ユーザーがスーパーマーケットでTangoのカメラをかざすと、空間認識機能によって取得した店内の空間情報と、グーグルが事前に取得した店内の空間情報とを照合し、ユーザーが店内のどこにいるか分かるようになる。 

 グーグルはスマホアプリにAIを実装しやすくするため、同社がオープンソースとして公開するディープラーニング(深層学習)ライブラリー「TensorFlow」の軽量版をAndroidに移植する。「TensorFlow Lite」という名称で、2017年下期にリリースするモバイルOSの新版「Android O」に搭載する。深層学習をスマホのDSP(Digital Signal Processor)によって高速化する「ニューラルネットワークAPI(アプリケーション・プログラミング・インタフェース)」も搭載する予定だ。 

 AIが人間に頼らずに自らを改善する技術「AutoML」も発表した。深層学習に使用するニューラルネットワークの構造を様々な形に変える試行錯誤を通じて、精度がより高くなる構造をAI自身が考案する。 

 AutoMLはAIが自ら試行錯誤を繰り返すことで賢くなる「強化学習」と深層学習を組み合わせた「深層強化学習」を使用している。深層強化学習は、世界最強の棋士である柯潔(か・けつ)九段との三番勝負に全勝した囲碁AI「Alpha Go」を生み出した技術でもある。

4.「AWSがIaaSというのは古い考え」、Amazon.comのボーガスCTOが強調(6.1 ITpro)
 我々のクラウドサービスは、開発者が作りたいと思っているサービスを、作りたいと思っている方法で作れる『幅』と『深み』を提供している。これが決定的に他社のクラウドサービスと異なる点だ」。米Amazon Web Services(AWS)の親会社である米Amazon.comでCTO(最高技術責任者)を務めるバーナー・ボーガス氏は、AWSの開発者やユーザー向けの年次イベント「AWS Summit Tokyo 2017」の基調講演でこう強調した。

 ボーガス氏は「AWSは既に90以上のサービスを提供している。AWSはIaaS(インフラストラクチャー・アズ・ア・サービス)だとの考えは古い」と話し、IoT(Internet of Things)、モバイルアプリ、オンプレミスとの連携、分析と様々なサービスを紹介した。

 ボーガス氏はAWSの利用者数について、「全世界で数百万のアクティブユーザーがおり、日本のユーザー数は1カ月10万以上」と明かし、「スタートアップから大企業までクラウドの活用が進んでいる」と評価。NTTドコモやセイコーエプソン、ファーストリテイリングなどの企業名を挙げ、「戦略としてクラウドファーストを選択するようになっている」と説明した。

 ボーガス氏は企業でのクラウド活用の変遷について、2014年ごろはクラウドの利用が当たり前の「ニューノーマルの時代だった」としたうえで、2015年からは「ITが企業の競合優位性を左右する時代ではなくなった」と指摘。こうした流れを踏まえ、「AWSは開発者に対し、新しいツールを相次ぎ出すことで『スーパーパワー』を提供している」と強調した。

 ボーガス氏が「AWSが開発者に提供している」とするスーパーパワーの一つが「スピード」だ。「AWSのコアサービスの一つはやはり、コンピュートサービス」(ボーガス氏)。コンピュートサービスについて、多くのメモリーを搭載したサービスに加え、GPUやFPGA(Field Programmable Gate Array)を搭載したサービスなど、用途に合わせて様々なサービスが選択できるメリットを説明した。

 特にボーガス氏が「スピード」を実現する方法として、時間を割いて紹介したのが「サーバーレス」だ。「どこで何を実行するか考えずに、コードを書くことに集中できる」とサーバーレスのメリットを説明し、イベント駆動型のコード実行環境「AWS Lambda」の利用を勧めた。アプリケーションのフローをGUIで管理する「AWS Step Functions」と組み合わせることで、「複数のLambdaの処理を組み合わせて、アプリケーションを構築できるようになる」(ボーガス氏)とした。

 ボーガス氏が「AWSが開発者に提供するスーパーパワーの領域」としてもう一つ挙げたのが「飛び立つ」だ。ボーガス氏は「多くの企業が古いDBベンダーから飛び立ちたくても飛び立てないでいる」と強調。「古いDBベンダーが長期的なライセンスや独自仕様、ロックイン、懲罰的なライセンス体系などの施策を実施している」(ボーガス氏)として、「AWSは様々なマイグレーションサービスも用意し、これらの顧客を助けられる」と話した。

 ほかの観点からボーガス氏が注力分野として挙げたのがスタートアップの支援だ。「スタートアップは最初からグローバル展開を狙っているケースが多い。そうした際に世界中でリージョンを持つAWSは、グローバル展開に向いている」とボーガス氏は強調。

 「成功しているスタートアップの事例」(ボーガス氏)として、IoT通信プラットフォーム「SORACOM」を提供するソラコムを紹介した。ソラコムは2015年9月からサービスを開始し、既に6000以上のユーザーがいる。

 登壇したソラコムの安川健太CTOは、「当社は小さなスタートアップだが、AWS上にAWSのベストプラクティスを構築しているからこそ、サービスが提供できている」と説明。AWS上に構築したサービスをAPI経由で連携するマイクロサービスアーキテクチャーを採用していると構成図などを解説した。「成功のキーワードはAWSのサービスの活用に加えて、サービスの疎結合化と非同期化だった」と安川CTOは強調した。

  5.NTT西がSD-WAN/エッジコンピューティングのIoT実証実験展開へ(5.31 ITpro)
 NTT西日本は2017年5月31日、ビジネスパートナーと組んで、SD-WAN技術とエッジコンピューティング技術を組み合わせた新たなプラットフォームの実証実験を開始すると発表した。

 第一弾の実証実験として、JIG-SAW(本社:東京都千代田区)と協業し、Peach Aviation(本社:大阪府泉南郡)のカメラシステムによる空港内の遠隔監視をユースケースとし、その有用性を検証する。期間は2017年6月から2018年3月を予定する。

 SD-WAN技術とは、ユーザー拠点に通信端末(CPE:Customer Premises Equipment)を設置しCPE間で仮想ネットワーク環境を作る仕組みのこと。例えば管理機能を用いてCPEの設定を自動で行えるなどが特徴。

 エッジコンピューティング技術は、デバイスの近傍にサーバーやストレージなどを分散設置する。例えばパブリッククラウドなどへのネットワーク帯域の削減が可能になる。NTT西日本が用意する新プラットフォームでは、耐震性や電源供給の安定性など堅牢性が高く、西日本エリアの各地に点在するNTT西日本通信ビルにサーバーやネットワーク機器などから構成するクラウド基盤を設置する。そのうえで、ビジネスパートナーの拠点とクラウド基盤をSD-WAN技術を用いた仮想ネットワークで接続する。

 第一弾の実証実験となる「カメラシステムによる空港内の遠隔監視」では、 Peach事務所近傍のNTT西日本通信ビル内にクラウド基盤を設置し、Peach事務所、データセンターを仮想ネットワークで接続する。

 Peachターミナル事務所に高精細カメラ、NTT西日本通信ビル内に映像管理ソフトウエアを搭載したクラウド基盤、データセンター(パブリッククラウド)に映像を記録するためのストレージを配備し、空港内の様子の遠隔監視を行う。

 この構成により、パブリッククラウドへのトラヒック削減、映像監視端末への遅延低減、システム全体のレスポンス向上が期待できる。さらに、セキュアな通信やネットワーク環境や、設定の簡素化も期待できるとする。

 NTT西日本は、IoTの拡大に向けてLPWAのような小容量データ通信に加えて、ドローンのようなデバイスの自動制御といった高いリアルタイム性を求められるシステムや、カメラ映像などの大容量データを用いるシステムも必要となると考えて、この取り組みを進めることにしたという。

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