週間情報通信ニュースインデックスno.1077 2017/3/4


1.「クラウド推進はITの戦略的活用のため」、Cloud Days関西でカネカの矢吹氏が講演(3.3 ITpro)
 「ここにずっといるとするなら、どうすればやりがいのある組織に変えていけるだろうか」。カネカの業務革新推進部情報システム室長を務める矢吹哲朗氏は2017年3月3日、大阪市内で開催された「Cloud Days/ビッグデータ EXPO/セキュリティ/モバイル&ウエアラブル/IoT Japan/ワークスタイル変革/FACTORY」(主催:日経BP社)の基調講演をこう切り出した。2002年に研究所から情報システム部に異動したときの感慨だという。

   矢吹氏はNotesをOffice365に切り替えたのを契機に、情報システムをクラウドに移行するメリットを確信。2015年から2016年にかけて、全てのシステムをクラウドに移行する方針を固めて指針を作成した。それまで経営陣からコスト削減のためのツールとしてしか見られていなかった化学業界でのIT活用を、金融業や流通業のように企業戦略に直結したものに変えていくという決意を込めたものだ。

   ITの戦略的な活用を実現するためにとった方策は三つある。(1)人材の変革、(2)マインドの変革、(3)仕事の質の変革である。このうち人材の変革については、2007年ころから長い期間をかけて取り組んできた。

   化学メーカーであるカネカでは、IT分野の素養がある新卒社員を生産部門が採用し、管理系の情報システム部門にはほとんど配属されない。他部署から人材を補充して教育しようにも、40代・50代ばかりのシステム部員が実業務をこなしながら若手の育成まで手掛けるのも難しい。悩んだ末に決断したのが、「ないものねだりはやめて、キャリア採用をすることだった」(矢吹氏)。

   インフラ、アプリケーション、企画の各領域でエース級人材のキャリア採用を進めると同時に、各領域の30代・40代・50代の人員構成のバランスをとるために、毎年1〜3人の採用も続けた。領域・年代ごとにリーダー人材も育成している。この結果、40代・50代に片寄っていた人員構成を、均衡のとれた姿に変えることができてきたという。

   矢吹氏が最も難しいと感じているのが、2番目のマインドの変革である。従来、開発チームは業務部門の要望に沿ってシステムを開発・導入することが、運用管理チームはシステムを安定的に運用することが主眼だった。もちろん、それぞれ大切なことではあるが、システム部門として企業戦略により大きく貢献していくためには、マインドの変革が不可欠だと判断した。「例えば○○システムの導入という名称の提案書は、業務部門に導入責任を押し付けた姿の象徴であり、情報システム部門がIT活用によって事業貢献するというコミットメントを表していない」(同)と考えた。

   システム開発を単なるモノづくりに終わらせないためにとった手段が、チームの名称変更である。2016年4月に、開発チームを「情報活用推進グループ」に改め、「企業内イノベーター」の組織に位置付けた。運用管理チームの名称は「運用・保守グループ」としたものの、英文名称は「IT Service Management」とし、クラウド基盤を徹底活用することで事業ニーズに対して俊敏にサービスを提供し、品質を担保することをミッションに据えた。企画担当も「戦略企画グループ」とすることで、従来の組織内調整の役割から、戦略策定、プロジェクトマネジメント、リソース管理、セキュリティ強化へと機能を拡張した。

   矢吹氏の思いを込めた組織名変更だが、約1年が経過した現時点では「以前の意識からなかなか脱却できずに苦労している」(同)のが実情という。特に事業づくりに貢献する「情報活用推進」のマインド変革が難しいと明かした。

   3番目の仕事の質の変革とは、日常運用という“守り”の比重が拡大を続けているシステム部門の業務内容を、“攻め”の企画・設計にシフトしていくことを指す。この実現のカギを握るのが、システム運用の負荷を大きく軽減できるクラウドサービスの活用というわけだ。「事業競争力が高まるならオンプレミスでも構わないが、そうでないならクラウドへ」というのが原則である。「将来のM&A(合併・買収)を支える際にも、オンプレミスのシステムのままではスケーラビリティーを確保できない」(同)という問題意識もある。

   講演の最後、矢吹氏は以前のカネカと同様の状況に陥りがちな製造業の情報システム部門に呼びかけるように、「新人が入らず部員の高齢化が進むという元気が出ない状況から脱却し、情報システム部門という組織そのものを会社全体から信頼され、自ら誇りを持てるようにしていきたい」と力を込めた。

  2.Amazon S3の大規模障害は人為的ミスが原因(3.3 ITpro)
 米Amazon.comのクラウド事業Amazon Web Services(AWS)は「Amazon Simple Storage Service (S3)」サービスで発生した大規模障害に関する調査報告を現地時間2017年3月2日までに公表し、人為的ミスが原因だったことを明らかにした。

   S3の障害は、米バージニア州北部の「US-EAST-1」リージョンで太平洋標準時間2月28日午前9時37分に発生した。

   AWSの報告によれば、当時、S3の決済システムの問題を修正するために、S3チームが作業にあたっていた。決済システムのサブシステムを構成する数台のサーバーを停止する目的で、特権を認められたチームメンバーが手順書に従ってコマンドを入力したが、コマンド入力にミスがあり、意図したより多くのサーバーを停止させてしまった。他の重要なサブシステムにも影響が広がり、システム全体を再起動しなければならなくなった。

   S3は、顧客にほとんど影響を与えずにシステムの不具合や停止に対応するデザインになっており、これまでトラブルなく運用できていた。システム全体の再起動は経験がなく、この数年の急成長でシステムが巨大化していたため、「予想以上に再起動に時間を要した」とAWSは説明している。

   再起動している間、S3はリクエストを処理できない状態に陥った。S3のAPIが利用不可能になったため、同リージョン内の他のサービスも影響を受けた。

   午後1時54分、S3は通常運用に復帰し、他のサービスも復旧し始めた。なお、稼働状況を表示するダッシュボードの管理コンソールもS3を使用していたため、午前11時37分まではダッシュボードのステータス表示も更新されなかった。

   AWSは、顧客に謝罪するとともに、今後の改善を約束した。サーバーを停止する際に用いるツールに変更を加え、より時間に余裕を持って作業するようにした。また、最小限のレベルのサブシステムのみ停止するよう、安全策を追加した。さらに、ダッシュボードの管理コンソールを複数のリージョンで稼働させる。

   米Bloombergが引用した米SimilarTechのデータによると、4時間以上に及ぶ今回の大規模障害で、「ESPN」や「AOL」を含む約15万サイトが影響を受けたという。

  3.SII、手のひらサイズの業務用モバイルプリンター(3.2 ITpro)
 セイコーインスツル(SII)は2017年3月2日、小型・軽量の業務用モバイルプリンター「MP-B20」を5月に発売すると発表した。屋内に加えて屋外店舗や訪問販売、宅配便配達時のレシート発行など、さまざまなシーンでの利用を想定した。標準価格は1万9800円(税別)。

   幅79×奥行き110×高さ44mm、重さ180g(バッテリー含む)の手のひらサイズで、落下高さ1.5mの堅牢性を兼ね備えた。用紙は、紙幅58mmの感熱ロール紙に対応し、総ドット数は384ドット(ドット密度8ドット/mm)。印字速度は最高毎秒80mm。

   対応OSはWindows 7/8/10、Android 4.0以降。インタフェースはUSBとBluetooth。充電はUSBケーブル経由で行う。バッテリー侍読時間は、レシートパターン長さ270mm・印字率7%、Bluetooth接続状態、10分に1枚の間欠印字で1巻(約20m、12時間)をクリアする。オプションで充電用クレードルを用意した。

  4.iPad7000台によるワークスタイル変革、Cloud Days関西で竹中工務店 森氏が講演(3.2 ITpro)
 同社は「竹中スマートワーク」の旗頭を掲げ、2014年4月からiPadを計7000台導入。モバイルを活用した生産性向上に取り組んでいる。当時の建設業は技能労働者の不足が深刻化しており、生産性の向上が不可避となっていた。「どこからでも必要な情報・ナレッジを引き出し、スピーディかつ効果的に業務を進めることで生産性を向上させ、お客様満足と品質向上の価値を創出しようと考えた」(森氏)。 

   2014年4月から3年にかけて、業務のやり方から変えていった。併せてインフラ整備やセキュリティ対策にも取り組んだ。インターネット/イントラネットやOfficeソフトにアクセスする際は、特定の「関所」を必ず通過するようにして、認証をかけるとともにログを取得するようにした。「利便性とセキュリティの折り合いをどうつけるかで苦労した」(森氏)。 

   利用を促進するため、職能別に活用メニューを用意した。例えば、作業所向けのメニュー「竹中スマートサイト」では、図面や技術資料を現場で確認するツールなどをセットにした。 

   800ほどある作業所への保守サポートも課題だった。関連会社が現地に出向いて説明会を開くとともに、導入の狙いを説明して回った。このほか推進担当者を100人ほど任命して利用促進に努めた。専用のホームページを立ち上げるなどして、上手に活用している事例の横展開も進めた。ログを分析して利用度を定量的に測定し、目標値に向けてPDCAサイクルを回した。「端末を配っただけでは、使えない人が出てきてしまう」(森氏)。 

   こうした取り組みを地道に続けた結果、竹中工務店は生産性を大きく向上させた。例えば、作業所では図面や技術資料のペーパーレス化が進み、膨大な紙の資料を持ち歩く必要がなくなった。図面や技術資料はクラウド上に保管し、「CheX(チェクロス)」というソフトで閲覧する。「必要な図面は現場でいつでもスピーディに参照できるようになった」(森氏)。ウエアラブルカメラを使って監視ポイントを可視化するなど、現場発の生産性向上策も出てくるようになった。 

  5.5Gの早期商用化は? MWCでドコモ吉澤社長に聞く(3.1 ITpro)
 NTTドコモは2017年2月26日、米AT&Tやドイツテレコムなど世界の通信事業者、ベンダー22社と共同で第5世代移動通信システム(5G)の早期仕様策定に向けた共同提案に合意したと発表した。早ければ2019年の大規模トライアルや商用展開ができるように仕様策定を急ぐ。かねてから2020年の5G商用化をアナウンスしているNTTドコモは、5G商用化の前倒しの可能性はあるのか。スペイン・バルセロナで開催中の「Mobile World Congress 2017」の会場内でNTTドコモの吉澤和弘社長に聞いた。

  共同提案で、3GPPなどでの5G仕様策定も前倒しが進みそうだ。ドコモとして5Gの2019年度商用化など前倒しの可能性は。

   海外の通信事業者は5Gの商用化を早める動きがある。NTTドコモとしては基本的に5Gの商用サービスそのものは2020年からと考えている。現時点で前倒しするつもりはない。5Gのネットワークを整備するには時間がかかる。このような作業は2019年度一杯かかるだろう。とはいえ5月以降に開始する5Gトライアルサイトのような、ユーザーに5Gを体感してもらえる環境の整備はどんどん進める。

  昨年の「DOCOMO R&D Open House 2016」では5Gの新たなサービス創出に向けて、綜合警備保障(ALSOK)やディー・エヌ・エー(DeNA)など幅広い業界との協業を発表した。それぞれ面白いユースケースになりそうだが、まだ5Gのビジネスモデルが見えていない。

   現在の延長上のビジネスモデルもあれば、IoTのユースケースでは5年分の料金を一括徴収したり、都度課金が適している場合もある。B2B2C型でエンドユーザーではなく、企業からお金をいただく形もあるだろう。ユースケースごとにビジネスモデルは異なる。今からマネタイズの手段を考えていくことになる。

  NTT持ち株会社の鵜浦博夫社長は、本誌インタビューなどで5Gの設備共用の必要性を訴えている。

   5Gの設備共用について、携帯電話事業者間の競争の関係上、NTTドコモが取りまとめることは難しい。スモールセル基地局のバックホールの光回線部分は共用できる可能性があるかもしれない。取り付け工事などを共用する道も考えられる。

  4月末に発表予定の新たな中期経営計画(中計)の方向性は。

   まさに現在進行形で策定している。ベースとなるのは5Gだ。そこにどのようなサービスを乗せていくのか。IoTや人工知能(AI)などのテクノロジーも重要になるが、中計の中で技術を前面に出すつもりはない。ユーザーや企業にどのような新たな価値や感動を与えられるのか。具体例を数多く盛り込むつもりだ。

  中計の注力分野は。

   自動車分野は一つの軸になる。コネクテッドカーや自動運転、クルマの中での生活やエンタテインメントなど、どのようにドコモが関われるのか展開を検討している。他には農業分野、ヘルスケア分野、教育分野にも注力する。

   現在、中計策定に向けて、通信領域の最終的なシミュレーションを進めている。トラフィックは増加するものの、1ビット当たりの単価を高くするわけにはいかない。パケットデータが増えても収益を拡大できるものではない。料金値下げのプレッシャーもあり、絶え間なく新たなプランを提案していくつもりだ。全体としては通信領域の今後は、フラットに推移していくと見ている。

  ユーザー還元が通年で1500億円規模としているが、一般ユーザーには実感が薄い。

   確かに一人当たりに換算すると小さいかもしれない。ただすべてのユーザーを対象とした料金の値下げを進めることは難しい。ターゲットを決めてユーザー還元を進めていく方向になる。基本的には対価としていただく料金で、ユーザーにどれだけ価値を実感してもらえるかだ。業界内の競争も、このようなサービス価値の競争になると思う。

  もはや通信レイヤーはコモディティー化している。そのため通信領域でユーザーに価値を感じてもらうことは難しい。そうなるとスマートライフ領域のd系サービスが重要になる。

   その通りだ。ユーザーに価値を実感してもらえるようなコンテンツやサービスを矢継ぎ早に出していく。dマーケットのそれぞれのサービスは、ずっと右肩上がりで成長することは難しい。例えばdTVは460万契約程度で横ばいになっている。NetflixやHuluなど競合も出てくる中で、そろそろ契約数は頭打ちだと考えている。

   ある程度で契約数がフラットになる以上、新たなサービスを矢継ぎ早に追加していく必要がある。だからこそ2月中旬に、これまでドコモとして持っていなかったスポーツのライブ中継コンテンツである「DAZN for docomo」を追加した。

   スポーツのライブ中継コンテンツは、個人的にも絶対にやりたいと考えていた。ライブ中継コンテンツの領域はスポーツ以外にもある。例えばコンサートや地域ごとの花火大会なども考えられる。今回のスポーツを契機として、ライブ中継コンテンツをどんどん出していきたい。

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