週間情報通信ニュースインデックスno.837 2011/12/10

1.スティーブ・ジョブズ ――捨てた娘の名前を「製品」に付けた、奇人変 人の心の中とは(12.9 nikkeibp)
「個性派」ではなく「奇人変人」こそジョブズの本質
 前回は、ジョブズ氏の人生を決定づけたできごとは、実は生まれたとき、いや生まれる前にあったのではないか、という話をした。望まれずに生まれ、すぐに 養子に出されたスティーブが持っているコンプレックスが終生、抱えていたのは「未生怨コンプレックス」だという可能性を指摘したのだ。

 思春期になるとスティーブはたぐいまれなる知性や独立心を発揮し始め、学校を飛び級。しかし一方で、ハイスクール時代にマリファナをはじめとするドラッ グに手を出し、父親に注意されても止めようとしない、などかなり反抗的な側面も顔を出す。

 学費が高いので渋る両親に「ここに行けないなら進学しない」とまで言って進学したリードカレッジも、自由を謳っている割には制約が多い、といった理由で 辞めてしまう。
 そしてまたもやゴリ押しでアタリ社に入社するのだが、彼の教育を任せられた当時の上司はこう思ったという。「ヒッピーだわ、臭いはひどいわ、あんな奴を どうしろと? 俺への嫌がらせじゃないよな? 言うことだって聞かないし」
 ――つまりスティーブは「ただの個性派」どころか、その域をはるかに超えた奇人変人だったわけだ。

ウォズニアックすら「他人に厳しい」とジョブズを判断
 ジョブズ変人説の原因の多くは極端な食生活などだったようだが、こういった変人ぶりもただの趣味やポーズではなく、結局は例の「未生怨コンプレックス」 と関係しているようだ。評伝にはこんな証言が出てくる。
 「粘液ができない食事や絶叫療法などはいずれも自身を浄化し、出生に関するフラストレーションを深く理解するための努力だったのです」
 この「浄化」というのも、彼の人生のキーワードのひとつだったように思う。

 デザイン面で優れていると言われるアップル製品は、結局は彼の「浄化欲求」の賜としていいのではないか。
 なるべく薄く、おかしなものを詰め込まずストイックに。そうやって「浄化」していくことで、彼は自分自身の人生の答えにも出会えるのではないか、と期待 していたに違いない。

 そのスティーブの命を奪ったのは、結局は膵臓にできて、おかしなホルモンを大量に産生、分泌する腫瘍であった、というのは皮肉な話だ。彼は、よりによっ て自分の体内に、ドロドロとした汚い(と思ったであろう)ホルモンを出し続ける細胞の塊がある、という事実に耐えられないほどのおぞましさを感じたことで あろう。

 アタリを辞したスティーブがウォズニアックと出会ってアップル社を立ち上げた経緯などは、ここで詳しく述べるまでもないだろう。ただ、当時を振り返って ウォズニアックがこう語っているところが気になった。「スティーブはまわりの人に厳し過ぎたと思う。ぼくとしては、会社とは家族のようなもので、みんなで 楽しみ、作ったものをみんなで共有する場所であってほしかった」
 しかし、このウォズニアックの解釈は間違っている。

捨てた娘の名前を製品名に
 スティーブもおそらく、初めて自力で立ち上げたアップル社を、ある意味では「家族」だと思ったはずだ。ただスティーブにとっての家族とは「みんなで楽し む場」などではなく、お互いの存在に疑問を抱く同士が気まずくすごす場なのである。

 その頃のスティーブをさらに困惑させるできごとが起きる。ガールフレンドのブレナンが予期せぬ妊娠を経て、女児を出産するのだ。
 女の子に「リサ」と名前をつけたものの、自分の新しい家族を受け入れる準備など到底整っていなかったスティーブは、母娘を置いてそそくさと仕事の場に 戻ってしまう。そしてアップルIIIとして開発した新しいコンピューターに、この“捨てた娘”「リサ」という名称を与えるのだ。

 評伝にはそのことを「罪滅ぼし」と推測するスタッフも出てくるが、そうであろうか。
 おそらくスティーブは、生命や自我を持ってこの世に生まれてきた娘にはとても真正面から対峙はできなくても、自分が設計して生み出したコンピューターに なら、惜しみない愛情を注げるのである。彼は「リサが生身の娘でなくて、こういうコンピューターならよかったのに」と思ったのかもしれない。

ジョブズの「現実歪曲フィールド」
 自ら製品に「リサ」と名付け、「あんな赤ん坊じゃなくてコンピューターであってほしかった」と望んだところで、実際のところ現実は変わらない。
 しかし、スティーブは空想や願望のレベルでではなくて、文字通りの意味で「現実も変わる、変えられる」と信じていたようだ。
 彼の身近にいたエンジニアは、「スタートレック」に登場するエピソードになぞらえ、それを「スティーブの現実歪曲フィールド」と呼んでいる。
 目の前の現実を否定し、「私の頭の中にある現実こそが真実だ」と主張することを、精神医学の世界では、「現実歪曲フィールド」ではなく「妄想」と呼ぶ。

 もし、ジョブズ氏に本当の意味で「妄想」があったのだとしたら、それはなんらかの診断がつく精神異常ということになってしまう。彼の「現実歪曲フィール ド」は、診断名がつくような病的なゾーンに達するほどのものだったのか。それとも……。

2.900MHzプラチナバンド争奪戦始まる、総務省が審査基準公表(12.9  nikkeibp)
 総務省は2011年12月9日、携帯向け900MHz帯の割り当て審査基準である「3.9世代移動通信システムの普及のための特定基地局の開設に関する 指針案(開設指針案)」について、電波監理審議会から適当との答申を受けたと発表した。総務省は2011年12月中旬に携帯電話事業者の申請を受け付ける としており、プラチナバンドと呼ばれる900MHz帯1席をめぐる携帯電話事業者の争奪戦が始まる。

 900MHz帯割り当ての審査基準は、総務省が2011年10月21日に公表した内容(関連記事)から大幅な変更はなかったが、記述をより明確にした。 例えば、事業者を比較する際の基準(競願時審査基準)において、「割り当てている周波数の差異および周波数のひっ迫状況を勘案して」とあった部分に、「周 波数の有無」を含むことを明記した。これは新規参入事業者も公平に審査できるようにしてほしいという意見募集の結果を取り入れたものという。

 このほか、「他の電気通信事業者多数のものに対する基地局の利用を促進するための具体的な計画がより充実していること」という審査基準で、利用促進に MVNO(仮想移動体通信事業者)が含まれていることを明記した。

 2011年11月21日に実施された行政刷新会議の周波数オークション仕分けで指摘のあった「透明性の確保」も考慮し、修正を加えた。例えば移行費用負 担において、移動無線センター(MCA制御局の免許人)やICタグ(RFID)の製造業者などが、免許割り当てを受けた携帯電話事業者から対価を受け取っ てはいけないというものである。

 今後のスケジュールについては、総務省は2011年12月中旬から携帯電話事業者からの申請を受け付け、2012年1月下旬に申請を締め切る。その後に 審査を開始し、2012年2月下旬に900MHz帯を割り当てられる携帯電話事業者1社が決定する。

3.iPhoneのLTE化は既定路線、Kindle FireのようなECとデバイスの組み合わせに注目 BNPパリバ証券 株式調査部 山科拓シニア・アナリスト(12.8 nikkeibp)
(大谷 晃司=ITpro)
  NTTドコモがiPhoneを扱うという報道が出たが、仮にそうなるとすれば、NTTドコモの中期戦略「中期ビジョン2015」(関連記事:NTTド コモの4-9月期は減収減益も好調に推移、新周波数帯は「900MHz帯も取りに行く」、NTTドコモの該当ページ)の中で、iPhoneがどう位置付け られるのかがポイントだろう。もちろん、それ以前にNTTドコモの純増シェアであるとか解約率であるとかMNP(番号ポータビリティ)の転出であるとか、 これらの数字が悪化し続けた際にどう対応するのかという議論も視点としては必要だとは思う。

 私の見立てとしては、NTTドコモがiPhoneを導入するにしても、(料金などの面で)優遇措置はおそらくとらないだろう。米アップルとの関係におい て話題になるのは台数のコミットメントだが、仮にNTTドコモが扱うのだとすればなるべく低い数ということになると見ている。

 NTTドコモの中期戦略との兼ね合いで見ると、同社は元々「ケータイデータお預かりサービス」や「iコンシェル」という形でクラウドに親和性の高いサー ビスを手掛けている。いずれ本格的なクラウドサービスに取り組むだろうと見ていたが、これを中期戦略で打ち出してきた(編集部注:中期ビジョン2015で は、ドコモのクラウドとして「パーソナル」「ビジネス」「ネットワーク」の三つを打ち出している)。NTTドコモはモバイルを核とする「総合サービス企 業」になることを掲げているが、これはアップルの掲げるサービスと正面からバッティングする。

 NTTドコモはNTTドコモとして完結したサービスがあると思う。そこにiPhoneは取り込めないはず。そのため、NTTドコモがアップルの製品をメ インに据えることはないだろう。ただ「需要があるから取り扱います」ということは当然あると思う。

 報道にもあったiPhone/iPadのLTE化というのは規定路線だと思っている。iPhone 5にはどのようなイノベーションがあり得るか、どのような機能を盛り込んでくるか、ということを考えると、通信回線としては特に米国市場を考えた場合は LTEになってしかるべきであり、当然ロードマップにはあるだろう。

 アップルは各市場で2桁成長を維持しなければならない、という考え方があるとすれば、日本市場においてはアップルとしてもNTTドコモから販売すること を考えなければならないと思う。そしてiPhoneの販売では後発になってしまうNTTドコモが、ソフトバンクモバイルやKDDIと差別化できる主なポイ ントとしてLTE対応が挙げられる。

 そもそも現状、LTEの商用サービスを開始している携帯電話事業者はグローバルで見てもあまり多くない。当然アップルはその点を意識しているのではない かと思う。アップルのクラウドサービスに対するエクスペリエンスをきちんと体感でき、かつ台数成長という点を考えると、アップルとNTTドコモが交渉して いるというのは真っ当な見方だろう。

Kindle Fireはショッピングのエクスペリエンスを引き上げる
 一方、iPadの市場はどうだろうか。日本ではソフトバンクモバイルが安価に販売しているからiPadが売れている、という点が大きいと思う。NTTド コモが参入したとしてもタブレット市場が大きくなるわけではないという認識を持っている。一つはタブレットのコンテンツとして期待されている電子書籍の市 場が日本では細分化していることが挙げられる。いろいろなサービスがありすぎて消費者は何がいいのか現状はよく分かっていない状況だ。今のところ日本でタ ブレットの普及を大幅に押し上げるようなキラーコンテンツが存在するようには見えない。

 ここで気になるのが米アマゾン・ドット・コム(以下アマゾン)のタブレット「Kindle Fire」の存在だ(関連記事:Amazon秘蔵のタブレット「Kindle Fire」徹底解剖(1))。まず価格が安い(編集部注:米国では199ドル、関連記事:「Kindle Fire」の推定製造原価は201.70ドル、米社の分解調査)。そしてOSとしてAndroidを採用しているとはいえかなり手を入れており、専用の独 自Webブラウザー「Amazon Silk」を搭載し、同社のクラウドサービスと密接に連携する。ユーザーエクスペリエンスをさらに一段上に引き上げていこうとの意図が読み取れる。

 それも電子書籍に限らず、ショッピング自体のエクスペリエンスを上げていくことを意図している。ここでアマゾンが競合として見ているのは米バーンズ・ア ンド・ノーブル(編集部注:米国の大手書籍小売チェーン)ではなく、もちろんアップルだ。こうしたイーコマース(EC)事業者がデバイスを出す動きはほか にもある。中国でEC事業を手掛けるアリババが独自OSを搭載するスマートフォンを提供していることが挙げられる。ECのプレイヤーとデバイスの組み合わ せは、来年の動向を見る上で興味深いテーマになるはずだ。

 アマゾンに話を戻すと、なぜアマゾンは「Amazon Silk」を作らなければならなかったかというと、クラウドを持つ優位性を生かし、それと組み合わせることでユーザーエクスペリエンスを差別化できるから だ。クラウドのサービス、デバイス、ショッピングエクスペリエンス、これら三つをセットでどうやってストレスなく楽しんでもらえるか、アマゾンの視点はそ ちらに向いてる。

 こうしたデバイスとサービスの組み合わせは、日本の携帯電話事業者がフィーチャーフォンで取り組んでいたものだ。サービスがあり、それに最適化されたデ バイスがある、というモデルだ。それに近いことをアマゾンなど他の事業者が取り組んでいる。こうした状況を考えると、NTTドコモのような携帯電話事業者 はサービスと一体化したデバイスを考慮し、デバイスにもっとコミットしなければならない時代が再び訪れる、ということだと思う。(談)

4.1カ月無料で試す」タブレット型デジタルサイネージ(12.5  nikkeibp)
 サイバーステーションは2011年12月5日、タブレットを端末に使うデジタルサイネージシステムのお試しサービス「デジサインSaaSタイプ-デジサ インTabトライアルキット(評価版)」を同日から開始すると発表した。

 この評価版はコンテンツ管理や配信機能を持つクラウド型サービスを無料で30日間利用できる。コンテンツを配信できるタブレットは最大3台で、タブレッ トは自前で用意する必要がある。利用できるデータ容量は10GBまでになっている。

 サイバーステーションによると、デジタルサイネージシステムは導入検討のために一度利用してみたい企業が多いことから、お試しサービスを提供することに したという。

5.世界の携帯の3割」はスマートフォン(WIRED.jp)(12.5  nikkeibp)
 世界のワイヤレス通信機器市場では、フィーチャー・フォン[基本機能のみの携帯電話]がいまだに支配的だが、スマートフォンの利用も急増している。「市 場分析と戦略を手がける企業」である英VisionMobile社が発表した数値によると、全世界で利用されている携帯機器のうち、スマートフォンの割合 は27%に達したという。

11月初めに発表された米Nielsen社の調査では、米国の携帯電話使用者のうち43%がスマートフォンを所有しているとされたが、 VisionMobile社の調査ではその数値を63%としている。また、ヨーロッパでのスマートフォン・シェアは51%であると VisionMobile社は述べている。

VisionMobile社は、アジアでのスマートフォン・シェアは19%としているが、この数値には疑問が残る。アジアは巨大な領域で、国によって人口 やトレンドが異なるからだ。例えば台湾では、携帯電話所有者のうち46%がスマートフォンを使用しており、タイとマレーシアでもスマートフォン普及率が高 まっている。

また、一部の推定によると、中国は最近、スマートフォン市場の規模で米国を上回ったという。さらに中国は、携帯電話を2台以上所有している利用者数が最大 であるとも報告されている。
米Apple社のティム・クック最高経営責任者(CEO)は最近の発言で、中国は同社にとって2番目に重要な市場であり、『iPhone』の購入がその大 きな理由だと述べている。[リンクされている記事によると、台湾香港を含めた中華圏での売り上げは、Apple社の2011年売上の12%にあたる。 2009年には2%だったという]

VisionMobile社の調査では、「アフリカおよび中東」と中南米はスマートフォン普及率が最も低く、それぞれ18%と17%だった。

スマートフォンが贅沢品から日用品になるにつれて、新しい契約者は低価格なオプションやデータプランを求めるようになってきている(日本語版記事)。世界 の大半、特にインドや中国のような巨大だが低所得の市場にとって、携帯電話の最も賢い選択はプリペイド式だ。現在では米国も含めて、世界の多くの無線通信 事業者が、スマートフォンに関しても簡易なプリペイド式を提供している。

米国では、低所得の消費者が通信手段として携帯電話に頼るようになってきており、固定電話は贅沢品と見なされるようになってきている。30歳以下のユー ザーや、家を所有しておらず借りている人々においては、固定電話を持たず携帯のみであることが普通になってきている。

なお、2010年の調査では、2010年末までに世界人口のおよそ77%(53億人)がモバイルサービスの契約者になると推定されていた。[日本語版過去 記事によると、2009年には60%だった。さらに、途上国の多くの地方において、家庭に携帯電話がある率は5割以上で、この率は固定電話の率よりはるか に大きいという]
アラブ首長国連邦やサウジアラビアなどの中東諸国でも、携帯電話の普及率は非常に高い。2010年半ば時点で、両国の普及率は150%を超えている。



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