週間情報通信ニュースインデックスno.827 2011/10/01

1.ついに「世界金融危機」の狼煙は上がった(9.28  nikkeibp)
大前研一
 米国政府は9月12日、オバマ大統領が打ち出した総額4470億ドル(約35兆円)の雇用対策費用を、富裕層への増税でまかなう計画を発表した。野党で ある共和党が長らく反対してきた増税案を押し切った形で、これでまた米国議会では与野党の対立が深まることも予想される。

ケインズ型のオバマノミックスは機能しない
 米国が抱える雇用問題の解決は、オバマ氏が大統領に立候補したときから公約の一つに掲げていた。今回の対策費用4470億ドルというのは他にあまり例を 見ない大規模なもので、その意味では「ようやく本腰を入れてきた」とも言える。

 しかし私は、これで雇用が改善するとは考えにくい、と見ている。すでに同じようなプログラムは大統領に就任直後にも大規模にやってきているからだ。その 後の失業率が9%で高止まりしていることを考えると、今の米国でケインズ型のオバマノミックスが機能するとは思えない。 ダメとわかっていても来年の大統 領選に向けて大型の景気刺激策を打たなくてはならないところが、バーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長とガイトナー財務長官を抱えたオバマ政権の窮状 を映し出している。

 何より救済したはずの米銀が依然として脆弱であり、ファニーメイ(米連邦住宅抵当公社)やフレディマック(米連邦住宅貸付抵当公社)などの住宅公社も水 面下から浮上していない。

実際は20%の人が仕事をしていない
 結局、日本と同じで、銀行の集約、ゼロ金利、公共工事と時間を稼いでも、需要の創出につながるような政策を打ち出せないでいる。オバマノミックスの財源 は国債と金持ちに対する増税というところも野田新政権と酷似している。

 以下、もう少し詳細に見ていこう。まず米国の雇用環境の変化だ。
 オバマ氏が大統領に就任したのは2009年1月である。ブッシュ大統領の最後の1年(2008年)で米国の失業率が急速に悪化し始めた。これはオバマ氏 の就任から2年以上経った今も続いていて、失業率は9%台を推移し、一向に改善の兆しが見られない。「対前月比での雇用者数の増減(非農業部門)」を見る と、多少は改善されているように思えるものの、これで失業対策が成功したとは到底言えない。

 実はこのグラフは失業率の推移であって、実際に失業している人の割合ではない。日本と同じで、失業率というのは就職斡旋所に職を求めてきている人々のう ち雇用にありつけなかった人々しか対象にしていない。

 今現在、就職適齢期(15歳から64歳まで、学生を除く)を対象に仕事をしていない人の割合を見ると、年々増加していて20%を超えている。その中には 裕福な人もいるだろうが、多くは就職斡旋所にも来ない人々である。失業率9%というのは、そのうちの約半数が就業努力をしている、ということでもある。

日本も米国も、政治と経済が乖離している
 米国の問題は、そもそも5人のうち1人に職がない「職不足」「社会適応困難」という社会問題である。これは企業側から見ると、人が足りないという認識に もつながっており、スキルを持った人がいればいくらでも採用したいというスキルミスマッチの問題でもある。つまりは教育・再訓練の問題であり、それを受け 入れない落伍者の問題でもある。その結果、企業は海外に人材を求めることになり、米国内の空洞化にもつながっている。

 米国企業は、実は世界全体で見れば躍進しているところが多く、「市場は世界だ」と考える企業の株価は下がっていない。つまり、米国企業はますます世界的 には強くなり、米国経済はその恩恵を受けない。政治と経済が水と油のように分かれてきている、ということである。

 こうした問題は、まさに日本の問題でもある。日本企業の方が「脱・日本」では米国のグローバル企業に大きく遅れてはいるが、スキルミスマッチの問題も、 人材教育の問題も、根は同じである。政治と経済、あるいは政治と経営の乖離もほぼ同じ状況にあると考えて良い。

 歴代の米国大統領を見ると、有効な雇用対策を打ち出せなかった大統領が再選される可能性はきわめて低い。共和党の大統領候補は本命がいないし、路線的に も「百家争鳴」の状態で混戦している。しかし、だからと言って、オバマ氏が来年の大統領選で再選を目指すため、ケインズ的に公共投資を行って雇用を増やそ うとしてもうまくいかないだろう。

日米両国は同じ不幸を共有している
 ケインズ政策は経済が一国の中で閉じていた時代の産物である。しかしボーダレス経済の時代になると、あらゆることが従来の期待効果と逆さまになってく る。景気刺激のために金利を下げても需要がなければ経済は活性化しない。資金供給を増やしても、結果は同じである。余剰分は国境を越えて海外に出ていく。 世界全体では辻褄が合っているのだが、国内の景気ということでは「閑古鳥」状態になる。

 米国は金利が低いし、量的緩和第2弾(QE2)で余剰資金をばらまいた。その結果何が起こったかと言えば、ドルキャリー取引(低金利の米ドルを借り入 れ、高金利の新興国などで投資すること)で海外にどんどん現金が流れていっていった。現金が海外へ流れれば雇用も当然そちらに流れてしまうのである。

 オバマ大統領が本来すべきことは、(クリントン時代のグリーンスパンFRB議長のように)金利を高くして世界から現金を呼び込むことだが、時に社会主義 者と揶揄される「大きな政府」志向のオバマ大統領にそういう(ボーダレス経済を手玉にとって他人の力で自国を繁栄させるという)発想があるのかどうか。残 念ながら「否」だろう。

 それはもちろん、我が国の民主党政府についても言えることで、この点において日米両国は同じ不幸を共有しているのである。米国は日本の「失われた20 年」を忠実に再現し、後追いをしてきている。

ギリシャの現状は「日本の明日の姿」
 不幸といえば、ヨーロッパでも深刻な状況が続いている。
 ギリシャ政府は11日、追加的な財政再建策を発表した。不動産税などの増税を通じて財政赤字を20億ユーロ(約2100億円)減らし、欧州連合(EU) などとの間で交わした赤字削減目標の達成を目指す。 財政危機にあえぐギリシャが「増税」というオプションを選択するのはかなり厳しいものだが、目標を達 成できなければ周辺諸国から財政支援を打ち切られるなどの制裁が待っている。 いってみれば、そういうギリギリのところまでギリシャは追い込まれているわ けで、それは同時に「日本の明日の姿」でもあることを我々は心しなくてはならない。

イタリア危機が起これば仏独の巨大銀行は大打撃
 ここで主要国銀行のPIIGS(ピーグス)向け与信残高を見ておこう。PIIGSとは、自力での財政再建が難しいと見られているポルトガル・イタリア・ アイルランド・ギリシャ・スペインの頭文字を取った頭字語だ。
 フランスとドイツによる貸し付けが多い。その両国の内訳を見ると、イタリアへの貸し付け割合が多いのが目立つ。ドイツはざっと3分の1、フランスに至っ ては3分の2がイタリアへの貸し付けとなっている。比較的傷が浅いと見られていたイタリアの銀行も、最近ではウニクレディト銀行などのクレジット・デフォ ルト・スワップ(CDS)スプレッドが急上昇するなど、安泰ではないことが露呈した。

 ということは、イタリアが財政破綻でもしようものなら、仏独の巨大銀行はともに大きな打撃を受けることになる。ちなみに米国と日本はそれぞれの経済規模 の割にはあまり貸し込んでいないことになっているが、欧州の銀行は米ドルのコマーシャル・ペーパー(CP)を大量に発行しているので、これを買い込んでい る米国の金融機関は連鎖する危険性がある。

 現在のユーロ危機とは、ヨーロッパの中央銀行と有力銀行が機能不全をきたしつつあるということである。「どの国(の銀行)が」「どこの国に」「どれだけ 貸しているのか」を、よく把握しておく必要があるだろう。

 米国も日本も、そして中国さえも安全圏ということにはならず、すでに「世界金融危機」の様相を呈しているのである。

ギリシャを財政破綻できない二つの理由
 
 ギリシャの「プレミアム度」は群を抜いている。先に述べたこととも重なるが、それだけ市場にはギリシャの先行きに対して悲観的な見方が拡がっているので ある。すでに市場は実質破綻を折り込み済みと見ていいだろう。

 実質的に破綻しているのに破綻させるわけにはいかない理由は二つある。一つはギリシャが破綻すれば「次は誰(どこ)か?」という詮索が起こる。リーマン ショックの後、米国のほとんどの金融機関がポールソン財務長官(当時)の準備した30兆円にも及ぶ不良資産救済プログラム(TARP)に駆け込んだ。今回 もPIIGS全体に波及する可能性は高く、そうなれば200兆円近い流動性を手元に確保しておかないとパニックは避けられないだろう。

 もう一つの理由は、ギリシャをユーロから切り離す仕掛けがない、ということである。通貨同盟であるユーロはマーストリヒト条約によって加入に関してはか なり詳細に取り決められているが、離脱の方法が決められていない。「行きはよいよい 帰りは怖い〜♪」(とおりゃんせ)というざれ歌があったが、ユーロ・ゾーンが今まさに味わっているのは切り離しの困難さの問題である。

ギリシャの惨状は対岸の火事ではない
 ギリシャの救済は、おそらく部分的デフォルト(約50%の国債は債務不履行となる)とそれによって大きなダメージを受ける銀行の救済策の二本立てになる だろう。
 一方、ギリシャの責任としては大規模な歳出削減ということになる。4人に1人は公務員、しかも58歳から現役時代の80%の年金がもらえる、という信じ られない制度を止めることが当然要求される。

 雇用対策や人気取り政策を進めてきた歴代のギリシャ政府は国民を甘やかしてきた。その国民が怒り狂ってゼネストをやっている。民主主義の生まれた国が衆 愚政治に陥ったらどうなるか、2000年前の研究をする必要はない。 いまのギリシャの惨状は対岸の火事ではない。これは世界の金融危機の狼煙(のろし) であり、ギリシャ以上に国家債務が積み上がっている「日本の明日の姿」ともダブるからだ。

2.NTT東西の機能分離に向けた省令改正へ、審議会が答申(9.30  nikkeibp)
 総務大臣の諮問機関である情報通信行政・郵政行政審議会は2011年9月30日、2011年7月に諮問のあった「電気通信事業法施行規則の一部を改正す る省令案」について、諮問通り改正することが適当と答申した。

 これは「光の道」の議論で取りまとめたNTT東西地域会社の設備部門と利用部門の機能分離を実現するための改正となる。改正後の省令では、設備部門の設 置およびほかの部門との間を隔絶することと、厳格な情報遮断措置の実施、実効的な監視の仕組みの導入――を盛り込んでいる。また総務大臣への報告内容とし て「業務委託先子会社に対する監督に関する事項」などを盛り込んだ。

 答申では、NTT東西が総務大臣に報告する内容について基本的に公表することと、その内容の適正性について厳格な検証を行うことを求めた。

3.「Skype for Android」最新版、ビデオ通話がタブレットでも可能に(9.30 nikkeibp)
 ルクセンブルクのSkype Technologiesは現地時間2011年9月28日、Android搭載端末向けアプリケーションの最新版「Skype 2.5 for Android」をリリースした。ビデオ通話対応端末をさらに14機種追加し、米Motorolaや韓国Samsungのタブレット端末でもビデオチャッ ト機能「Video Calling」が使えるようになった。

 今回新たに加わった機種は、Motorolaの「Xoom」やSamsungの「Galaxy Tab 10.1」といったタブレット端末のほか、Motorolaの「Atrix」「Droid 3」、台湾HTCの「EVO 3D」、英Sony Ericsson Mobile Communicationsの「Xperia Live with Walkman」、韓国LGの「Optimus Black」、台湾Acerの「Iconia」などがある。Video Callingの動作が確認されている端末はこれで合計41機種になった。

4.Amazon新タブレットは「真のiPadキラー」 (9.30 nikkeibp)
 米Amazon社はニューヨークで28日(米国時間)、同社初の『Android』タブレット『Fire』と、新しい『Kindle』3 機種を発表した。
11月に発売されるFireは、現在のタブレット業界のリーダーである『iPad』の、真の競争相手のひとつになると見られている。Amazon社は米 Apple社と同様に、他のタブレット・メーカーにはないものを持っている――膨大な量の顧客のクレジットカード情報、ストリーミング・ビデオのオンデマ ンド・サービス、巨大なクラウドベースのストリーミング・サービスに支えられているMP3の大規模なライブラリー。そして、自社独自のアプリケーション・ ストアさえもある。

 ただし実際には、すぐにiPadの直接的な脅威になるというわけではない。Fireはまず、Androidタブレット市場における脅威となるだろう。 Amazon社は垂直統合された数少ない挑戦者のひとつだ。韓国Samsung社、台湾HTC社、東芝などのメーカーは、ハードウェアは提供できるが、 サービスやコンテンツの面ではかなり力不足だ。

 
Fireは、失敗に終わった加Research in Motion社の『BlackBerry PlayBook』タブレットによく似ている。どちらも大きさは7インチで、つやのある黒いスレートだ。PlayBookと同じように、ディスプレイの解 像度も1024×600だ。 デュアルコア・プロセッサーを搭載している。現在市場に出回っている他の大半のタブレットと同じだ。(プロセッサーの詳細についてはまだ発表されていな い。)

Fireの内部ストレージは8GBだけだ。しかし、Amazon社は世界最大級のウェブサービスおよびウェブサーバーの所有者だ。従って、ローカルファイ ルは不要で、ストレージはクラウドを利用すればいい。

Amazon社は、最新ブラウザ『Silk』で自社のクラウド・サーバーをさらに活用する予定だ。Amazon社はSilkを利用することで、ユーザーが アクセスするウェブ・コンテンツの配信に同社のサーバーの力を活用し、Amazon社以外の外部サーバーへの負荷を減少させることができる。

 
Fireの最も魅力的なポイントはハードウェアではない。価格が200ドルというところだ。この価格は、高品質のAndroidタブレット・メーカーが発 売している製品の中で、最低価格ではないものの、それに近い価格だ。 ほかのタブレットにはあるのに搭載されていない機能(GPS、前面カメラと背面カメラ)はいくつかあるものの、「買わない理由」にはならない。価格は非常 に有力なポイントだ。

Fireの厚みは11.4mmで、ほかのタブレットより若干厚い。Apple社やSamsung社は薄さを売りにしているが、1mmや2mmは消費者に とってそれほど問題にならないだろう。
Amazon社はFireとともに、新しいKindle3機種についても発表した。28日から、超破格の80ドルという新型Kindle、タッチスクリー ン式で100ドルの『Kindle Touch』、150ドルの『Kindle Touch 3G』を発売開始しているという。エントリモデルが非常に安いので、新しく購入しようとする人々はかなり出ると思われる。

5.「未来は選べる」、消えた「Android au」−−KDDI田中社長が訴えたこと(9.26 nikkeibp)
 「KDDIがiPhone5を発売」という報道がメディアを駆け巡ってから週が開けた2011年9月26日、KDDIは秋冬モデル発表会を開催した。同 社の田中孝司社長(写真)が、件の報道から初めて公の場に出てくるとあって、会場には多くの報道陣が詰めかけた。

 大方の予想通り、田中社長はiPhone発売について「現時点ではノーコメント」を貫き通した(関連記事)。だが、そのコメントの端々からは、同社の今 後の戦略についての重要なメッセージが浮かび上がってきた。

「ワクワク感」から「未来は選べる」へ

 発表会において、田中社長はまず同社の1年間の取り組みを振り返った。スマートフォンへの取り組みが遅れ「なんとしてもauのモメンタムを回復したい」 (田中社長)と悩む中、同社はこの1年間「ユーザーにワクワク感を与えたい」という思いを最大の行動原理としてきた。その思いは、日本独自仕様を盛り込ん だスマートフォンの先駆けとなった「IS03」や、日本初のWindows Phone 7端末である「IS12T」、モバイルWiMAX対応で高速通信が可能なスマートフォンの先駆けである「htc EVO WiMAX」などに結実したとする。

 「スマートフォンで最後発だったが1年経って、ようやく最新のモデルをいち早く出せるようになった」(田中社長)と成果を実感する中、田中社長はフィー チャーフォン時代を含めて「通信事業者はユーザーに対して制約を設けすぎたのではないか」(同)と語る。その一つの例として挙げたのが、WiMAX対応の htc EVO WiMAXのユーザー満足度の高さだ。

 同社の調査によると、テザリング機能については91%のユーザーが、スピードの速さについては82%のユーザーが「満足」あるいは「非常に満足」という 結果だったという。田中社長は「ここまで満足度の高い端末はこれまで見たことがない」とし、それは「サクサク使えなかった」というこれまでのユーザーの不 自由を取り去ったからにほかならないとする。

 ここで田中社長は、これからのKDDIが目指す道として「未来は選べる」というキャッチフレーズを紹介する。提供者側の論理をユーザーに押しつけるので はなく、ユーザー自らが幅広い使い方を選べるような環境を用意していく意味だ。「通信事業者の今後は、ユーザーの幅広い要望に応えられるかどうかの1点に 尽きる。ユーザーの思いを受け止めて選択肢を用意すれば、業績は後からついてくる」と田中社長は語る。


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