週間情報通信ニュースインデックスno.824 2011/09/10

1.アップルは「ジョブズ的天動説」を崩せるか(9.7  nikkeibp)
大前研一
 前々回の当連載で、私は、サイバーの世界で存在感を強めている企業の一つとして米アップルについて言及した。iPhoneやiPadの好評を受けて同社 の業績は絶好調(下のグラフ)、そして今秋にサービス開始する新クラウドサービス「iCloud」によってアップルの提供するプラットフォームはますます 注目を集めていくだろう、と書いた。

ジョブズ氏のCEO退任を受け、株価は一時的に下落
 そんな中、アップルは病気療養中だったスティーブ・ジョブズ氏が「(予告していた)その日が来た」として最高経営責任者(CEO)を退任し、取締役会長 に就任したと8月24日に発表した。ジョブズ氏は今年1月から療養に入っており、日常業務はティム・クック最高執行責任者(COO)が担ってきた。ジョブ ズ氏が経営の第一線から退き、CEOに就任したクック氏が今後アップルの舵取りを行うことになる。

 このニュースを受け、株式市場はいち早く反応した。8月9日に一時的だがエクソンモービル社を抜いて時価総額で全米第1位に躍り出る場面もあった同社の 株価は、退任発表のあった24日の時間外取引で一時、同日終値比で7%近く下落したのである。つまり、アップルの株価はジョブズ氏の手腕への期待に負って いた部分がそれだけ大きかったというわけだ。

 だが前述の通り、ジョブズ氏はCEOを退任するといっても会長にとどまり、かつてのジョン・スカリー氏らによる追放劇とは違い、完全にアップルから離れ るわけではない。だから、株価もその後はまた戻してきている。

波乱万丈だったカリスマ経営者の半生
 いうまでもなく、ジョブズ氏は世界有数のカリスマ経営者である。その発想力やプレゼンテーション力、製品に対するこだわりよう、そして何よりも我々の生 活スタイルを変えたという点において、時にエジソンにも匹敵する「天才」とも評される。

 しかし、ジョブズ氏の半生を改めて振り返ってみると、必ずしもその道のりは平坦ではなかったことがわかる。 ジョブズ氏とアップルに関しては熱烈なファ ンも多いし、これまでにも様々なことが語られているので、ここでの解説は要点のみにとどめる。

 彼はスタンフォード大学の卒業式での有名な演説で、自分は孤児で養父母(Paul & Clara Jobs)によって育てられた、と言っている。実の父親はシリア系の人だったということが最近ネットなどで語られるようになっている。Abdul Fattah Jandali と名乗る79歳のシリア人が名乗り出て、その事実を認めている。パートナーの両親(アメリカ人)がアラブ人との結婚に反対であったため養子に出さざるを得 なかった、と経緯を語っている。

 ジョブズ氏自身は多くを語らないが、若い頃の苦労は並大抵のものではなかったと思われる。しかし、この実の父親はアメリカで博士号を取っているし、ジョ ブズ氏の妹にあたるMona SimpsonはUCLAの教授で五つのヒット小説を書いている。つまり、ジョブズ氏は不幸な生い立ちにもかかわらず、かな り優れた遺伝子を授かっていたのではないかと思われる。

ジョブズ氏の復帰後からアップルの快進撃が始まる
 米リード大学を中退したジョブズ氏はゲーム会社のアタリからキャリアをスタートさせている。1976年にスティーブ・ウォズニアック氏とアップルコン ピュータを設立。このときジョブズ氏は自分の車を売却して会社の運転資金を捻出したのは有名な話だ。83年、経営の革新を目指して米ペプシコ社長兼CEO のジョン・スカリー氏をスカウトし、アップルの社長に据えるも、2年後にはスカリー氏と対立して退社。新たにコンピューター企業のNeXT社を設立する。

 このNeXTは96年にアップルに買収され、ジョブズ氏はアップルの顧問として復帰、その後に暫定CEOに就く。そこからアップルの快進撃が始まる。 98年には早くもiMacを発売し、コンピューター史上の「大きな事件」にもなった。2001年のiPod発売は携帯音楽プレーヤーの流れを大きく変え、 03年のiTunesストアの開始は、コンテンツサプライヤーとしての一つの理想形を具現化してみせた(「現象を追っていては本質は見えない」参照)。

 またiPhoneやiPadの登場は「いつでも、どこからでも」インターネットに接続できる利便をユーザーに与え、ゲームやSNS(ソーシャル・ネット ワーキング・サービス)を提供する会社が大きく伸びる下地を作ったともいえる。そして、この秋にはiCloudによって、アップルはクラウド・コンピュー ティングの世界でも覇を握らんとしている。

魅力的な製品を続々と投入できなければ悲観論が広がる
 ではジョブズ氏が退いたあと、アップルにはどのような試練が待ちかまえているのだろうか。私は、「OSからハードウエアまでをすべてバンドルした製品を 売る」という同社の従来路線を続けるかどうかの選択を迫られることになると予想する。

 ジョブズ氏はもともとハードウエアからこの業界に入ってきた人物である。大学では最後にデザインをかじったこともあり、自社製品独特の「たたずまい」に 関しては人一倍の美学を持っていた。

 だが、ジョブズ氏が85年に退社した後、「オールバンドル」というアップルの悪しき拘泥が弊害となり、90年代半ばにはウィンテル勢力のマイクロソフト に散々やられる結果になった。

 ジョブズ氏が復帰してCEOとして陣頭指揮を執ると、市場は「彼なら新しいことをやってくれるだろう」「もっと面白い製品を出してくれるだろう」と期待 を常に寄せた。この期待こそがアップルを生き返らせ、そして大きく発展する原動力になった。

 そのジョブズ氏が経営の第一線から退いたらどうなるか。新CEOのティム・クック氏は長らくジョブズ氏とともにアップルを切り盛りし、彼の薫陶も十分に 受けている人物だが、今後もしアップルが魅力的な製品を続々と投入できないような事態になると、市場には一気に悲観論が広がるだろう。「これではウィンテ ル勢力に惨敗した20年前の再来だ」と思うはずである。

アップルはiOSのオープン化を検討せよ
 依然としてiPhoneといえばスマートフォンの代名詞的な存在だし、タブレット型コンピューターの分野ではiPadが独走している。だが、米グーグル が無償提供している「アンドロイドOS」は日に日に勢いを増し、携帯電話のOSとしてはすでにアップルを抜き去ってしまった。韓国のサムソンや台湾の HTCなどが総力を挙げてアップル追撃戦を展開しているし、日本勢もアンドロイドを選択している。

 アメリカでは当初キャリアはATTに限られていたが、今年2月からキャリアトップのベライゾンも扱えるようになってすでに450万台も売っている。トッ プキャリアに売らせることがいかに大切か、ジョブズ氏もクック氏も思い知ったはずである。日本ではソフトバンクの独占となっているが、ドコモがアンドロイ ドで巻き返しを図り、iPhone の勢いは安泰ではなくなってきている。

 ハードとソフトをバンドルするだけでなくキャリア(通信業者)まで固定してしまう今のアップルの戦略に意味があるとは思えず、早晩この戦略の見直しが必 要になるだろう。

 その見直しの一環として、アップルは「アマゾン化」するべきだと私は考える。すなわち「売ってナンボ」の商売をするのだ。システムと販売だけを押さえ、 プラットフォームはオープンにする。iTunes StoreやApp Storeの品揃えやサービスを充実させて、そこで大きな利益を確保するのである。つまり、アップルの携帯電話を持っていなくてもアプリケーションを買っ たり音楽や映画を購入することができるようにするのだ。

 さらに一歩進めて、iOSを各メーカーがアンドロイドと同じように使えるようにする検討も必要だ。アンドロイドは無料だが、アップルの場合には有料化し ても選択するユーザーが今ならいるだろう。

日本と中国で「ジョブズ的天動説」は崩れるか
 これからは中国やインドでの戦いになるが、アップルの価格ではなかなか勢力を伸ばせないだろう。しかもテンセントなどの巨大プラットフォームでSNS、 SMS(ショートメッセージサービス)、ゲームなどが展開されてくると、「丸ごと一式」のアップルでは市場を「丸ごと」失うことにもなりかねない。

 中国ではキャリアとしては第3世代(3G)まではチャイナ・ユニコム(中国聯通)の独占であったが、アップルは第4世代(4G)では圧倒的なシェアを持 つチャイナ・モバイル(中国移動)との提携話も継続中と報道されている。アップルのOSがどんなに優れていても、ベライゾン(米)、ドコモ(日)、中国移 動(中国)などのトップキャリアに使わせない戦略は「ジョブズ的天動説」である。すでにアメリカではこの天動説は崩れているので、日本と中国での選択が注 目される。

 アップルは、「スティーブ・ジョブズ」というカリスマに依存して成長してきた会社である。そのカリスマがいなくなった今、アップルは従来のクローズドな 文化を180度切り替え、オープン化の道を進めていくべきであろう。

 後継者のティム・クック氏は発想よりも着実な実行で知られている、と報じられている。しかし、今まで外部にはあまり知られた人物ではない。雑誌 「Time」の9月12日号では、さっそくロイターのサルモンというコラムニストの発言として、「(Tim Cookがゲイであるということを)隠す必要 はない。むしろアップルという企業のダイバーシティを知る祝福すべき事実である」との人物像が伝えられている。「何でもオープン」というグーグルと「何で も秘密」というアップル(「ジョブズの十戒」の一つに秘密主義がある)の一端を知るエピソードではある。

次世代テレビが今後のカギを握る
 今後のカギを握るのは次世代テレビだ。テレビがスマートフォン化していくのは世の趨勢だと思うが、そのとき従来のようにクローズドで固定的に「iTV」 を仕掛けていくのは非常に難しい。世界の主要国でハードウエアを支配するのは至難の技だからだ。

 すでにソニーはグーグルと組んでスマホ的なテレビを開発しているし、携帯で受信したものを家庭のテレビを通じて観たり、SNS的な通信やチャット、テレ ビ電話などができるようになってきている。こうした急激な変化を「支配」するのは難しい。

 アップルはシステム(iOS)と販売(iTunesとApp Store)は押さえ、いろいろなメーカーが「iTV」を作れるように変えていくのが最善だと思う。

2.マイクロソフトのクラウドサービスに障害発生、正午頃から午後4時30分頃まで (9. 9 nikkeibp)
 米マイクロソフトのポータルサイト「MSN」や、クラウドサービスの「Windows Live」「Office 365」などで2011年9月9日、Webサイトにつながりにくくなる障害が発生した。障害は日本時間で正午頃から午後4時30分頃まで続いた。PaaS (プラットフォーム・アズ・ア・サービス)の「Windows Azure Platform」でも同時刻に、管理ポータルが利用できなくなる障害が発生した。

 日本マイクロソフトでは障害が発生したサービスとして、MSN、Windows Live、Office 365の名前を挙げている。Windows Liveのサービスとしては、電子メールサービスの「Hotmail」やストレージサービスの「SkyDrive」がダウンした。Windows Liveの公式ブログによれば、サーバー障害は日本時間午後1時45分に復旧したが、DNSの設定が反映されるまでに時間を要したため、インターネット経 由でサービスが利用できるようになったのは日本時間の午後4時過ぎになったと説明している。

 Windows Azureに関しては、ユーザーがAzure上で稼働するアプリケーションには問題は生じなかった。しかし、Windows Azureの管理ポータルや、データベースサービスの「SQL Azure」の管理ポータルが利用できなくなった。

 Windows Azureのサービス稼働状態を示すダッシュボードでの情報によれば、日本時間の午後11時49分から管理ポータルが利用不能になった。サービス障害の根 本的な原因は、Windows Azureの管理ポータルへのトラフィックをルーティングするネットワーク機器の障害にあるとしている。ネットワーク機器を修理した結果、日本時間の午後 2時43分にサービスが復旧した。

3.NTTドコモがLTEサービスの通信料改定、速度制限付きの完全定額制を採用 (9.8 nikkeibp)
 NTTドコモは2011年9月8日、「LTE(Long Term Evolution)」技術を採用したモバイルブロードバンドサービス「Xi」(クロッシィ)の通信料金を改定すると発表した。新たに4種類のプランを追 加し、現行プランも提供条件を一部変更した上で継続する。

 新プランは、同日発表したLTE対応タブレットの発売時期である2011年10月上旬から開始する。今回追加するのは、月7455円の固定料金プラン 「Xiデータプラン フラット」と、月3970〜7980円(無料通信分2500円、1Kバイト当たり0.2625円)の2段階制プラン「Xiデータプラン2」。いずれも2年 間の継続利用を条件に通信料上限が引き下げられ、前者は月5985円の「Xiデータプラン フラット にねん」、後者は月2500円〜6510円の「Xiデータプラン2 にねん」になる。

 また、現行プランには「月間のデータ通信量が5Gバイトを超えた場合に、月末まで2Gバイトごとに2625円の追加料金を課金する」という提供条件があ る。現在はキャンペーン期間中のため追加料金が発生していないが、新プランの追加を機に、この提供条件も見直す。

 具体的には5Gバイトという基準量を、新プランと現行プランのいずれについても7Gバイトに引き上げる。7Gバイトを超えた時点で、最大37.5Mビッ ト/秒(一部屋内で最大75Mビット/秒)の通信速度を、月末まで最大128kビット/秒に制限する。その代わりに追加料金を不要とする。ユーザーの希望 に応じて従来通り、2Gバイト単位で追加料金を課金し速度制限を行わないよう設定することも可能である。

4.Google、Gmailのエネルギー効率は個別構築システムの3〜80倍と主 張(9.8 nikkeibp)
 米Googleは現地時間2011年9月7日、クラウドコンピューティング環境を利用した電子メールシステムと、個々の企業が社内構築した電子メールシ ステムのエネルギー効率を比較した調査報告書(PDF文書)を公開した。同社のWebメールサービス「Gmail」はエネルギー効率が高く、環境に優しい と主張している。

 クラウドベースのサービスは通常、サーバーの稼働率が高いうえ、目的に特化したハードウエアおよびソフトウエアから成るデータセンター内に構築されるた め、高いエネルギー効率を実現できると同社は説明している。

 調査によると、電子メールユーザー1人あたりの年間電力消費量は、社内構築した電子メールシステムの場合、小規模企業(ユーザー数50人)では 175kWh、中規模企業(同500人)で28.4kWh、大規模企業(同1万人)で7.6kWhだが、Gmailはわずか2.2kWh未満という。

 また、ユーザー1人当たりの年間カーボンフットプリント(CO2排出量)は、小規模企業の社内電子メールシステムが103kgであるのに対し、 Gmailは1.23kg未満と、約80分の1にとどまる。

5.スマホを安全に業務利用するためのガイドライン、JSSECがβ版を公開し意見 を募集(9.7 nikkeibp)
 日本スマートフォンセキュリティフォーラム(JSSEC)は2011年9月7日、企業ユーザーがスマートフォンやタブレット端末を業務で利用する際に気 をつけるべきセキュリティ事項などをまとめたガイドライン「スマートフォン&タブレットの業務利用に関するセキュリティガイドライン【β版】」を公開し た。JSSECのWebサイトからPDFファイルを無償でダウンロードできる。

 同ガイドラインは、主要なモバイル端末向けOSであるAndroidやBlackBerry OS、iOS、Windows Phoneを搭載したスマートフォンおよびタブレット端末について、企業が業務で利用する際にどのようなセキュリティ上のリスクがあるのかや、そうしたリ スクを減らすための設定や運用上の注意点などをまとめたもの。




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