週間情報通信ニュースインデックスno.
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2009/10/31

1.“玄人”の限界、“素人”の創造性(10.30 nikkeibp)
時代はブレークスルーできる人材を求めている
宮田 秀明
 この2年間、環境関連の研究やプロジェクトが、私の全活動の約50%を占めるようになった。「二次電池による社会システム・イノベーション」のフォーラ ムは予想以上に大盛況だし、「沖縄グリーンニューディール・プロジェクト」は順調に離陸態勢に入りつつある。
 いつの間にか私は、環境問題の“玄人”として扱われるようになっているのかもしれない。30年もの間ずっと環境問題をテーマにしている研究者よりも、私 の発言に注目してくれることもある。  しかし、一方では、私の意見や発言、シミュレーション結果、将来予測に対して、「素人の意見だ、もっと勉強してから発言しなさい」とか「船という自分の 専門に戻るのがいいよ」といった忠告をもらうことも少なくない。

本当のプロとはどんな人か

 「アマチュア」と「プロ」とはどう違うのだろう。「本当のプロ」とはどういう職業人を指すのだろう。   私は、普通のプロと一流のプロがいると思う。一流のプロは、異分野の仕事を任せても成果を出せるプロのことを言う。決められた分野のことではしっかり 成果を出せるが、異分野のこととなると、そこへは移れないか、移ってしまうと大きな成果を出せないのが普通のプロだ。

 経営者でもそうだ。一流の経営のプロなら、それまでとは違った業種の経営を任されても、一流の経営ができる。異業種から乗り込んできて、難局に直面して いた企業を立て直す立派な経営者も少なくない。異業種からの人だから、ある意味では“素人”ではあるが、経営の玄人なのだ。

鉄道の素人が、新幹線の振動問題を解決するキーマンに

 その道の玄人、その道のプロも時々素人に立ち戻った方がいいかもしれない。ゼロベース思考と言ってもいい。過去に自分が達成した実績にしがみつくのはや めたほうがいいということかもしれない。ゼロに立ち返って新たに挑戦する元気を取り戻したい。自分を成長させるために。

 1964年、たった7年間のプロジェクトで東海道新幹線のプロジェクトが完遂された。このプロジェクトで力を発揮したのは鉄道技術者と並んで、旧日本軍 の技術将校だった。戦後、航空機はもちろん軍用の船も作ることが許されなくなったので、たくさんの軍の技術者が失職し、弁護士、教師、医師、商店主にまで 転職していった。

 その時、ある立派な方が優秀な技術者を三鷹にあった鉄道技術研究所に呼び集めた。航空技術者や船舶技術者や電気技術者だった。鉄道技術に関しては素人の 人々だったが、軍事技術開発でいい経験をした素晴らしい技術者だった。彼らが新幹線プロジェクトで活躍したのだ。鉄道技術者だけだったら、あれほど見事に プロジェクトを成功させられなかったかもしれない。

 そのうちの1人が松平精さんだった。私の出身学科つまり東大船舶工学科の先輩だし、私が石川島播磨重工業(現IHI)に入社した時、同社の技術研究所長 を勤めていた。

 彼がNHKの番組「プロジェクトX」で言うのだ。
 「振動問題では、やるべきことを全部やった。大丈夫です」

 鉄道の素人が、鉄道の振動問題の一流の玄人になったのだ。

 高速鉄道にとって振動は大きなテーマだ。失敗すると大事故につながる。松平さんが戦前取り組んだ戦闘機ではもっと致命的になる。本当のプロは分野を問わ ないのだ。

 
“知識の集積”を尊重しすぎると、前に進めない

 私が21世紀になって取り組んだのは、経営を科学すること、小売流通業に革新的な進歩を起こすこと、環境問題を社会システム的に解決することなどだ。 ヨットの仕事に100%、200%の力を集中させていた10年前には思いもつかなかったことだ。

 本当のプロ、本当の玄人は、素人のような気持ちのまま挑戦する心を持っている人だと思う。並みのプロは、その世界の常識を大切にして、革新的なアイデア よりも知識の集積を尊重する人たちではないだろうか。

 色々な局面で常日頃、問題だと思うのは、「普通のプロ、玄人がムラを作って、素人の参入を妨害しようとすること」が多いことだ。

 若者はすべて素人だ。玄人の作るムラに挑戦して、場合によっては破壊することも必要なのだ。歴史を考えてみよう。世の中を変えたのはその世界のアウトサ イダーなのだ。その世界の素人と思われた人なのかもしれない。  新しいアイデア、新しい考え方は素人から生まれてくることも多い。このことをもっと認識しなければならないと思う。玄人、先輩はこのような素人の創造性 を育む環境を作るという努力をしなくてはいけない。

2.広がる仮想化技術の適用領域,新たな3つのトレンド(10.30  nikkeibp)
 「これまでの仮想化技術はサーバーの延命とコスト削減を志向したサーバー統合が中心だった。今後もそれは変わらないが,新たな3つの領域でも応用が進む のではないか。CO2排出量の削減とパンデミック対策,そしてムダな資源の見える化だ」――。2009年10月28日から東京ビッグサイトで開催している ITpro EXPO 2009展示会において,ITproの渡辺享靖記者が「仮想化技術,3つのトレンド」と題する講演を行った。以下,講演の骨子を紹介しよう。

 まず,CO2排出量の削減について。鳩山首相は「2020年までに,1990年比で25%削減する」との目標を掲げている。また,東京都が改正環境確保 条例を来年度から施行し,2020年までに,2000年比で25%削減を目指す。この対象となる都内のデータセンターは約130カ所に及ぶという。この局 面にあって,サーバー仮想化が威力を発揮する。

 実例を挙げよう。日本航空インターナショナルで実施したサーバー統合プロジェクトにおけるCO2削減効果の実測では,最新ブレード・サーバーへ単純に集 約する方式を採用した場合が10〜30%だった。1台のサーバー機(OSも1つ)上にアプリケーションを統合する共用サーバー方式では40〜60%。これ に対し,サーバー仮想化は70〜80%もの実績を上げたという。つまり,仮想化技術はCO2排出量の削減に大変効果的であることが分かった。

 サーバー仮想環境では,低負荷時に一部の物理サーバー上の仮想マシンをすべて他の物理サーバーに移動させ,電源をオフにすることができる。このような特 徴を生かした結果と考えられる。

 次に,パンデミック対策について。国立感染症研究所 感染症情報センターによると,新型インフルエンザによる入院患者数は10月14〜20日の1週間で445例あった。もし,強毒性のパンデミックが起こった ら,どうやって事業を継続するのか。そこで在宅勤務が急浮上する。ITpro読者調査「新型インフルエンザ上陸,そのときどうだった?」によると,シンク ライアント利用者の多くは仕事の80%以上を在宅でこなせると答えた。サーバー上にパソコンの仮想マシンをいくつも構成し,シンクライアント端末から仮想 デスクトップを利用するような形態だ。ベンダー各社ではこうしたシステム製品の引き合いが増加しているという。

 最後に,「ムダな資源」の見える化について。米Computerworld誌に掲載された米Kelton Researchの調査によると,回答者の72%が「業務の役に立っていないサーバーが15%以上ある」と答えた。IT担当者は意外に資源のムダ使いに関 心が低いことがうかがえる。

 仮想化はこうした資源のムダ使いに対する意識を変える力もある。サーバーを仮想化して統合すると,CPUをはじめとする資源の利用効率が上がる一方で, 資源の過不足がないかを常にモニターしておく必要が生じる。これに伴い,資源の使われ方に対する意識が非常に高まる傾向にあるようだ。例えば,どの物理 サーバーにどの仮想マシンを配置するのか,資源の利用状況を見ながら頻繁に仮想マシンを再配置している企業もあるほどだ。

 例えば,今回のイベント会場で展示している三井情報の「Hyper-V品質測定・分析ツール」のようなツールを使うと,物理サーバーと仮想マシンの稼働 状況をリアルタイムに監視できる。CPUやメモリーの使用率,ディスクやネットワークのI/Oの状況が一目で分かり,自ずと資源のムダが見えてくるのでは ないか。また,サーバーを仮想化する段階でも既存システムの棚卸しをする。そこでの実態調査を通じてサーバーのムダ使いが見えてくるだろう。

3.「企業ネットで注目を集める5つのトレンドとは」(10.30 nikkeibp)
 日経コミュニケーションの安井晴海副編集長が「企業ネットワークの最新トレンド」と題して登壇した。
 講演では,日経コミュニケーションが実施した調査に基づいて,ユーザー企業のネットワークについての分析を披露。クラウド・コンピューティング,モバイ ル,シンクライアント,TV会議/Web会議,バースト対応サービスの5つをキーワードとして挙げた。

 クラウド・コンピューティングでは,SaaS,PaaS,HaaSまたはIaaSといった分類を紹介。サーバーの保守・管理費用の削減など,コスト最適 化への期待から注目を集めているという。日経コミュニケーションの調査では,「将来利用したいと考えているサービスや製品」の中で1167社中246社が 挙げており,昨年の13位から6位に躍進した。利用もしくは利用予定を尋ねたところ,業務アプリケーションやグループウエアなどのSaaSまたはASPが 61.7%の回答を集めた。

 2つめのモバイルでは,すでに72.9%の企業がモバイル・データ通信カードを利用しており,外出先でネットワークを使うのはすでに一般的になっている という状況を紹介。「今はHSDPAを使ったデータ通信が増えているが,PHSもXGPで巻き返しを図ろうとしている」(安井副編集長)と今後の注目点を 指摘した。さらに,オフィスの電話と携帯電話を連携させるFMC(Fixed Mobile Convergence)サービスも紹介。外出している社員の携帯電話があたかも社内の内線のような番号でかけられ,さらに通話が無料になることから“コ スト最適化の切り札”として注目されているという。

 3つめのシンクライアントも,クライアント・パソコンの保守費用を削減しTCO(Total Cost of Ownership)の観点から相変わらず注目されているとした。日経コミュニケーションの調査では,1167社中432社が将来利用したいと回答してお り,「サーバー仮想化」に次ぐ2位になったという。ただし,調査では「導入済み」との回答が11.9%にとどまっており,この理由として「導入コストが高 いことがネックとなっている。TCO削減だけではユーザーの心に響かない」(安井副編集長)と指摘する。

 TV会議/Web会議も,やはりコスト削減の面から着実に浸透しているという。使っていると答えた企業は,昨年の43.4%から今年は47.7%に増加 しており,「出張費や移動にかかる時間を削減できることが評価されている」と分析する。また,パンデミック対策でも注目されており,過去1年間で対策を実 施した企業では43.8%と半数近くがTV会議/Web会議の導入を挙げたという。

 最後の5つめのキーワードとして挙げたのが「バースト対応サービス」だ。これは,NTTコミュニケーションズとKDDIが7月に始めたばかりの新サービ スで,特定の通信だけ契約帯域を超えて物理インタフェースまで利用可能とするものである。コストを抑えながら,もしもの場合に備えるサービスとして注目さ れている。日経コミュニケーションの調査でも,まだサービスが始まったばかりだというのに,「ぜひ使いたい」と答えた企業が5.5%,「使ってみたい」と 答えた企業が18.4%と,4社に1社が興味を示しているという数字を挙げ,今後の注目サービスとして指摘した。

4.イー・モバイル,3G搭載の無線LANルーターと300MBまで月2580円の 新プランを発表(10.29 nikkeibp)
イー・モバイルは2009年10月29日,インターネット接続用にHSPA(high speed packet access)回線を利用する無線LANルーター「Pocket WiFi」を発表した(写真)。11月18日から販売を開始する。

 バッテリを内蔵しており,これを使って最大4時間の通信が可能。無線LAN機器は最大5台まで同時接続できる。携帯型のゲーム機やデジタルカメラ,携帯 音楽プレーヤなど,第3世代携帯電話(3G)の無線モデムが接続できない機器であっても,無線LANを経由してどこででもインターネットに接続できるよう にするのが狙い。USBケーブルを使って直接パソコンと接続し,無線モデムとして利用することもできる。

 持ち運びにも便利な小型・軽量の製品となっている。外形寸法は48.6×14.1×95.5mmで,重さはわずか80gだ。HSPAの通信速度は下り最 大7.2M,上り最大5.8Mビット/秒。初期費用(端末価格)は,契約期間に縛りがないプラン(ベーシック)で3万9580円。2年間の契約で端末代金 が割り引かれるプラン(にねんM)を前提とした場合は5980円となる。

 また,イー・モバイルは同日,300Mバイトまでの通信料金を定額にする「バリューデータプラン」および「バリューデータプラン21」を11月5日に開 始すると発表した。バリューデータプラン21は下り最大21Mビット/秒に対応する料金プランである。

 300Mバイトまでの通信料金は,2年縛りの場合(年とく割2),バリューデータプランとバリューデータプラン21でそれぞれ月額2580円,月額 3580円となる。300Mバイトを超えた分は,1パケット当たり0.0105円。上限額はそれぞれ月額5580円,月額6580円である。

5.2010年イチ押しの法人サービス巡り携帯5社が火花---パネル討論(10. 29 nikkeibp)

速度でイーモバ,インフラでNTT,端末でSBM

 パネル討論では,(1)データ通信の高速化,(2)端末のオープン化と高度化,(3)音声通話サービスとの連携,という大きく3テーマについて各社が自 社サービス/製品のポイントを提示。最後にそれら中長期の計画のエッセンスとして,2010年一押しの企業向けサービスを披露した。

 (1)の高速化は,下り21Mビット/秒のデータ通信サービスを提供中のイー・モバイル阿部氏が「いずれは固定通信と無線通信を同等の速度とし,屋外や 駅でもオフィスの快適さを実現したい」と発言。この10月に双方向20Mビット/秒のWILLCOM CORE XGPの提供を始めたウィルコムの大川氏は「実効速度で下りが13.5M,上りが9.08Mビット/秒は出る。RTT(パケットの往復時間)は30ミリ秒 とレスポンスも良い」とマイクロセルであるXGPの利点を挙げた。

 携帯電話事業者大手3社は,NTTドコモ中西氏が「7.2Mビット/秒のHSDPAエリアの人口カバー率は100%。これに満足することなく,2010 年度のLTE展開に向け準備を進めている」とインフラの強さで応じると,KDDI有泉氏はグループ会社UQコミュニケーションズによる最大40Mビット/ 秒のWiMAXとの補完関係を強調。SBM安川氏は「2010年までHSDPAで7.2Mビット/秒,2011年にDC-HSDPAで43.2Mビット/ 秒,2013年にLTEで100Mビット/秒」とLTE導入に向けたロードマップを提示した。

 (2)端末のオープン化/高度化は,iPhoneをはじめとするスマートフォンを多機種展開するSBM安川氏が「iPhoneはOSが次々に更新され機 能が上がる。詳細は明かせないが誰もが知っている金融機関での導入事例も出始めた」と端末の強みを訴求。KDDIはPCとケータイの機能の住み分けの進 行,NTTドコモはスマートフォンOSとiモード端末向けOSの統合,ウィルコムは組み込み通信端末向けの複数年一括払いなどの料金体系の弾力化,イー・ モバイルは端末を問わずに同社SIMを利用できる環境の整備などに言及した。

 (3)音声通話は,企業の内線と外線をワンストップ提供するFMCの話題が中心。各氏が携帯電話と固定電話の統合や定額利用サービスを紹介した。


KDDIが携帯−PC連携の自社システムをデモ,ウィルコムは原点回帰

 パネル討論の最後に松本編集長がパネリストに提示したのは「2010年の一押しはこれだ」という1枚のスライド。1社当たり約3分という持ち時間で進行 したせいか,まさにエッセンスと呼べるサービスを提示した。

 SBM安川氏は,「『これしかないのか』と言われかねないが,2010年もやっぱりiPhone」と断言。ユーザーとして音楽2000曲,写真3400 枚,各種プレゼンテーションや名刺管理ソフトなどが詰まったホーム画面などを紹介しながら,「iPhoneを使って残業が平均32分減った。iPhone でビジネスを変えてほしい」と訴えた。

 KDDI有泉氏は,「2010年に現場のお手軽ソリューションとしてアピールしていく」という「ケータイワークリンク」をサプライズ・デモ。BREWア プリとWindowsアプリを連携させるミドルウエアを組み込み,ケータイのGPS情報をパソコンで利用するなど,携帯電話とパソコンの連携が簡単に実現 できるという。有泉氏は自社の携帯電話機を社員に貸し出す際の資産管理システムを例に,ケータイのカメラで社員証バーコードなどを読み取り,貸出し名簿に 登録する手順を実演した。

 NTTドコモ中西氏は,情報家電を携帯電話などから制御する「ケータイホームシステム」を2010年の一押しとして紹介。ホームネットワークの司令塔と して外出先から自宅の情報家電を制御するシステムで,インターホンのカメラ映像や火災発生時の警告,ペットの見守り映像などをケータイで受け取れるとい う。「B2B2Cの製品として,新製品や新サービスの開発に生かしてほしい」(中西氏)。

 ウィルコムとイー・モバイルは,それぞれが持つ強みを再度アピール。ウィルコム大川氏は「2010年はPHSの安心・安全と,M2M(マシン・ツー・マ シン)による新ビジネスを前面に押し出す。医療・介護の分野では契約数が純増で,省電力,電力効率の高さ,16万基地局による耐災害性がウィルコムにはあ る。M2Mでは,情報の収集・蓄積,そしてマイニングを通じて『ウィルコムと組むと儲かる』という評価を得たい」とした。

 イー・モバイルは「2010年秋に現行の21Mビット/秒を倍にした40Mビット/秒超のサービスを提供する。高速化によるフレキシビリティ,セキュリ ティ,そしてBCM(事業継続管理)を打ち出していく」と宣言。高速なモバイル・ブロードバンドをどう生かすかという問いを来場者に投げかける格好となっ た。





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