週間情報通信ニュースインデックスno.
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2009/09/12

1.原理原則を逸脱した技術戦略に成功なし(9.11 nikkeibp)
燃料電池自動車、テクノスーパーライナーの敗因
宮田 秀明
 環境エネルギー問題の解決策の1つとして、電気自動車は二次電池とともに欠かせない存在である。自動車の長い歴史の中で、常に裏方として控えていた電気 自動車がようやく表舞台に登場しそうだ。   しかし、よく思い出してみれば、10年前は燃料電池車の話題でもちきりだった。実際、世界中の有力自動車メーカーのほとんどが燃料電池車の開発に必死 に取り組んでいた。この技術開発の流行に逆らおうとする人は少なかった。ところが、今では水素サイクルや燃料電池車を語る人はめっきり少なくなってしまっ た。

 車の世界では、水素を使った燃料電池車が世の中に普及する可能性は限りなく小さくなった。荏原製作所が燃料電池事業から撤退してその事業子会社「荏原バ ラード」は今年6月に解散、買い手もつかなかった。つまり10年前のほとんどの自動車会社の技術戦略は間違っていたし、その戦略を評価した技術評論家やマ スメディアにも先見力はなかったということになる。

 燃料電池車の開発がブームになっていた10年前、私の部屋に現れたのはH君だった。学部で船舶工学を学び、大学院では素粒子物理学を学び、社会に出てか らは電池の開発に20年近く携わっているという異色のキャリアを持つ卒業生だ。

 「今、世界中の有力自動車会社が燃料電池自動車の開発に注力していて、マスメディアもその流れを支持していますが、違うと思います」
 「移動体の中であんなに大量の空気を流し、膜を通して反応させるのは原理的に間違っています」
 「定置型はともかく、車のような移動体に対しては問題が多すぎです」

 燃料電池の原理そのものが自動車に合わないと言うのだ。
 その頃、H君は自動車会社でリチウムイオン電池の研究開発に携っていて、ちょうど10年が経過した頃だった。それからまた10年近くの歳月が経って、リ チウムイオン電池は急速に進歩していった。そしてH君の所属する自動車会社は2008年になって、電気自動車を三大戦略の1つに据えた。H君たちが開発し た電池があったからだ。


 科学的または工学的な原理原則を理解することは大切だ。技術開発戦略の基礎は、科学的または工学的な原理原則が作る。原理原則を踏み外した技術戦略が成 功することはない。

 原理原則を間違えたり、技術のトレンドを理解しないまま続けられる技術開発は必ず失敗する。技術開発をする上では、正しい原理原則を獲得してそれを正し い経営力で実現化していくことが基本である。原理原則を逸脱した技術開発が成功することはない。


 今年の2月「私の履歴書」を書いたドトールコーヒーの創業者、鳥羽博通さんの力の源は、たくさんの苦労体験と小売業の原点である顧客満足度を常に考え続 けていたことだろう。一貫して、原理原則を大切にしてきた方なのだ。

 小売業のビジネスで顧客満足度を考えることは当然のことのようだが、実は大変難しい。これが本当にできる小売流通業の経営者は稀と言っていいかもしれな い。つい売る側の論理、事業者の論理を使ってしまうのだ。

 「顧客満足度を最大にする」――これが小売業の原理原則である。このことから離れる経営、離れる業態は伸びていくことができないだろう。


正しく原理原則を理解する力を持つ

 「科学的かつ論理的に原理原則を理解する力」は大切な力だ。経営力のための一番大切なものと言ってもいい。物事の本質を見極める力ほど大切な力はない。 デジタルな力もアナログな力も、科学的な力も暗黙知的な力も、すべてその基本には原理原則がある。

 技術のテーマでも、経営のテーマでも、設計のテーマでも同じである。原理原則を理解する力はもっとも強力な力なのだ。正しく原理原則を理解する力によっ て先見力、構想力、リーダーシップを発揮して実行する力が養われる。

2.徳島県がRubyの独自開発CMS「Joruri」でサイトを刷新,OSSとし て公開へ(9.11 nikkeibp)
 徳島県は2009年10月,独自開発の徳島県CMS(コンテンツ管理システム)を採用し同県のホームページをリニューアルする。徳島県CMSはRuby で開発しており,2009年度中にオープンソース・ソフトウエア(OSS)「Joruri」(ジョールリ)として公開する予定だ。

 徳島県では,情報システムを新しく導入する際に,なるべくオープンソース・ソフトウエアを採用することを方針としている。狙いはコスト削減,ベンダー・ ロックインの軽減だけではない。同時に発注単位を小口化,小企業でも入手しやすいオープンソース・ソフトウエアを使うことで,県内のIT企業への発注を増 やすことも大きな目的としている。

 すでに長崎県がオープンソース・ソフトウエアとして無償公開した「長崎県電子県庁システム」の導入を開始しており,2009年1月から4月にかけて稼働 が始まっている(関連記事)。導入したのは「総務事務システム」と「母子寡婦福祉資金貸付償還システム」。総務事務システムはポータルサイト,スケジュー ラ,休暇システム,出勤簿システム,超過勤務等システムからなる。手当てシステムも2009年度中に導入する。導入コストは約1億円で,「他県での同種の システムの導入に費用に比べ,費用を6分の1に抑えることができた」(徳島県)という。


Notesのサポート切れで移行,バージョンアップより安く

 徳島県は現在,Lotus Notesをグループウエアとホームページ作成に利用している。徳島県がホームページリニューアルの検討を始めたのは,利用しているNotes 5.0のサポートが2010年に終了するためだ。県職員のNotesユーザーは約4000人で,新しいバージョンにバージョンアップするには約8000万 円かかる。

 徳島県では利用できるオープンソース・ソフトウエアを調査した。候補となったのが「島根県CMS」である。島根県が同県のホームページ作成に際して開発 したCMSを,オープンソース・ソフトウエアとして無償公開したもの。Rubyで開発されており,視覚障害者向けにテキストを音声に変換して読み上げる機 能,弱視者向けに文字を大きくしたり白黒反転させる機能などを備えている。

 徳島県では,島根県CMSの採用を前提に構築を担当する企業を募集。この結果,徳島県徳島市のアイ・ディ・エスが約1000万円で請け負うことになっ た。

島根県CMS採用から方針転換,独自開発へ

 当初島根県CMSをカスタマイズする方針だったが,アイ・ディ・エスが現在の徳島県のホームページの機能の引き継ぎや,徳島県からの発注仕様書を詳細に 検討したところ「島根県CMSを改変するよりも,新規に開発するほうが適切」(アイ・ディ・エス アプリケーション開発事業部 貴田秀資氏)と判断した。

 「島根県CMSは,多くのオープンソースCMSと同様,サーバーへのファイルのアップロードはFTPツールで行うなど,使い勝手の良いツールを組み合わ せて作業を行う考え方。徳島県とアイ・ディ・エスでは,比較的技術スキルが低いメンバーでも制作・管理作業を行えるよう,CMSがすべての機能を提供し, 操作性・制作品質の標準化を行うべきと考えた」(アイ・ディ・エス 貴田氏)。このため徳島県CMSでは,すべての制作・管理操作をCMSの管理画面で完結することを目標に開発を進めている。

 「同じRuby on Raislを使用しているものの,結果的に現在の徳島県CMSには,島根県CMSのソースコードは使われていない。ただし島根県CMSの内部を解析し,参 考にした」(アイ・ディ・エス 貴田氏)という。島根県CMSでワープロのように見たまま入力できる機能,読み上げ機能を実現するために使用したオープンソース・ソフトウエアは徳島県 CMSでも利用している。JavaScript WYSIWYGエディタのTinyMCEや,擬人化音声対話エージェントのツールキットGalatea Toolkitなどだ。データベースにはMySQLを採用している。

3.“14Mbps超”目指すKDDIの携帯電話高速化が前進,Rev.Aマルチ方 式の技術方式案が固まる(9.10 nikkeibp)
 情報通信審議会 情報通信技術分科会は2009年9月10日,「携帯電話等周波数有効利用方策委員会 CDMA2000高速データマルチキャリア方式作業班」の第2回会合を開催した。今回はKDDIが携帯電話のデータ通信速度向上のために導入を予定してい るCDMA2000のRev.Aマルチキャリア方式について,技術方式案や干渉検討に用いるモデル案が示された。技術方式案ではRev.Aマルチキャリア 方式が実現した場合に,3波を束ねることで伝送速度は下りが最大14.7456Mbps,上りが同5.5296bpsとなることが報告された。

 今後はこの技術方式案や干渉検討モデル案を,作業班や親会に当たる携帯電話等周波数有効利用方策委員会でさらに細かく検討する。委員会では2009年 10月に報告書をまとめて約1カ月のパブリックコメントを募集し,12月中旬に委員会の答申としてまとめる予定である。

4.「iPhoneでもテレプレゼンスが可能」---シスコがテレビ会議ソリュー ションを拡充(9.10 nikkeibp)
シスコシステムズは2009年9月10日,企業向けテレビ会議システムを拡充する新施策を発表した。高品質テレビ会議とWeb会議サービスの統合を推進。 iPhoneなどのスマートフォン対応や他社製品との相互接続保証を実施することで,ユーザー層の拡大を狙う。

 今回発表した施策は大きく三つ。(1)同社のWeb会議サービス「Cisco WebEx Meeting Center」の携帯端末対応,(2)高品質テレビ会議製品群「Cisco TelePresence」と他社テレビ会議システムとの相互接続に対する動作保証,(3)テレプレゼンスを核とするHDテレビ会議製品群とWebExの 統合である。

 WebExの携帯端末対応では,対応端末にiPhone/iPod touchを追加(写真2)。TelePresenceとWebExを併用することで,プレゼンテーション資料の閲覧が可能な音声端末として iPhone/iPod touchが会議に参加できるようになった。その他の携帯端末についても,BlackBerryやWindows Mobileに近日対応する。

5.キヤノンがインクジェットプリンター一新、Web印刷機能を強化(9.8  nikkeibp)
キヤノンは2009年9月8日、インクジェットプリンター「PIXUS」シリーズを一新、合計8機種を発表した。コピーなどもできるA4判複合機が6機 種、印刷専用のA4判単機能機が1機種、ビジネス用途を想定したA3判単機能機が1機種ある。出荷はすべて9月中旬。

 全機種に共通する進化ポイントは、一つがWebページの印刷を便利にする新ソフト「Easy-WebPrint EX」を追加したこと。「写真印刷が美しいことに加えて、新モデルではWebページの印刷にも強いことをアピールしていく」(キヤノンマーケティングジャ パンの川崎正己代表取締役社長)。

 Internet Explorerのプラグインとして動作するもので、ページの端が印刷されないといったトラブルを防ぐほか、Webページの一部を切り取りいくつもクリッ プして保存しておける。主要部分だけを抜き出して印刷したり、さまざまなクリップを1枚にレイアウトして印刷したりもできる。

 もう一つは、写真印刷時の補正技術「自動写真補正II」が進化し、逆光で暗くなった写真の明るさをより適正に調整できるようになったことである。

 主力となるA4判複合機は、上位モデル3機種が無線LAN対応になったのもポイントだ。このうち最も販売台数が多いと見込むのが「MP640」(実勢価 格約3万円)。「MP630」の後継機で、液晶ディスプレイを2.5型から3型に大型化している。



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