週間情報通信ニュースインデックスno.715  2009/07/18

1.リーダーシップと政権交代(7.17 nikkeibp)
新政権はブレーンを作って実行力を高めよ
 宮田 秀明
   それから15年ぐらいが経って、L君は再び日本に滞在した。彼はニューオーリンズ大学の先生になっていて、サバティカル・リーブ(大学教員に与えら れる長期有給休暇)で日本に戻ってきたのだ。私は29歳の時に東大に転職したので、助教授になっていた。

 飲みに行くと、彼はよくこう言った。
「今度の民主党政権はいいよ。クリントン(大統領)はいま一つだけど、ゴアはいい。ちなみにゴアは僕と同い年だ。あなたはクリントンと同じ年だよね。これ から、僕らはクリントン・ゴア友達ということにしよう」

 この頃からゴア副大統領が打ち出した政策が「情報スーパーハイウエー」である。20年前、世界に後れを取っていたIT(情報技術)の世界で、新しい国家 ビジョンとモデルを提案して、米国をITの覇者に導いたリーダーはゴアである。そのゴアは20年後に『不都合な真実』を書いて、米国だけでなく世界中にも 環境エネルギー問題の重要さを再認識させて世の中を変えた。

 環境エネルギーの専門家は昔からいる。彼らは正しいことを発言していたに違いない。しかし、実行し、世の中を動かさなければ何の意味もない。
 オバマ政権になって、環境エネルギー政策を最大課題にしたのは突然のことではないはずだ。コンサルティングファーム、シンクタンク、大学や国立の研究所 がゴアのリーダーシップに触発され、研究開発のベクトルを大きく変えたと見ることもできる。

 この1年間の「グリーン・ニューディール」や「スマートグリッド(次世代送電網)」と呼ばれるCO2削減のための国家プロジェクトや民間企業のビジネス の動きの強さには驚くばかりだ。最近、米国企業のこの分野への変針は速い。グーグル、ゼネラル・エレクトリック(GE)、IBM、有力コンサルティング ファームなどの動きが目立ち、大きな慣性力を感じるぐらいだ。

 この流れを作ったのは、ゴアやオバマのリーダーシップだが、ゴアの周りには、たくさんのブレーンがいたと思う。ゴアの環境政策を引き継いだオバマの周り にもたくさんのブレーンがいるはずだ。どんなに優秀で構想力のあるゴアやオバマにしても、自分1人の力には限界がある。彼らはそれを認識し、ブレーンの方 々との議論の結果を総合して、政策を立案し、国民に訴え、ビジネスを促進して、国の成果を本物にしようとしているように見える。

リーダーを補佐する仕組みが弱い日本

 翻って日本の行政を見れば、ごく限定された世界の人しかブレーンの役割に就いていないようだし、諮問会議や審議会、委員会という形の知恵の集め方は大変 非効率である。結局、政策立案力、実行力がかなり低いことになる。これは、リーダーを補佐する仕組みが弱体だからなのだ。

 今度の選挙で民主党政権が誕生する可能性が高そうだ。この原因を一言で言えば、小泉政権以後の政府のリーダーシップのなさを連続紙芝居のように見せられ て、国民ががっかりしたからだろう。

 それでは、民主党政権になれば、見違えるようにリーダーシップが発揮され、正しい政策が行われ、制度疲労している様々な行政サービスの仕組みが設計され 直すだろうか。
 私は、政治の世界のことに対しては素人で、よく知らないのだが、民主党の若手議員には優秀な人が多いと聞く。民主党政権の閣僚の過半が40代50代の若 手になると結構面白いかもしれない。一種のエンパワーメントである。

 しかし、実際に行政を担当する各省庁に対して民主党の議員の方々が本当にリーダーシップを取れるだろうか。なかなか難しい問題かもしれない。1つの方法 は、議員以外の専門家も加えたブレーン組織を省庁ごとに作ることだろう。

 ある中国人が私に言った。
 「中国の国民はまだいいかげんなところや不真面目なところがあってまだまだですが、リーダーは偉いです。日本はちょうど逆ですね。国民は世界一優秀で勤 勉だと思いますが、リーダーはダメですね」

2.Symbian Foundation,アプリ公開支援プログラム「Symbian Horizon」を発表(7.17 nikkeibp)
 非営利団体の英Symbian Foundationは米国時間2009年7月16日,Symbian OS搭載端末向けアプリケーションの公開をサポートする開発者向けプログラム「Symbian Horizon」について発表した。このプログラムは,当初の予定通り2009年10月に開始される。

 Symbian Horizonは,Symbianアプリケーション開発者の負担を軽減し,アプリケーションの開発と販売による収益増加を目的とするもの。参加企業や開発 者に,モバイル・アプリケーションの開発のほか,販売やプロモーションをサポートする各種サービスを提供する。

 これらのサービスには,アプリケーション認定や言語翻訳サービス,マーケティング・プログラムなどが含まれる。これらのサービスにより,例えば北米の開 発者が,通信事業者またはメーカーが経営するストアを通じて,アジアや欧州市場でアプリケーションを販売できるようになるとしている。

 このプログラムには,すでに米MobileIronや米National Public Radio(NPR)のほか,モバイル版ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)を運営する米Skoutやストリーミング動画配信サービスの米 Ustreamなどが参加を表明している。

 調査会社の米Gartnerによれば,オープンソース・プラットフォームのSymbian OSは,26カ国で70種類を超えるモバイル端末に採用されている。2009年第1四半期のスマートフォン市場における世界シェアは49.3%に達したと いう。

3.[クラウドフォーラム]採用企業にしか分からない,クラウドの魅力と不安(7. 16 nikkeibp)
  2009年7月16日に開催された「エンタープライズ・クラウドフォーラム」で,日本郵政,東急ハンズ,ジェイティービー情 報システムの3社がクラウド・サービスに関するパネル・ディスカッションを実施。クラウドの先進ユーザーとして,Force.com,Google Apps,Windows Azureといった象徴的サービスの利点や課題について議論を交わした。

 郵便局会社は米salesforce.comの「Force.com」,東急ハンズは米Googleの「Google Apps」,JTB情報システムは米Microsoftの「Windows Azure」を業務で利用するクラウド・ユーザーだ。選択の決め手と課題,そして今後の展望を軸に議論が進んだ。

選択の決め手は「スピード」「低コスト」「開発環境」
 Force.comを採用した日本郵政グループ 郵便局会社は,郵政民営化に伴い誕生した新会社。全国2万4000局の郵便局とその従業員12万人をたばねる営業代理店企業だ。Force.comによる 顧客情報の分析システムなど,ユーザー数は6万を超える。世界的な大規模ユーザーである。

 岩崎氏はForce.comについて「一番の決め手は開発のスピード」とし,その理由を「新設会社でシステム要員もデータセンターもないところからのス タートだった」と説明。Force.comはPaaSとして豊富な開発環境を用意しており,「最初から要件を詰められないので,ひとまず稼働させ,後から 要件を追加していった。Force.comは変更に強い。簡単なアプリケーションなら2日で作れる。最初に開発した画面は,今のそれとまったく違う」とい う。

 東急ハンズはメールやスケジューラといった機能を持つグループウエアとして「Google Apps Premier Edition」を採用している。
 長谷川氏が選択の理由として挙げたのは4点。1アカウント年間6000円の低価格,25Gバイトの大容量メール・ボックス,検索の速さ,そして 「Google Appsは面白そう」(同氏)というものだ。「すぐ始めて,すぐに終われる。スイッチング・コストは発生するが,アカウントを作り直すだけと割り切れる。 基幹系のシステムではないので,一度乗っかってみよう,というのが正直なところだった」と当時を振り返る。

 JTB情報システムは,オンライン・アルバム作成サービス「TORIPOTO」を2009年1月にWindows Azure上に構築した先進ユーザー。2009年9月末までの実験サービスとして展開中だ。
 北上氏が注目したのは「初期投資ゼロ」という点だ。「本業ではないTORIPOTOは,収益に直結しないうえ,必要なストレージ容量などの見通しを立て るのが難しかった。このため初期投資が不要でスケールしやすいクラウド・サービスがなじむのではと考えた」という。

 「自社の開発者が慣れ親しんだVisual Studioが,Azureでの開発にそのまま使えた」(北上氏)ことも採用を後押しした。データベース周りのコードを一部Azure用に書き換えた程度 で「ほとんどのコードはAzure用に手を入れずに動いた。商用ではさらに互換性が上がると聞いている」(同氏)。


課題は「データ」「ベータ」「ネットワーク」
 パネルの過程で浮かび上がった課題は,「データの場所」「機能が増え続ける永遠の“ベータ版”」「ネットワーク依存度の高さ」の3点である。
 Force.comを使う岩崎氏は,データの所在について「基幹系ではないものの,すべてのデータをアメリカに送っていいのか,という議論はある」と し,その解決策を模索している最中だという。「現在ローカルのシステムをパブリック・クラウドと連携させる仕組みを開発中で,データをローカルに置けるよ うにしたい」(同氏)。

 長谷川氏はGoogle Appsについて,「機能が勝手にアップしていくのは魅力的だが,これが内製なら安定性を考えてバージョンアップしないだろう」と,利点の裏返しとしての 欠点を指摘。明確な課題は「基本的にベータであること」で,ブラウザのバージョンや言語設定で表示が崩れる不具合を経験したという。「杓子定規なユーザー には向かないのではないか。ただ半年,1年後に新機能が使えるようになる内製よりはいい」とした。

 北上氏はWindows Azureを利用するときの留意点として,英語の契約書,訴訟における現地主義,外国通貨による決済,データ消失時の対処などを挙げ,「失ってもいい部分 から始めるのがベター」とした。さらに,一番大きなリスクは「ネットワーク」という。北上氏が懸念するのは「日々発生しているDDoS(分散サービス拒 否)攻撃に代表されるセキュリティ面。ネットワークがセキュアにならなければ,使い続けられない」とする。

クラウドのDNAはユーザー企業にも必要
 利点と課題が明らかになったところで,モデレータの中村編集長は今後の展望に議論の前提を移していく。一つは「クラウドが企業に与える影響は?」という 質問で,もう一つは「レガシーと基幹系はクラウドに乗れるか」というものだ。

 クラウドが企業に与える影響について,岩崎氏は「パブリック・クラウドと社内システムの使い分けでコスト構造をどう最適化できるかの議論が進む」との見 通しを示した。さらに,クラウドの実体であるデータセンターの立地に言及。「日本にsalesforceのデータセンターがあれば良い」とし,最適化の パーツとして国内センターが重要な要素となるとした。

 一方,北上氏は,影響を受ける側の国内企業に,クラウド時代に生きる素養がないのではという疑問を提示した。「少なくとも社内システムを仮想化する道を 通らないといけない。クラウド事業者は自社のサービスの基盤としてスケールアウト,仮想化,そして運用の自動化がDNAとして身に付いている」とし,ユー ザーと提供者側の力関係に絶対的な差がある点を指摘した。その解決策として「クラウドは,データセンターの構築そのものがノウハウ。立地を生かせる北海道 などに丸ごと誘致すべき」と北上氏は主張する。

4.Google,Lotus NotesからGoogle Appsへの移行ツールを公開(7.16 nikkeibp)
 米Googleは米国時間2009年7月14日,米IBMのグループウエア「Lotus Notes」から同社の企業向けオンライン・アプリケーション・サービス「Google Apps」への移行をサポートするツール「Google Apps Migration for Lotus Notes」を公開した。

 このツールは,サーバー側で移行プロセスを一元的に管理するツール。Notesアカウントの電子メール,カレンダ,アドレス帳,グループ情報のデータを 容易にGoogle Appsに移行できるようになる。

 管理者向けに移行スケジュール機能やテンプレート,Google Appsアカウントの自動プロビジョニング機能,移行の通知,レポート,ログ機能などを備える。複数のオフィスを同時,または個別に移行でき,必要に応じ て管理権限を組織やオフィス・レベルで割り当てることができる。エンドユーザーは,移行プロセス中でもNotesを継続して使用でき,移行後には GmailからLotus Notes内のNoteのリンクを開くことができる。

 同社によれば,自動車部品メーカーの仏Valeo,米Fairchild Semiconductor,米Hamilton Beach,米JohnsonDiverseyの4社だけでも,合計約5万人のユーザーがNotesからGoogle Appsに移行したという。

 ちなみに,Googleは同年6月に,米Microsoftの個人情報管理ソフトウエア「Outlook」からGoogle Appsを利用するためのプラグイン・ソフトウエア「Google Apps Sync for Microsoft Outlook」の提供を開始している。

5.マイクロソフトが国内でも無償のWeb版Office、今秋にベータ公開(7. 14 nikkeibp)
 マイクロソフトは2009年7月14日、Web版オフィスアプリケーション「Office Web applications」とオフィススイート「Microsoft Office 2010」を国内でも提供することを発表した(米マイクロソフトの発表に関する記事)。グーグルの「Google docs」対抗と位置付けられるOffice Web applicationsについては、国内でも無償で提供する見通しである。

 Office Web applicationsの提供開始は2010年上半期。提供形態は(1)Windows Live利用者向けに無償提供、(2)有償のオンプレミス提供、(3)有償のホスティングサービスの三通りである。本番サービスより前にマイクロソフト は、Office Web applicationsの開発者向けのテクニカルプレビュー版を今秋から公開する予定だ。

 Office 2010日本語版については海外と同様、テクニカルプレビュー版を本日から公開。一般向けのパブリックベータ版は年内に、製品版は2010年上半期に提供 する。テクニカルプレビュー版については、開発者向けサービス「MSDN」を通じて数週間前から告知を始めている。本日からダウンロードサイトの案内を開 始した(国内のOffice 2010情報サイト)。


 
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