週間情報通信ニュースインデックスno.710  2009/06/13

1.先手必勝のセオリーを軽視して日豪競争に敗北(6.12 nikkeibp)
リスクを乗り越えて先駆ける意味の大きさ
宮田 秀明
 1980年代の終わり頃、アルミニウム製の大型双胴高速船の開発競争で北欧とオーストラリアと日本は火花を散らしていた。2つの胴体を連結する双胴型の 船は新しい技術ではない。しかし、それを大型化して何千トンもの大きさにする開発は初めてのことだった。1990年代初めになると、その大型化に向けての 研究開発でオーストラリアと日本は競っていた。

 1991年にシドニーで開催された国際高速船会議では激しい技術の論戦があった。日本のプロジェクトの中心にいたのは私で、ある造船企業と共同開発プロ ジェクトを進めていた。この頃には長さが200メートル、速度が毎時75キロメートルの大型双胴高速船の開発が山場を迎えていた。

「日本チームの方が開発能力が上だと思っていた」
  このような新型の高速船の技術開発を行う能力は、圧倒的に私たちのプロジェクトチームの方が上だと思っていた。何しろ、オーストラリアではニューサウ スウェールズ大学の船舶工学科で学ぶ学生の数は5人程度だ。人的資源にも大きな差があった。

 それから10年間にわたり、大型高速船の国際的な技術開発競争が繰り広げられた。それは新しい商品モデルによって新しい産業を生み出す活動でもあった。 商品モデルの創造という難しいプロジェクトでもあり、市場規模は1500億円ほどと見積もられていた。

 しかし、この技術開発と商品普及の日豪競争は、結果的に私たち日本の完敗に終わった。私たちはようやく1隻を受注し、長さ70メートルの「オーシャン・ アロー」を熊本〜島原間に就航させ、それまでに1時間かかった航路をちょうど半分の30分にした。しかし、それだけだった。
 
 それから受注のない時間が10年以上も経過し、現在の日本の造船界でこのような新しい船のシステムを開発できる人材はほとんどいなくなってしまった。一 方のオーストラリア企業は現在、この高速船ビジネスの中心にいる。米国海軍にまで技術供与できるほどまでに成長したのだ。

 低い技術力という劣勢を跳ね返したのはオーストラリア人の企業家魂だった。高速船企業を創業したH氏はまず長さ24メートルの双胴船を開発して販売した のだが、この船は大きな事故を起こした。追い波を受けて船首から水中に突っ込んで座席が倒れてしまい、多数の重軽傷者を出した。しかし、H氏はへこたれな かった。このような状態でも船首が突っ込まないよう、船首の真ん中に第3の船体をつける設計に変更して、長さ35メートル200人乗りの船を開発して販売 していった。

 この改良モデルの評判は良かったし、何しろ安かった。オーストラリア政府の助成もあったし、為替も味方した。勢いを得たH氏の企業は商品開発を加速させ て大型化へ突き進んだ。

 私たちは少し高をくくっていた。彼らの低い技術力ではいずれ行き詰まる時が来るだろうと思ったのだ。

弱点を補うためアウトソーシングを実行
 第4回の国際高速船会議がドイツの古都リューベック郊外のバルト海に面した保養地トラベミュンデで開催されたのは1997年だった。H氏の率いる企業は 長さ74メートルの大型双胴船を開発し、英仏海峡のフェリーとして販売したところだった。完成した高速船はオーストラリアを出港し、パナマ運河を通って英 国に向かっていた。ちょうど国際会議が開催される1カ月前のことだった。

 その頃、この船のトラブルのニュースが世界中を駆け巡った。パナマ運河通航時点で、かなり深刻な損傷を引き起こしているようだった。私たちは敵失を見て いる気持ちだった。予想した通りだった。いくら企業家魂が高くても、技術力が低ければ、技術開発競争に勝てるわけがないと思ったのだ。

 オーストラリアのH氏はこの国際会議で基調講演をすることになっていた。私たちはこの船のトラブルのことには触れないのだろうなと予想していた。ところ がその予想は見事に裏切られた。H氏はスライドを使って損傷箇所を皆に披露したのだ。かなり本質的な設計ミスと言ってよかった。しかし、H氏は胸を張って 言うのだ。

 「このような損傷はすぐ直しますから、何の問題もありません」

 そうしてH氏の企業はどんどん大型化へ突き進んでいった。2年後1999年にシアトルで開かれた第5回の国際会議で分かったのは、この企業が設計の中の 一番難しい部分を北欧のコンサルティング企業へアウトソーシングしていることだった。自分たちの技術の弱点を補う方法はいろいろあるのだ。

 今でも、私たちが開発した双胴船の方が、オーストラリアのH氏たちの開発した双胴船より優れていると思っている。彼らの設計が徐々に私たちの設計に似て きたことからも、それが分かる。しかし、ビジネスでは完敗だった。

 ビジネスは先手必勝である。絶好のタイミングで先にマーケットをリードした方が優位に立つ傾向にある。何よりも実績がものをいう世界も多い。先にリスク を取ることが、新分野のマーケットで戦う時の戦略と言ってもいいだろう。

2.東海総合通信が1セグ携帯電話向け情報提供システム検討会を開催,主眼は閉塞空 間(6.12 nikkeibp)
 総務省東海総合通信局は2009年6月11日,「微小電力電波による1セグ携帯電話等向け情報提供システムの調査検討会」の開催を発表した。スポット的 な特定エリアに対し,空中線電力が微小な送信機により1セグ携帯電話など向けにた放送以外の情報を提供するシステムを構築する場合の技術的条件及び同シス テムの将来性などなどについて,調査検討することを目的とする。

 この調査検討会は,昨年度に引き続き開催されるものである。前回の調査検討会では,地下街や大規模テーマパークなどの20〜100m四方程度のスポット 的な特定エリアに対象にした調査検討を行った。その結果,屋外における運用とテーマパークなどの来園者への情報提供といった利用法については有効な活用が 見込めることが確認できたが,電波の反射の影響が大きい地下街などの閉塞空間においてはいくつかの課題が認められたという。

 この結果を受けて,今回は,地下街やイベントホールなどの閉塞空間における課題解決に向けた検討を行う。さらに,1セグ携帯電話機を含めたより多くの1 セグ受信端末での利用など今後の実用化を目指した調査検討を行う。

3.Google,Webブラウザでx86コードを実行する「Native Client」開発に本腰(6.12 nikkeibp)
 米Googleは米国時間2009年6月10日,x86系プロセサのコードで記述されたアプリケーションをWebブラウザ上で実行する技術 「Native Client」について,今後の計画などを発表した。これまで技術研究プロジェクトとして開発してきたが,今後は開発プラットフォームと位置付けて作業を 進める。

 Native Clientでは,x86系プロセサのネイティブ・コードを実行するため,高速なWebアプリケーションを実現できる。将来は,OSやWebブラウザの種 類に依存しないアプリケーション実行環境を目指す。オープンソースとして公開していく。

 同社はNative Clientを2008年12月に公開して以来,セキュリティ・コンテストの開催や技術論文の作成などを通じ,基礎的な研究に取り組んできた。その結果, 基本的なアーキテクチャが固まり,開発支援も受けられる状況になってきたため,より具体的な作業段階へ移行する。

 これまで同社内の研究用リポジトリで開発していたが,今後は公開用SVNリポジトリで作業する。ソースコードを見直し,ソフト開発キットでの利用を意識 したNative Clientアプリケーションのサンプルを作る。同社のWebブラウザ向け3次元グラフィックス技術「O3D」との統合も検討する(関連記事: Google,ブラウザで3Dを実現する「O3D」プラグインを提供)。

4.LTEのサービス像は? 設備投資の内訳は?---携帯各社トップが3.9G移行について説明(6.10 nikkeibp)
 携帯電話事業者4グループの3.9G参入決定を受け(関連記事),2009年6月10日,総務大臣から各社へ免許の認定式が行われた。 NTTドコモの山田隆持社長,ソフトバンクモバイルの孫正義社長,KDDIの小野寺正社長兼会長,イー・モバイルのエリック・ガン社長兼COOは,認定式 後にそろって報道関係者の囲み取材に応じた。

 4グループへの周波数追加割り当てで一件落着しただけに,終始なごやかなムードで各社トップが質問に答えた。主なコメントは以下の通り。

3.9Gの開設計画の認定を受けた感想は。
ソフトバンクモバイル孫社長 3.9Gによって新しいモバイル・インターネットの時代がやって来るのを楽しみにしている。

NTTドコモのLTEの導入時期は,世界的に見ても速いのでは。
NTTドコモ山田社長 LTEは2010年12月にサービスを開始する。トップかどうかは分からないが,世界の先頭集団になると思う。

総務省に申請した3.9Gの開設計画を見ると,2014年度末までの各社の設備投資額は,NTTドコモが3430億円,KDDIおよび沖縄セルラー電話が 5150億円,ソフトバンクモバイルが2073億円,イー・モバイルが644億円と各社でバラツキがある。内訳は。

ソフトバンクモバイル孫社長 ネットワーク設備が中心だ。

KDDIの小野寺社長 当社の投資額が最も多い理由は,他社と比べて局数も多く(2014年度末までに2万9361万局で,4社の中で最多),人口カバー 率も高く設定しているからだろう(2014年度末までに96.5%と,4社の中で最も高い数値)。

 一つの理由として,KDDIは現在,他社と比べてスペック上のデータ通信の速度が遅く,ここを何とかしたいという気持ちがあった。

各社ともに3.9Gの加入者の目標を出している。2014年度末までに,NTTドコモが1774万,KDDIが984万,ソフトバンクモバイルが541 万,イー・モバイルが295万と,現在の加入数のおおむね3割程度を見込んでいる。この割合は今後上がっていくと見ているのか。それとも3.9Gの利用は 一定のユーザー層の利用にとどまると考えているのか。

NTTドコモ山田社長 ユーザーの需要を見ながらエリアを拡大する計画のため,3割程度の利用見込みとなっている。(エリアを拡大することで)ユーザーの 割合は伸びていくと考えている。

ソフトバンクモバイル孫社長 基本的に技術は次の世代へと移行していくので,ユーザーの割合は30%にとどまらず,50%,80%と増えていくだろう。た だし,やってみないと分からない面もある。

KDDI小野寺社長 当社は,最初からエリアをある程度広げてLTEを導入しようと考えている。LTEの端末コストの問題さえクリアできれば,LTEの普 及率は十分上がると思っている。

3.9Gのサービス像は。

NTTドコモ山田社長 高速インターネットや動画などがある。低遅延という特徴を生かして,端末とネットワークのコラボレーション・サービスも検討した い。
ソフトバンクモバイル孫社長 スピードが速くなることによって,音楽や動画,インターネットなどあらゆる分野で,よりリッチなコンテンツが楽しめるように なる。

5.「3Gに比べて圧倒的に安い」,UQ WiMAXの発表会より (6.8 nikkeibp)
 UQコミュニケーションズは6月8日,7月1日から商用サービスを開始する「UQ WiMAX」の発表記者会見を開催した。記者会見はUQコミュニケーションズ 代表取締役社長の田中孝司氏やインテル 代表取締役社長の吉田和正氏らが出席した。質疑応答の主な内容は以下の通りである。

――UQ WiMAXの通信モジュールがパソコンに内蔵されると,パソコンの価格はどのぐらい高くなるのか。
 当然高くはなるが,UQ WiMAXは3Gネットワークを使うサービスよりも通信モジュールなどが圧倒的に安い。パソコンに内蔵するメーカーにもよると思うが,価値に対して適切な 値がつくだろう。1カ月待ってもらえば価格は分かる。

――ライバルのイー・モバイルが通信モジュールと通信料金を組み合わせたキャンペーンを実施しているが,こういったキャンペーンは検討しているか。
 検討していない。UQコミュニケーションズがパソコンに通信料金込みで組み込んで,料金体系を作ることは考えていない。UQコミュニケーションズの MVNO(仮想移動体通信事業者)が提供することはあると思う。

――7月からサービスを開始する決断をした理由は。
 MVNOやデバイス・メーカーの体制が整ったことが大きい。エリアの整備は進んでいるが,関西地区では遅れが目立っている。この点は着実に基地局を建て てカバーしたい。

――加入者の目標数はあるか。
 現在のお試し期間における加入者は8000名。これを今年度末には数十万人にしたい。


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