週間情報通信ニュースインデックスno.706  2009/05/16

1.戦略の未来を担う「アダプティブ・アドバンテージ」(5.15  nikkeibp)
 御立 尚資
 
「戦略不要論」は是か非か

 経営戦略は絶滅危惧種のようなものだ、あるいは、経営に戦略は不要だ、という極論がある。

 環境変化が激しくなり、じっくり時間をかけて戦略を練り上げても、その戦略を実行する段階では、戦略の前提となっていた市場の状況が刻々と変わってしま う。下手をすると、戦略を作っている間にも、周囲の環境は激変してしまい、出来上がったその瞬間に、的外れな戦略になってしまうことすらある。したがっ て、戦略を作り、それにとらわれて行動することよりも、戦略など無しで状況に応じて判断を下し、自らの戦い方を修正していく方がより効率的かつ実際的であ る。すなわち、戦略構築は不要であり、そして当然のことながら、経営戦略論などというものは意味を失い、絶滅寸前にある――こういう考え方だ。

 私自身は、こういった戦略不要論には基本的には与しない立場を取っている。

 第1に、競争相手に対して優位に立つためには、それ相応の時間と投資をかけて「何らかの強み」を作り上げていくことが必要なので、そう簡単に「戦略は不 要だ」と割り切るわけにはいかない。

 新技術・製品の開発、足腰の強い営業部門作り、あるいは「状況に応じて判断し、戦い方を修正していく」ためのリーダーシップチームやそれを支える神経系 統(すなわち、必要な情報をタイムリーに収集し、それに基づく行動修正をこれまたタイムリーに現場にまで落とし込んでいくシステム)の構築。これらは、す べて一朝一夕には成し遂げられないので、何らかの形で、戦略という名の「意思」を持って行動することが不可欠と考える。

 第2に、状況変化が起こってから、いちいち判断し行動するというやり方では、常に受け身になってしまうリスクがある。戦略を作る段階で大事なことの1つ は、「何を前提としたか」を明らかにしておくことだ。こうしておくことで、前提のうち大きな変化を来しても、戦略の与件とできないことを判断し、戦い方を 修正できる確率と反応速度が高まるからだ。逆説的だが、「前提を明らかにした」戦略があってこそ、前提変化に対応できる力が高まる。

 さらに誤解を恐れずに言えば、戦略不要論というのは、戦略は万能であるという考え方の裏返しにすぎないような気もする。どんなに頑張っても、戦略という のは「事前の準備」。どこまでいっても、未来を完全に読み切り、過去のデータに依存しないで「完全無欠な」戦略を立てることなど、できるはずがない。

 あくまで「人事を尽くして」という世界観であり、実行段階に入った瞬間から、競合の動きを始め、「何か予想もしていなかったことが、当然起こるはず」と いう前提で、組織全体が動いていく。これが、強い企業の共通項だと思える。

 こういった理由で私自身は、戦略不要論というのは極論だと考えている。だがその一方で、ここまで述べてきたように、周囲の環境変化に即して、自らも変化 していく能力、言い換えれば、変化適応力というものが、どんどん重要になってきているとも感じている。

 情報通信革命が進行するに伴い、「周囲の状況を把握し、それに基づいて自らの戦い方を修正する」ための情報収集、プロセシング・コストが劇的に低下した のが最大の理由だが、それ以外にも第1の理由で触れたような様々な構造的変化が起こっている。この中で、どうやって「変わるべき時に、必要なスピードで、 自らを変えていけるか」ということが、大きな課題になっている。これは、企業だけの問題ではなく、社会システム全般にも当てはまることだろう。

自らの意思で変化に対応した「進化」を

 私の同僚の英国人マーチン・リーブス(ちなみに現在は米国在住だが、東京駐在時には日経新聞を読みながら地下鉄で通勤し、趣味は尺八という日本通の人 物)が、最近研究しているテーマの1つに、「Future of Strategy(戦略の未来)」というものがある。

 彼によれば、産業革命以来、何だかんだ言っても「規模のメリット」というのが戦略上の優位性を生む最大の要因だったが、ここ10年ほどの間に、これが大 きく揺らいでいるという。各業界のトッププレーヤー(すなわち、同業中、最大の規模を有する企業)が入れ替わるスピードが、明らかに速くなってきている。 戦略の未来を考えるうえで、この原因(その1つは、情報通信革命)とそれに対応した戦い方を考える時期にきている、という意見だ。

 彼はその対応策の1つとして、変化適応力を高めて、優位性につなげる「アダプティブ・アドバンテージ」というコンセプトを提唱し始めている。これは、上 述の私自身の考え方ともぴったり一致しており、彼のチームと時折議論しながら、できるだけ早いタイミングで、「Future of Strategy」のコンセプト全体を世に問うことができるよう、及ばずながらお手伝いしている次第だ。

 生物の場合、自らの意思で「どのように進化するか」を選択することはできないように思える。しかし、企業、あるいは社会システムの場合には、そのリー ダーや構成員の意思で、一定のシステム変革(=進化)に向けて動き出すことは可能だ。これから、様々な点で大きく環境が変化すると信じるのならば、プテラ ノドンにならぬよう、自らの進化のあり方について、思いを致していくことが不可欠ではないだろうか。

2.Cisco,キャリア向け統合システム「Unified Service Delivery」を発表(5.13 nikkeibp)
 米Cisco Systemsは米国時間5月12日,次世代IPネットワークを介してクラウド・コンピューティング・サービスを提供できる,通信事業者向けソリューショ ン「Unified Service Delivery」を発表した。データセンター内やデータセンター間,次世代IPネットワーク上における仮想化を支援し,ビデオ,データ,音声サービスな どを提供する際にリソースの最適化,品質の確保,運営コストの削減などを行えるようにした。

 Ciscoのデータセンター向け統合システム「Unified Computing System」に,「Nexus 7000」スイッチとデータセンター向けに最適化した同社の主力ルーター「CRS-1 Carrier Routing」,そして各種次世代ネットワーク製品を組み合わせた。

 CRS-1には新たなモジュールとプロセサを追加し,トラフィックとネットワーク運用をサービスもしくは顧客ベースで仮想化できるようにした。これによ り顧客ニーズへの柔軟な対応や,サービス配信の迅速化,リソースの利用率向上などが可能になるという。

3. iPhoneをサーバー化する無料ソフトに新版、フリービットが提供(5.14 nikkeibp)
 フリービットは2009年5月14日、携帯電話機「iPhone 3G」をインターネットからアクセス可能なファイルサーバーに仕立てるソフト「ServersMan iPhone」の新バージョンを提供すると発表した。バージョン番号は1.1b。今回から英語表示に対応し、ソフト内で楽曲を再生したり録音したりできる ようになった。圧縮形式のファイルをiPhone 3G上で解凍する機能も加えた。アプリケーション配布サービス「AppStore」経由で、無償で入手できる。

 ServersMan iPhoneの最初のバージョンは2月4日に公開。iPhone 3GをWebサーバーとして動作させることで、携帯電話網や無線LANに接続した状態であれば、遠隔地のパソコンからWebブラウザーでiPhone 3G内のファイルを参照できる。「Emotion Link」と呼ぶ独自技術を活用し、パソコンとiPhone 3G間は暗号化された仮想的な通信路で結ばれる。データを安全にやり取りできる。

 同社は、次期バージョン2.0b、3.0bの開発も進めており、「2.0bは既にAppStoreへの登録を申請済み。承認が得られればすぐにダウン ロード可能になる」(石田宏樹代表取締役社長)。2.0bでは、仮想的な通信路中で複数のファイルを同時並行で交換できる機能を組み込み、「約200%通 信スピードが高速化する」(石田社長)という。
 同時に、ServersMan iPhoneをWindows Mobile環境へ移植したことも発表。「ServersMan Windows Mobile」(バージョンは1.0b)の名称で、同社のサイトから無料で入手できる。

4.Googleが障害発生を謝罪,「原因はアジアの渋滞」(5.15  nikkeibp)
  米Googleは米国時間2009年5月14日に発生したサービス障害について謝罪文を公式ブログに同日掲載した。アジアを経由するトラ フィックの渋滞が原因だったとしている。
 同社業務担当上級バイス・プレジデントのUrs Hoelzle氏によると,不具合が発生し始めたのは太平洋時間午前7時48分。約1時間にわたってサービスの遮断や速度低下などが続き,Google ユーザーの約14%が影響を受けた。

 同氏は,「超高速で中断のないサービスを目指して努力してきたが,こうしたトラブルの発生は特に恥ずかしく,たいへん申し訳なく思う。同様の問題が再発 しないよう,よりいっそう注力する」と記述している。

 不具合発生について報じた米メディア各社(InfoWorldやCNET News)によると,「Google Search」「Google News」「Gmail」「Google Maps」「Google Reader」など多くのサービスが障害に見舞われた。ミニブログ・サイト「Twitter」上では,このトラブルに関するつぶやきが飛び交ったという。

5.東工取システムダウンの引き金は待機系ルーター 本番系に異常が伝播、トラブルの経緯が判明(5.13)
 2009年5月12日午前10時30分ごろに発生した東京工業品取引所のシステムダウンは、待機系のルーターが過負荷状態に陥ったことが引き金だった (関連記事1、関連記事2、関連記事3)。待機系の異常が本番系に伝播してシステムダウンにつながった。東工取が5月13日に記者会見を開き、明らかにし た。

 東工取は取引システムと取引参加者をつなぐネットワーク上に合計4台のルーターを設置している。2台が本番系で残る2台が待機系だ。本番系の2台は並行 稼働しており、取引参加者との通信データを分散処理している。

 まず2台の待機系のうち1台の利用率が100%近くに達した。次に、この待機系と二重化構成を組む本番系の利用率が100%近くに上昇。2台の本番系の うち1台がダウンした。この結果、ダウンした本番系ルーターにつながる取引参加者が取引システムと通信できなくなった。ルーターの利用率は、通常状態では 数%程度という。

 本番系に異常が発生した影響で待機系も動かなくなるトラブルは少なくない。だが、待機系の異常が本番系に影響を及ぼすのは珍しい。待機系のルーターの利 用率が100%近くに上昇した理由と、待機系の異常が本番系に伝播した経緯は「引き続き調査中」(東工取の福井裕一執行役)という。

 
 ホームページへ